飛んでイスタンブールとエーゲ海_プロローグ

 昨年の年末から正月にかけてネパールを旅してきた。
旅の目的はもちろん、世界の屋根、あのヒマラヤをこの目で見ること。
そして出来ればトレッキングで少しでも8000m峰に近づくこと。
ついでにカトマンドゥをはじめネパールの街を観光することである。
出発前は不安90%期待10%のオレであったが、幸いにも素晴らしい景色とエキサイティングな街並み、
そしてとても親切な人達に巡り会うことが出来、ネパール行きは大成功に終わった。
なかでも印象的だったのは、好奇心旺盛なオレの頭を何度もカチ割ってくれたヒンドゥー教との出会いである。
おおよそ日本とはかけ離れた感覚で宗教に接している現地の人達の生活、
特にオープンな火葬場(とその周辺)には大きなカルチャーショックを受けた。
現在、世界各地では第二次世界大戦後の冷戦構造の崩壊により、
それまで抑圧されてきた民族間の紛争があちこちで繰り広げられている。
その一因となっているのは宗教に根付く習慣や考え方の違いであると言ってもいいだろう。
そんな中で、オレにとって気になる存在がイスラム教である。
イスラム教が関わる紛争地域は中近東、ボスニア、インド他広範囲に及んでいる。

 と言った訳で、またまた好奇心旺盛なオレはイスラム教にじかに接してみたくなった。
「いすらむきょう!」と言えば本家本元・中近東のアラブ諸国である。
イラン、イラク、シリア、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア等が有名であるのだが、
いかんせん8月の中近東は暑すぎるし(50℃を超える)、単調な砂漠にも興味はない。
さらに、イラク、レバノン、イスラエル周辺は巡航ミサイル・トマホークが降ってきそうなので今回はパス。
「うーむ・・・」と世界地図を眺めているとトルコに目が止まった。
トルコは東はイラン、イラク、シリア、アルメニア、北西はギリシア、ブルガリアに接し、
おまけに3方向を海(エーゲ海、地中海、黒海)に囲まれているではないか。
15年前に流行った(古い!)庄野真代(最近の若い衆は知らないだろう・・・)の
「飛んでイスタンブール」のいかにも怪しげなイスタンブールもトルコにあるのだ。
オレは力強く握った右手のこぶしを、軽く震わせながら宙空に持ち上げつつ
「ト、トルコかぁ! い、行くしかない!」と、ひとり静かに誓うのであった。

 トルコについて頭の準備をすすめるうち、ここが古くから歴史の表舞台に立ってきたことを知る。
古くはトロイ、ヒッタイト、ギリシャそしてアレキサンダー大王があの有名な東方大遠征の第一歩を記しているのもここだ。
さらに時代が下ると、東ローマ帝国およびオスマントルコは帝国の首都を今のイスタンブール(コンスタンチノープル)に置いており、今もそれらの遺跡はイスタンブールのいたるところに残っているらしい。
こうしてみると、イスタンブールは日本の京都など足元にも及ばないぐらい歴史が古く、
世界史上有名なエライ街であることがわかる。タダの怪しい街ではなかったのだ。
そうなってくるとますます歩いてみたくなるのがこのオレ。
まずは、文字通り「アジアとヨーロッパの架け橋」となるボスポラス海峡にたたずみ、
悠久の歴史にひたってみようと思う。


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