2004.5.30OA/FM COCOLO
Far East Satellite #87

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 えー、皆さんこんにちは。1か月ぶりのご無沙汰です。HEATWAVEの山口洋がお届けするFar East Satellite。今週はですね、皆さんももうご存じかと思いますが、我々が音楽を聴いていく上で育てていただいた輸入盤がですね、買えなくなるかもしれないという末恐ろしい法律が通りつつあるということで、本日は輸入盤特集兼インディペンダント・レーベルから出たレコードの特集ってのをしたいんですが、なぜそれをやろうと思ったかというとですね、番組のスタッフから以下のようなEメールが僕に送られてきたので。

 通常大体この番組をやっていて、ま、僕もだいぶ丸くなったとはいえ、いつも大体怒る役というのは僕の役でですね「これはおかしい!」とか言って怒ってるんですけど、今回の場合は僕よりもスタッフのほうが怒ってたというところが非常にあの、僕としては嬉しいことがありまして、彼らには内緒で、僕が彼らが送ってくれたEメールをプリントアウトして持ってきましたので、彼らの気持ちを代弁すべく読みたいと思います。いいですか、スギヤマさん? 聞いてますか?

 これはディレクターのスギヤマくんから、まず、来たメールなんですが、えー、「次のFar East Satelliteは輸入盤特集をしたい」という文章がありまして。アツいです。読みます。えー、できるだけスギヤマくんの口調に近い感じで読みたいと思います。

「もうハッキリした。Love and Hateだ。Love(愛)は音楽へ、Hate(憎悪)は音楽業界に。CCCD=コピーコントロールCDの話が出る前からイヤだった。胡散臭いなぁとか、音楽ナメてるなぁとか、『あいつらいい加減にしろ!』と思うことが多かった。ケンカしたこともあった」

 ほう、スギヤマくんケンカするんだ。ケンカやめようね。

「細かいケンカは今でも日々続いている。自分も音楽業界の中にいるくせに。でも、大体僕が音楽業界と初めて接点を持ったのは、RCサクセションの『カバーズ』発売中止に反対して、東芝EMIに集めた署名を持って行ったときだ。音楽が好きならどうしてそう考えるの? あるいは、音楽が好きならどうして考えないの? ということばかりだったこの15年。輸入盤規制の問題で僕は本気に頭に来た。音楽は国境を越えると思ってた。『想像してごらん、国境なんて無いと』とジョンは歌った。でも、日本は鎖国するそうです。音楽業界から自ら進んで。という状況にですね、僕らは輸入盤で育ってきたじゃないですか。日本盤なんて高すぎて、少しでも安い輸入盤を探して聞いてたじゃないですか。日本盤が出るより早く聞きたくて、輸入盤を買ってたじゃないですか。輸入盤屋さんの『知らない世界がここにたくさんある』と思える空気が好きだったじゃないですか。極東ラジオは、過去(特にDJのポール・フィッシャーは)、日本盤なんか出るわけないというような輸入盤で、世界の音楽を紹介してきてくれたじゃないですか。そこらへんを番組で語っていこうよ、という特集です。イギリスでもアメリカでもアイルランドでもブラジルでも、世界中どこの国の音楽でも、山口洋が子供の頃からこれまでに輸入盤で知った素晴らしい音楽をかけて、話していきましょう」

 というアツい、スギヤマくんからのメールです。ちょっとグッときました。続いて、番組スタッフのサトウくんなんですが、僕は彼が怒っているのを見たことがありません。しかし、文章は怒っています。えー、サトウキロクくんの案「インディペンダント特集」。

「ここ最近の輸入権の問題。耳に入るニュースを聞けば聞くほど、僕も暗澹たる気持ちになります。もちろん、輸入盤が手に入らなくなるかもしれないことも非常にイヤで怖いのですが、今提出されている著作権法改正案に反対している立場の人にも『メジャーな洋楽さえ聴ければオッケー』みたいな人が少なからずいたりして、そういう連中は、例えば東アジアからの還流盤や輸入盤にはまったく気を払ってなくて、好きな洋楽を聴くためならその洋楽に属さないような地域の音楽を犠牲にしても構わない、という考えが見え隠れしているのがものすごく腹立たしくて、本当にもう『ふざけるなよ』と叫びたい気分です」

