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   INDEX                                    

プロローグ      インフルエンザ克服のカギは、“知る”ことです! 2004. 2. 8
No.1 〔1〕現状分析 2004. 2. 8
No.2       ≪“鳥インフルエンザ”は、何故怖いのか...≫ 2004. 2. 8
No.3       ≪最近の“鳥インフルエンザ”の人への感染例 ≫ 2004. 2. 8
No.4       ≪人類に大被害をもたらした、主なインフルエンザ≫ 2004. 2. 8
No.5       ≪インフルエンザの分類≫ 2004. 2. 8
No.6 〔2〕大流行を押さえ込む、当面の対策  2004. 2.17 
No.7       ≪ニワトリのレベルで押さえ込む≫  2004. 2.17 
No.8       ≪我々、個人レベルでの対策≫ 2004. 2.17
No.9       ≪鶏肉、タマゴ...ペット...≫ 2004. 2.18

       

    参考文献 東京新聞 (2004年1月12日以降の、一連の関連記事、その他)

 

「リアルタイムの詳しい情報は、農水省・厚労省・関係機関等の公式ホームペー

ジをご覧ください。ここでは私たちスタッフが、独自に考察しています」 <里中 響子>

  プロローグ         index292.jpg (1590 バイト)   

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「インフルエンザ克服のカギは、“知る”ことです!“知る”ことで、これ

まで、人類は全ての課題と困難を乗り越えてきました!“知り、理解す

ること”が、人類文明の最大の防壁です!」

 

“知る”ということは、単なる理解や対策を超えた、“神秘の力”があり

ます!」

         <塾長/高杉光一.....今回は、出席できません。そこで、上記の言葉をおくります。>

  ************************************************************************************

  

「里中響子です...

  “鳥インフルエンザ”が、いよいよ大きな脅威になってきています。鳥から人への感

染も、すでに相当数確認され、2月4日現在で、ベトナムとタイで15人の死者が公表

されています。

  また、2月6日、ベトナムのハノイ近郊の“ブタの鼻の粘液”から、“鳥インフルエン

ザ”のウイルスが検出されました。まだ、最終的な血液検査の結果は出ていません

が、ブタに感染すれば人に感染するように変異する可能性が高まってきます。ともか

く、非常に危険な兆候です...

  それから、日本時間で8日現在、アメリカのデラウェア州で、【H7N2型】の鳥インフ

ルエンザのウイルスが確認されました。これは、アメリカ大陸での感染であり、今後

の推移に注目です...」

 

“鳥インフルエンザ”が、ブタに感染したことで、今後“人獣共通感染症”となる可能

性が高まりました。非常に高いレベルでの警戒が必要になります。

  専門家の中には、1918年の“スペイン風邪”との類似点を指摘しています。この

第一次世界大戦末期の“スペイン風邪”は、全世界で推定5億人以上に感染し、

4000万人以上の死者を出しました。日本でも、約50万人死者をだしたようです。

  もし、今回、“鳥インフルエンザ”のウイルスが、最悪の形に変異した場合、人類社

会に与える被害は、“スペイン風邪”を桁違いに上回ることも予想されます。現在は、

1918年当時とは、人類文明の様相がまるで異っているからです。数多くの航空機

世界中を短時間で結び、膨大な数の船が7つの海を往来し、都市は過密化し、世界

の総人口は60億を超えているわけです...

  ただ1つ、その当時より有利な条件は、科学技術文明が格段に飛躍していること

です。各種の薬剤、インターネットの普及による膨大な情報量、現代文明の統合的な

機動性が武器になります...それから、国際的な相互扶助がカギになります。世界

的な大感染は、一国で乗り切れるものではないからです...」

 

「私たちの知る、コトの発端は...

