風の良寛』 中野孝次  集英社  ISBN4-08-781214-6  C0095        2001年4月24日完


    いわゆる研究書ではない。
今良寛の精神世界が何故ながくブームを呼んでいるのかを残された歌、漢詩 を通して訴える。
    家出同然に飛び出し放浪の旅。
勝手気ままな生活が必ずしも楽しかった訳ではない。
世の中に暮らしの辛さや苦しさ心境をめったなことでは口しない聖人君子みたいな人もいるが、そんな
のはどこか胡散臭い。とは言わないが、良寛はそれを率直に詩で告白しているという。
現代人には想像を絶する生き方である。
    「 そこは(良寛顕彰のために1914年に建立された五合庵)は板敷きに筵を敷いたもので、越後の冬
     の寒さをしのぐには最も適さない。そこにある道具は鍋と擂り鉢、ひろってきたような茶碗ぐらい。擂り
     鉢で顔も洗う。壁には黒衣がかかっていきり、机はあったろうが、本は借りてきたものだし、硯や筆や
     墨はこれもごく粗末なものだったに違いない。托鉢用の鉢もある。室の片隅にはセンベイぶとんがき
     ちんとたたんであるが、これではとてみ冬の寒さを防げまいというようなものだ。」 p-12

  物が溢れ、私腹を肥やすことばかりに現を抜かし、庶民苛めの政治屋がまかり通る世の中、良寛の爪の
垢でも煎じて飲ませたい。


  右画は勝手な想像の まんがチックな五合庵
     
     良寛の生年:越後(新潟)の生れ1757年 頃?
                          18歳で家出。
                           越後に戻ったのは39歳(推定)
                           修業時代を知るてがかりは殆ど
                            ないらしい。