 そんな顔には見えないけどなあ。ハッハッハッハ、顔に似合わない。本当に怒ってんだろうな。

「実際、輸入権なるモノが誕生したとしたら、五大メジャーにとどまらず……」

 五大メジャーっていうのは、その、アメリカ系の、世界の音楽市場を牛耳っている5つの大きいメジャーの会社っていうことですね。

「五大メジャーにとどまらず、インディペンダント・レーベルや英米以外の地域の現地レーベルからリリースされた作品までも手に入るのが難しくなる状況になってもおかしくないわけ、で、果たしてそんな事態になった日を想像するだけで薄ら寒くなります。東アジア・ブラジル・アイルランド・北欧・西アフリカ、世界中に優れたポップスがあっても日本のメーカーがリリースしない限りレコードが手に入らない。番組スタッフのスギヤマさんも書いているけれど、これは鎖国といっても過言じゃない状況です。ということで、今回は……」

 えー、これは、読めないですね。

「エフ・ユー・シー・ケーな五大メジャーや、RIAA……」

 これはたぶん全米レコード協会だと思います。

「には背を向けて、インディペンダントの場所で活動しているミュージシャンを特集したいです。これまでも番組で紹介してきたPaul BourellyやJonathan Richman、Andy White。日本国内だったら、渋さ知らズにゆらゆら帝国など、インディーズだって当然素晴らしいアーティストはいるし、佐野元春さんや座禅ボーイズのようにインディペンダントから作品をリリースすることを選んだアーティストもいます。山口洋がかつて海外のインディペンダント・レーベルから作品をリリースした話なども交えて番組を進行する、というのが僕の案です」

 彼らと番組をどのくらいやってきたか、僕は覚えてないんですが、おそらく3年? 4年? わかんないですけど。こんなに明確に「これがやりたい」という意志をですね、ふたりからいただいたことはなくて、これは、あれだけ怒らない彼らがこれだけ怒っているっていうことは……ということで、まあちょっといろいろ僕も忙しかったんでこの問題について深く考察するヒマがなかったんですが、送られてきたURLとか全部辿って問題を見ていたらですね、えー、僕の中にもこう、彼らとはちょっと違う種類の怒りなんだけど、こみ上げてくるものがあって、ようするに音楽業界自体が自分たちで、その豊かな音楽が伝わってくる土壌の首を締めているという状況にですね、ちょっと物申したいところがありまして。

 まあでも、物申すというよりも音楽番組なんで、いい音楽をかけていけば伝わるというところはあるし、基本的に僕は音楽の持っている豊かな力を信じているので、まあちょっとした話をしながら、独立して音楽をやっている人たちの音楽をかけつつ、自分の経験などをふまえて今日は1時間やっていこうと思うんですが。

 僕がひとつ思うのは、今世の中でいろんな問題があって、まあイラクに自衛隊が行った問題とか、まあいろいろあるわけですけど、ずっとこう居心地の悪さっていうのを僕も感じていて、ついに音楽まで来たかっていう実感が正直に言ってあるんですが、一番僕がリスナーのみなさんに伝えたいことは、これっていうのはすごく自分とは関係のない遠いところで悪いヤツがいて、こういう問題を起こしていて、「ヤバイぞ、こんな法律が通っちゃうぞ」っていうときに反対しても間に合わないからやっぱり世の中が悪いとか、政治家が腐っているから悪いといった種類の問題ではなくて、この世の中にですね、自分たちが参画して生きている以上は、つまりこういうバカチンな政治家をですね、自分たちが選んでいるという意味からいえば「これは自分たちが巻き起こしている問題である」っていうふうに、いろんな問題を見てて思うわけですね。

 そんで、だからといって「じゃあ、俺たちに何ができるんだ」っていうふうに、よくこう飲み屋で議論になったりするんですけど、まあ一番簡単なのは「あなたには選挙権があるんだから、選挙に行けばいいじゃん」ていう話なんですけど、そういうことではなくて、例えば僕はこういうラジオ番組を持たせてもらっている。それから、ギターを持って歌を歌うことができる。その中で自分たちがこう、信じているものというものをですね、140パーセントぐらい継続してやり続ける。そういう、こう、例えば八百屋さんをやっている人は、本当に自分がこの野菜がいいと思うものを売って、時間はかかるかもしれないけれども、そういうでっかいループのようなものを作っていくっていうことの、こう、あきらめない、継続していく力じゃないかっていうふうに僕は思っています。ですから、そんな1時間になればいいなと思います。