  ええ、農水省が、2004年の1月12日に、山口県阿東町の採卵養鶏農場のニワト

リから、“高病原性鳥インフルエンザ”のウイルスを検出したと発表したことから始まっ

ています。このウイルスは、家畜伝染病に指定されているものです。

  ちなみに、昨年末から、すでに韓国で“鳥インフルエンザ”が大流行していました。

そして現在、すでにそれが、東アジア全域に感染が拡大していることが分ってきまし

た。細かなことは、これから検証していきますが、この“高病原性鳥インフルエンザ”

は、野生の鳥渡り鳥にも感染するために、感染を押さえ込むのが非常に難しい状

況になっています」

 

「ええ、それでは、さっそくみなさんに聞いてみたいと思います...

  今回から、バイオハザードの専任として、< 夏川 清一 >さんに参加してもらう

ことになりました。ええ、夏川さん...よろしくお願いします!」

「はい...」夏川は、唇に笑みを作り、小さく頭を下げた。「ともかく、“鳥インフルエン

ザ”は、対応を誤れば大変な事態に発展します。すでに、マスコミなどでも報道されて

いますが、“スペイン風邪”の再来が懸念されています」

「はい。詳しい内容は、後でお願いします。ええ、堀内さん、今回も、よろしくお願いし

ます」

「はい。私は、夏川さんのように、専門ではありません。地球環境方面から、大局的

に考察して行くことになります」

「はい!よろしくお願いします!」

 〔1〕現 状 分 析         

  

   ≪“鳥インフルエンザ”は、何故怖いのか...≫ 

 

「ええ、それでは夏川さん、さっそくですが、」響子が、小首をかしげた。

「はい、」夏川は、アゴをコブシで撫でた。

「まず...今回、“鳥インフルエンザ”は、何故、恐れられているのでしょうか?」

「そうですね...特に、今年の“鳥インフルエンザ”は、“不気味”だと言われていま

す...

