魂を貪るもの外伝

ネコネコ行進曲


 

これはスーの来日より…1週間後のお話である。

 

 

 

その日も天気は快晴。

お空は雲一つない空!!

時間は夕刻まで後少し。

子供があちこちとプールから帰ってくる姿が窓から見える。

 

私ことクロはお昼まで日向ぼっこをしていた。

黒い毛皮なのでよく光が吸収されて熱くなるのだけが欠点といえば欠点。

しかしその暖かさも気持ちかよかった。

 

そんな中、決まった時間にTVを見ている少女がいる。

その名は音無スー。

私の主人であり、保護者でもある。

 

 

 

スー「晴らせぬ恨みお願いしますか……」

 

 

日本に夏休みの間に旅行しにいったスーはある番組に惹かれていた。

それは時代劇。

メジャーでは印籠を見せるものや桜吹雪を見せて事件を解決する番組。

 

その中で今日見ていたものはと…。

どうしようもなく弱いものが最後に頼るもの。

闇の暗殺者…3両のお金を貰い悪者をやっつける。

華麗な音楽に殺人技……。

なぜかスーはそれに魅了されていった。

 

 

クロ「…また変な番組に惹かれているニャ」

クロ「また…これやりたい!!」

クロ「と絶対にいうニャろうな…」

 

 

テーブルの上で丸くなっている私。

横目で見ながらため息をつく。

ヒーローというものに憧れているスーにとってあの手の番組は好みである。

前にも同じようなTVを見てはまったことを覚えている。

あのときも酷い目にあったニャ…はぁ…。

 

 

スー「クロ!!」

クロ「却下ニャ!!」

スー「うっ……」

クロ「あのね…いい歳してもう少し大人になろうニャ」

スー「う〜」

クロ「スー…私はあなたのお守をしているんじゃないニャ」

スー「…わかっているわよ」

クロ「本当かニャ……」

 

 

クロはスーの側から離れる。

またTVに夢中になりだしたからだ。

あの癖さえなければ…立派な後継者になれるのにニャ……。

 

外に出ると車が横を通りすぎていく。

安全を確認してからとことこと歩くクロ。

散歩コースを探して最近は毎日歩いている。

ネコの姿も楽じゃないとつくづく思う。

興味があるコース…それも毎日が変化するようなコース…。

あるわけないニャ…。

 

 

クロ「ふにゃぁ……」

クロ「うん?」

 

 

背伸びをしている最中に人が走っていく。

近くの公園に集まっている人がいるのに気づく。

なにやら騒いでいるみたいニャ…。

興味がでてきたのでそちらの方に足を向ける。

見覚えがある顔が一人いることに気づいた。

 

 

クロ「あれは…」

迅雷「また来るのか?」

四郎「うるさい!!猫ヶ崎最強は私だ!!」

迅雷「…猫ヶ崎最狂の間違いではないか?」

四郎「だまれ!!」

 

 

たしか…香澄の友達…いや恋人の迅雷とかいう男。

…相変わらず豪快な性格しているニャ。

強さも一流…度量も一流…近年稀に見る逸材……。

でも…ときおり見せる暗さ…闇の部分はいったい。

なんてネコが思ってもしょうがないニャ…。

 

うん?

あれは…スーの…。

迅雷のところにただ一人近づいていく少女。

 

 

香澄「迅雷主将!!」

迅雷「うっ!?」

香澄「部活の時間です」

迅雷「わかっているよ……」

香澄「もう少し主将らしさというものを……」

香澄「主将というものはもっとみんなを率先するべきです」

迅雷「…くっ」

 

 

スーの友達…香澄ニャ。

恐ろしいほどの美貌にさすがのスーもドキドキするらしいニャ。

スーも大人しくしていさえすれば可愛いんだから…はぁ…。

香澄は迅雷をせかして学校に行こうとする。

そういえば今日も部活といっていたニャ……。

 

私ことクロとスーは香澄の家に泊まっているわけではない。

ニャンとマンションを一室借りているのだった。

…無駄使いニャって?

いいの…スーの家系は代々魔女という家系。

つまり錬金術というもので…それ以上はいえないニャ……。

 

うにゃ?

