魚類にご執心(捏造オチ)
先日、水族館に出かけた。
水族館も変わったものだ。むかしは水族館といえば暗い雰囲気だった。黒っぽいコンクリート作りの建物の中に小さな水槽をいくつもはめ込み、その中で南米の怪魚だとか南ボルネオの毒蛇などを見せていた。じめじめしてトイレとトカゲの臭いがした。
さいきん流行の水族館は違う。建物からして違う。羊羹のような昔の水族館と違い、ナンタラ建築家の手による面白い形の建物だ。収納効率は悪そうだが。
雰囲気も明るい。採光が違う。照明の明るさも違う。でかい水槽に回遊魚を入れて泳ぎ回るさまを見せる。マグロやイワシやカツオなんかが泳いでいるのだ。イルカなんかも泳いでたりするのだ。そんな水族館も昨今の不況で補助金が下りず、入場客も減り、経営が苦しいことが多いと聞く。
そんなことをぼんやりと考えながら魚をぼんやり眺め、説明パネルを読んでいた。
「ギンガメアジ。スズキ目アジ科。インド洋から太平洋のあたたかい海にすむ。大きな群をなしておよぐ。食用」
「カンパチ。スズキ目アジ科。全世界のあたたかい海にすむ。大きなものは2メートルにもなる。とてもおいしい魚として珍重される」
これだけはいつの世も変わらないな、とにかく食おうとするところは、と苦笑しながら進もうとしたが、隣のパネルを見て凍り付いてしまった。「アジ。100グラム150円。
ブリ。100グラム250円(50センチ以下のもの)
100グラム300円(50センチ以上1メートル以下のもの)
200グラム500円(1メートル以上のもの)
ヒラマサ。時価。
(すべての魚は1尾単位でお買い求め下さい)
(ご要望があればその場でお造りいたします)」
さらに隣の海老のケースでは、水槽の上に大きなアームを取り付けていた。どうやら、三百円払うとそのアームを操作し、海老を掴むことができるようだ。いくら不況とはいえ、最近の水族館はここまで来てしまったのか。