 まず最初に、ここらでちょっとカタい話になったので、音楽に行こうと思うんですが、僕もいろいろあったんですが、まあ、メジャーデビューという……嫌いな言葉ですけど……1990年にするまでにはいろんないきさつがありまして、えーひとつだけちょっとわかりやすい話をしておこうと思うんですが、まあ、自分たちで当時アルバムを出すためには、いわゆる今とは違ってロック・コンテストのようなものに、九州に住んでる僕らは出るしかなくて。

 で、僕らもまあ、それ相応の賞をいただいたわけですけど、まあ、僕らのね、そのコンテストの前の年のグランプリがザ・チェッカーズという人たちで、僕らの年には彼らがゲストで来てたんですけど。なんかこう音楽に優劣をつけるということがですね、「君たちはグランプリで、君たちは準グランプリ」みたいな「なんやソレ!」というのを、賞をもらっておきながら僕らはやめようという、「おかしいぞこれは」っていうふうに思いまして、まあ、そこから紆余曲折の旅が始まるわけですけど。

 そんなときにですね、レコード会社と呼ばれる人たちが、なんか、チラホラと目の前に出てきて、でまあ、いろいろヒドイめにもあったわけですけど、一番僕が衝撃的だったのは、今でもあるレコード会社の人間が僕の所に来て、当時僕は3人かな、でバンドやってたんですけど「君に話がある。君の才能は素晴らしい。でも、残りのメンバーはいらないから、一応あの、コンテストっていうのをレコード会社がやるんで、そこで君たちにグランプリをあげることはもう決めておくんで、一応出て欲しい。で、グランプリにして残りのメンバーはクビにしろ」っていうようなことを言われまして、まあ、九州人の僕としては「お前、貴様、この、玄界灘に投げ込むぞ!」みたいな気持ちがあって、当然そういうことやるわけなくてですね、まあ、そういう人とはもう一生お目にかかりたくないというようなことがたくさんありまして、なんかこう、音楽やりたいだけなのに……ま、確かに音楽を商売にしなきゃいけないんだけど、「なんだかなぁ」と思うことがありまして、そういうことが多々ありまして。

 そんで当時イギリスでマンチェスターっていうとこでですね、工業都市だったんですけど、そこで「自分たちの音楽は自分たちで出そうじゃないか」っていうムーブメントみたいなものができて、そういうふうにやれたらいいなと思ったとこ……最近ね、24Hours Party Peopleだっけ? っていう映画で、今ドキュメントみたいな映画になりましたけど、そこで盛り上がってるムーブメントみたいなものに非常にあこがれて、なんとか僕たちは自分たちが生まれた九州というところに住んで、この、Factoryっていうイケてるレーベルがイギリスにあったんですけどね、ここからデビューしたらあのバカども(前述のスカウトマンら)をギャフンと言わせてやれるんじゃないかと思って、まあFactoryっていうレーベルにせっせとテープとか送ってたんですけどね。まったく梨のつぶてじゃなかったんだけど、やっぱり契約問題で僕らが英語をキチッとできないとか、まあいろんなことがあって、流れたんですけど。

 いまだにそういうその、Factoryのやってる「これおかしいじゃん」っていう反旗をひるがえした感じとか、自分たちが独立して音楽をやっていく感じというのがすごい好きで、今聞いてもですね、その音楽の中にそういう気持ちが込められてると思うので、今日は1985年にJoy Divisionというバンドの、その流れでNewOrderというバンドになったんですけどね、そのバンドがリリースしたLOW-LIFEっていう、このタイトルがまたイケてるんですけど。えー、Factoryのレーベルから出てるNewOrderという一番有名なバンドなんですが、僕らにすごい本当の意味で元気とかをくれたNewOrderのラブビジ……読めないんですよコレ、Love Vigilantesっていう曲を、1曲聞いていただきたいと思います。どうぞ。

