放送大学の学習開始にあたって、学習方針を検討
「おはようございます、堀内先生」白石夏美がテーブルの上にバインダーを置きなが
ら言った。一緒に勉強好きのミミちゃんが付いて来ていた。
「ああ、おはよう」堀内は、脚を組んで椅子に掛け、壁のコンピュ−ター・ターミナルを
遠隔操作していた。
「さっそくですが先生、各科目の履修について検討したいと思います」
「うむ...」堀内は、リモートコントロールをコトリとテーブルに置き、アゴに手を当て
た。「...“大地と人間−食・農・環境の未来”、“ 生物の進化と多様性 ('99)”の二
つの科目のテキストをぱらっと開いてみた。そこで思ったことだが、“ 生物の進化と
多様性 ('99)”の内容は、非常に高度なものだね」
「はい。私もそう思います。今回が初めてで、ネーミングから適当に選んでみたわけ
ですが、第一線の研究者を対象としたような内容です。まるで大学院のような...」
「うむ。ま、高校を卒業した程度の学力では、歯がたたんと言った所だろうね」
「はい...それで、やっていただけるでしょうか?」
「うむ。もちろんそのつもりだがね。テキストは一通り読む。それから、テレビの講義を
聴く。内容を大雑把にまとめる。これでいいんだね?」
「はい。とりあえずそれでスタートしてみます。あ、ミミちゃん、コーヒーを入れてきてく
れない?」
「うん!」
「それでどうなのでしょうか、堀内先生、大学の講義をホームページで扱うと言うの
は。つまり、法的な問題等はないのでしょうか?」
「ま、ないと思うがね。私も、完全に別な文章でまとめるつもりだしね。ところで、白石
君、君はこの科目で、単位を取るつもりなのかね?」
「ええ、そこで実は色々と考えていたんです。ボスの意向では、単位を取る必要はな
いということですが、取ってみるのも面白いかなと...」
「なるほど、君の言うとおりだ。しかし、“
生物の進化と多様性 ('99)”の方は、サッ
と一読しただけで、単位が取れるものかどうかね。第一線の研究者や大学院生なら
ともかく...」
「やはり、そうでしょうか」
「うむ。そんなに甘いものではないと思うがね」
「はい。それも検討してみます」
「うむ」