くだらな日記(2002年2月)


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2月27日(水)
 濁り酒二態。
 先日知人宅で呑んだ上喜元の濁り酒は凄かった。シャンパンのごとく吹っ飛びそうな栓を金具で抑えている。注ぐとサイダーのように泡が立ち、浮いているのは澱ではなく米麹そのもの。味は炭酸強く、やや甘口だが鮮烈。きりっと冷やして小さなグラスで会席料理の食前酒に出すか、オンザロックにすれば女性に人気が出そうだ。
 私が買ったのは四季桜の濁り「冬の華」。以前も呑んだ経験があり、こんなはずはなかったと思うのだが、なぜか合成甘味料のような嫌な味がする。どうしたのだろうか。今年は失敗したのか、それともこれがたまたまハズレだったのか、はたまた私の味覚が花粉症で狂っているのか。

 本屋に行ったら、「狂牛病についてもっと知るために」というコーナーがあって、岩波新書の「狂牛病」があったのはいいとして、その隣に岩波文庫の「安愚楽鍋」があったのには驚いた。仮名垣魯文が明治初期に書いたこの本に狂牛病のことなんか書いてるはずないじゃないか。買っちゃったけど。
 狂牛病のことはわからなかったが他のことで勉強になった。明治初期から、牛肉を刺身で食う人間が多かったのですな。「生でたべるのだから、薄く切って、山葵醤油をつけて」とあるから、タタキではなく本当の生肉だ。いまでも生の牛肉を気味悪いなどと言う人間がいることから考えると、維新の人間は勇敢だったのだな。
 もっとも牛肉をタタキにしないのは当然ともいえる。本家の鰹のタタキ自体が、明治以降にできた料理だからだ。明治維新直後、土佐藩に洋式軍隊を教えに来ていたフランス人が、ステーキが食いたいと言いだした。あいにく田舎のことゆえ適当な牛肉が見つからず、やむなく鰹をレアステーキにして薬味であえたものを出したという。これが鰹のタタキの始まりである。だから坂本龍馬もカツオタタキは食ったことがない。
 なぜタタキと呼んだかというのにふたつの説がある。葱などの薬味であえるのが、昔からあったアジタタキと同じなのでタタキと呼んだという説。もうひとつは、土佐の料理人がフランス人にステーキの調理法を聞いた際、レアステーキとタルタルステーキの調理法を教えてもらったからだという。鰹のタタキは、鰹の調理はレアステーキと同じ。ニンニクや葱などの薬味であえるのはタルタルステーキと同じ。このタルタルステーキが訛ってタタキになったという説。
 この本に狂牛病は出てこないが、りんでるぽうすとという家畜の流行病がこのころ流行ったらしい。リントルペストというから、ペストの一種だろうか。「伝染病が恐ろしさに昨今まで牛はやめておりました」「せっかくひらけかかった牛屋も、伝染病の風聞で大いに景気を落とし」などとあるので、そのへんが「狂牛病について知る」の所以なのだろうか。狂牛病なんか気にせずどんどん牛を食え、と。いわれなくても私は食ってますが。


2月26日(火)
フットボール・ウィドウ
 日本に来るからワールドカップ
 あなた動機が不純なんだわ
 金髪美人のサポーター
 いつも引き連れ歩いてる
 トルシエ采配にケチつけて
 サッカー通を気取っているけど 何かが違うわ
 金 金 金 金 金ばかり出てゆくの
 フットボール・ウィドウ あははん
 フットボール・ウィドウ あははん
 いいかげんにして あたし貴方の財布じゃない

 某所掲示板でふと思いついた替え歌なのですが、あまりに差し障りがありそうなのでここに書くことにしました。

 同じ誕生日の有名人というのが昔からいなかったので、「フィンガー5の妙子ちゃんといっしょだよーん」というのが売りだったのですが、検索してみると結構いるもんですね。矢部美穂、穴井夕子、あがりた亜紀の売れないっ子アイドル三羽烏。じつは三人ともライブを見に行ったことがあります。無意識のうちに同じ誕生星に惹かれていたのか。岸辺シローのコンサートも見たな。あれはジュリーを見に行ったと思っていたが、やはり誕生星のなせる業か。そういえばパチョレックの試合を見たことがあるぞ。ううむ。おそるべし誕生星。それにしても国内はやっぱりぱっとしないな。国外ならゴーギャン、ボアソナード、ワイデンライヒといった巨人たちが生まれた日であるのだが。


