企画/総合管理センター/危機管理センター/バイオハザード/(生命科学)/エボラ出血熱 |
アフリカ発の新興感染症・・・Ebola hemorrhagic fever /エボラ出血熱 ・・・・・ 致死率50 ~ 90%
西アフリカで猛威/・・・ ギニア、シエラレオネ、リベリア・・・ナイジェリア!
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トップページ/NewPageWave/Hot Spot/Menu/最新のアップロード 担当 : 里中 響子 |
プロローグ | 2014. 8. 6 | |
No.1 | 〔1〕西アフリカで猛威/ギニア、シエラレオネ、リベリア! | 2014. 8. 6 |
No.2 | 〔2〕感染拡大の実態は・・・ | 2014. 8. 9 |
No.3 | <エボラ・ウイルス・・・とは?> | 2014. 8.12 |
No.4 | <ウイルスの形態・・・ 潜伏期間、初期症状は・・・ > | 2014. 8.12 |
No.5 | 〔3〕 WHO/【緊急事態宣言】 後の状況! | 2014. 8.18 |
No.6 | 〔4〕 さらに感染拡大・・・感染者/2万人超の恐れも!! | 2014. 9. 9 |
No.7 | 〔5〕 エボラ/収束出口見えず・・・ 弱音も! | 2014. 9.20 |
No.8 | <・・・・・ 第2段階に突入/欧米で2次感染!・・・・・> | |
No.9 | 〔6〕 アメリカとスペインで・・・女性看護師が、相次いで2次感染! | 2014.10.17 |
No.10 | 〔7〕 アメリカ/ニューヨークに感染者!
感染急拡大・・・感染者/1万人を突破! |
2014.11. 3 |
No.11 | <ワクチンと・・・ファビピラビル/アビガンの実情は・・・> | 2014.11. 3 |
No.12 | <日本の状況は・・・> | 準備中 |
No.13 | ||
No.14 |
<参考文献>
東京新聞/2014年8月5日 ・・・エボラ出血熱 西アフリカで猛威 東京新聞/2014年8月6日 ・・・エボラ熱 「制御不能」 東京新聞/2014年8月8日 ・・・エボラ熱 リベリア非常事態宣言 東京新聞/2014年8月29日 ・・・エボラ熱 感染者2万人超も /WHO 東京新聞/2014年9月3日 ・・・エボラ感染地域 食糧確保に懸念 東京新聞/2014年9月5日 ・・・エボラ熱死者 1900人超える 東京新聞/2014年9月7日 ・・・エボラ収束 出口見えず 2000人超える 東京新聞/2014年10月25日・・・エボラ熱 急拡大 ニューヨーク波及 その他
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<・・・・・ エボラ出血熱の概略 ・・・・・>
「ええ、響子です...」響子が、日笠を揺らし、頭を下げた。「猛暑が続いています... 今回は、《軽井沢基地》から、《危機管理センター》の緊急レポートを行います。《危機管理センター》 /本部では、厨川アンが最新情報をトレースしています。彼女は、この方面もエキスパートですので安心 です。そして軽井沢には、バイオハザード担当/夏川清一さんに来ていただきました...」
「ええ...」響子が、梢の影の揺れる芝生へ歩き出した。「エボラ出血熱については、すでにかなりのデー タを蓄積していると思っていたのですが、ページが立ち上っていませんでした。そこで改めて、ページを立 ち上げました。そういう次第で、とりあえずエボラ出血熱の概略を、説明して置きましょう...」 響子が日笠を置いた。梢の影の映るテーブルから、タブレットを取り上げ、両手で操作した。 「うーん...」響子は言いながら、椅子に掛けた。「エボラ出血熱というのは... フィロウイルス科/エボラウイルス属の...エボラ・ウイルスを病原体とする、急性ウイルス性感染症 です。出血熱の1つです。 エボラの名は...最初の発病者の出た地域の、川の名前から命名されたことは有名です。当時の、ザ イールのエボラ川です。現在は、アフリカ大陸中央部/コンゴ民主共和国になります。その最初の発症と、 集団感染の後、アフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行をくり返しているようです。致死率は50~90%
と、非常に高いようです。 性を発揮するようです。“体内に・・・数個のエボラ・ウィルスが侵入しただけで・・・容易に発症”するようで すわ。“バイオ・セーフティー・レベルは・・・最高度の4”に、指定されています。 ちなみに...自然宿主の特定には至ってはいないようですが、コウモリが有力とされています。サルか らの感染例はありますが、キャリアではないようです。ヒトと同じで、終末宿主のようです。現地ではサル の燻製(くんせい)を食する習慣があるとかで、これを原因とする噂(うわさ)もあるようです... それから...ええと...2005年12月1日付の英科学誌 『ネイチャー』 に...ガボンの、フランスビル 国際医学研究センターなどのチームの調査によると、ということですが...オオコウモリ科/ウマヅラ・コ ウモリ、フランケオナシケンショウ・コウモリ、コクビワフルーツ・コウモリ等が、エボラ・ウイルスの自然宿主 とされているようです。現地の食用コウモリからの感染を、研究論文で発表されているもの...ということ です。
基礎知識は、これぐらいでいいでしょうか。あとは中で、夏川清一さんと一緒に考察していきます」
〔1〕 西アフリカで猛威/ギニア、シエラレオネ、リベリア!
「ええと...」響子が、椅子に掛け、スクリーンボードのアフリカの地図を見た。「赤い所が西アフリカのギ ニア共和国...拡大図がこれですね。 隣に...シエラレオネと、リベリアがあります。ここが、猛威を振るっている3カ国です。そして、その隣 にはコートジボワール(象牙海岸)、ガーナとあり...ナイジェリアがあります。ナイジェリアは人口1億7000 万人の大国ですが、このあたりにもすでに、感染が広がっているようです...」 「うーむ...」夏川が、唇をこすった。「ギニアの首都/コナクリからの報道によると... WHO(世界保健機構)事務局長/マーガレット・チャンが...8月1日に...ギニア、シエラレオネ、リベリ アの3国の首脳に、こう警告しています... “防止策を上回る勢いで・・・感染は急速に拡大している! (より強力な防止策なしには・・・)状況は破滅的だ!”
「そうですね...」響子が、うなづいた。「いよいよエボラ・ウイルスが、暴れだした観がありますわ」 「WHOによると、」夏川が言った。「今年3月に流行が確認されてから、疑い症状も含め、3カ国で感染者 は1440人、その内、826人が死亡しています」 「はい...」響子が、うなづいた。 「“国境なき医師団(/本部パリ・・・現地に医師や衛生対策専門家を80人ほどを派遣している・・・国際NGO)”の、アフリカ/エボ ラ出血熱対策を統括する、ピエール・モンディアラは...
