あやし〜怪〜』  宮部みゆき  角川書店  ISBN4-04-873238-2 C0095  2001年5月3日完


     「あやし」は読み切りの短篇の九編からなっている。
登場人物は皆違うが奇談という点では題名の如くあやしいお話
しと言っても、後味の悪いものではないし、実際には有り得ない
もの。  だがもしかしたら誰でも心のなかに鬼が棲んでいるかも
しれないのだ。
   ほらそっと窓の外を見てごらん.....現代は恐い。簡単に人を殺し
情緒もへったくれもない世の中だ。

   語り知られた怪談噺はいろいろ有るけれど、そんなのともちょっ
と味が違う。
     「おえんは梅の枝におみくじを結び付けていた。  それだけなら
      不思議はなかったが、箕吉は、姉がしきりに口をうごかしてい
       ることに目を留めて、おやと思った。
       おえんむは何か独り言を言いながら、おみくじを結んでいる。
       その横顔は妙にきりっとしていて、目尻の線が、あの料理屋
       の奉公を断られて帰ってきた日と同じようにきっぱりと鋭くな
        っていた。」  [梅の雨降る]p−100より


前頁に戻る