直熱管整流の6BQ5プッシュプルアンプの製作

 

 

前回は、6BQ5シングルアンプを製作しましたが、そのピュアで暖かみのある音質が気に入ってましたが、やはりパワーの面で若干不満がありました。そこで、今回は6BQ5の音質の良さを活かしたプッシュプルタイプを作ってみたくなりました。

 

プッシュプルタイプの製作は初めてであり、これまでのシングルタイプに比べると複雑になるので、今回も優秀な回路例を参考にすべく管球王国13号に掲載されていた上杉先生の回路に基づいて製作する事にしました。

 

 

 

 

 

 

 

部材関係

シャーシは、前回と同じタカチの平型タイプのもので大きさは、325ミリX230ミリX30ミリです。板圧は僅か1ミリなので、前回の様な使用方法では、強度に不安があるので、NIFTYでアドバイスいただいた方法、2重重ねにして使用する事にしました。こうなると板圧は実質2ミリになる訳で強度の点で不満は無いですが、裏蓋を別途アルミ板で製作する必要がありました。325ミリX250ミリタイプの板を捜してきてシャーシーのサイズに合わせて切断しました。四隅に穴をあけ、シャーシー側には直径4ミリのねじ穴を切りました。今回は、タップやシャーシーパンチ等の工具を購入しました。

 

なにしろシャーシ2個分の加工でしかも、プッシュプルなので穴開け箇所は多くなります。最初は重ねた形で穴開けを考えたのですが、狂いが生じる可能性があったので、正確になる様に別々に加工しました。放熱対策として、シャーシー上面と裏蓋に放熱穴を開けました。今回は、加工に非常に時間がかかりました。ほとんど丸一日かかりました。「真空管アンプを作っているのか穴開けをやっているのかわからない。」と言うのが感想です。

 

トランスはノグチトランスから170ミリアンペアの電流が取り出せるタイプPM170型を購入しました。プッシュプル用のアウトプットトランスPMF15P、チョークトランスはPMC518H5ヘンリータイプ)、合計で2万円ほど。ケース価格は3000円、真空管は6BQ5が4個、12X7Aが2個、5U4G1個で合計約1万円、ボリュームや端子等のケース小物、電子部品、配線材等合計7000円で合計4万円、その他工具類等含めて4万5千円ほどになりました。今までの自作アンプでは300Bキットに並ぶコストとなりましたが、実際製品を購入する事を考えると驚くほど安い部品代です。

 

 

回路構成

 

電源部は、PM170パワートランスで290V、最大170ミリアンペアの電流を取り出し、直熱整流管5U4Gを経て、20オーム30ワットのホウロウ抵抗、33マイクロファラッド450Vのコンデンサ2個とチョークのП型フィルターからB1電源、5キロオームの抵抗を経てB2電源(6BQ5第2グリッド)、更に1キロオーム3ワットを経てB3、100キロオーム2Wを経てB4に至り、それぞれの抵抗の箇所には33マイクロファラッド450Vのコンデンサを配置しています。6BQ5プレートには、345V12AX7の第1プレートには、270キロオームを経由して75V、第2プレートには、100キロオーム抵抗を経由して260Vを流しています。5U4Gの能力が果たして十分であるかと言う事ですが、使用して感じでは問題は無いようです。なお、12AX7のヒータ電源は雑音防止の為に直流点火としました。

 

増幅回路は、オーソドックスなアルテック型で初段は、12AX7Aで電圧増幅段・GK位相反転段をかねてます。第1プレートから第2グリッドは直結されています。12AX7の第2プレート及びカソードから0.047マイクロファラッド630Vのカップリングコンデンサ、発振防止用の4.7K抵抗を経てそれぞれの6BQ5のグリッドに接続されています。(管球王国第13号参照)

 

参考にした回路例では、UL接続でアウトプットトランスのSG段から第2グリッドに340V流れていますが、PMF15PにはSG端子が無いのでやむなく5極管接続にしており、第2グリッドには、ベースに向かう345Vから分岐し、5キロオームを経由して第2グリッドに接続しました。

 

NFBは、アウトプットトランスの2次から51K5ピコファラッド並列接続経由で12AX7のカソードにかかっています。

 

実は、一番困ったのがNFBで、正帰還がかかってどうしても直らなかったのですが、NIFTY6BQ5の両プレート電流を反対に接続すれば位相が反転すると言うアドバイスを受け、その通りにしたら正常動作する様になりました。みなさまに感謝しています。

 

製作過程

シャーシ加工 部材のところで説明した様にタカシャーシ下側部分の表裏を逆にして2重構造にしました。

穴開けの後で、部材を取り付けた所。

 

 

 

 

電源及びヒーター回路の配線

B電源関係とアース関係の配線。

位相相反転段等主要部分が完成し、結線作業が一応終わった。

 

最後のシャーシ写真では、12AX7用の直流点火回路。もっと綺麗に仕上げるつもりだったのが出来上がってみると結構、ごちゃごちゃしてしまいました。

 

完成後、前作の6BQ5と並べてみました。こんなに大きさに違いがありますが、兄弟の様に似ています。

 

試聴の印象

やはりプッシュプルと言う事でパワー感が第一印象です。雑音は少なくNFBをかけなくても一応聞ける程でしたがNFBのトラブルが解消しうまく動作する様になり、聞き違える程、音質は向上しました。6BQ5シングルの音色は、水彩画の様な印象でしたが、プッシュプルは、一つ一つの音が粒立ち、試聴した内田光子のシューベルト即興曲集(フィリップスPHCP-1818)は残響豊かなムジークフェラインでの録音で、ピアノ音が分離しにくいのですが、新作アンプでは非常に鮮明に分離して聞こえます。低音のボリューム感は程々です。シングルアンプのおっとりしたイメージは無く、鮮明で瑞々しく活発な響きがします。また、瞬発的な打楽器等も鋭く再生します。定位等も従来のシングルに比べてしっかりとしています。クレンペラー指揮、ルートヴィヒが歌ったマーラー「大地の歌」のアルトの声がオーケストラに埋もれず鮮明であった事、マンドリンの音がこれほどまでハッキリと聞こえた事はなかった事を付け加えておきます。

 

 

 

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