...と警告しています} 「はい...」響子が言った。「過去最悪のレベルになっているようですわ... これまでは、農村部中心の大量感染だったのですが、今回は各国の首都にまで感染が広がり、混乱が 増幅している様子です。 医療従事者が感染するケースも多くなっているようですね。死者826人の中には、60人以上の医師・ 看護師が含まれています。 医師といえば...アメリカ人の男性医師が、リベリアで感染し、2日に特別機で帰国したのは、テレビ・ ニュースでも流されました。アメリカはこの患者の入国に、厳戒態勢で臨んだことが、ニュースになったよう です。 “命を賭した医師”を最後までホローするアメリカの姿勢は...是非は別にして、“アメリカン・スタンダ ード・・・世界標準”は、まだ健在なことを示しているようです。日本では逆に、特に最近の安倍政権下で、 “国家に対する・・・愛国心が喪失するような事態”が続いているので、特にそう感じるのでしょうか...?」 「はは...」夏川が、アゴに手を当て、モニターを見た。「まだ...拡大しているようですねえ... リベリアの首都/モンロビアや、シエラレオネの首都/フリータウンなどでは、路上で倒れ、放置されて いる遺体もあるようです。専門知識を持つ、人手が不足しているようですねえ...」 「うーん...」響子が、口にコブシを当てた。「生々しいですね。接触・感染を恐れて、遺体の回収が遅れ ているわけですね?」 「そうですが...」夏川が言った。「むやみに回収しても、確かに、感染拡大となってしまうのです... 逆のケースですが...農村部では、死者を弔う親族が、遺体に抱きついたり、遺体を拭いたりして、感 染するケースが多いのだそうです。そして、別の村に戻って、そこでまた感染が広がると言います...」 「うーん...」 「過去の大量感染は...」夏川が言った。「ザイール/コンゴやガボン、南スーダンなど、アフリカ中部が 中心でした。しかし、今回の流行はアフリカ西部で、知識が十分に行き届いていないようです...」 「そうですか...」 〔2〕 感染拡大の実態は・・・
「ええ、アン...」響子が、インフォメーション・スクリーンで、《危機管理センター》 本部の風景を眺めな がら、アンを呼んだ。「その後の、感染拡大の様子はどうでしょうか?」 「そうですね...」アンが赤毛を振って、カメラの方を向いた。声に緊張していた。 「少数ですが、ナイジェリアとサウジアラビアでも、エボラ出血熱での死者が出ていますわ... サウジアラビアでは、シエラレオネに商用で渡航した男性が死亡しています。6日現在、死亡者が2人 になっている中で、 感染疑いの隔離病棟の40歳男性が新たに死亡したようです...」 「2人目は...」響子が言った。「看護に当たった、人看護師とか?」 「そうです...」アンが、うなづいた。「渡航男性と接触した97人のうち、27人しか身元が特定されてい ないようです。今後の推移が、非常に心配されますわ。このケースは、世界各国でも起こる可能性があり ます」 「うーん...」響子が、口にコブシを押し当てた。 「いずれにしても...」夏川が、頭に手を当てて言った。「初動が、勝負になります....」 「そうです!」アンが、上ずった声で言った。「何故、3月末頃、もっと初動で叩けなかったのか... ともかく、リベリアの首都/モンロビアでは...メインの患者受け入れ施設の、カトリック病院の院長が 感染で死亡し、さらに6人も感染確認され、病院が閉鎖に追い込まれています。他の病院でも、医師や看 護師が感染を恐れて出勤しなくなりました。医療システムが、機能停止に陥っているようです。早急な対 策が必要です」 「それで...」響子が言った。「現在は、どのような対応を?」 「感染患者は、」アンが、額を手で押さえた。「水や食料を与えられないまま、放置されている状態だと、報 道されています」 「これは...」夏川が、絶句した。「大変だ!」 「首都/モンロビアの路上では...」アンが言った。「エボラ出血熱で死亡した遺体が遺棄されているよう です。家族が、自分自身への感染や隔離を恐れて、路上に捨てている様だ、と報じています」 「はい...」響子も、絶句した。 「モンロビアは...」アンが言った。「救急車のサイレンの他は、静まり返っていると言います」 「はい...」響子が、うなづいた。「飢餓でも、そうですが、“文明崩壊・・・大量死”は、静かに進行します わ... “21世紀・大艱難”では...こうした“パンでミック”や、“世界経済の破綻”、“気象変動による・・・大干 や飢饉”が、輻輳(ふくそう)して到来します。これは、時間の問題ですわ。私たちは、あまりにも、暴走し過ぎ たのです。 今回の、“エボラ・ウイルスの・・・暴走!”も...“地球生態系/ガイアのバランス作用・・・全生態 系のホメオスタシスの作用”でないとは...断言できないわけです。 いずれ...“人口爆発と・・・人類文明の暴走”は...過去、少なくても5回の、“地球生命圏の・・・ 種の大量絶滅”に見られるような、相転移を起こすでしょう。地球表層の生態系の風景が激変します。人 口が激減しても、軟着陸は難しい状況に入っていますわ...」 「ま...」夏川が、淋しく笑った。「覚悟はしていますが...若い人が気の毒だ」
「ともかく...」アンが言った。「ここしばらくが、ガン細胞の転移と同じような、勝負どころになります... “エボラ・ウイルス”は、接触感染です。“インフルエンザ・ウイルス”や、近年の新型肺炎・SARSの“SA RS・コロナウイルス”のような、空気感染ではないのが救いですわ...」 「でも...」響子が言った。「死亡率/50~90%は、驚異的な高さですわ、」 「そこが、問題ですね...」アンが、うなづいた。 「あ、アン、引き続き監視をお願いします」 「はい...」アンが、大きくうなづいた。「あ...緊急ニュースが入りました! ええと、今日、8月8日現在...WHO/世界保健機構が、エボラ出血熱の状況を、【国際的に懸念 される・・・公衆衛生上の緊急事態】 と宣言しました。西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱の感染が、 国際的に広がる恐れがあるということです...事態が急迫しています...」 「はい...」響子が、うなづいて、目を見張った。
<エボラ・ウイルス・・・とは?> A