誰か近づいてくる……。

 

 

四郎「おい!!」

クロ「ニャ?」

四郎「私の説明は?」

クロ「…あんた誰ニャ?」

四郎「私こそ猫ヶ崎高校最強といわれている男!!」

クロ「うるさいニャ!!」

 

 

四郎の顔面にジャンプして爪を向ける。

うにゃぁ!!という声をだして顔面を思いきり殴る。

見事にクリーンヒットした彼は地面にキスする。

 

 

クロ「たく…この街は真面目と変態と両極端のやつがいっぱいニャ」

四郎「猫の分際で私の美しい顔を!!」

クロ「猫に喧嘩うる時点であんたは変態ニャ!!」

四郎「ふっ…いつの世も私は全力で相手するのだ」

四郎「ライオンは獲物を狙うというときは全力をつくす!!それと同じだ!!」

クロ「動物愛護団体から訴えられるニャよ?」

四郎「うるさい!!人間様をなめるな!!」

 

 

ムカ!!

誰が好きで猫の姿になっていると思っているニャ!!

スーの趣味で私はこの姿になっているんだから!!

ムカムカ…本気だしてあげようかしら。

いけない、いけない…こんなことで本気だしたらそれこそ笑われ者だわ。

 

 

ちとせ「ちょっと!!」

四郎「ぐほっ!?」

 

 

目の前に巨大なレンガが飛んできたと思ったら見事に四郎に当たる。

お腹に当たって痛そうニャ…。

飛んできた方向を向くと女性が二人そこにいた。

どうやら花壇にあったレンガを投げたみたいニャ……。

 

 

ちとせ「可愛いクロネコをいじめるなんて最低ね!!」

涙「きゃぁ〜ちとせお姉さまかっこいい★」

四郎「おのれ…なにやつ!!」

涙「うるさい★」

 

 

ペタと顔に符術を貼りつけた瞬間にピタと四郎の動きが止まる。

そしてくねくねと動き出したかと思ったら電柱にまっすぐに進む!!

そしてゴ〜ンという音が響き倒れる。

 

 

涙「朝比奈流パペットマンの術★」

ちとせ「パペットマンって…ドラ●エの敵にでてくる?」

涙「はい★」

ちとせ「いろいろ改良しているんだ…えらいえらい♪」

涙「えへへ★」

クロ「にゃおん」

 

 

二人の元へ歩いていきぺこりとおじきをする。

するとちとせという女性が私を持ち上げる。

うっ…あまり抱いてもらうのは好きではないニャ。

でも我慢、我慢。

 

 

ちとせ「…ノラかな?」

涙「う〜ん…野良猫には見えませんね★」

ちとせ「綺麗な毛…真っ黒ね」

クロ「にゃ〜ん」

 

 

今はまだ猫のフリをしておこう。

普通の猫が喋ったらいけないとスーに言われているし。

えっ?

先ほどは喋っていた?

…気にしない気にしない♪

 

 

それから私はこの二人の女性と一緒に歩いていた。

ちとせと呼ばれている女性がまったく離さないのだ……。

抱っこされたまま神社の鳥居をくぐる。

階段が何段も何段も見えてくる。

すぐにセミの声が辺りに広がる。

木々のざわめき…虫の声…こんなところもあったんだ……。

と思いながら感慨にふけっていた。

 

 

ちとせ「涙ちゃんも来年はボクの学校に受験するの?」

涙「はい★」

ちとせ「大丈夫なの?」

涙「この夏の模試で判定がAでした★」

ちとせ「そうなんだ…来年一緒に学校にいけるといいね」

涙「はい★」

葵「あらお帰り♪」

 

 

ほうきで階段を掃除している巫女服姿に出会う。

二人を微笑んで迎える。

…綺麗だニャ……はっ!?

 

 

葵「あら…可愛いクロネコね」

ちとせ「姉さんこのネコ飼っていい?」

葵「飼い主がいるんじゃないかしら?」

クロ「……」

 

 

飼う!?

ちょっとなんでそうなるニャ!?

やばいニャ…早く逃げないと…首輪をつけられるニャ……。

あれは嫌いニャだから…。

 

 

ちとせ「う〜ん多分いないと思う♪」

涙「★」

葵「そう…ならいいわよ♪」

クロ「うにゃ!?」

葵「あら…何か聞こえたような……?」

ちとせ「気のせいだよ姉さん」

 

 

どうする…このままだとペットにされるニャ……。

爪で引っかくなんてできない…。

かといって夜逃げみたいに逃げるのも嫌だしニャ……。

うう…困ったニャ……。

 

そうこう考えているうちに自宅へと連れて行かれる。

さっそく名前をつけようと考えている。

 

 

ちとせ「では君の名前は…ヴェル●パー!!」

 

 

パーン!!

 

 

悠樹「その名前は駄目!!」

ちとせ「いきなり現れてハリセンで叩くなんて駄目なんて酷いよ」

葵「では…ス●ルド!!」

悠樹「それも駄目です…葵さん」

葵「そう残念……」

涙「そうですよ!!」

涙「その名前にすると…某女神さまになってしまいます★」

ちとせ「葵姉さんは現代の女神さま♪」

 

 

パーン!!