2月23日(土)
 AlterLiveにコラムを書いたことを忘れていました。「オリンピックの顔と顔」。労力だけは費やしています。
 選手名鑑を調べていて気づいたのですが、アメリカの選手には、いわゆるアメリカらしい名前がほとんどいないですな。アングロサクソンっぽい名前もアイルランドっぽい名前も少ない。ユダヤっぽい名前は皆無。代わって主流を占めているのは、スラブっぽい名前と東洋風の名前。アメリカは人種の坩堝もしくは人種のサラダボウルと昔から言われてきましたが、しかしその中で主流を占めていたのは、やはりアングロサクソン、アイルランド、ユダヤの三民族。それが消え失せて、アメリカという国家が幻想になってしまっているからこそ、あんなにもくだらない愛国心を喧伝せざるをえないのかもしれません。かつて朝鮮、台湾、満州を領有して民族的にムチャクチャだったころの日本が、かえって狂的な愛国心を押しつけていたように。


2月22日(金)
 アメリカの謀略って凄いね。本命のクァンがこけて、さすがのインチキ審判でも金は無理。ロシアのスルツカヤが金を取りそうになったら、ダミーのヒューズを持ち出して大逆転を演出。いやー偉いねすごいねアメリカは。解説の伊藤みどりさんも言葉に詰まっていたよ。「私も、こういう悔しい経験は何度かありましたが……」と言ってたよ。あの人も技術は世界一だったけど、ブサイコだったというだけでさんざん減点されてたからな。今はアングロサクソンじゃないというだけで失格する時代だもんな。ベルリンオリンピックかと思っちゃったよ。寺尾の抗議を門前払いしたことに謝罪するだけで、失格はそのままかい? ビデオはやっぱり見ないのかい? 韓国の抗議には聞く耳持たないのかい? いいよね、どんだけ悪評だろうと、メダルはそのまま残るもんな。汚れているけど。腐っているけど。

 しかしどうしてこうも、勧誘のおねいさんは私を鬱にするのか。絵を売りつけるにしてもSOHOの入会にしても。
「そんな生活、ダメじゃないですか(笑)」
 ええダメですよ俺は。ダメな奴なんだ俺は。そんなことはわかってるけど、ダメな奴はダメな生活しか送れないんだ。ココロの傷をかきむしらないでくれ一介の電話嬢のぶんざいで。親身めかしく言われるのがまたたまらない。せめて日記読み日記のように小馬鹿にしてくれたら救いもあるのだが。


2月21日(木)
 ショートトラック1500メートル、寺尾は転倒の末また失格というていたらく。転倒は勝手に前の選手に追突したんだから自業自得だけど、失格はないだろ(失格の理由がイタリア選手を巻き込んだというのなら納得できるが、その数周前にフランス選手を妨害したからだと解説は言っていた)。アメリカのオーノ選手は予選から決勝まで他人を押しまくって勝ち進んだあげく、押しても倒れなかった韓国選手を勝手に失格にして金メダル。もうアホか、バカかと。アメリカの傲慢無礼不正身勝手は目に余る。日本は韓国と組んで審判員の不正を徹底的に糾弾するべきだ。でなきゃ日の丸飛行隊でそろってホワイトハウスに体当たりだ。
 と思っていたらカーリング女子、アメリカとカナダが揃って準決勝で敗退。こんなわけわからんスポーツどうでもいいと思ったのか、それとも上手の手から水が漏れたのか。


2月20日(水)
 プロレスがかなりやばいことになっている。
 新日本からカシン、武藤、小島、小原が退団。これが原因で新日本と全日本が交流凍結。ルックス実力共に女子プロレスの女王と言われている浜田文子がアルシオンを退団。借金王の安田がIWGP王者に。ぷにぷにレスラーのワイルド2がGHCタッグ王者に。リングス活動休止。FMW倒産。小橋一年ぶりの復帰戦でまたも負傷し全治四ヶ月。前田日明パンクラス社長を殴り書類送検。今年に入ってだけでも、これだけの暗い事件が起こっている。
 ここ数年、プロレス界は何をやっても駄目だった。格闘技に走ったら格闘家にボロ負けした。エンターテインメント化したら茶番劇になった。純プロレスを目指したら人気がなくなった。団体間の交流を活性化したら選手がどんどん逃げていった。ホントに何をやっても駄目だった。もう末期症状かもしれない。
 もっとも私のような不精者からすると、もうちょっと人気がなくなった方が、チケットが取りやすくなっていいのかも。ノアや新日本は、まだふらりと行って当日券で入場するのは困難だからな。かといってレスラーには幸福になってもらいたいのだけど。