「ええ...」夏川が、スクリーン・ボードを見た。アフリカ大陸の地図と、“エボラ・ウイルス”の画像を表示し ている。 響子も、髪留めに手をやり、のぞくようにスクリーン・ボードを眺めた。 「アフリカ大陸の...」響子が言った。「赤い所が...旧ザイール/コンゴ民主共和国ですね。エボラ川 があり、その近くの村で、最初の患者が出たという... ええと...キンシャサの郊外に Ebola(エボラ)という地名がありますわ。近くに北に向かって流れて、大 河/コンゴ川のに流れ込んでいる川がありますが...これがエボラ川でしょうか?」 「うーむ...」夏川が言った。「そうですねえ... キンシャサはコンゴ民主共和国の首都/人口約900万人のアフリカ有数の世界都市です。人口約60 万のブラザビルが、コンゴ川をはさんで対岸にありますね。うーむ...首都圏ですが、地名がある以上、 この辺かも知れません。あとで、よく調べてみましょう...」 「はい...」 「上の“エボラ・ウイルス”の写真を借用した、『医療・医学ニュース』によれば... この“エボラ・ウイルス”の写真は新種で...致死性の“エボラ・ウイルス”としては“ザイール”や“スー ダン”と呼ばれる型/タイプに続き、3種目だということですね。 ええ...このウイルスは致死率/36%以下で、致死率/80~90%の“ザイール”、そして致死率/ 50~55%の“スーダン”より、だいぶ低いようです。まあ、色々な型があり変化しているということですね」 「これは...」響子が、細い指をさした。「何処で発見されたのでしょうか?」 「ウガンダです...」夏川が言った。「これは、2008年当時のニュースです。“エボラ・ウイルス”の一端を 知ってもらうために、取り上げてみました」 「はい、」 「この新種ウイルスは... 4種の既知の病原菌と結合した形態で、死亡率/36%だそうです。医療チームは感染が確認された ウガンダの地名にちなんで、暫定的に“ブンディブギョ・ウイルス”(Bundibugyo ebolavirus)と命名したとありま す。 既存タイプと比べ、DNA配列が30%以上も異なるために、発生直後には“エボラ・ウイルス”であるこ との確認に手間取ったといいいます。チームはこのウイルスを迅速に特定できる診断法の開発が必要だ と指摘しています。まあ...6年ほど前の話になります。今は、もう少し研究が進んでいるでしょう」 「でも...」響子が言った。「特効薬のワクチン開発は...まだということですね?」 「そうです」夏川が、うなづいた。「直近のニュースでも、症状を緩和する対処療法しかないと言っています」 「はい...」響子が、手を組んだ。「ではまず、感染後の潜伏期間とか、初期症状とかをうかがいましょう か。それから、感染予防ですね」 「そうですな...」夏川が、マウスを取り上げた。 <ウイルスの形態・・・
潜伏期間、初期症状は・・・ > B
夏川が、スクリーン・ボードの画像をスクロールさせ、別の“エボラ・ウイルス”を表示した。響子が、それ をのぞくように眺めた。 「まず...」夏川が言った。「潜伏期間と、初期症状を簡単に説明してしましょう」 「あ、はい...」響子がうなづいて、姿勢を正した。 「ええ...」夏川が、アゴに手を当てた。「ニュースなどでも流されていますが... 潜伏期間は、2日~21日です。通常は 7日~10日 と言われています。そのあと...突然の高熱、結 膜炎、咽頭痛、筋肉痛、頭痛、下痢など...“重症の・・・インフルエンザの様な症状”...が見られ、 次いで、胸痛や腹痛、吐血、下血などの出血症状が起こります。 今の所...自然界からの感染経路はコウモリなどが指摘されていますが、不明ということです。人から 人への感染経路は、血液、体液、排泄物との直接接触...そして、飛沫などによっても感染します。 特別な治療法はなく...輸液、呼吸や心臓の働きの管理など...対症療法が基本になる様です。さ て、次に、この“エボラ・ウイルス”について、もう少し、詳しく説明しましょうか」 「あ、その前に...」響子が言った。「アンから、感染のリアルタイムの情報を聞きましょうか」 「はい...」夏川が、うなづいた。体を後ろへ引いた。 〔3〕 WHO/【緊急事態宣言】 後の状況!
「ええ、アン...」響子が、《危機管理センター》 の中のアンに呼びかけた。 「はい!」アンが、長い赤毛を振り、インフォメーション・カメラの方を向いた。 「8月8日に、」響子が言った。「WHO/世界保健機関の...【国際的に懸念される・・・公衆衛生上の 緊急事態宣言】 ...が出ているわけですが、その後の状況をお願いします」 「はい、」アンが、眼鏡の真ん中を押した。「そうですね... 次第に、分かってきたコトもありますが、依然として、“コントロール不能の状況!”が続いています! 死者も、増え続けていますわ!感染は拡大しています!」 「うーん...」響子が、コブシを握った。「その様ですね...」 「8月12日の、」アンが言った。「WHOの発表によれば... 現時点での...エボラ出血熱による死者数は1013人、感染者数は1848人ということです。それか ら、WHOは12日、エボラ出血熱について...“安全性等が未確立の・・・開発中の未承認薬を・・・ 条件付きで治療に使用することを・・・容認する”...と発表しました。 条件は...“治療の透明性の確保/インフォームドコンセント(/患者に対する十分な説明と同意)/治療 法の選択の自由の尊重”...などです」 「特効薬/ワクチンでは、ないということですね?」 「そうです...」アンが、うなづいた。「エボラ出血熱には、効果が確認されたワクチンや治療薬というもの が、まだありません。 WHOが容認したこの“未承認薬”は、“ZMapp”と呼ばれていますが...まだ、“実験段階にあり ・・・人間に投与されたことはなかった”...というモノです。 それを...リベリアで感染した米国人医師ら2人が...“承知の上で・・・投与を受けた”...ようです わ。2人は、“その後・・・アメリカに帰国・・・快方に向かっている”...とされています。詳細は分かり ませんが、研究開発チームが全面的にホローアップしているはずです」 「はい、」 「感染地域の西アフリカでは...」アンが、続けた。「この“未承認薬/ZMapp”の使用を求める声が上 がっていました。専門家の間でも、一定の評価は得ている、ということでしょうか。同時に、“解決策のな い・・・事態の深刻さ” も示しています」 「うーん...」