  もともと、“鳥インフルエンザ”は、人間には感染しないのです。しかし、突然変異

よって、人間への感染性を持つことがあります。特に、“ブタ”を介して、人間への感染

性を持つことが指摘されています。この変異によって、新たなウイルスが出来るわけ

ですね。この時点で、それまでのワクチンは効かなくなります。

  ちなみに、すでにブタの鼻の粘液から、“鳥インフルエンザ”のウイルスが検出され

ています。まだ、最終的な判断ではありませんが、非常に危険な兆候が出て来ていま

す...」

「はい」

「さて、最も警戒されているのは、そうして変異したインフルエンザ・ウイルスが、“人

から人への感染性”を獲得した場合です。今回、すでに人間への感染が、世界各地

で確認されているわけですが、これは人への感染というよりも、大量の鳥のウイルス

を浴びたということだと思います。

  しかし、人間は“鳥インフルエンザ”に対しては、全く免疫を持っていないわけです。

ベトナムでの死亡例では、あらゆる抗生物質が効かず、肺全体が炎症し、呼吸

困難で死亡しています。それが、どんな状況で、どの程度のレベルのものか、詳しい

状況は分りませんが、非常に厳しい状況のようです」

「はい、」

「1918年の“スペイン風邪”では、口と鼻から血の泡を出して死んで行った患者

記録されています。非常に劇症型だったと、記録されているわけです。そして、その

“スペイン風邪”のウイルスも、わずか数箇所のアミノ酸が置き換わっただけで、遺伝

子的には鳥のウイルスだったと、最近判明しています...」

「うーん...はい、」

「もし、“人から人への感染”が起こり、これが大流行すれば、世界で数千万人単位

の死者が出る可能性があります。最悪の場合、億単位の死者が出るとも言われま

す。何故、これほどの死者が出ると警告されているかと言えば、当初はこの新種のウ

イルスに対する“ワクチン”がないからです。ウイルスを特定し、ワクチンを製造するに

は、半年、1年という時間がかかるからです」

「うーん...ワクチンの製造は、難しいのでしょうか?」

「分りやすい例は、昨年のSARSの大流行でしょう。インフルエンザは、SARSワクチ

ンほど難しくはないと思いますが、このあたりは、なんとも言えません」

「はい...つまり、そのワクチン製造までに、それほどの死者が出てしまう可能性が

あるということですね?」

「SARSでは、ワクチンが間に合わなかったでしょう。現在もまだ、完成しているという

話は聞いていませんしね。結局、SARSも、冬の低温乾燥の季節が終り、流行も終

息に向ったということです。

  SARSの場合は、感染力が弱かったわけですが、インフルエンザの場合は空気感

染ですから、爆発的な感染力になります。しかも、航空機の発達で、1週間から1ヵ月

ほどで、世界中に拡大する危険があります...」

「1997年にも、」堀内が言った。香港で【H5N1型】の“鳥インフルエンザ”が、人に

感染していますね。それとの関係は、どうなのですか?」

「まあ、無関係とは思えません。しかし、現段階ではなんとも言えません...ともか

く、ごく最近の、“鳥インフルエンザ”の人への感染例を上げておきましょう...

   ≪最近の“鳥インフルエンザ”の人への感染例 ≫ 

<1997年/香港>   18人感染...6人死亡 【H5N1型】

<1999年/香港>    2人感染...       【H9N2型】

************************************************************************

<2003年/香港>   18人感染...1人死亡 【H5N1型】

<2003年/香港>    1人感染...       【H9N2型】

<2003年/オランダ>  83人感染...1人死亡 【H7N7型】

 

  ちなみに、人類に関係するインフルエンザは、1977年のソ連風邪【H1N1型】

降は、新種の流行はありません。このソ連型の【H1N1型】は、1918年のスペイン

風邪【H1N1型】と同型です。ちなみに、過去に人類に大被害をもたらしたのは、以下

の3つの型です。

 

   ≪人類に大被害をもたらした、主なインフルエンザ≫ /3つの型

1918年.....スペイン風邪 ............【H1N1型】  

1957年.....アジア風邪 .............【H2N2型】

1968年.....香港風邪 ..............【H3N2型】

1977年.....ソ連風邪/【H1N1型】

 

  さて...

  昨年の2003年は、香港で【H5N1型】と【H9N2型】がそれぞれ確認されてます

が、大きな感染にはなっていません。それから、何故かオランダで、【H7N7型】が発

生し、83人が感染、1人が死亡しています。

  そして、この年の12月には、韓国で【H5N1型】が、ニワトリやアヒルで被害が拡

大したわけです。それから、年が明け、2004年に入って、1月12日に、日本の山口

県阿東町で、【H5N1型】のウイルスが検出されるという流れになるわけです」

「はい、」響子が、コクリとうなづいた。

「ちなみに、これは2月3日の情報になりますが、農水省の“家きん疾病小委員会”

が、重大な発表をしています。

  これによると、山口県阿東町のウイルスと、ベトナムの感染者から見つかったウイ

ルスを比較したところ、両ウイルスは同じ【H5N1型】でも、遺伝子配列の異なる別の

種類であることが判明しています。また、山口県阿東町のウイルスは、香港で見つか

ったウイルスとも、遺伝子配列が異なっていることが分っています。つまり、同時多発

的に、別の【H5N1型】が流行し始めた可能性が高いわけです...」

「人への感染の変異というのも、同じ【H5N1型】で、新しく変異したウイルスというこ

とになるのでしょうか?」

「そうですね」

「うーむ...」堀内が、首をかしげた。「それにしても、同時多発的となると、どんな要

因が考えられるわけですか?」

「現在、事態はきわめて流動的です。断定できるものなどありません...

  しかし、ともかく、説明しろというのなら...そうですねえ...アジアで、点々と存

在してしてくすぶっていた【H5N1型】のウイルスが、“何かのきっかけ”で感染爆発

したということでしょう...同時多発的というと、とりあえずは、そんなことしか思いつ

かないですねえ...