 いぜん「もっとも鬼畜な歌はなにか」という話題になって、多くの人があげたのが河合奈保子の

けんかをやめて ふたりを止めて
私のために 争わないで

 だったのだが、私は、いや、もっと身勝手な歌がある。斉藤由貴の

ごめんね 今まで黙ってて
ほんとは彼がいたことを
言いたくて言えなかったの
二度と会えなくなりそうで

 だと主張したのだ。しかし、もっとひどい歌があったことを思い出した。それは水野あおいが加入していたことで有名なフェアリー・テールの「避暑地の森の天使たち」。

Love me 四人で交際(じれったい)
Kiss me 二対二だけど割り切れないのよ
You know? あたしもあの娘も(あなたなの)
You know? 彼は人数に入らないのよ

 なんかひどすぎ。こんな歌をナチュラルに歌っていたフェアリー・テールが解散してしまったこともやむを得ないだろう。


2月18日(月)
内弟子シャーマン(とくに意味はない)
 アイスダンスが将来どうなっていくかを考えてみた。
1)スポーツ化
 これは中国、韓国、日本など、容貌とスタイルでとうてい世界の賞賛は得られないような国が強引に参入した場合のシナリオである。いってみれば、「カワイコちゃんのアイスダンス」であったフィギュアに強引にブサイコちゃんの伊藤みどりが参入したのと同じ。アピールポイントより技術点を重視し、とにかく困難なテクニックを多くおりこみ、高得点を狙う。とうぜん、女性のコスチュームは脚にまつわる邪魔なスカートを忌避し、体操着とブルマになる。
2)エンタメ化
 アイスダンスはフィギュアのペアとの差別化を大きくし、アピールポイントを重視し、さらなるエンターテインメント化をはかる。紅白歌合戦のような衣装になるかもしれない。かといって小林幸子の衣装では動くことが不可能だし、沢田研二の「TOKIO」のバッテリーは十五キロというから電飾も無理だろう。おそらくは中森明菜が「ミ・アモーレ」でやったような演出をおこなうのではないか。フラメンコを踊った女性の衣服を男性がはぎ取ると、その下には体操着とブルマ。これで拍手喝采。六点満点。

 昨日は恒例(とはいっても欠席続きで久しぶりだが)の男性向け料理教室。けんちん汁って、こんなに上品でうまいものだとは思わなかった。ゴマ油でてきとーに炒めて煮込めばいいと思っていたのだが。胡麻プリンも濃厚にして上品。まぐろのぬたも溶きガラシがきいて甘すぎず上品な味。赤飯を金目鯛でくるんだボールを仕込んだ茶碗蒸しも、地鶏の卵の味と一番ダシの味がよく出た上品な絶品。でも、上品に仕上げるのって、むちゃくちゃ労力が必要なんですよね。
 そのあと後かたづけをしながら「あなたは病気がちだし、お忙しいようだし、お勤めの都合で欠席されるのもしかたないわねえ」などと真綿に針をふくんだようなイヤミを言われながら皿洗い。すみません。ごめんなさい。正直な話、アメリカに留学する国立大学の助教授とか、しばしば海外出張する大会社のエリートサラリーマンとか、イタリア有数のエンジニアとして評価されている人材とか、そういうエリートの園に参加するのは、今の私にはつらいことなのです。酒でも呑まないと参加する勇気がわいてこないのです。かといって呑むと胃が痛くなったりするのです。許して下さい。


