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no.118 2005年1月15日 素敵な(私的な)曲目解説〜第12回定期

 今年初めてのこのコーナーの掲載です。本年もどうぞよろしくお願いします。
 さて、明日は吹奏楽団「鷲宮ウィンドアンサンブル」の第12回定期演奏会です。今回も私的に曲目解説を書いてみましたので、ご参考にしていただければ幸いです。
 今日と明日は、あいにくの雪(または雨)模様となる天気予報ですが、これまでの練習の成果を十二分に発揮し、音楽を楽しみたいと思います。


 今年のプログラムの第1部は「ヨーロッパを訪ねて」をテーマに、ドイツ、ロシア、スペイン、イタリア、そしてイギリスの作品を並べてみました。続く第2部では、ピアノ、サックス四重奏、トロンボーン、クラリネットにスポットをあてた作品をお届けします。鷲宮ウィンドが奏でる音楽とその才能を存分に満喫してください。

行進曲「旧友」
 カール・タイケはドイツ生まれ。「旧友」は軍楽隊のオーボエ奏者だった頃の1886年に作曲した彼の代表作です。この後、警察官となって100曲以上もの行進曲を作曲し「作曲する警察官」として有名だったそうです。この話を聞いて思い出すのが、小椋桂。彼も有能な銀行マンとして働きながら、自ら作曲して歌っていました。作曲は理論ではなく、やはり天賦の才能が必要ということでしょうか。話を戻しますが、「旧友」は吹奏楽を経験している者にとっては一度は演奏する有名な行進曲です。クラシック界の帝王と呼ばれたヘルベルト・フォン・カラヤンもベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブルとの録音を残しています。(グラモフォンHCCG-7097)

交響組曲「シェエラザード」
 音楽史上「ロシア五人組」と呼ばれたロシアの大作曲家ニコライ・リムスキー=コルサコフが「アラビアン・ナイト」(千夜一夜物語)を題材に、1888年に作曲した作品です。私が初めてこの曲と出会ったのが、カラヤン指揮のレコード。昨年、今人気のキーロフ・オペラの指揮者ワレリー・ゲルギエフのCD(フィリップスUCCP-1060)を購入し、聴きました。彼の自由に操る指揮は本当にすごい! 楽譜に書いてあること以外のものを読み取り、イメージし、それを音として再現することの大切さを教えてくれます。
 曲は4曲から成り、第1曲「風とシンドバットの船」、第2曲「カランダール王子の物語」、第3曲「若い王子と王女」、第4曲「バグダッドの祭りー海ー難破ー終曲」というタイトルが付けられています。原曲の演奏時間は約45分。でもカーナウが中学生のバンドのために易しく、わずか5分半に編曲してしまいました。おいしいところだけの継ぎ接ぎという感じがしますが、いろいろな要素を学ぶにはちょうどよい長さでもあります。

バレエ《恋は魔術師》より「火祭りの踊り」
 スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャが、1914年から1915年に、「恋の魔術師」というバレエのために書いた全10曲から成る作品です。「火祭りの踊り」は5番目の曲で、ピアノ独奏曲としても演奏されます。今回演奏する吹奏楽版は原曲と同じ長さですが、これも中学生などの若いバンドのために易しく編曲してあります。
《火祭り》は火をたいて神を祭る行事。百科事典マイペディアには「降臨する神の目印、火による浄化、火勢による霊力の強化などの意義を持ち」とも。
 曲は、若い男と恋に落ちた官能的なジプシーの女が、その仲を妨げようとする夫の亡霊を追い払うために、火をたいて踊り狂う場面で演奏されます。

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
 イタリアの作曲家ピエトロ・マスカーニが1890年に作曲した歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の中で演奏される作品で、見事なまでに美しい旋律を持っています。原曲ではその美しい主旋律を弦楽器が、途中からの伴奏をオルガンとハープが演奏しますが、吹奏楽版ではそのすべてを管楽器が担当します。弦楽器の表現を管楽器で行うのは(特にゆったりとしたフレーズの演奏は)至難の業なので、吹奏楽のレパートリーとしてどうかとも思っていたのですが、あえて「美しい旋律を、美しく歌う」ことを学ぶために挑戦します。

吹奏楽のための組曲第1番 変ホ長調
 組曲「惑星」(平原綾香が紅白で歌った「ジュピター」の原曲です)で広く名を知られるイギリスの作曲家グスタフ・ホルストの1909年の作品です。トロンボーン奏者でもあったホルストは、吹奏楽にも精通し、この第1組曲と第2組曲を世に残しました。これらの作品は吹奏楽の重要なレパートリーとして愛されています。それゆえ、今回のプログラムの中心的な作品として練習に取り組みました。
 曲は、シャコンヌ、間奏曲、マーチの3曲から成り、吹奏楽の名曲と呼ばれるだけあって、その豊かな旋律線、軽快なリズム、荘厳なハーモニーは絶品です。

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ラプソディー・イン・ブルー
 「パリのアメリカ人」「サマータイム」などで知られるアメリカの作曲家ガーシュウィンの代表作を、吹奏楽編曲で定評のある真島俊夫がアレンジにした作品です。聴きどころは言うまでもなくピアノのソロですが、木管の美しい旋律と、ブラスにもご注目ください。難しい編曲ですが、気合いで頑張ります。

アニトラの踊り
 ノルウェーの作曲家グリーグが書いた「ペール・ギュント」の中の1曲を、天野正道がサクソフォーン四重奏を主役に抜擢し、エキサイティングな作品にしました。聴きどころは、もちろんソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4本のサックスです!

ミスティ
 多くの奏者や歌手により、いろいろなバージョンで演奏されるジャズ・バラードあるいはラブ・ソングの定番。ピアニストのガーナーが、ニューヨークからシカゴに向かう飛行機の中で、霧深い景色を見て生まれた曲だそうです。角田健一の編曲では、吹奏楽をバックに、甘美なメロディーをトロンボーンが奏でます。

ベニー・グッドマン・メドレー
 昨年、映画「スウィング・ガールズ」(女子高生がなぜかビッグバンド!)が上映され、私も娘と一緒に観に行きました。抱腹絶倒のストーリーでしたが、ベニー・グッドマンの代表作「シング・シング・シング」も演奏していました。
 曲は「その手はないよ」「サヴォイでストンプ」「フライング・ホーム」「メモリーズ・オブ・ユー」「ビューグル・コール・ラグ」「シング・シング・シング」が綴られています。聴きどころは、もちろんクラリネットのソロ、そして躍動感のあるドラムス。

(解説 江川善裕)

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