♪NewOrder/Love Vigilantes

 はい、NewOrderが1985年にFactoryっていうマンチェスターのレーベルからリリースした、LOW-LIFEっていうアルバムの中から、1曲目に入ってる曲を聴いていただきましたが。えーっとね、これから、1985年から14年くらい経過したときに、僕がアルバムの曲を書いていて、で、今のかけた曲(注:アルバム「LOW-LIFE」のこと)の中にですね、I Want See My Familyっていう僕にも聞き取れる英語があって、で、音楽作っててMy Familyというテーマで「なんでロックンロールでマイ・ファミリーやねん」て言われてもそういうテーマだったんで、なんか花瓶の中にささってる、こう花瓶が割れちゃって水が漏れて花が枯れていくっていうイメージで家族についての歌を書いていてですね、「ん?」と気が付いたら「これって、あのNewOrderのアレじゃん」とか思って、14年後に僕にですねフィードバックしてきたりするものがあるんですよね。

 それ、確か僕はアルバムにちゃんと「この曲(I Want Shee My Family)があったから、僕はこの曲を書いたのでありがとう」っていうクレジットはしたと思うんですけど、そのようにこう、細胞の深いところに刻まれていった音楽っていうのは、すごくそこから自分のいろんな経験とかも相まってなんか音楽になって、また再び出て行って……ということがあるので、一番そういうその、目で見えるようで見えないようなリレーションシップみたいなものをですね、あとはキチッとそれをリスペクトすることを忘れずにやっていけたらいいなっていうふうに思っていますし、まあその、そういうことをキチッとリスナーの人とかレコード買ってくれた人にも伝えていければいいなっていうふうに思います。

 今音楽業界で問題になっているCCCDの話にしてもそうなんですけど、僕らが若い頃どういう音楽の聴き方をしていたかっていうと、当然高校生ぐらいのときはすごく音楽を聴きたいんだけど、当時アルバムが2500円くらい…アナログ盤ですけどね…したと思うんですけど、とてもじゃないけど2500円のものをブルジョワではないですので僕らは買うことができなくて、いろんな情報網を…今みたいにインターネットとかもありませんし…とにかくいろんな人に話を聞いて、まあ、レコード屋の兄ちゃんに詳しく話を「ちょっと聞かせてくれ」とかっつって、その日に大体……月にですね、僕らの福岡市内の学生っちゅうもんは月に1枚しか買えないわけで、そんでそれでも音楽好きの友達が10人くらいいたりすると、「お前はコレ、お前はコレ、じゃ俺はコレね」って言って10枚ぐらいをうまく割り振るとですね、ダブらずに買うと月に10枚の音楽が聴けるわけですよ。

 その時にも、当然MDなんていうものはありませんけども、何とか自分の手元に残したいので非常に安いカセットテープを買ってきてですね、それに録音して、10枚のアルバムが僕の血肉となると。そんで、授業なんて当然面白くないので、自分のその、大体授業が45分だったかな、45分間中にですね1曲目からイントロも曲間も端折らずに脳味噌の中で再生すると、1枚のアルバムが終わった頃にはキーンコーンカーンコーンって「やった、やり過ごしたぜ」っていう。で、その中で僕らは音楽をイメージするっていうトレーニングを、自然な流れの中でやってたっていうのがあって。

 確かに、僕らがそういうレコードの買い方をしたことによって、10枚売れるはずのものが1枚しか売れなかったのかもしれないけども、そういうときにもちろん僕らはそのとき著作権ていう意識なんかはないわけですけども、こうやって僕らが大人になったときに「あ、こうやってミュージシャンにこれだけの印税ってものが入って……」っていうときにですね、例えば今いろんなふうに音楽をコピーして、やっぱり僕も確かに、正直に告白しますけどCDからCD-Rに焼いたことはあります。ありますけど、CD-Rに焼かれたものとCDそのものっていうのはですね、僕の中で何かが決定的に違っていて、好きなミュージシャンのアルバムというのは必ず自分でお金を出して買う。で、僕の場合は、別に対訳とかが付いてなくても全然平気なので、というか、僕に聞こえてくる英語だけでも、僕が間違って理解していてもそこのほうが好きなので、僕はほとんど日本盤というのは買わないんですけど。

