『死体は知っている』
上野正彦 角川書店 ISBN4-04-88379-0
C0095 2001-3-28 完
死に 特別の関心があるわけではないのですが、死が一見病死の様に見えたり、自殺と片づけら
れそうだったり、事故で片づけられそうな「死」ても,一寸したことで死体が語り掛けてくると言う不思
議さに惹かれる。
推理小説を読む様な感覚に出会うのは、著者が監察医を退かれた後、日本推理作家協会会員と
してメスの変わりにペンを振るう様になったからでしょうか。
非常に平明に分かり易く死体の言い分を代弁してくれる。
新聞の死亡記事を読む場合も,さらっと読んでしまうと何故死んだか分らなくなってしまう様な書き
方を実例で示されると思わず納得してしまう。
本文p166より
「検死とは死者との対話である。
丹念に検死をし、死体監察をすることによって、死者自らが真実を語り出す。その死者
の声を聞き、その人の人権を擁護するのが法医学である」
もう一個所、p189「死体こに錘をつけ水中に投棄する場合もある」として
「ちょっとやそっとの錘では、錘の役はなさず、軽々と浮いてきてしまう。
それは異様としかいいようのない有様である。それならば、どのぐらいの錘をつければ、
腐っても浮上しないのか。私は知っているが教えない。」