「ええ...」アンが、宙を見た。「日本では... “レベル7の原発事故/=炉心溶融・ベント解放” の折...官房長官が、“直ちに・・・危険ではな い”、とくり返していましたが...あの時、実は...とんでもない事態が輻輳(ふくそう)して起こっていまし た。パニックを起こさないことも大事ですが、“スピィーディー(放射性物質拡散の、風向きシュミレーション)”のような 情報を、的確に発信することの方が大事ですわ。今回、日本全体の対応を見ていて、改めて、それを感じ ました」 「はい!」響子が強くうなづき、上体を乗り出した。「私も、そう思っていました... 日本の政府・マスコミは...今回のエボラ出血熱でも、“直ちに・・・危険ではない”と、楽観論を展開 しているようにも感じています。何か、遠い異国の話だと...」 「その通りです、」アンが、唇を結び強くうなづいた。 「大事なのは...」響子が言った。「パニックを防ぐための楽観論ではなく... 日本で感染拡大した場合、真剣な対応策に結びつける、ということですわ。“首を縮めて・・・やり過ご す”、というのでは、“レベル7・原発事故”の時と同じです。“巨大な災厄”を内包していた場合、大きな 禍根を残します。 “寝ている子を・・・起こすな!”と、対策をほとんど取らず、責任も取らず、“安全神話”の中で国民に 被害を広げるというやり方は...“レベル7=過酷事故”の前と...体質的に同じでなのかも知れませ ん。 夏川さん...それを回避するための、具体的対策というものは、どのようなものがあるのでしょうか?」 「そうですねえ...」夏川が、アゴを撫でた。「現場では、常に緊張感をもってやっています... しかし、司令塔が、“首を縮めて・・・やり過ごす”、というのではでは、まさに危機でしょう。官僚的体質 というものは、そう簡単に、変わるものではありませんな...」 響子が、無言でうなずいた。 「“真の対策”としては...」夏川が言った。「響子さんがくり返し提唱しているように... “万能型・防護力”/〔人間の巣/未来型都市/千年都市〕 を全国展開していくことでしょう。そして、 とりあえず、ということでは...〔人間の巣型・災害対策拠点〕 を、メガロポリスに展開していくことでしょ うか。それが、手始めでしょう。 しかし、“国土強靭化”と選挙では言いながら、政府与党は沖縄/辺野古に米軍基地などを造りたがっ ています。相変わらず、安倍政権のやっていることは、方向がおかしいですな...“戦争ゴッコ”での脅威 などは、“真の脅威”ではないですねえ...」 「はい!」響子が、大きくうなづいた。「“パンデミック”の際にも... 〔人間の巣型・災害対策拠点〕 は、隔離施設として展開するということですね?“激化している・・・ 自然災害” に対しても、まず、〔人間の巣/未来型都市/千年都市〕 の展開を開始して行くと...」 「そうです、」夏川が、うなづいた。「こうした戦略的展開は、現場の訓練ではどうにもなりません」 「アン...」響子が、《危機管理センター》 の中へ呼びかけた。 「はい、そういうことですわ、」アンが、口元に微笑を作った。「こうした、“世界的・危機の折”に、本格的 な対策を、具体化して欲しいということです。 国民の側も、遠い異国の出来事という雰囲気で、緊張感がありません。これは紛れもなく、“安全神話 の中の・・・惰眠” ですわ。響子が、毎回言って来たことですが、このエボラ出血熱の感染拡大も、“21 世紀・大艱難” の、“序曲の1つ”と考えるべきですわ。その対策を、始めるべきです!」 「あ...」響子が、満面の笑みを浮かべた。「ありがとうございます!アン!」 「たまには、ね、」アンが、白い歯を見せて笑った。
「ええと...」アンが、赤毛を両手で絞って言った。「いいですか?」 「あ、はい...どうぞ、アン」 「事態は...どうやら、死者・感染者の数字を超えて、深刻なようですわ」 「あ、そこを、詳しく!」響子が、鋭く言った。 「そうですね...」アンが、眼鏡の縁に手を当てた。「そういう、雰囲気なのですが、実態が分からないよう です... そして、まさにそのことが、“解決策のない・・・事態の深刻さ” を示している、ということでしょうか。で も、時間と共に、全体像は浮かび上がって来ると思います。 私も、“根拠のないの楽観主義・・・安全神話”は、無用にすべきだと思います。マスコミも国民も、真 剣に、この“文明の危機”に対峙するべきだと思います」 「はい!」響子が、コクリとうなづいた。 「ええ...」アンが言った。「ともかく... “未承認薬/ZMapp”の使用が容認されても、量は限定的です。投与の優先順位なども検討される 状況です。そして、この現地での臨床試験の状況によって、量産されるかも知れません」 「“現在・・・臨床試験”が進行しているというわけですね?」 「そういうコトになりますわ...」アンが、唇を結んで、うなづいた。「後は、祈るだけです... ええと...この“未承認薬/ZMapp”について、もう1つ、情報があります。リベリアで“エボラ・ウイル ス”に感染して、スペインに帰国していた神父が、12日、死亡したようです。 スペインの首都/マドリードの入院先の病院が、明らかにしています。死亡した神父にも、“ZMapp” が、投与されていた、と言います...」 「はい、」響子が、うなづいた。「でも、死亡したということですね?」 「そうです。神父は75歳と、かなり高齢だったようですわ」 「そうですか...」 「“コントロール不能/混沌とした状況”ですが...良いニュースも1つあります」 「はい、何でしょうか?」 「サウジアラビア政府が...」アンが、モニターに目を移した。「シエラレオネに渡航歴のある男性が、エボ ラ出血熱と疑われる症状で死亡したと発表していましたが...これが、検査の結果、“エボラ・ウイルス” には感染していないと分ったそうです」 「はい、」 「ええ...サウジアラビア保健省は... 検体をアメリカの“CDC/疾病対策センター”に送って、詳しい検査を進めいましたが...結果... 感染していないことが分かったと言います。サウジアラビア政府は、ドイツの研究所にも検査を依頼して、 死因を特定するそうです」
「アン...」響子が、体を乗り出して言った。「ナイジェリアの状況は、どの様になっているのでしょうか?」 「あ、はい...」アンが、大型/壁面スクリーンを、アフリカ西部の詳細地図に切り替えた。「ナイジェリア は、サウジアラビアのようにはいきません...」 響子も、壁面スクリーンを眺めた。 「ええと...」アンが、赤毛を指ですいた。「ワシントン・ポスト(/米国内で発行部数5位の新聞)の報道では... ナイジェリアで現地時間8月8日...新たに4件のエボラ出血熱の疑い患者が報告され、その全員に、 7月25日に死亡した...リベリア系/アメリカ人のパトリック・ソーヤー氏との接触歴があった、と言って います。つまり、感染源はたった1つだということです。 空路で到着し、飛行機を降りた直後に、激しい嘔吐や下痢の症状が出たと言います。同氏は隔離されて、 治療されていましたが、7月25日に死亡...同国保健相は“エボラ出血熱の感染が・・・確認された”と 発表しています...」 「はい...」 ソーヤー氏の手当をした、ナイジェリア人看護師も感染...8月6日に死亡が報告されています。WH Oの報道官は、ワシントン・ポストに対し、“新たな患者4名は・・・全員がパトリック・ソーヤー氏との接触 者”であり...清掃係や医療従事者が含まれる...と語ったと言います」 響子が、うなづいた。 の4件を含めて、13件と言っています。また... 8月8日、ナイジェリアのジョナサン大統領が...エボラ出血熱の流行に対処するため、国家非常事態 を宣言しています...」 「はい...」響子が、夏川の方を見た。「抑え込めない、というのが心配ですわ」 「そうですねえ、」夏川が、肩を傾げた。
〔4〕 さらに感染拡大・・・ 感染者/2万人超の恐れも!!