 そういうふうにやっぱり、自分でもそうしようと思うし、僕のミュージシャンの中でもとんでもないレコードの買い方してるヤツも確かにいますけどね、誰とは言いませんけど。だけど、音楽が本当に好きな人間っていうのはやっぱり、自分でその、自分の働いたお金でCD屋さんに行ってそれをゲットして……っていうような意味で言えばですね、僕にとってやっぱりCD-Rで持っているものと、CDで持っているものっていうのは決定的に違うっていうところがあるので、そういう意味では今こういう問題の時に、僕ら音楽の作り手の側がCCCDというものにして、コピーすることを何とか阻もうとしてというよりかは、もっとその根本的にある10年20年経っても色褪せない音楽というものを長い目で見て一所懸命作っていくことが一番のそういう解決になるのではないかというふうに……僕はまあ、何でも性善説なので、「そんなに甘くないよ」って確かにCDの売り上げが落ちてるの僕は知ってるし、身をもって感じているところもあるんだけども、そういうふうに思わなかったら僕はこの仕事というか、ま、この趣味って言ってもいいんですけどそういうことやってられないんで。

 かつて新聞というのがメディアの代表みたいなときに、テレビが現れたときに「これでもうテレビが出てきたら新聞は廃れる」って言われたけども、キチッと新聞というメディアは生き残っているわけだし、そこにしか変えられないものっていうものがですね、僕には絶対にあると思うので、アナログ盤からCDになったときも「アナログ盤は絶対に死ぬ」って言われたんだけど、まあ、クラブやなんかでアナログ盤ていうのもずっと生き残ってるし、僕も捨てられないアナログ盤っていうのはずっと持ってるし、そういうところをですね、本当に音楽作ってる側が一番大事なことは、プライオリティの中で一番大事なことは何なんだっていうふうに思ってやっていけば、そんなにひどい世の中にはならないんじゃないか、というふうに僕は思います。

 それでは次もですね、インディペンダント・レーベル。当時僕が福岡にいて、こんな音楽をこんなところから出せたらカッコイイじゃんて思ってた音楽なんですけど、たぶん80年代の前半のほうですね。これはイギリスのGlassっていうレーベルから出てる、もう、バンドの名前が好きで、Jazz Butcherっていうんですけど。訳すとなんだろう、ジャズ肉屋。という人たちがやっているBig Saturdayという名曲です。どうぞ。

♪Jazz Butcher/Big Saturday

 はい、僕のアナログ盤インディペンダント・コレクションの中から……ブチブチゆっててごめんなさいね、Jazz ButcharでBig Saturdayでした。

 当時、僕がまだ二十歳くらいのときにですね、福岡にジュークレコードっていう、今でもありますけど素晴らしいレコード屋さんがあって、本当にそういう素晴らしいレコード屋さんがあった県が僕らが育てられたっていうところがあって、そのジュークレコードのマツモトさんっていう、えっとまあ、Sheena & The Rocketsの鮎川(誠)さんと同世代の方なんですけど。怖くてしゃべりかけられなかったんですけど、レコードに必ずコメントが書いてあってですね、「これは一家に一枚!」とか書いてあるわけですよ。んで、そういうことを……何だろう、あの、福岡市の天神っていうところにあるんですけど、僕は東区っていうところに住んでて。そのバス代で、たぶん200円くらいだったのかな? バス代200円分をケチって歩いて買いに行って、マツモトさんに「今日こそは、ブルースのあのことを聞いてみよう」と思うんだけど怖くてしゃべりかけられなくて、で、1日中そこのレコード屋さんにいて、わずか2枚くらいのものを買って帰ってくるわけですけど。

 そんなこんなで僕もこんなことをやっていると、つい最近マツモトさんとかにお会いして飲み屋で話すようになってですね、「マツモトさん怖かったですよ、声かけられなくて」とかっつって。でも、彼と話してて僕は「本当にあなたみたいなレコード屋さんがいたから僕は今の自分があると思ってるし、そういう感謝の気持ちがあるんだ」って言ったら、彼が言ったのは「そうやって自分が一所懸命なんとかいい音楽を伝えたいと思ってきて、こうやって僕(山口洋)のようなミュージシャンが育ったのの背景のちょっとしたところに自分がレコード屋をやっていたっていうことがあるんだったら、それは僕の本望だ」っていうふうに彼が言ってくれたりするところがあってですね。