2月16日(土)
 スケートのアイスダンスという種目は、フィギュアのペアに比べると高度な技術こそないものの、その代わり扇情的である。女性はみんなミニスカートか、腰みののようなものか、ざっくりと割れたスリット。みごとに発達した太腿、踊るたびにこぼれ見えるお尻。BGMのブルース。なんだか、禁酒法時代のアメリカのもぐり酒場でいけないショーを見ているかのようだ。キャバクラなんか行くよりもずっと淫らである。いや、スケベかつ進取の気象に富んでいる北海道人のことだ、きっとススキノに「アイスダンスキャバクラ」が出来ていることに300ムネヲ。
 いっそオリンピックの他の種目もアイスダンスに倣ったらどうか。五輪エンタメ化計画。
・女子モーグル:二回の合計を競う。一回目はミニスカート、二回目はチャイナドレスが義務。むろん、下にアンダースコートを穿くことは大きな減点となる。下にブルマを穿くことは、審査員によっては高得点の可能性もある。
・女子カーリング:競技は原則として現状通りだが、選手は全裸にトイレットペーパーを巻いた姿で登場する。床をモップみたいなもので掃いている横に相手国の男性陣が並び、選手のまとうトイレットペーパーを水鉄砲で攻撃する。
・女子クロスカントリー:競技は原則として男子クロスカントリーと同じだが、服装は体操服とブルマ。山のあちこちに熊やレイプ魔を配置しておく。山奥でひびきわたる悲鳴。むろん、随所に隠しカメラが設置されていることはいうまでもない。
 これで開会式で星条旗をみせびらかすことしか頭になかった現金なアメリカ人もテレビに釘付け。スケベは自由よりも強し。
 ……というようなことをAlterLiveに書こうとしたのですが、やっぱりここに書くことにしました。私にも分別がある。


2月15日(金)
 AlterLiveのコラムを書きました。「フィギュアスケートペアの憂鬱」。どこがコラムやねん、とお怒りのかたも多いでしょうが、そこをなんとか。


2月14日(木)
 ニュース読み日記。

内縁の妻を虐待餓死させた夫、それまでにも三人の女性を虐待、食事与えず
 シートンさんもムツゴロウさんも「飼い慣らしにくい野獣を手なずけるには、まず食事を抜くこと。自分の手から餌を食うようになればほぼ成功」と言っています。女房飼育の鑑かも。でも殺してしまっては元も子もない。

高崎で職務質問から逃げた大学生を交通事故死させた警官を書類送検、大学生の父親友人は警察の謝罪に「納得いかない」と涙
 やましいことがなければ逃げる理由はないだろう。死んだ大学生には同情できない。いくら泣いてもなあ。警察の対応も悪かったんだろうけど。

雪ゴリラ里谷、凱旋帰国
 2ちゃんねる的には「雪ゴリラ里谷多恵、水ゴリラ田嶋陽子、畳ゴリラ田村亮子、歌ゴリラ小柳ゆき、胸ゴリラ小池栄子、政治ゴリラ田中真紀子、盗作ゴリラ田口ランディ」ということになっているとか。そのうち「ゴリラ大戦争」というスレッドが立つという予測もある。ゴリラバトルロワイヤル。ゴリラ興亡記。ゴリラ英雄伝説。

 龍さんとこの匿名雑文祭の用意をしようとしていたら、うちの駄文、ずっと</body>を指定していながら<body>は書いていなかったことに気づいてしまった。いままでひょっとしたら多くの人が読めなかったのではないかと、あらためて恐怖。「あの人怖いから、文句言いづらいんだよねえ」などと思われていないかとさらに恐怖。


2月11日(月)
 AlterLiveのコラムを書きました。「プロ野球の七不思議その2〜キャンプ・オープン戦の怪〜」。ムーアはとりあえずデスタムーアと改名して、バルデスもバラモスに改名すれば子供の人気は集まると思います。