  それから、去年オランダでH7型が流行していますが、2月8日に、アメリカのディラ

ウエア州で【H7N2型】が検出されています。まあ、現在、鳥インフルエンザが注目さ

れているから、これほどの注目を浴びるのか...それとも世界全体の風景が、非常

に重大な局面になりつつあるのか、これは今後の推移になります...」

「あの、夏川さん、」響子が言った。「そのきっかけは、SARSなのでょうか?」

「まあ、その“何かのきっかけ”がSARSなのかも知れませんし、他のに中なのかも

知れません。BSEにしろ、コイ・ヘルペスにしろ、アメリカの西ナイル熱にしろ、最近は

こうした多種多様の微生物が、人類文明のすぐそばで、非常に騒々しくなってきてい

ます...いずれにせよ、何かの警告と受け止めるべきではないでしょうか...地球

は、人類だけのものではないのですから、」

「うーむ...」堀内がうなづいた。「確かに、そうですねえ...エイズにしろ、エボラ出

血熱にしろ、人類文明にとって、厄介な相手が続々と出現してきています。インフル

エンザもそうですが、こうした“RNA型のウイルス”は、DNA型に比べ、突然変異が

100万倍も早いと言われますね。それで、非常に補足しにくいわけでしょうか?」

「そういう側面もあります...しかし、変異が早い分、分子進化学的には、3年〜5

年も追跡すれば、遺伝子情報がどう変るかが分るわけです。まあ、インフルエンザの

場合、分子進化学感染症学が連携して研究チームを組めば、そのぐらいの期間

で、新型ウイルスの出現予測も可能になるといいます...」

「うーん...」響子が、首をかしげた。「でも、今年は、間に合わないわねえ...」

「そうですね。しかし、その先も、人類文明は続いていくわけです。これは、将来の話

になりますね」

「はい...」

≪インフルエンザの分類≫        <夏川 清一>   

                                        

                                         

「夏川さん、」響子が言った。「その、インフルエンザの、“H”とか“N”とかいう型は、

何を意味しているのでしょうか?それから、A型、B型、C型というのは?」

「ああ、はい。まずそのあたりのことを説明しておきましょう...インフルエンザには、

まず、A型、B型、C型という3つのタイプがあります。A型インフルエンザは、ほ10

年ごとに変異して、世界的な大流行を引き起こしています。

  これは、先ほど表示した通りですね。まあ、もう少し正確に言うと、10年〜40年

1回程度の確率で、病原性の非常に強い、強毒型が登場してくるようです」

「はい、」

「それから...

  “H”“ヘマグルチニン”、それから“N”“ノイラミニダーゼ”と呼ばれる“糖タンパ

ク”のことです。糖タンパクというのは、糖とタンパク質が結合した、複合タンパク質

ことですね。こうしたものが、つまり、ウイルスの表面上に並んでいるわけです。

  A型インフルエンザ・ウイルスの場合、“H”は1〜15“N”は1〜9までの亜型

あります。そして、“H”と“N”の組み合わせで、ウイルスの毒性増殖の速さなどに

違いが出てくるわけです」

「うーん...」響子は、両手を組み合わせた。「今回は、同じ【H5N1型】でも、山口県

阿東町のウイルスと、ベトナムの感染者から見つかったウイルスは、遺伝子配列の

異なる別の種類だといいますよね。そういうものなんですか?」

「まあ、“H”も“N”も、ウイルス表面の、糖タンパクの分類です。遺伝子配列は、さら

にその内部の遺伝子の変異ですからねえ、」

「ええ、はい...」響子は、うなづいた。

 

「夏川さん、」堀内が言った。「こうしたウイルスは、最初の感染生物である“宿主”

中ではおとなしくしていますよね。それが、種を超えて別の宿主に感染すると、突然、

強毒性を持ち、悪さをしはじめます。これは、何故なのでしょうか?」

「それは、難しい質問です...