 今や、例えば彼はそうやってまだ今の世代に音楽伝えていくために、いまだにレコードコンサートみたいなのをやってるんですけど。「じゃ、アイルランドの特集やるときに、山口くん来てよ」とか、あるいは「ジュークレコードのアイリッシュの棚のところは、ちょっと山口くん、ちゃんと見て!」とかっつって言われて、「そんな! マツモトさんのレコード屋さんの棚、僕が触れるわけないじゃないですか!」っていうのがあるんですけど、何かそういうふうにこうすごく、今話した話がたぶん、えーと20年ぐらいの間の話なんだけど……25年くらいかな? 「なんかイイな」って思います。そんで、そういうその、人間のリレーションシップみたいなのも生まれるのもレコード屋さんだし。……あー、もうレコード屋さんの話始めると止まらないんで、やめときますけど。もう一個話していいですかね?

 福岡に、僕の街にですね、沖レコードショップっていうちっちゃーいレコード屋さんがあって、そこではまあ、当時売れてるものがやっぱり売らざるを得ないわけですよ。ちっちゃいレコード屋さんだから。だけど、僕の大好きなLou Reedのコーナーだけはですね、なんかビシッとしてるんで、「この人ひょっとして、僕の好きなLou Reedが好きなのかも」と思って。新しいアルバム出たときにそこのカウンターに持ってったら、そこのね、ちょっとLou Reedっぽいおばさんが店主なんです、沖さんていう人なんですけど「あなた、この人好きなの!?」って。「好きですよ」って言って「もう、大好きですよ」って言ったら、「この人のレコードが売れるときが、私は一番嬉しいんだ」って言って「やっと売れた!」って言って、ハッハッハ。あのね、それ以降、「じゃあ、Louのレコードは絶対ここで買おう」……っていうようなことが今無いですからね。

 だから、なんかね、そういうのってあると思うんですよ。だから、そのレコード屋さんを維持するために他のモノを売らなきゃいけないんだろうけど、でも「これが本当は売りたいんだ」っていうね、そういうところの関わり合いとかがですね。やっぱり、そういうものは一生忘れないし……とかいう素敵な関わり合いが今、渋谷のね、でっかいレコード屋さんに行っても無いなっていうとこが少し寂しかったりします。そんなわけで、今からかけるWoodentopsっていう、Rough Tradeっていういいレーベルから出ているバンドはですね、えー、これもたぶんマツモトさんのコメントで買ったんじゃないかと思うんですけど、もう、超絶な、どこまで行けばいいんだ君たちは、っていうのが聞いていただければわかるんじゃないかと思うんですけど。こんなふうにインディペンダント・レーベルからトンガった音楽をやっている連中が今でも好きですし、今でもこんなふうにありたいと思っています。じゃあ、1987年のアルバム、ライブ盤なんですけど、まあ凄いんで聞いて下さい。Woodentopsで、Love Trainです。

♪Woodentops/Love Train

 はい、Woodentops、1987年の演奏でLove Trainでした。

 えー、ディレクターのスギヤマくんから紙が入ってきたんですが、「番組的にはそもそも洋楽という言葉の定義がヤダ。欧米しか向いていないことが多いから」っていう、確かに僕もそう思うんですよね。んで、もう一個。「輸入盤至上主義ではなく、例えば『Joao Gilberto in Tokyo』というライブ盤は、日本盤には素晴らしい愛のこもったブックレットが付いています。つまりその、選択の自由を奪わないでほしいということです」。そうですね、僕もそれをちゃんと伝えなきゃって思うんですけど。

 えー、例えばね、あんまり行かないんですけど、自分のアルバムがメガストア系のとこに行って「あるのかなー」と思って見に行ったら、当然ですね、J-POPっていうところにあるわけですよ、自分のアルバムが。そう、そのときに、「そうなんだ、俺の音楽はJ-POPだったんだ」っていう、「でも良かった、J-R&Bじゃなくて」とか思うんですよね。そんで、「そうなんや、俺の音楽はJ-POPだったんだ」って、「俺はただロックンロールやってたつもりなんだけど」って思うことがあって。そんときにですね、ワタクシの大好きな佐野元春さんの言葉を思い出すんですけど。どっかで彼と話していたときに、「やっぱりその、全てのボーダーっていうか境のようなものを超えていかなきゃダメですよね」っていう話を僕がしてたら、彼が「(低い声で)いや、違うんだ山口」って……違うんだこんな声じゃないな。「境っていうものは、ボカしていかなきゃいけないんだ」っていうふうに彼は、「また、いいこと言ってるなーこの人」と思ったんだけど。

