20数年後────

 英国某所────

 あの日と同じように、ソファーに座る男がいた。

「……」

 控え目に、ドアをノックする音が二回。

「入れ」

 男の低い声を確認すると、ドアがゆっくり開いた。

「失礼します」

 女性の声が聞こえる。
 次に、その言葉を紡いだ女性が姿を見せ、入室してくる。

「何だ」
「はっ。ご報告したい事が」
「……言ってみろ」

 男は、少し、間を置いてから報告を促す。

「はい。連中が滅びたようです」
「連中……I……、か?」
「はい」
「……」

 男は一瞬言葉を失う。
 然し次の瞬間……

「ククッ……、ハッハッハッハッハッハッ!!」

 男の大きな笑い声が部屋中に響き渡った。

「っ…!?」

 女性は初めて見る男の様子に、驚きを隠せない。

「そうか……、そうか……、滅びたか……」

 男はそう言いながら何度も首を縦に振る。

「フンッ……、所詮は貴様も人間だったというわけか……、ゲラル」
「えっ……、ランディ様は……、ゲラル様と……、ご友人で?」

 女性は男――ランディ――も普段敬称で呼んでいる相手を呼び捨てにした事に対して疑問を抱き、質問する。

「……私は行こう」

 男は答えずにソファーから立ち上がった。

「えっ……?」

 女性は自分の主の不可解な行動に首を傾げる。

「ヤツは機械の使い方に誤ったようだ。低脳だったという事だよ」

 男は女性の横を通り過ぎる瞬間、腕を振って女性の首上を微塵に吹き飛ばした。

「……」

 首上無惨に無くなった女性の胴体からは、血液が噴水のように噴き出し、やがて硬直したまま背後に倒れる。

「この組織ももうお終いか……、機械が壊れたとあっては、羅刹と同じように潜るしかあるまいか」

 男はドアから退室する前に、スーツから通信機を取り出した。

「……ミリアか」
「ああ、私だ……」
「……壊滅が予想以上に早かった」
「首尾は万事ぬかりないな……?」
「……うむ、ならば私もそちらに行こう」

「ここは捨てる……、Bloody Wayの終着駅としてな」