  まあ、その、本来の意図というのは、私たち人間には分りません。何故、そうやっ

て、生物界に膨大な被害を及ぼすのかは、誰にも分りません。おそらく、ウイルス自身

も知らないのではないでしょうか。これは、生態系や生命圏レベルの、生命進化のベ

クトルの中でのみ、理解できることなのかも知れません。

  ただ、私に言えることは、今回の【H5N1型】は、おそらくはカモあたりから来て、

ワトリに大被害を与えています。これがブタヒトに感染すると、増殖速度が非常に

上がると考えられています。

  おそらく、ブタやヒトの中の免疫系が攻撃するために、ウイルスの方も対抗して増

殖を速め、突然変異するのだろうということです。つまり、変異が速まれば、強毒化す

る確率も高まるわけです。

  それから、さらに、最も恐れている“人から人へ感染”するような変異が起これば、

“感染爆発”が起こり、人類にとって非常に大きな脅威になってきます。これは、昨年

のSARSの大流行でも分る通りです。しかも、インフルエンザは空気感染ですから、

まさに大きな脅威になります。」

「うーん...何とか、このあたりで押さえ込んで欲しいですね」

「まさに、その通りです。何とか、この冬を乗り切り低温乾燥の季節から、春の桜の

季節を迎えたいものです」

「それにしても、」堀内が言った。「去年はSARSの大流行、今年は鳥インフルエン

ザ、来期は一体どうなるんでしょうかねえ...」

「そうですねえ...」夏川は、ゆっくりと椅子の背に体を引いた。「まあ、そのために

も、国や行政機関には、しっかりとしてもらいたいですね。これからは、本当に国や行

政機関の真価が問われる時代になってきます」

「はい!地震国日本としては、地震対策でも、そうした指導力が問われる時代になり

ますね。着々と準備を進めて欲しいと思います!」

 

  〔2〕大流行を押さえ込む、対策と準備 

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≪ニワトリのレベルで押さえ込む≫ 

「ええ...さて、夏川さん、」響子が言った。「“スペイン風邪”のような、人間社会での

大流行を押さえる対策と準備ですが...何が一番肝心なのでしょうか?」

「現段階で言えることは...」夏川は、コンと鉛筆を作業テーブルに立てた。「鳥ウイ

ルスの感染を、ニワトリのレベルで押さえ込むということでしょう。ニワトリを徹底的に

処分し、消毒し、ニワトリという種の壁で感染を断ち切ることだと思います。種の壁を

超え、ブタヒトに感染して行くと、新種に変異する可能性が高く、非常に危険になっ

てきます。

  すでに、タイの動物園では、ネコ科のヒョウの感染死も確認されているようですね」

「まさに、今、息を呑むような状態に入っているわけですね」響子は、外山の方を見

た。

「そうでしょう」外山は、静かにうなづいた。「去年のSARSの大流行の事例から言っ

ても、まだ当分、油断は出来ないでしょう。SARSは3月から中国南部で拡大し、

月、5月、6月に中国大陸や台湾で蔓延し、ようやくWHOの制圧宣言が出たのが、

月の7日でした...これはもう、まさに夏だったわけです...」

「うーん...とても、低温乾燥の季節ではないですよね...どうなのでしょうか、夏川

さん?」

「それが、事実だったということですね...低温乾燥の季節という、人間の概念に当

てはめるわけには行かないでしょう。鳥インフルエンザも、このままおとなしくしていれ

ば、あるいは桜の季節には目鼻がつくかもしれませんが、去年のSARSのようなこと

もあるということですね...

  ともかく、感染爆発が起これば、夏まで尾を引くことも、十分あるのかもしれません。

もちろん、SARSと鳥インフルエンザとは別のものですから、同じになるわけもないで

すが、十分な警戒が必要です」

「はい...でも、今年は去年と違い、万全の監視体制を敷いていますよね?」

「さて、そこが問題だと思います...」夏川は、カラン、と鉛筆を放り出し、腕組みをし

た。「ともかく、ここにはろくなデータも無く、そこでの判断になるわけですが...どう

も、ベトナムやタイなどの東南アジアの地域では、ニワトリを完全に処分し、あるいは

ブタとニワトリを完全に分離しておくことは、およそ不可能だと言われます...まし

て、ブタまで全部処分するとなると...

