20数年後────

 英国某所────

 個室に男が二人。

「……ゲラル様、いいんですか?」
「何がだ」
「ランディの事です」
「……今更何を言うかと思えば」

 男――ゲラル――は苦笑してソファーに深く座る。

「ヤツと俺が何年の付き合いになると思っている」
「ランディは、確実にゲラル様の事を快く思っていません」
「……それがどうした?」
「なっ……」

 男が受けたゲラルからの答えは期待に反したものだったのだろう。

 絶句してそれ以降続かなくなる。

「そのくらい百も承知だ。あの日以来俺は、ヤツと共にBloody Wayを歩むと決めた男だぞ」
「ゲラル様就任の日……、血の惨劇を繰り広げた日ですか」
「……お前の祖父と父親もいたな」
「フフッ……、その事は気にしていませんから」
「分かっている……、でなければ、お前は私を今此処で殺しているだろうからな」
「……」

 男は、ゲラルのその言葉に肯定も否定もしない。

「お前なら、いくら俺といえど、簡単に殺せるだろう?」
「……」

 男は、再び、黙ったまま。

「答えぬか……、ククッ、まぁいい」

 男は笑うと、煙草を取り出して吸い始める。

「……何故ですか?」
「ん?」
「ランディも、俺も……、そして、勿論の事ながら殺戮鬼械も、貴方にとっては超がつくほどの危険要素。なのに何故、配下に置いているのです?」
「……ふぅ」

 ランディは、煙を大きく吐くと、こう答えた。

「Bloody Wayを歩んでいると言っただろう」
「っ!!」
「気の置ける相手? 無用だ。身の回り四方が常に危険な状態でなければ、とてもBloody Wayとは呼べんよ」
「……」

 男はこの答えに、背中が凍る思いがした。

 ――お前なら、いくら俺といえど、簡単に殺せるだろう?

 冗談じゃない。

 これが彼の答えだ。

「ハハッ……、ハハハッ……!! これだから、貴方の上に立つ事が出来ない」
「ククッ……、そう言うな……、野心を持て、ガイ……、俺を殺して組織を乗っ取ろうくらいのな」


 ──数年後

 彼は殺された……、配下の手によって。
 ただ、彼は満足だっただろう。
 彼は彼の道を歩み通して果てたのだから──