2月9日(土)
 すいませんまだ酔っぱらっていますが、酔っているうちに書いた方がいいと思ったことを書いてしまいます。あとで後悔するかもしれませんが。
 飲み会で「なぜ漫画を描くのをやめたのですか」という問いに「今も描いてます」と答えたのはウソです。今描いているのはイラストだとかカットであり、漫画ではありません。漫画というのは、コマ割りをして下書きをしてペン入れをして消しゴムをかけてトーンをかけて、カラー原稿の場合は水彩を塗ったりエアブラシをかけたりそれはもう手間がかかるのです。しかも失敗したら最初からやり直しです。私は、そんなものより簡単な文章に逃げました。
 とはいっても同級生や後輩は、フォトショップでイラストを描いたり、クイックタイムで動画を描いたり、というほうに行っている人もいるので、これはもう、私が元から文章指向だったと言うことでしょう。
 考えてみれば私は大学に入って最初に訪れたのがSF研究会だったからな。そこで入試問題みたいな入部試験を与えられて、「すいません、来るところを間違えました」といって逃げてきたのだから。漫研ではそんなことはなくて、入部手続きをしたらいきなり屋上で石蹴り鬼のゲームをやって、あまりに居心地がよくて安住してしまった。いま思い出しても、あのSF研究会は腹が立つ。SFエリートという悪い言葉を体現したような存在だった。
 もうひとつ。ええとですね。飲み会で同人誌をいただいて読んだのですが。
 あの。ロリコンでないのにロリコンの真似をする必要はないです。正常な性的指向でいいじゃないですか。漫画の最初だけ三等身で、裸になると八等身というのは、もともと八等身指向ではないですか。それならなんら恥じることはないです。正常なのですから。三等身に欲情する悪しき血を真似ることはないですよ。はっきりいってロリコンというのは、ろくでもないことなのですよ。世間からは爪弾きされるし、はっきりいって犯罪予備軍だし。身の回りに悪しき友人がいるようですが、それを一掃して、新たなる正常な世界へ羽ばたいてみればいかがでしょうか。正常な世界では彼女もできるし、いいことづくめですよ。讃岐うどんよりずっといいです。老婆心ながら。
 ちなみに夜通し飲んでいたために「秘書肉体研修」を見そびれた落とし前は、主賓の肉体でつけてもらう所存です。


2月7日(木)
 今月は知人をネタにしよう月間です。あ、あ、なぜ逃げる。

 京極夏彦をひさしぶりに見たが、太ってきたな。ナルシー入っているやくみつるという感じで、なんか笑える。やくみつるがナルシーじゃいかんだろ。世間も許さないし。


2月6日(水)
 「これ、すっごく美味しいから飲んでみて」などとサッポロ生搾りを勧めにくる友だちよりは、まだしも宗教を勧めにくる友だちの方がマシです。
 かといってうちに宗教を勧めに来られても困りますが。

 武部農林水産大臣と農水省幹部、鈴木宗男に田中真紀子に外務省幹部、雪印食品の幹部にくわえて浜崎あゆみ暴言問題で「コンサートの最前列は関係者貸し切りです」などとヘタな言いつくろいで失笑を買ったエイベックスと、騒動を長瀬ファンのせいにして思いっきりジャニーズを敵に回したテレビ朝日のおっさん。これだけの大物嘘つきが勢揃いすれば、私のごとき小物は赤面して引き下がるしかないわけで。

 それにしても今日のニュースでちょっと気になったこと。雪印食品は当初、政府に買い上げてもらうつもりで買い上げ価格以下の安物国産牛肉を捜したが、それが売り切れていたのでオーストラリア牛肉のラベルを貼り替えたとのことだが。
 それってつまり、他にも安物国産牛肉を買い占めて政府に売りつけようとした(そしてたぶん、売りつけに成功したんだろうな)奴らがいた、ということなんだろうな。ひとの不幸につけこんでひともうけをたくらむ火事場泥棒どもが。


2月5日(火)
 「嘘ばかりついている男にある日懲罰として、これからは本当のことしか言ってはいけない、と申し渡したとしよう。この男はたぶんちっとも困らないばかりか、得たりや応と、彼の嘘をいよいよまことしやかに固める作業に精を出し、今度こそは化けの皮をひんむかれまいぞと烈々たる闘志を真っ赤に燃やすだろう。(中略)しかし同じ男に、これからはどうぞ思う存分嘘ばかりついてごらんよ、と言い渡したとしたらどうか。とたんに彼はハタと当惑することだろう。手も足も出ず、青菜に塩のていたらくで、どうかそればかりはご勘弁と手をすりあわせて拝み伏すにちがいない」
 ということを有名な嘘つきの種村季弘が「贋物漫遊記」で書いている。
 北杜夫の「ドクトルまんぼう航海記」はホラに満ち満ちていると出版当初から評判だったが、中でブレーズ・サンドラルスという詩人が紹介されている。これも当然嘘に違いない、と私はずっと信じていたのだ。彼、ブレーズ・サンドラルス(サンドラール)が実在したことに気づいたのはつい最近のことだ。
 フランスでダダ運動などにかかわり、リルケを殴ったりアポリネールをシメたりしたことで有名な彼は、あるときシベリア鉄道旅行記を書いた。当時のシベリア鉄道はソ連政府に管理されており、おいそれと一般外国人が行ける場所ではなかった。本当にサンドラルスがシベリア鉄道に乗ったのか、友人が問いただしたところ、彼はニヤリと笑って言った。
「おれがシベリア鉄道に乗ったか乗らないかなんて、たいした問題じゃない。おれはみんなをちゃんと、シベリア鉄道に乗せてやったじゃないか」
 渋澤龍彦(彼もなかなかの嘘つきで、エッセイの主旨にあわせて史実をしばしば曲げた)流に言えば、「北杜夫とサンドラルス、東西の嘘つきの巨星が互いにまたたいて孤独な交感をおこなっている」ような素晴らしいエピソードであろう。
 ちなみに嘘をついているときは敬体より常体になりやすいようです。やはり心に不安なものがあるので、それを断定でおし隠したくなるのでしょうね。