8月28日、ジュネーブで...西アフリカで流行するエボラ出血熱の封じ込め対策について、ロードマッ プ(行程表)を発表しました。
WHOは...感染者数が、“最終的に・・・2万人を超える恐れがある!”、と警告しています。“今後 6~9カ月間で・・・収束を目指す!”、としています。 感染規模が...想定よりも大きい恐れが出てきて、“流行の長期化は・・・必至の状況!”、になった ようです。各国政府や国際機関は今後、ロードマップを基づき、いっそうの支援が求められることになりま す。 WHOは...ロードマップの中で、“感染が深刻な多くの地域では・・・実際の感染者数は報告より ・・・2~4倍は多いと推定。そこから・・・2万人超の感染拡大を推計・・・”...しているようです。
それから、ナイジェリアでは...8月28日、南部の ポートハーコートで、新たな感染が発覚しています。 西部の最大都市/ラゴス以外での感染は、初めてだということです。
それから...9月3日...FAO/国連食糧農業機関は9月2日...感染地域のギニア、リベリア、シ エラレオネの3カ国での、“食糧確保に重大な懸念”を表明しています。ええ、“特別警報”を出し、国際 社会の支援を求めています...」 「ええと...」夏川が言った。「そうですねえ... 感染地域の封鎖などで、人や物資の移動が制限されています。まず、食糧不足、それから各種の医薬 品類が不足し始めます。現地はまだ、それほど深刻な段階ではありませんが、“特別警報”が出たわけ です。 ライフラインが滞(とどこお)ると、二次的犠牲者の方が、本来の感染症犠牲者を大幅に上回ることもある わけです。非常事態下では、弱者から犠牲になって行きます。慢性疾患の患者などにも、通常の薬剤が 届かなくなり、小さなケガなどでも、抗生物質が無いために、死に至るケースも出てきます」 「はい、」 「飢餓が...総じて体力を奪い...弱者から倒れて行きます...」 「でも...」響子が言った。「今は、まだ... WHOやFAO(国連食糧農業機関)の管理下にあり...国際社会が支援しているわけですね...?」 「そうです...」夏川が、ため息をついて、うなづいた。「しかし... 食料搬送が困難になり、市場での食料取引が、機能不全に陥りつつあるようですねえ。パニックに陥っ た市民が買い占めに走り、さらに食糧不足や、価格高騰を招いているようです」 「響子...」アンが、インフォメーション・スクリーンの中で呼んだ。 「あ、はい...」響子が、髪に手を当て、スクリーンを見た。 「ええと...」アンが言った。「FAOによると...」 「はい、」 「リベリアの首都/モンロビアでは... 8月の数週間で...キャッサバイモの価格が1.5倍になっていますわ。感染地域でも、日本の様に、コ メなど主要穀物の収穫期が迫っています。ところが、人の移動制限で労働力不足となり、穀物生産に、支 障が出てくる恐れもある、とのことです」 「うーん...」響子が、うなづいた。「そういうことに、なるわけですか...」 「そうです...」アンが言った。「そして...その労働力が、経済を動かし、社会を動かしているわけです」 「はい...」響子が、唇に手を当てた。 「WFP/国連世界食糧計画(/本部はイタリアのローマ)では... 感染地域の約130万人に...6万5000トンの食糧供給を目指し、“緊急援助体制”に入っています」 「はい...」響子が、うなづいた。「ありがとうございます、アン。ええと、さらに新しい情報では...
9月3日に...WHOのマーガレット・チャン事務局長は、アメリカのワシントンで記者会見し...エボ ラ出血熱の死者が、1900人を超えたことを明らかにしました。感染確認・感染疑いの患者は、約3500 人になっています。 8月28日(/数日前の発表)は、死者1552人、患者数3069人ですから...わずか数日で死者数で350 人ほど、患者数で430人ほど増えています。急速に感染拡大している状況が分かります。 WHOのマーガレット・チャン事務局長は...“流行は・・・さらに拡大している!”と強調し...国際 的な支援強化を強く要請しています」
「響子...」アンが、スクリーンの中で呼んだ。 「はい、どうぞ...」響子が、少し遅れて、顔を上げた。 「WHOは、9月3日...」アンが言った。「ナイジェリア南部/ポートハーコートで... 死亡した男性医師の妻ら...2人の感染が、新たに確認されたと発表しています。この医師と接触し、 感染リスクの高い人が約60人存在し...感染が急拡大する恐れがある、として警戒を強めています」 「南部の、」響子が言った。「 ポートハーコートですね?」 「そうです、」アンが言った。「南部の港湾・工業都市です... ラゴスと ポートハーコートは、共にギニア湾に面した、西部と南部の港湾都市です。かなり離れていて、 空路でも結ばれています。あ、ナイジェリアの首都は、国土のほぼ中央のアブジャですわ。人口が約1億 7000万で...最大都市がラゴスです...」
「うーん...」響子が、頭をかしげた。「ナイジェリアの様子を、もう一度、整理してもらえるでしょうか?」 「あ、そうですね...」アンが、うなづいた。「ナイジェリア保健省は... 9月3日...南部のポートハーコートで、エボラ出血熱の患者が1人死亡したことを明らかにしました。 ポートハーコートでは...8月22日に、医師がエボラ出血熱で死亡しています。新たに死亡したのは、こ の医師と同じ病院に入院していた患者のようです。ナイジェリアでの死者は、これで7人目になったわけ です。 あとの5人は...最大都市/ラゴスで死亡しています。うち1人は、感染したままナイジェリアに入国し たリベリア人の患者。残る4人は看護師で、ポートハーコートで死亡した医師と共に、このリベリア人の治 療を担当していました」 「そのリベリア人というのは、」響子が言った。「例の、リベリア系/アメリカ人...パトリック・ソーヤー氏で すね?」 「そうです... ナイジェリア保健省によると...9月3日の時点で...隔離中の感染者は、ラゴスに14人...ポート ハーコートに4人いる...としています。 ナイジェリアでは7月下旬に...パトリック・ソーヤー氏がリベリアから空路で到着後に死亡...この時、 医療従事者らが感染しましたが...その後は、おおむね流行は阻止されていました。それが、医師の妻 ら2人に、新たに感染が確認されたようです」 「うーん...」響子が言った。「この医師は、エボラ出血熱とは知らずに、治療に当たっていたのでしょう か?」 「そのようですわ、」アンが、長い赤毛を揺らして言った。「7月下旬では... まだ感染はごく小さな地域でしたから、油断したのでしょう。西アフリカでは、エボラ・ウイルスの知識が、 あまりなかった様子ですから、」 「うーん...」響子が、口に手を当てて、うなづいた。「恐ろしいですね... パトリック・ソーヤー氏が...もし羽田空港に到着していたら、当然、日本でも、エボラ・ウイルスなどは 疑わないですよね...でも、極度にピリピリするというのも問題ですし、長く持続しませんわ... やはり、“グローバル化世界への・・・警鐘の乱打・・・文明の折り返しへの示唆”、ということなので しょうか?」 「そう思いますわ!」アンが、強くうなづいて、顔を斜めにして見せた。 「そうですな...」夏川が、静かに言った。「今後は... ワクチンだの、衛生管理だのと、対処的手段をいくら開発し行っても、追いつかなくなるでしょう。ここで も、“人類文明全体の・・・折り返し局面”が...濃厚となってきました...」 「はい!」響子が、唇を結んでうなづいた。「日本では... “デング熱”の騒動で、東京のド真中の公園が、次々に閉鎖になっています。何かが、変化の兆しを示 しているのかも知れませんわ」 「そうですね...」アンが、口をすぼめた。「安倍政権の危惧しているモノとは...少し、ズレているようで すが、」 「すごく、」響子が、微笑を噛み殺して言った。「ズレていますわ...」 「そうですねえ...」夏川が、頭に手をやった。
〔5〕 エボラ/収束出口見えず・・・ 弱音も!