 

 

葵「ふふ駄目ですよ…そんなこといったら」

ちとせ「痛いよ…ハリセンで叩かないでよ」

涙「では謎の生命体ポテトという名前で!!」

 

 

パーン!!パーン!!

 

 

クロ「嫌ニャ!!」

クロ「ポテトという名前にしたら…ピコピコになるにゃ!!」

クロ「ピコピコピコピコいいたくないニャ!!」

クロ「それに私は猫ニャ!!」

クロ「まったく…さっきから聞いていたら変な名前ばっかりつけて……」

クロ「……はっ!?」

 

 

思わず手に持ったハリセンを見る。

そして先ほど叩いた物体を見る…涙の頭だった……。

隣には同じくハリセンを持ったちとせが涙を叩いている。

が、こちらを見て動作がストップしている。

他に3人も同じように固まっている。

 

 

クロ「……」

クロ「では失礼するニャ!!」

 

 

ニャ!!と左手を上げてとことこと退散する私。

網戸が空いているのを見てそこから逃げ出そうとする!!

しかしちとせと涙に回り込まれた!!

 

 

ちとせ「…姉さん絶対に飼おうよこのネコ!!」

涙「うわぁ…感激です★」

葵「喋るネコさんですか…可愛い♪」

悠樹「ついにこの街にも喋る動物がいるようになったんだ……」

クロ「…もしかして絶体絶命のピンチというやつニャ!?」

 

 

反対方向に回り込んで脱出しようと試みる。

しかしまた回り込まれる。

空いている場所…ここから脱出する場所……。

 

 

クロ「うにゃ〜!!」

ちとせ「待てネコちゃん!!」

涙「こっちですお姉さま★」

クロ「助けてニャ〜〜〜!!」

 

 

?「ふっふっふっふっ……」

葵「あら?」

 

 

庭の前で何かの声が聞こえてくる。

聞き覚えがある声なので不安度が増していく。

窓を開けて誰かいるのかを確かめた。

…一人の女性が立っていた。

そして予想どうりの人物だった。

 

 

 

葵「あれは…」

悠樹「…なんだろう?」

 

 

スー「いつの世も悪者は絶えず増えつづけている……。」

スー「弱者をいじめ富を貪り私腹を肥やす悪党ども!!」

スー「この必殺仕事人音無スー!!が成敗してあげる!!」

 

 

…あの馬鹿…またTVの影響を受けているニャ…はぁ。

いつのまにか私を追いかけるのを忘れてスーをみんな見ている。

まぁ…あんな大声で騒がれたら誰だって振り向くニャ。

 

 

スー「私の使い魔をいじめる=私の敵!!」

スー「さぁ誰からかかってくるの!!」

ちとせ「…あなたの飼い猫なの?」

スー「あら?」

スー「全然…殺気がないわね」

クロ「…スー…この人達は敵じゃないニャ……」

スー「えっ!?」

 

 

思わず乗っていた石からずり落ちるスー。

かっこ悪いニャ……。

でも…今、気がついたけど…たしかにどこからか殺気があるニャ……。

それもかなり強い殺気。

昔…会ったことあるような…殺気か……。

 

 

 

葵「とりあえず上がってください…ええっと…」

スー「スーでいいわ…勘違いしてごめんなさい」

 

 

それから数刻後……。

自己紹介をしてもらい香澄の友達ということがわかる。

…神代ちとせ…神代葵。

神代家に八神家…朝比奈家…いっぱいこの家にいる。

これまた…複雑にゃ……。

 

 

ちとせ「このネコ…あなたの?」

スー「ええ…クロという使い魔なのよ」

涙「使い魔?」

スー「そっ。私は代々魔女の家系だからね」

悠樹「魔女…へぇ…」

 

 

 

あの馬鹿は談話をしているニャ。

スーも気がついているようだけど…まだ姿を現さない……。

微量の殺気…誰に対して?

 

 

この神社には結界というものがあるらしい。

それも結構、強烈なものが。

だからこちらにこれないのか?

 

 

スー「……?!」

クロ「……?!」

 

 

殺気が去った?!

…気づかれた…のか?

