包括根保証した場合の解約
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Last updated 2011.4.7mf
相談:保証人をやめたい
友人に頼まれて、私は、友人が経営する建築会社が銀行借り入れをする際の連帯保証人になりました。
契約書では、「消費貸借契約、手形貸付、手形割引などの取引から発生する一切の債務を連帯保証する」となっています。保証人は、友人と私です。
この友人の会社は、現在、業績が悪化している様子です。私は、保証人をやめたいのですが、できますか。
相談者は、弁護士事務所を訪れました。
回答:保証人が解約できる場合がある
継続的契約から発生する一切の債務を保証する、包括根保証は、保証の期限や極度額を定めていません。そのため、根保証人にとって責任は重く、過酷です。特に根保証人が第三者である場合は、保証人にとって包括根保証は責任が過重です。
判例は、包括根保証を有効と認めています。他方、判例において、次のような場合には保証人側からの解約権を認めるなど、信義則により、包括根保証人の責任を合理的な範囲に制限 しています。
- 任意解約権
保証契約を締結した後相当の期間が経過したとき、解約できます。
- 特別解約権
保証契約時に予期できなかった特別な事情が生じたとき、例えば主たる債務者の営業状況が急激に悪化したとき、解約できます。
結局、包括根保証契約を締結して、相当な期間(3年くらい)が経過するか、債務者の営業状況が急激に悪化したときには、債権者の承諾なしに、保証人の側から一方的に解約できるのです。
債務者である会社の代表者など(社長など)は、自社と債権者間の取引の状況を知り得る立場にあるので、任意解約権も、特別解約権もないでしょう。ただし、解任された後は解約権があるとの下記判決があります。
今すぐに、あなたから銀行に対し、 内容証明郵便にて、根保証契約を解約する旨の通知をすべきでしょう。
民法改正
平成16年12月1日公布された「民法の一部を改正する法律(平成17年4月1日施行)」により、貸金などで、個人が保証人の場合、極度額を決めない包括根保証は無効となりました(民法465条の2第2項、法人が保証人である場合を除く)。
条文
(貸金等根保証契約の保証人の責任等)
民法第465条の2
@一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)
であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等
債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保
証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの
及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、
その履行をする責任を負う。
A 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
B 第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
判決
- 平成11年3月31日東京地方裁判所判決(金融法務事情1573号48頁)
代表取締役が経営する会社のために包括連帯根保証契約を締結した後、代表取締役を解任された場合に、その後右会社の負った債務につき、信義則上、債権者が右代表取締役に対し保証責任を追及することが許されないとされた。
- 大阪高裁平成8年6月13日判決(金融商事判例1011号17頁)
包括根保証契約に基づく連帯保証人に対する履行請求が、保証契約締結から10年余も経過している等により信義則上許されない。
- 平成6年12月6日最高裁判所判決(判例時報1519号78頁)
信用組合取引約定により負担する現在及び将来の債務の支払を確保するため根保証契約と根抵当権設定契約が同一の当事者間で同時に締結された場合に、根保証契約の保証の限度額が明示されなかったとしても、根抵当権の極度額が債務の額を具体的に想定した上でその範囲内で抵当不動産の担保価値を把握すれば足りるとして定められたなど判示の事実関係の下においては、右根保証契約の保証の限度額は右根抵当権の極度額と同額であり、かつ、両者は併せて右同額の範囲内で債務の支払を保証又は担保するものと解すべきである。
- 昭和42年1月31日最高裁判所第3小法廷判決(判例時報472号15頁)
1、継続的取引契約に基づいて生ずる債務のため期間の定めない根抵当権を設定したいわゆる物上保証人は、その後著しい事情の変更があつた等正当の事由があるときは、当該根抵当権設定契約について、現存被担保債権のみを担保する通常の抵当権とする意味における解約告知をすることができるものと解すべきである。
2、手形割引貸付契約に基づいて生ずる債務のため期間の定めのない根抵当権を設定したいわゆる物上保証人の予期に反し、その後主債務者の営業状態が悪化して倒産の危険さえ感じられるようになり、右物上保証人の将来の求償権の行使に多大の支障をきたすおそれも生じた等判示の事実があるときは、右根抵当権の設定後わずか1月半余を経たにすぎないとしても、前項の解約告知をするについての正当の事由がある場合にあたると解するのが相当である。
- 昭和39月12月18日最高裁第二小法廷判決(判例時報399号31頁)
本件のごとき期間の定めのない継続的保証契約は保証人の主債務者に対する信頼関係が害されるに至つた等保証人として解約申入れをするにつき相当の理由がある場合においては、右解約により相手方が信義則上看過しえない損害をこうむるとかの特段の事情ある場合を除き、一方的にこれを解約しうるものと解するのを相当とするとし、挙示の証拠により、被上告人は治の叔父でこれまでも同人のために多額の出金を余儀なくされたことがあるのであるが、上告人に対し前記保証をなすに際し、治は被上告人に対し、自分が上告人との取引再開後同人から仕入れる小麦粉の代金はその各翌月の五日までに被上告人方に持参することを約していたのにかかわらず、これを再三怠り、そのために被上告人自身の出金が相当の額に達したので、被上告人として前途に不安を感じ解約の申入れをするに至った事情を認定判示し、このような事情のもとでは被上告人として本件解約の申入れをなすにつき相当の理由があつたというべきであり、他面上告人側にも前示のような特段の事情はないものとして、被上告人のなした本件保証契約の解約申入れを有効と判断したことは、正当として是認できる。
2004.10.11