 つまりそのですね、僕は僕のことで当てはめて言うと、メガストアのJ-POPっていうとこに自分のアルバムがあるわけですけど、その隣がまあ何でもいいんだけど、そういうその境っていうものは確実にあるわけであって、そういうこう、ボーダレスっていうところで自分たちは自由に音楽をやろうと思っているのに、自分たちはJ-POPの中で生息しているっていうなんかこう、何とも言えない状況をですね、佐野さんの言葉を借りれば「そこで何かを発して、全ての境っていうものはボカしていかなきゃいけない」っていうふうに思います。本当に。皆さんもちょっと考えてみて下さい。

 次に紹介するのは、僕が一番、世界中で一番好きなレーベルでRykodiscっていうとこなんですけど。Rykodiscが素晴らしいのは、スタッフの8割くらいだったかな? かなんかが、「このアルバムはいいよ」っていうふうに賛成しないとアルバムを出さないという素晴らしいレーベルです。僕はここにいつかテープを送って、Rykodiscからアルバムを出すのが夢なんですが。ちなみに僕の友だちのMogan Fisherっていうですね、友だちがいるんですけど、「お、やっぱ、Rykodiscから出そう」って思ってRykoに送って、多数決の結果ハネられたというフフフ(笑)……ときに、「クソッ」っていうよりも「やっぱりRykoはいいよな」ってふたりで話し合ったというRykodiscって、これね、ホントに緑色のディスクなんですけどね、あの、ケースなんですけど、もう、ここから出てるものほとんどイイっすよ、素晴らしいです。で、今日はBruce CockburnのWhole Night Skyっていう曲を聴いてみて下さい。Rykodiscです。

♪Bruce Cockburn/The Whole Night Sky

 はい、えーRykodiscから出てるBruce Cockburnのアルバムから、Whole Night Skyでした。音楽番組なのにまだ4曲しかかかってないって、お前しゃべりすぎやん! っていうことで、いい音楽を聴いてもらいたいので2曲続けていきたいと思います。

 ひとつはですね、Shanachieっていうアイリッシュ系のものを出したらピカイチの、たぶんアメリカにあるレーベルだと思うんですけど、その中からKaran Caseyという素晴らしい女性シンガーの……えー、これ読めないんだよなー、Martinmas Timeっていうすごい好きな曲と、それから、最近はミュージシャンが自分で自分のレーベルを持つという、もうメジャーに飽き飽きしてっていうことで、とてもいい動きだと思いますし、えー、日本でもそういうミュージシャンも増えてきてますし、あのーSharon Shannonっていうね、僕らのアルバムにも参加してくれた可愛い、でも超絶アコーディオンを弾く人がいるんですけど、彼女はね、Daisyレーベルっていうレーベルを最近持ってて、そこから自分のアルバムや自分の好きなミュージシャンを発掘して出しているという素晴らしい活動をしています。本当にあの、音楽にね、対する愛があってとても好きです。じゃあ、Sharon Shannonが自分のレーベルから出しているアルバムの中から、The Diamond Mountainっていう2曲、名曲を続けてどうぞ。

♪Karan Casey/Martinmas Time
♪Sharon Shannon/The Diamond Mountain

 はい、えー、今週のFar East Satelliteはですね、ま、そんなわけで、輸入盤特集・インディペンダントレーベル特集ってのをやったんですけど、この著作権法改定に関するいろんな興味を持たれた方がいらっしゃったらですね、ぜひ、えー、今これたくさんいい…昨日僕も全部見たんですけど…サイトがありまして、わかりやすいサイト、それからシンポジウムなども行われていますので、ぜひ自分の問題として皆さんのあれで見ていただいて、ご自分にできることをですね、考えて欲しいと思います。