  ブタの大量処分といえば、マレーシアのニパ・ウイルスの感染を思い出しますね

え...あれは、何時でしたか?データはありますか?」

「えーと...」響子が、首をかしげた。ノートパソコンのキーボードを、猛烈に叩き始め

た。「うーん...ニパ・ウイルスの発生は、1998年の9月ですね。マレーシア北部で発

生し、南部へ拡大しました。症状は、脳炎ですね。その脳炎の原因となる新種のウイ

ルスが、ニパ・ウイルスです。“ニパ”は...そのウイルスが最初に分離された地名で

す...

  ええと、特徴は...ブタに接触した人だけが感染しました。ヒトからヒトへの感染は

確認されていません。マレーシア政府は、感染区域を指定し、74万頭のブタを処分

ています...」

「いずれにしても、」夏川が言った。「とても、安心できるような監視体制ではないようだ

ねえ...私は、現場にいるわけではないので分りませんが、まさに、祈るような気持

ちでいます。ともかく、ある意味では、時間との戦いになるでしょう」

「そうですね」外山が言った。「そんな気持ちで、春が来るのを待つということですか

ね、」

「はい!」響子が、うなづいた。「でも、ともかく、去年のSARSの大流行は、1つの教

訓として、生かされているのではないでしょうか?」

「まあ、それは確かにあるでしょう」夏川がうなづいた。

「日本から、“抗インフルエンザ剤”が送られたというようなニュースがありましたね」外

山が、夏川に言った。「それは、どんなものなのですか?」

「そうですねえ...ともかく、すでにベトナムとタイで、20人ほどが死亡しています

が、有効なワクチンが無いようですね。それから、変異した場合は、新種のウイルス

が確認されない限り、それをもとにした“弱毒生ワクチン”は作れません。

  しかし、いわゆる“薬”は、色々な角度から開発されているわけです。例えば、ウイ

ルスというのは、表面にそれぞれ独特の形の“スパイク”と呼ばれる突起があり、そ

れが細胞の“レセプター”に結合し、それによって細胞内に侵入できるわけです。しか

し、この細胞側のレセプターを、“ニセモノ”で事前に塞いでしまうというような薬が開発

されていでしょう...テレビのコマーシャルなどでもやっていますがね。まあ、実際に

送られたものが、どんなものか、詳しいことは分りませんが...」

≪我々、個人レベルでの対策≫    

「うーん...」響子が、まばたきして言った。「私たち個人としたら、どんな対策をした

らいいのでしょうか?」

「身近なものでは、“インフルエンザ・ウイルスを通さないマスク”なども開発されてき

ています。それから、一般的に、最も手軽で効果的なのは予防は、“うがい”の徹底

と、薬用石鹸などによる“手洗い”でしょう。これは、普通の風邪や、SARSにも有効

ですし、既存のインフルエンザ・ウイルスにも有効です」

「それが、基本ということでしょうか?」

「まず、今、私たちにできるのは、そうしたことです。特に食事などの前には、手洗い

は徹底すべきです。指や爪の間にウイルスをつけたまま、食物をつかんで口に入れる

のは、非常に危険です」

「はい」

  ≪鶏肉、タマゴ...ペットは...≫    wpe74.jpg (13742 バイト) 

 

「さて...」堀内が笑った。「非常に専門的になり、私の出番はあまりないですねえ。

そこで、夏川さん、1つ聞きたいのですが、鶏肉やタマゴは、何処まで安全なのでしょ

うか?タイの動物園で、ヒョウトラが、鶏肉を食べて鳥インフルエンザに感染したと

いうニュースがありましたが、」

「そうですねえ...