「WHOの...」アンが、肩越しに画像を見て言った。「キーニー事務局長補が、9月5日、スイス/ジュネ ーブでの記者会見で、言いました... 我々はもはや...“希望がない!”、という考えを...“改めなければいけない!”、と。“開発段階 の未承認薬や治療法に・・・大きな可能性がある!”...と強調しました...」 「うーん...」響子が、上体を傾げた。「緊迫の状況が、伝わってくる言葉ですわ」 「ま...」夏川が言った。「さりとて、絶望するわけにはいかない。その段階でもない、というジレンマです ねえ」 「はい...」アンが、インフォメーション・スクリーンの中で、同意するように強くうなづいた。「WHOは、9 月4日と5日に、エボラ出血熱の治療に関する専門家会議を開催しています。 世界各国から、製薬業界や医療倫理の専門家ら、約200人が参加しました。ここで、薬などを使った8 種類の治療法と、2種類のワクチンの、有効性や安全性を検討したようです」 「うむ、」夏川が、うなづいた。「で?」 「最も有望視されているのが...エボラ出血熱の生存者/生還者の、血液や血清を用いた治療法です」 「つまり...」響子が言った。「ワクチンなどの、免疫療法ということですね?」 「そうです。 生還者の血液や血清には、エボラ・ウイルスへの“抗体”が含まれています。ナイジェリアのウイルス学 者によると、1995年のコンゴ(/旧ザイール)での流行の際に、初めて実施され、効果が見られたとされてい ます。古い話ですが、」 「それが...」響子が、唇に手を当てた。「最も有望視ですか...?」 「もちろん...」アンが言った。「それから、20年近くがたつわけですから、研究開発は進んでいるのです が、ワクチンは確立していません。本来、“ワクチンの・・・需要が少なかった”こともあり...アメリカ軍 が軍事的にテロ対策用として、開発が行われていたようです」 「うーん...つまり、」響子が言った。「しばしばアフリカ中央部で、小規模な感染流行が起こる程度では、 製薬会社としては巨大投資をできなかったと?」 アンが、うなづいた。 「凶暴なエボラ・ウイルスであっても...」夏川が言った。「エイズ治療薬のように、膨大な感染者がいる わけではない...ということですな」 「そうですね、」アンが、赤毛を首筋の方へ絞った。 響子が腕組みをし、上体を椅子の背にあずけた。
「ともかく...」アンが言った。「未承認の薬や治療法があるといっても、懸念材料は多いと言います... 感染者が急増する中、未承認薬やワクチンも、供給量が圧倒的に不足しています。WHOは9月5日の 声明で、今後、少なくとも、数カ月間は、供給不足が続く、との見通しを示していますわ」 「それで...」響子が言った。「収束の方向へ向かえば...ベストという状況なのですね?」 「そうです、」アンが、うなづいた。「感染国の中で、最多の1000人以上の死者を出しているリベリアでは、 政府と市民との間の亀裂が、益々拡大しているようです。 路上に感染者が放置されていたり、武装集団が“エボラ出血熱など存在しない!” と叫びながら、隔離 施設を襲撃したりして、30人ほどの感染者が逃亡する事件も発生しています」 「はい...」響子が、うなづいた。「相当に混乱している様子ですね、」 「そうですね... こうしたことが、“封じ込め対策”の障害になっているのは明らかです。リベリアで活動するNGO(/非政府 組織)の代表は...“政府への反発の背景には・・・汚職の横行や、説明不足で・・・政府が市民のために 行動するとは・・・信じられない状況がある・・・”...と指摘しています」 「うーん...」響子が、小さくうなづいた。「話を戻しますが...“希望がない!” という、状況なのでしょう か?」 「いえ!」アンが、首を振った。「WHOの、キーニー事務局長補は... “希望がない!” という考えを、“改めなければいけない!” と言ったのですわ。開発段階の未承認 薬や、治療法に...大きな可能性がある、と強調しているのです」 「うーん... 感染地域ではライフラインばかりでなく、信頼性システムも、崩れつつあるということでしょうか?」 「その兆候も...」アンが、うなづいた。「出ている、ということことです... 国際社会は、見捨てることは絶対にありませんが...対策が後手後手となり、追いついていないという ことでしょう。これは、同様の現象が、日本の首都/東京の“デング熱”の騒動でも起きています。対策が 後手後手となっているのが...現在の、感染症対策の実情ですわ。 これが、空気感染で高病原性だと、グローバル世界が大混乱に陥ります。航空輸送網の破綻に続い て、船舶輸送網が滞り...陸路もズタズタになります。ライフラインが寸断されると、都市は飢餓状態に 陥ります。 響子さんの言われるように、現在のグローバル世界というのは、非常に脆いバランスの上に成立して います。ハビタブル・ゾーン(/生命居住可能領域)に存在する地球生命圏も、まさに宇宙空間における奇跡の 場ですが、私たちの文明が存立していること自体も、奇跡のようですわ」 「奇跡の中の奇跡なのか...」響子が言った。「それとも、<神の御意志!>なのか...ですね?」 「ほほ...」アンが、眼鏡の中の目を和ませた。「そういうことですね、」 「日本の場合は...」響子が言った。「“デング熱”ですから、深刻な事態とはなっていませんが、これを機 会に抜本的な対策強化に着手するべきでしょう。 いよいよ...〔人間の巣/未来型都市/千年都市〕の全国展開に、着手するべきです。現在、コン パクト都市が研究されていますが...3手4手と先を読めば、〔人間の巣のパラダイム〕が浮上してくる ことになりますわ。 単なるコンパクト都市では、“突発的な・・・ダウン・バーストや竜巻”には対処できません。アメリカ中 西部の様に、竜巻が年中行事の地域は特にそうです。日本でも、“豪雨土砂災害”に加えて、竜巻の被 害が深刻になりつつあります...」
「あ...」アンが言った。「ええと...もう1つ、“弱気な発言!” を見つけました」 「うーん...」響子が、口元を崩した。「どうぞ、」 「はい...」アンが、顔を上げた。「今年3月から... 感染地域で活動する...MSF/国境なき医師団/インターナショナル会長/ジョアンヌ・リュー医師 が...9月2日、ニューヨークで記者会見して、こう言っています。 “WHOが・・・緊急事態宣言をしても・・・国際社会の行動にはつながっていない”...と苦言を呈 しています。“世界は・・・エボラ出血熱を封じ込める戦いに・・・敗れつつある”...と。 もちろん、これも、ギブアップではありません。“目先の経済に明け暮れる”、国際社会に対する警告 ですわ!」 「はい!」響子が、両手を強く握った。「よく、分かりました!」 「ちなみに...」アンが言った。「ジョアンヌ・リュー医師は...カナダ/ケベックの出身です。彼女は、現 在、モントリオール大学准教授でも、あります。スマトラ島沖地震の巨大津波災害や、ハイチ大地震、パレ スチナ、中央アフリカ共和国、スーダン/ダルフール地方など...紛争地域での活動経験も豊富だそう です」 「はい!」響子が、うなづいた。「日本では、“女性が輝く時代”と言いますが、こうした実績が評価される 時代になって欲しいですね」 「そうですね、」アンが言った。
<・・・・・ 第2段階に突入/欧米で2次感染!・・・・・>
〔6〕
アメリカとスペインで・・・
女性看護師が、相次いで2次感染!
