Menuへこのコーナーの目次へ

no.85 第9回定演のための素敵に(私的に)曲目解説

 いよいよ、鷲宮ウィンドアンサンブルの定期演奏会です。昨年の第8回定演、サマーコンサートに引き続き今回も私的に曲目解説をいたします。

 まず、今回の選曲のポイントは、昨年の定演で演奏した「波の見える風景」(真島俊夫作曲)が、あまりにも好評だったものですから、同じような吹奏楽のオリジナル曲をしっかり練習して演奏しよう、との考えに基づいています。また、日本の作品と、西洋の作品を並べ、対比させたいとも思いました。(そう、候補曲がそろったのは、4月でした。取り組みは早かったのです!)さらに、新しい取り組みとして、ナレーター(語り)と吹奏楽の作品を加えました。実は、私がずっと前からやりたかった作品です。

 それでは、曲目の解説に移りましょう。

「イギリス民謡組曲」(Ralf Vaughan Williams)
 作曲者の名前ですが、「レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ」と読みます。"Ralf"は「ラルフ」または「レイフ」と発音しますが、ヴォーン・ウィリアムズは「レイフ」です。
 このヴォーン・ウィリアムズは、イギリスの作曲家、教育者、指揮者で、20世紀のイギリス音楽の復興の中心的な人物でした。音楽学校では「惑星」を作曲したホルストと同期で、お互いに作品を批評しあい、向上を図ったそうです。また、作曲を極めるためにベルリンでブルッフに、パリでラヴェルに作曲を師事しました。ついつい、他国の模倣になりがちですが、ヴォーン・ウィリアムズは、自国の音楽を再生し作曲することを自覚したようです。そんな中から、イギリスの民謡を素材にした「イギリス民謡組曲」が生まれました。
 曲は、「行進曲 日曜日には17歳」「間奏曲 美しい我が子」「行進曲 サマーセット地方の民謡」の3つの楽章で構成されています。1923年にミリタリー・バンドのために書かれました。

「亜麻色の髪の乙女」(Claude Debussy)
 フランス近代音楽界の巨匠、クロード・ドビュッシー。独特の色彩と響きは、まさしく印象派そのもの。ダイナミクス(強弱)も、p、mp、mf、fの中間のものを求めるなど、繊細でかつ感性に訴える表現に富んでいます。
 この「亜麻色の髪の乙女」は「ピアノのための前奏曲集第1卷」に収められています。つまり、ピアノ独奏曲。それを、吹奏楽に編曲しての演奏になります。演奏の参考までにと、オーケストラ演奏のCDを探してみましたが、どれもこれもピアノ演奏ばかり(当然ですが)。あちらこちら見て回って、ようやく、ボストン・ポップス・オーケストラのCDを探し出せました。吹奏楽の演奏となると、ほとんど無いようです。

「フラッシング・ウィンズ」(Jan Van der Roost)
 この作曲者の読み方も、ちょっと難しいですね。「ヤン・ヴァン・デル・ロースト」と言います。ベルギー北部(フランダース地方)生まれの作曲家で、実は私と同じ歳。日本では、この「フラッシング・ウィンズ」のほかに「プスタ」「スパルタカス」「オリンピカ」などの吹奏楽作品がよく演奏されています。
 曲は、ブラスセクションのファンファーレに始まり、3/4拍子の中での6/8拍子的なトランペットのテーマ、6/8、3/4、 5/8などの変拍子でつながれ、中間部の旋律が歌われます。その後テーマに戻り、そして終結部へ。
 華やかで、爽快で、吹奏楽ならではの作品のひとつと言えるでしょう。

「吹奏楽のための木挽歌」(小山清茂)
 今回のプログラムの中心的な作品として考え、早くから練習に取りかかった作品です。1曲めのヴォーン・ウィリアムズと同じく、小山清茂は自国の民謡を素材に多くの作品を書いています。この「吹奏楽のための木挽歌」は、長野県出身の小山清茂が、九州地方の労働歌を素材にオーケストラのための変奏曲として作曲したものを、作曲者自らが吹奏楽用に編曲したものです。
 曲は、「主題」「盆踊り」「朝の歌」「フィナーレ」の4部で構成されており、締め太鼓、やぐら太鼓、あたり鐘などの日本の打楽器を使います(今回は、小太鼓、大太鼓、カウベルで代用します)。最初に、木を切る鋸の音の上で、テナー・サックスが、伸びやかで、力強い旋律を奏でます。やがて、太鼓のリズムに横笛が絡み、盆踊りが始まり、さまざまな楽器で受け継がれ、そして祭りの翌朝のきらきらとした様子が描かれます。トランペットと打楽器の連打をきっかけにフィナーレが始まり、力強く、雄大な終幕へと結びます。

「笛吹きパンの物語」 (George Kleinsinger)
 「みなさん、吹奏楽がどうやってはじまったか知っていますか? それは、数千年も前のギリシャでのこと、パンという名前の、ひとりぼっちの羊飼いがいました」というナレーションと共に、吹奏楽で使われている楽器を木管楽器、金管楽器、打楽器の順で紹介していきます。
 前文にも書きましたが、いつかはこの曲をやりたいと思っていました。きっとみなさんにも気に入っていただけるものと思います。話のストーリーは聞いてのお楽しみ!

 第2部で演奏するそのほかの曲は、映画音楽です。もちろん、みなさんご存知ですね? でも実は、わが鷲宮ウィンドの構成メンバーの世代がちょっと離れているため、かの「ロミオとジュリエット」を観たことのある人は、数えるだけしかいないんです。ああ、みんなにあの美しく清らかなオリビア・ハッセイを見せてあげたい! と言う私も「タイタニック」の新バージョンは、ついこの間テレビで観たばかりです。

(解説 江川善裕)

2002/01/11

Menuへ