まんがら茂平次    北原亜以子    新潮社    ISBN4-10-141411-4 C0193     2001,年3月18日 完


   新選組とか彰義隊とかそんな連中が跋扈した幕末維新期の市井のひとびとがつましく、おおらかに
生きる。一気に読めると思いきや、意外に時間を労した。新選組を主体にした物語りであったり薩摩、
長州の争いが主眼の物語であれば、あるいは乏しい想像力も働かせられたのかもしれないが、すぐ自
分の隣に、新選組や薩兵がいたらどうなのかと納得するのに骨をおった。
    いやそうじゃないな。幕末維新期に生きる市井のひとびとの世の中のとらえかたを私が想像出来な
い、共感出来ないのかも知れない。

    お鈴は空を見た。一面の夕焼けだった。
雲はなく、西の空の橙色が東の空の薄藍ににじんで
お鈴の頭上は淡い紫色であった。 空を見ているかぎ
り、江戸を焼き払おうなどと考えている人間がこの町
にいるとは、考えられなかった。


     文庫 去年の夢 p176 より
   

     


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