スが、ついに欧米/アメリカ・スペインで、相次いで2次感染を引き起こしました。2次感染したのは、いず れも看護に当った女性看護師です。 欧米の万全な医療体制の施設での、相次ぐ感染は、僅かな油断やスキが、容易に感染拡大につなが ることを、改めて示している様相です。また、感染予防訓練の不足、病院の予算不足による不徹底など も、改めて指摘され始めている様です。これは、即、日本の医療体制にも当てはまる緊急の課題です」 「うーむ...」夏川清一が、アゴに手を当てて深くうなづいた。「まさに、その通りですねえ、」 「概略を説明しますわ、」厨川アンが言った。「CDC/アメリカ疾病対策センターは... 10月12日に...女性看護師のエボラ・ウイルスの感染を確認しています。場所は、テキサス州/ダ ラス/テキサス・ヘルス・プレスビデリアン病院です。大きな総合病院ですね。患者は、西アフリカ/リベリ アで感染し、渡米後発症して、10月8日に死亡した...40代のリベリア人男性です。 女性看護師はニーナ・ファムさん/26歳で...防護服を着用して治療に当っていました。その防護服 を脱いだ際に、付着した体液に触れた可能性があるということです。男性患者は、人工透析器や人工呼 吸器も使用したということで、体液に触れる危険が、高くなっていたようです。 この患者の治療にあたったのは、ニーナ・ファムさんだけではなく、新たな感染の可能性もあるとみら れ、70人の医療関係者が、監視リストに追加されたということです。 ちなみに...ニーナ・ファムさんは、エボラ出血熱から回復した免疫抗体を持つ患者からの輸血で... 容態は安定していて...回復へ向かっている様子です。 でも、ファムさんの3日後に...仲間の女性看護師がもう1人、簡易検査で陽性反応を示していたよう ですね。アンバー・ビンソンさん/29歳です。彼女はCDC/アメリカ疾病対策センターの管理下にあって、 航空機での国内移動もあったようですわ。その時点では、体温はやや高い程度だったようで、CDCが許 可したようです。ええ、事態は深刻に推移しています」 「はい...」響子が、瞬きした。「監視リストの...他の関係者というのは?」 「患者/リベリア人男性は...」アンが片肘を立てた手を、アゴに当てて言った。「9月26日に、発熱して、 病院を訪れたようです。 その時は、抗生物質を処方されただけで、帰宅させられたようです。そして2日後に、エボラ感染が疑 われ、隔離されたようですね。つまり、それ以前に、この男性と接触した人々ということですわ。アメリカへ の経路も対象にしているのかどうか...詳細は分かりません」 「以前...」響子が言った。「2人の医療関係者が、感染してアメリカに搬入されていますが...」 「はい...」アンが、うなづいた。「この時は、まさに万全の国家体制で搬入しています。でも、この男性患 者の場合は、アメリカで発症しています。最初に病院を訪れた際、帰宅させたというのも、対応が甘かった と言えますわ。 でも...“感染していても・・・発症していない状態・・・での感染は無い” ...とも言われています。 その意味では...“撒き散らしていた・・・という状態ではない” ...ようです」 「うーん...」響子が、夏川を見た。「リベリア人と分かっていたら、渡航歴は聞くべきだったでしょうね?」 「まあ...」夏川が言った。「結果論ですが...ズサンな対応だったということでしょう。日本でも起こりそ うな事態ですねえ...」 「はい、」響子がうなづき、唇を尖らせた。「アン...スペインの方はどうなのでしょうか?」 「はい、」アンが、《危機管理センター》の大型スクリーンの方を眺めた。「スペイン/首都マドリードでも、 10月6日...リベリアとシエラレオネで感染した2人の神父を受け入れた...ええと、カルロス3世病院 ですね...この病院の女性看護師/テレサ・ロメロさん/44歳が...感染しました。 テレサ・ロメロさんは...9月24日に、隔離された病室に入り、シーツやオムツを交換したと言います。 その時に...“病室を出て、防護服を脱ぐ際に・・・使用していた手袋で・・・顔を触ってしまった気が する”...と話している、ということです。“わずかなミスで・・・確実に感染”...してしいますわ...」 「恐ろしいですね...」響子が、体を固くした。「ちょっとした、クセ、の様なものですね」 「そうですね...」アンが、眼鏡の真ん中を押した。「現在...防護服の脱着なども含め、マニュアルのバ ージョンアップを進めています。こうした事態に備えて、世界中に発信し始めている様子です。日本でもそ の対応で、緊張感が高まってきていますわ...」 「はい...」響子が、唇を引き結んで、うなづいた。 〔7〕 アメリカ/ニューヨークに感染者!
感染急拡大・・・感染者/1万人を突破!