2月4日(月)
 浜崎あゆみっていつの間にか国外逃亡してたんですね。おまえは田口ランディか。

 「東京と大阪・『味』なるほど比較辞典」(前垣和義:PHP文庫)を読む。実に面白い。いや、本がではなく。おがんさんが2月3日の日記で書いていることの正反対の読後感を、私は持っていたからだ。
 この本に多分のトンデモが入っていることには異存がない。なんにでもとりあえず結論を出さないと読み物にならない、という事情はあるのだろうけど。
 ただおがんさんは「東の方の食い物をバカにしている関西中華思想すら感じられる」と書いているのだが、私はというと、いっつも東京に軍配ばっかり上げているように感じられてならなかったのだ。大阪の食い物はいっつも大阪ローカル。江戸前はいつも全国標準。その繰り返し。
 巻末の食い物名称の東京大阪対照はちょっとひどすぎる。大阪差別さえ感じられる。大阪人だってきつねうどんは「きつねうどん」と書く。「けつねうろん」は訛って発音しているだけだ。それなら山形県人だって芋煮のことを「んもぬ」と呼んでいることになるのではないか。
 ということで関東人には「大阪にばっかりヒイキして」と思わせ、関西人には「東京帝国主義の権化」と感じさせるということは、この本、意外と公平なのかもしれない。


2月3日(日)
 昨日はくたさん、砕天さんを呼んでカニの飲み会。炭火焼きタラバは身がつまっていてほのかに甘く、毛ガニは味噌たっぷりでうまかった。ミソを食った後の甲羅に酒をそそいで熱燗ってのも。
 いつもながら遊びとなると多忙なくたさんは、この後も友人との飲み会があるといって夕方には帰っていきました。
 私と砕天さんは新宿で飲み直し。夜の七時ごろ出かけていって、想い出横町で焼きトンを食ったことは覚えているのですが、次に気づいたときにはオールナイトの映画館の客席の下で転がっていた午前五時。どうやら「ジェヴォーダンの獣」を見ていたらしいのですが、私が見たのは客席の椅子の足と、前の客がおいていったマクドナルドの袋。ラストで船出するシーンだけはかろうじて見たのですが、なんだってジェヴォーダンに船が登場するのか、まるきり見当がつかない。
 家で呑んでから外に飲み直しに行く、というのは最悪の事態を招くパターンです。ほかにも最悪のパターンはいくつかあるのですが、それはのちの機会に。
 きょうは昼過ぎにめざめ、昨日のカニの殻でつくったカニクリームスープを、くたさんのお土産のよなよなエールと、昨日飲みそびれた旭川空港限定白ワインでいただく。カニやエビの殻っていいダシが出ますね。スープがオレンジ色に染まるし。


2月1日(金)
 映画「ジャンヌ・ダルク」は、最大の興味である、なぜ百姓の小娘がカリスマ性を持てたのか、なぜ素人の小娘が戦術的成功をおさめたか、という部分が結局説明しきれていない感があります。ジル・ド・レの風貌はちょっといいけど。それより、もうすぐ公開される「ジェヴォーダンの獣」のほうが期待できそうです。バルロワはイギリスの謀略説をとっていますが、映画は狼男説を採用しているようですね。


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