  私には、その動物園の詳しい状況は分りません。が、おそらく、ナマの鶏肉を食べ

たのでしょう。それは、確かに危険だと言えますね。感染地域のナマの鶏肉を食べる

というのは...そして、ネコ科の希少動物が感染したと...」

「確かに、そうですね...それにしても、ネコ科は初めてですね」

「ま、ともかく...鳥インフルエンザ・ウイルスは、75度で1分間加熱することで死滅

します。したがって、加熱調理すれば、食べた事よる感染は、まずありえませんね」

「うーむ...すると、何ですか...加熱する前の鶏肉には、ウイルスが含まれている

危険があるということでしょうか?それも、触れると、危険なのではないでしょうか?」

「まあ...」夏川は、苦笑した。「矛盾した言い方になりますが、日本には“食鳥検査”

というのがあります。したがって、病気にかかった鶏肉が売られることは、無いと言い

ます。もちろん、日本には、生きた鶏が売り買いされるような“市場”はありませんから

ね...ハクビシンのような、野生動物の市場もありません。これは、SARSや鳥インフ

ルエンザのような感染症対策では、非常に有利な点です」

「うーむ...そこが、他のアジア諸国とは違いますね。ウイルスは、細菌と違い、生き

た生物体を宿主としますからねえ」

「ま、そういうことです...

  それから、鶏肉に関しては、専門家も、もし間違って病気の鶏肉が店頭に並んだ

場合でも、“変色”していて、まず食べる気にはならないと言います...まあ、これ

も、程度の問題で、微妙な所はあると思いますがね」

「はい...ともかく、鶏肉の流通段階においても、しっかりと検査し、監視していると

いうことですね。その上で、加熱調理すれば、完全だということですか、」

「そうです。それから、タマゴですが、ウイルスに感染した時点で、鶏はタマゴを産まな

くなります。それから、タマゴの殻にウイルスが付着していたとしても、全て消毒後に

出荷されるので、心配はないと言っています。

  まあ、先日、タマゴの偽装表示が問題になりましたが、額面どおりに受け取れば、

そういうことだということですね」

「しかし、どうなんでしょうか、夏川さん...タマゴもやはり、ナマはさけた方がいいの

でしょうか?」

「そうですねえ...鶏肉と同じ意味で、加熱調理すれば、完璧だとは言えますね」

「あの、夏川さん、」響子が言った。「九州の大分県で、ペットのチャボが鳥インフルエ

ンザに感染したというニュースがありました。ペットはどうなのでしょうか?」

「ペットの方は、今までは調査対象外でした。しかし、今後、見直されるのではないで

しょうか。

  ちなみに、鳥に限らず、ペットに触った後は、薬用石鹸などで、しっかりと手を洗っ

て欲しいですね。そして、糞尿は、すみやかに処理して下さい。それらが、別のものに

触れたり、乾燥して風に舞ったりすると、感染が拡大する恐れがあります。

  感染症対策では、常に最悪の事態を考慮し、細心の注意を払って対処して欲しい

ですね。小さな油断が、大感染につながり、大勢の人の命を危険にさらします」

「まさに、その通りですね」

「あの、スズメなども、ウイルスを運んでくるのかしら?」

スズメカラスなどは、インフルエンザには感染しないと言われています。し

かし、タイの動物園ではネコ科のヒョウが感染死していますからねえ...ともかく、ウ

イルスは生きていますし、変異します。絶対という言葉は、使えませんね...」

「はい!」

 

**********************************************************************************

「ええ、響子です...               

  現在、鳥インフルエンザの動向は、まさに息を呑んで見守っている所だと思いま

す。今後の、推移に注目してください。

  そのために、当・危機管理センターでは、【インフルエンザ掲示板】を用意しました。

今後は、そちらの方で、新着情報を書き込んで行きます。どうぞ、ご期待ください!」

 

 

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