下水道の役割

下水道の役割は、社会のニーズに合わせて変ってきました。
イギリスやフランスでは、コレラの大流行を契機に公衆衛生の向上という目的で19世紀から近代的な下水道を着手しています。建設当初は、雨水や汚水を排除するだけで処理はしていませんでした。つまり、汚いものは街から遠い所に捨てるという考えでした。

日本でも、明治時代に雨水排除と公衆衛生の向上の観点から東京や横浜など大都市部で近代的な下水道が着手されました。
戦後の急激な経済成長と生活様式変化の結果、昭和30年代以降、川や海の水質汚濁問題がクローズアップされるようになりました。このような状況の中、昭和42年には公害対策基本法が制定され、排水規制と共に下水道が川や湖沼などの公共用水域の水質保全のための重要な対策として位置づけられました。
更に地球規模の環境問題への関心が高まり、資源の有効利用、リサイクルとして下水道の役割が認識されてきました。

現在、下水道の役割は次のようなことがあります。

快適な生活環境を造る
下水道を整備することにより、トイレが水洗化され、汲み取り便所がなくなり、快適な生活を過ごすことができます。また、側溝や川に汚水が流入しなくなるので、悪臭や蚊、ハエの発生を防ぎ、街が清潔になり生活環境が改善されます。

浸水被害を防ぐ
街中に降った雨水を道路側溝や下水道管を通して速やかに川や海に排除して浸水を防ぎ、安全な街を造ることも下水道の役割です。川に丈夫な堤防を築いても、街中の雨水を排除するための水路やポンプ場がなければ、浸水を防ぐことができません。

川や海をきれいにする
川や海を汚している大きな原因は家庭からの排水です。下水道を整備することにより、家庭、事務所や工場からの排水を浄化して川に放流するので、川や海がきれいになります。

資源を有効利用する
下水道には、水、汚泥、エネルギー等多くの利用可能な資源があります。省エネルギー・リサイクル社会の実現するために、下水道は都市部の水循環の要として下水処理水の活用が注目されています。
また、下水処理場の上部を公園として利用したり、下水道管渠を活用して情報通信網を作るなどが期待されています。