相談:酒気帯び運転で実刑判決
私は、民間会社の従業員です。
労働組合があり、組合員の事件については、普通は、組合の顧問弁護士に相談するのですが、今回はそれができません。最近は、似たケースが多発しているため、社会的にも、取引先から問題にされかねない状況にあり、会社および労働組合ともに、困っています。
というのは、酒と車が好きな従業員が結構いるのです。今回相談したい従業員は、酒気帯び運転を繰り返し、この5年間に4回も警察に逮捕されました。
初めは、略式裁判で罰金刑を受けましたが、平成20年1月に3回目に捕まった際には、正式裁判となり、懲役3月執行猶予2年の判決を受けました。
その後、本人は平成20年8月(執行猶予中)に再び酒気帯び運転で捕まってしまい、平成20年12月28日に懲役2月の実刑判決を受けました。実刑判決を受けて初めて本人は、ことの重大さに気付き、控訴したところです。
私は、先日の裁判の日に傍聴に行き、弁護人(弁護士)に会いました。弁護人は、「実刑判決は仕方がない」と言い、あまりやる気のない様子でした。私は、弁護人に対し、不信感を持ち、弁護人を変えなければと思いました。本人の両親は素朴な農家の方で、今回の判決を聴き、どうしたらよいのか途方に暮れています。
組合としては、会社側に対し、 解雇をしないよう求めていますが、それ以上のことは要求できない状況です。
本来であれば、組合が弁護士を紹介するのですが、前述の理由で、今回は、それができません。
本人の両親は、お金がかかってもいいから別の弁護士を捜し、依頼したいのです。労働組合ですので、「イデオロギー色の強い弁護士」では問題があります。
何も気にせず弁護士を捜せば良いのでしょうか。 何か良い方法がありませんか。 次回の裁判対策についても教えてください。
回答:情状面での立証にかける
弁護士を捜すためには、弁護士会 における 法律相談 を受けて、その担当者(弁護士)に依頼するか、担当者が駄目なら他の弁護士の紹介を頼むこともできます。勾留されているのでしたら、接見に来た当番弁護士を弁護人に選任する方法があります。
酒気帯び運転の法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です(道路交通法65条1項、117条の2の2、1項)。最初は、罰金、次は執行猶予付きの懲役、3回目は実刑が、普通の順序です。
従って、本件では量刑としては、執行猶予中の再犯ですので、通常は、実刑と思います。執行猶予が付く可能性は低いです。しかし、「情状特に酌量すべき」ときは、再度の執行猶予があります(刑法25条2項)。一審実刑、控訴審執行猶予の例も多いで、控訴した方がよいでしょう。
大切なことは本人に酒気帯び運転の危険性を認識させることです。この認識がないため本人は何度も同じ行為を繰り返すのです。誰が弁護人になっても、その点を本人に認識させる必要があります。事故を起こして被害者に迷惑をかけた場合のことを考えねばなりません。酒気帯び運転は、反社会的行為であることを認識させねばなりません。
本件は犯罪事実については争う余地がありませんから、弁護活動も情状面に力を注ぐことになります。
酒気帯び運転は被害者がいない犯罪ですので、被害者と示談ができません。そこで、情状を良くするために、法テラス などに10万円ないし30万円程度を寄付し、その領収書を証拠として提出し、贖罪の意思を表明することなどが行われています。さらに、情状証人として、本人の父あるいは会社の上司などが出廷し、「将来の監督および再犯防止」などにつき証言することが必要でしょう。