水の異常性


水は最も身近なありふれた液体で、温度、重さ、熱量(カロリー)の単位の基準に用いられていますが、とても変わった性質の物質です。この異常な物質である水によって地球上の生物は生きていけると言えます。

1.常温で液体として存在する

水の分子組成はH2Oで表わされ、分子量18の酸素と水素の化合物です。物質は一般的に分子量が大きくなるほど、固体から液体に変わる温度(融点)、液体から気体に変わる温度(沸点)が高くなります。ほぼ同じ分子量の水素化合物であるアンモニア(NH3 分子量17)やメタン(CH4 分子量16)は常温で気体ですし、同じ酸素族の硫黄(S)の水素化合物である硫化水素(H2S分子量34)は水より分子量が大きいのに常温では気体です。水が普通の物質なら常温では気体であるはずなのです。
また、液体として存在する範囲が0℃から100℃までと広いのも特記すべきことです。


2.固体が液体よりも軽い

通常、物質は液体から固体になると比重が重くなり、体積が小さくなります。ところが、水は4℃の時に比重が一番重く、固体(氷)になると約1割も軽くなります。このような物質は水以外にはありません。

もし、この異常な物性がなければ、北極では冷たい水は下方へ移動し、やがて海底から氷ができ、年々氷は成長して魚が住めなくなってしまいます。地球上の全ての海底で氷が成長していき、やがて、氷の惑星になってしまうかもしれません。
また、岩の裂け目に入った水が凍結して徐々に岩を砕くことができなくなり、風化が起こりにくくなって、今とはまったく違った地形が形成されていたのかもしれません。


3.大きな比熱、蒸発熱

水は気体になる時に多くの熱(蒸発熱)を必要とします。また、水の比熱も大きいため、温度変化を起こしにくという性質があります。水は大気や大地と比較して温度変化が少ないことにより、地球上の気象現象が起こっているのです。また、水は保温性が高く、少量の水の蒸発により体温を調節できるため、生物にとって都合のよい物質であり、人間の体内で6割を占める物質となっています。まさに「命の水」と言えます。