 えー、というわけで、えーとね、連絡事項があるんですが、放送時間の変更ということでエフエム豊橋はですね、日曜日の夜8時から9時までの放送が、夕方5時から6時に変更になったそうです。そんなわけで、6月からですね、変更になったそうです。

 エフエム豊橋のスズキさんて人からメールをいただいております。「先日、HEATWAVEの名古屋クアトロ公演に行ってきました。ライブはというと、音楽に対する姿勢・尊敬・プライドなど、そのすべてが良かったです。しかし、すごいトラブルで、ギターを持たずに歌う山口洋はすごい違和感でした。吉川晃司さんはギターを持つとカッコ悪いけど、山口洋はギターを持っていないと・・・と思ってしまいました」

 フーン。あのですね、最近僕は音楽をやっていて、本当の話なんですけど、すごくいいバンドであのー、僕は子供の頃から空を飛ぶのが僕の夢だったんですけど、今でも夢なんですけどね。「おっと、今俺飛べるじゃん」とか思ってですね、飛ぶときにあの、ギターがあるとジャマなんで、今回のツアーでね5〜6回「お、今なら俺飛べるかも」とか思ってギターを置いて、えー僕の理想はトンビなんですけど、あの、自分でバタバタやるんじゃなくてこう、上昇気流に乗っかってずーっと上に舞っていくという飛び方が僕の理想で、ライブ中にやってみるんですけどね。飛べないんですよね。聞いてますか? でも、飛べると思いますよ。あの……いつの日か。

 そんで、つい2日くらい前にようやくちょっとまあいろいろあったんで、ちょっと時間があったんでですね、「そういえば、俺って欲しいものっていうか、物欲が何もないじゃん」と思ったんで、1軒でいろんなものが置いてあるっていうその、何だろう、デパートみたいなもの何だろうと思ったら「あ、そういえば東急ハンズっていうのがあるや」と思って、そこに行って全部見て、欲しいものがなかったら、俺は欲しいものがないんだと思って地下2階かな、かなんかから7階くらいまで全部こう、しらみつぶしにですね2時間くらいかけて見てみたんですけど、何か全然欲しいものがなくて。そしたらですね、7階にプラモデル売り場っていうのがあってですね、そこで久々に自分が忘れてたことを思い出して。

 あの……こういう真面目な特集やっておきながら、こういう不謹慎なこと言うのもなんなんですけど、子供の頃僕は第二次世界大戦中に飛んでいた飛行機というフォルムがすごい好きで、あのー、戦闘機オタクなんだけど平和主義者なんですよ僕は。言い訳じゃないんですけど。戦闘機愛好家なんだけど、戦うことは嫌いです。で、そのね、機能美としてのプロペラ機の飛行機がすごい好きで、それをプラモデルとかいろいろ見てたらですね、「あ、もう一回ちょっとなんか、飛行機飛ばそう!」とか思って、今ちょっと飛行機に夢中になりかけていますが、戦争は反対です。

 えー、何を言ってるんでしょうか。そんなわけで、「リクエストの宛先を言え」とスギヤマくんに言われてしまいました。リクエストの宛先です。〒559-8522 FM COCOLO 「Far East Satellite」係まで送って下さい。これ電話番号? FAXですか? FAX番号は06-6615-7651、Eメールは全部小文字でfes@five-d.co.jpです。まあ、あの、たくさん送って下さい。というわけで、いってもいいですか曲に? 本日はそういう特集をお届けしましたが、ぜひ、番組の冒頭にも言いましたが皆さんが皆さん自身の問題としてですね、ま、そんな深刻に考えることもないと思うんで、こういう特集を聞いてよりもっと自分のアンテナに引っかかった音楽を深く愛そうっていうことでもいいと思うんですけど、皆さんの問題として考えて欲しいという1時間でした。

 で、最後に自分の曲をかけるのはキザなんで、ちょっと照れるんですけど、ディレクター・スギヤマくんが「そんなことぐらいやらなきゃダメだ」と言うので、スギヤマくんのせいにして自分の曲をかけようと思います。それではHEATWAVEの今年出たLong Way For Nothingという新しいアルバムの中から「歌を紡ぐとき」という曲をかけてお別れしたいと思います。それじゃあ、また、来月。

♪HEATWAVE/歌を紡ぐとき

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