 

 

スー「となると…外で待っているという合図かな?」

クロ「そうね…そろそろここから離れたほうがイイニャ」

 

 

脳波を使って互いに喋る私達。

二人の結論は外での待ち伏せ。

まぁ…でないならこちらから叩け!!ともいうニャ。

 

 

神代家に別れをつげて階段を降りて行く。

スーの肩に乗りながら気を集中する。

もう夜になっているために空には月がでている。

満月…嫌な月…ニャ。

 

 

 

スー「ねぇ…この街…変だと思わない?」

クロ「?」

スー「変に魔物や妖怪関係が多いこと……」

クロ「そして…異常能力者が多いことかニャ?」

スー「そう…おかしいわよ…絶対……」

クロ「もしかして…【ロキ】もいるかもしれニャわね」

スー「あのS級犯罪者の!?」

クロ「そうにゃ…」

スー「…これだけの街なら…隠れやすいか……」

スー「でも会いたくないわ…あいつだけには」

クロ「そうニャ…あいつにかかわったら…またいらぬ事件が増えるだけニャ」

 

 

 

月の明かりに照らされた私とスーの影が前に伸びている。

数分後それが3つに増えていることに気づく。

…気配がない…接近を許されたか?!

 

 

迅雷「おい!!」

スー「ナマハゲ?!」

迅雷「誰がナマハゲか!?」

クロ「なんだ…コモドドラゴンの子孫だったかニャ」

迅雷「お前もかい!!」

 

 

思わず私にまでつっこみをいれるあたりただものではないニャ。

気を取りなおしたか…真面目な顔つきで言い放つ。

 

 

迅雷「まぁいい…つけられているぞ」

スー「…やっぱり?」

迅雷「知っていたか…なら早いな」

クロ「来るわよ…そろそろ」

スー「いつでも大丈夫」

 

 

カーン!!

 

 

と音が鳴り響くと同時に大きな結界が張られる!!

向こうも戦闘態勢に入ったようね。

近づいてくる男が一人。

…あれは!?

 

 

 

ロキ「おやおや…めずらしい…君達か」

スー「あなたは!?」

迅雷「知り合いか?」

クロ「…昔の昔の知り合いニャ」

ロキ「ほぅ…少しは成長されたようですね」

 

 

感激しているのかじろじろとこちらを見る。

相変わらずこの男は…変わっていない。

 

 

ロキ「そうですか…あなたたちがここにいるのですか……」

ロキ「となると死ぬ魂が多いということですね…おもしろい」

スー「あんたね…いい加減にお縄につきなさい!!」

ロキ「どうして私が捕まる必要があるのですか?」

ロキ「悪いのはすべてあなたの上司が悪いんですからね?」

クロ「……」

迅雷「てめぇ何物だ?」

 

 

その声に気づきようやく迅雷がいることに気づくロキ。

集中していると周りが見えない性格である。

正直いって…あまり今は関わりたくない存在……。

 

 

ロキ「私はロキと呼ばれていますよ」

ロキ「そしてなぜかS級犯罪者扱いにされている男」

迅雷「…犯罪者だと?」

ロキ「うん?」

ロキ「君は…かの有名な殺戮鬼械君ではないかな?」

迅雷「?!」

スー「!?」

 

 

彼が…あの有名な殺戮鬼械ニャか……。

そうか…なるほどニャ…それなら納得がつくニャ……。

あの強さと能力の秘密が理解できる。

 

 

ロキ「ふむ…では相手が悪い…出直すことにしよう」

スー「待て!!」

ロキ「待てといって待つ馬鹿はいませんよ…では」

 

 

指をパチンと鳴らして結界を解除する。

そして一礼をして消えて行く。

残るは二人と一匹のネコだけ……。

 

 

クロ「スー…あの犯罪者がここにいるということは……」

スー「はぁ…日本移住の手続きをとっておくわ……」

迅雷「どういうことだ?」

スー「…彼が行く所事件あり…上司の命令が来るからね…」

クロ「憂鬱ニャ……」

迅雷「話が…全然わからん!!」

 

 

一人悩む迅雷を見ながらつぶやく……。

長い長い…日本滞在になりそうだニャ…と。

そしてその予感は的中する。

まさか…高校卒業までずっといることになるニャんて……。

 

 

次回に続く♪


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後書き

 

エルさん二周年記念作品!!

祝二周年!!

 

ということで記念女&ネコの出番となりました(笑)

このまま行くと記念のときしか出番がない!?

ということになるかもしれませんが…いいか(爆)

 

さて…今回はわかっていれば楽しいネタを満載♪

解説すると…最初は必殺シリーズ。

中盤はああっ女神さまっ!!

後半は…内緒(謎)

 

でポテトは…AIRネタとなっております(汗)

はまっていますよ…ポテトに…はぁ…。

犬や猫にはまるのは私だけでしょうか(笑)

 

とりあえず、スーの日本滞在理由はS級犯罪者の逮捕が理由です。

なぜ逮捕という指名があるのかはおいおいと。

 

もし次回があるとするならば…スーの恋物語でも(笑)

ではエルさん祝二周年

おめでとうございます!!