自作真空管パワーアンプ製作記

これが自作真空管アンプです。といっても、キットでイーケイジャパンと言う会社のTu-970と言う製品です。昨年、12月に福山のオーディオショップで一目惚れして購入しました。ユーゴスラビア製の68M8管を2本使用しており、これで電圧増幅用の3極管と5極管が1本にまとめられているので非常にシンプルです。シングルステレオパワーアンプですが、ボリュームとセレクタを2系統備えているのでCDとデッキ等をダイレクト接続する事が出来ます。

キットなのですべての部品が揃っていて、後は、半田コテ、糸半田、ニッパー、小型6角レンチ等があれば組み立てられます。説明書も詳細なのがついていますが、組み立てる前に熟読し一通り理解しておいた方が良いです。真空管ランプらしくないのですが、プリント基板を使用します。ところが、真空管のソケットをとりつける側が通常の部品とは反対側になるなど通常のキットと比べると変わったところも多いです。組立は基盤に1日、配線に2日程度かかりました。

基盤の方は、コンデンサの極性とか抵抗の値等をよく注意して丁寧にやれば問題はないです。配線の方は、カットにやや余裕をもたせてシールド線の被覆剥がし等がやや不器用だと難儀しますが、こちらも根気よくがこつです。パソコンの組立に比べるとこちらの方が少し難しいです。半田メッキとか基本的な技術を何かで練習しておいた方がよいです。私もなんとか組み上げたのですが、恐る恐る電源のスイッチ、左側のトグルスイッチを手前に倒すのですが、そのスリルは、これまで味わった事のないものです。CDプレーヤをダイレクト接続して、クライスラーのメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトをかけたのですが、なんと左チャンネルから音が出ません。再び配線をチェックすると入力スイッチが2系統ついてますが、その片側が半田のツノでショートしているのを発見し、再び接続すると今度は正常に音が出てきました。

音色は、真空管特有の柔らかく、味わいのある音色と言いたいのですが、実際にはハイファイ指向のブルー系統の音質でこれまで使用していたSANSUIのアンプに比べると一皮むけたというかクリアでピュアな音がします。LPレコードももちろん、CDの録音もこれまでに比べて音場感、定位、音の輪郭等がしっかりしてきます。ヴァイオリンの音は、トランジスタアンプよりもむしろクリアになりますが、耳ざわりな高音部のちりちりした感触はなく、鮮明さと柔軟さを兼ね備え、滑らかに際だって聞こえます。声楽もヒステリックではないのですが、子音等が鮮明に聞こえ、口の中の水分の状態なんかも判るような気がしてきます。但し、私の使用しているモニタスピーカでは、低音域のエネルギーが不足しているような気がします。このTU-970より上級のTU−873,TU874を試聴したのですが、こちらの方が低音のエネルギーに余裕があります。この辺りが周波数特性30-60000Hz、出力左右2Wの限界であると言えばそれまでですが。

このアンプと音がややボン付き気味のフロアースピーカと組み合わせるとちょうどよく上品な音を聴くことが出来ると思います。私は、SANSUIのアンプのプリ部から信号をTU870に送ってトーンコントロールでやや低音を強調して聴いてます。ポップス系では、ダイレクトで十分楽しめますが、ブルックナーの交響曲5番の出だしのコントラバスのピチカートとかコダーイの無伴奏チェロソナタ、ブラームスのチェロソナタなんかは、ややしんどいです。

でも、1万9,800円と言う安い価格に似合わず、鮮明でしかも高音部に独特の魅力がある音色は評価して良いでしょう。

 

 

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