から、関東平野西部丘陵の《航空宇宙基地/赤い稲妻》/《危機管理センター》に戻っていた。 “エボラ出血熱・・・世界的騒動”の今後の推移を考え、バイオハザード担当/夏川清一も、一緒に 《危機管理センター》に入った。ここで、厨川アンと夏川清一、危機管理の里中響子が臨戦態勢を整え た。 “赤い彗星・ビル”の《本部基地・機能》は...すでに 〔人間の巣・・・プロトタイプ/梁山泊〕に移転 を終えていた。《危機管理センター》 は、響子が不在のこともあり、だいぶ遅れていた。そして、このエボ ラ・ウイルス騒動で、当分はこの場所に留まることになった。
窓から眺める草原は、〔人間の巣〕の農地や水田やビニールハウスなどが広く展開し、様相がすっか り変貌している。滑走路・管制塔、そしてその横の《危機管理センター》は、すっかり片隅に追いやられ た形だった。 広く見渡す“自給自足農地”には、疎らに人々が動いているのが見える。福祉施設の幾つかも、積極 的に受け入れていて、保養地として好評だった。そうした人々が散策したり、自分の仕事を見つけて動い ているので、農地のわりには人の数が多く、活気がある。 〔人間の巣・・・プロトタイプ/梁山泊〕のおさまる低い丘陵は、秋の草花や雑草が繁茂し、ランドマー クタワーの円筒ビルが、豊かな秋の日差しを受け優雅にたたずんでいた。一帯の風景は、野趣を多分に 残しつつ、“未来に伸びゆく・・・次世代/文明ステージ”の、新鮮な活気が感じられた。
「ここも...」響子が振り返り、背後でモニターを見ているアンに言った。「エボラ・ウイルスへの対策は、始 まっているのかしら?」 「ええ...」アンが、顔を上げた。「対策会議は、立ち上がっています。私も、何度か参加していますわ、」 「そう...」響子が、コーヒーカップを口に当てた。 「さて、いいですか...」夏川が準備を整え、インターネットカメラ正面のテーブルで言った。 「はい、」響子がうなづき、コーヒーを飲みほした。
「ええ...」夏川が、壁面スクリーンに映し出される、西アフリカの地図を眺めた。「西アフリカで猛威をふ るうエボラ出血熱の感染者が、10月23日の統計で、ついに1万141人に達したと発表されています。 WHO/世界保健機構の10月25日の発表です。死者は4922人です。 致死率は50%と非常に高いものですが、実際にはもっと多くが統計に載らない形で処理されていて、 致死率70%とも言われています...ええ、アン、ニューヨークの方をお願いします、」 「はい!」アンが、両手を組んでモニターを見た。「アメリカ/ニューヨークで... 10月23日...“国境なき医師団”の1員として、ギニアで活動していた男性医師/クレイグ・スペンサ ーさんが、エボラ出血熱の陽性反応を示したことが判明しました。同医師は、アメリカの防疫体制をすり 抜けてしまい、地下鉄、タクシー、ボーリング場などへも行っている様子です」 「はい...」夏川がうなづいて、引き取った。「このエキスパートの医師の感染から見て... 同じ血液・体液などによる接触感染と言っても...“HIV/エイズ・ウイルスの場合よりも・・・エボラ ・ウイルスは非常にセンシティブ/敏感”...のようですねえ。“医療関係者が・・・相当数感染” して いるということは、“接触感染と言っても・・・レベルがケタ違いだ” と感じますねえ、」 「はい、そうですね」アンが言った。「ここの対応の遅れが...“エボラ出血・・・世界的熱騒動”の根源に あると思います」 「はい、」響子が、深くうなづいた。
<ワクチンと・・・ファビピラビル/アビガンの実情は・・・>D
「ええ...」アンが言った。「ワクチンや薬剤の状況ですが... WHOは...10月24日...欧米の製薬会社が開発した“ワクチン・テスト”を、2014年12月にも、 西アフリカで実施すると発表しています。 また、WHOは...来年の半ばまでに、10万人程度の患者に、ワクチン投与をする計画ということで す。もちろん...まだ患者は10万人には達していません。 それから...フランス政府が、日本が開発したインフルエンザ治療薬・・・“ファビピラビル/商品名・ アビガン”の有効性を確かめるために、“実証実験”を、11月中旬に開始するということです。 この薬は...富山大学医学部/白木公康教授と富士フイルム傘下/富山化学工業が共同研究で開 発した...“RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤”です...」 「うーん...」響子が、アゴをひねった。「この薬は、具体的にどういうものなのでしょうか?」 「そうですね...」アンが、手を組み、頭を斜めにした。「一応、“抗インフルエンザ・ウイルス薬”です... “ウイルスの・・・細胞内での遺伝子複製を防ぐことで・・・増殖を防ぐ仕組み”...です。このため、 “インフルエンザ・ウイルスの種類を問わず・・・抗ウイルス作用が期待できる”...とされています。 また、同様のメカニズムですから、エボラ・ウイルスやノロ・ウイルスなどへの適用性に関する試験・研究 も、行われています。 ちなみに...ケンブリッジ大学/イアン・グッドフェロー教授らのグループは...今年、2014年10月 21日...マウスを使った実験で、ノロウイルスの減少・消失を確認したと発表しています。西ナイル熱・ ウイルス、黄熱・ウイルスにも、効果があると考えられていますわ」 「はい...」響子が、神妙にうなづいた。 「ただ...」アンが、響子に向って手を立てた。「日本では...“重症型インフルエンザ薬”として準備され るものですが...“問題のある薬”なのです。 と言うのは...“動物実験で・・・胎児に対する催奇形性(奇形を生じさせる性質、作用)の可能性”が指摘さ れているのです。したがって、新型インフルエンザが流行し、“他の薬が効かない・・・と国が判断した場 合” に、厚生労働大臣の要請を受けて製造を開始するという、“特殊な承認薬”となっているのです」 「“催奇形性”というと...」響子が言った。「サリドマイド(/抗多発性骨髄腫薬の一般名。また、2型らい反応(ハンセン病 の急性症状、らい性結節性紅斑)の治療薬。その薬効や作用メカニズムには不明な点があり現在も研究が続いている。サリドマイドは当初安全 な催眠鎮静薬等として市販されたが、妊婦が服用した場合にサリドマイド胎芽症の新生児が生まれる場合があったことから、1960年代に薬害 サリドマイド禍として世界規模の問題となった・・・)の様に、妊婦には投薬できませんね?」 「そうです、」アンが、うなづいた。「奇形児が生まれる恐れがあります... でも...今述べたように有望な薬剤で、世界的に研究が進められています。この種の薬剤では、この “アビガン錠”(/錠は錠剤の意味)が、作用メカニズムの点から見て、他の製品をリードしている、ということ ですわ」 「それが...」響子が、指を立てた。「緊急事態で...エボラ・ウイルスにですか?」 「そうです...」アンが、ゆっくりとうなづいた。
「いいですか...」夏川が言った。「くり返しますが... インフルエンザ・ウイルスは、人間の細胞の中に入り込んで遺伝子を複製する際、“RNAポリメラーゼ” (/リボヌクレオチドを重合させてRNAを合成する酵素。DNAの鋳型鎖(一本鎖)の塩基配列を読み取って、相補的なRNAを合成する反応(転写) を触媒する中心となる酵素を、DNA依存性RNAポリメラーゼという。ファビピラビル/アビガン錠は、RNA依存性の、RNAポリメラーゼ阻害剤) という“酵素”を使うわけです。 この、“酵素/RNAポリメラーゼの働きを抑えるのが・・・アビガン錠の作用メカニズム”です。だか ら...“RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤”、と言うのです。 インフルエンザ・ウイルスもエボラ・ウイルスも、遺伝子はRNAの1本鎖のために...“RNAポリメラ ーゼ阻害剤/アビガン錠” が...“エボラ出血熱の治療”にも使えるのではないか、という根拠になる わけです」 「はい!」響子が、大きくうなづいた。
「いいですか...」夏川が、続けた。「エボラ出血熱への投与に関しては... 2014年夏から...インフルエンザ・ウイルスと構造が似ている、エボラ・ウイルスの治療に有効では ないか...という説が持ち上がった様です。 富士フイルムは...エボラ出血熱患者への投与拡大に備え、“アビガン錠”をエボラ出血熱対策とし て、海外での使用目的で、追加生産を決定しています。 そして、アンが言ったように...フランスが、2014年10月21日に、“アビガンの・・・臨床試験を開 始”する...と発表したわけです」 「はい、」響子が、上体を起こし脚を組み上げた。 「ええ...」夏川が、モニターに目を移した。「経緯ですが... 2014年9月26日...富士フイルムはフランスで、“アビガン200mg錠”(/上の写真)が、エボラ・ウイ ルスに感染したフランス人女性看護師に投与された、と発表しました。 これはフランス政府機関の依頼を受け、日本政府と協議の上で、緊急対応として提供されたものです。 この女性看護師は10月4日...エボラ出血熱から回復し...退院しています」 「はい...」響子が、固く手を組み合わせた。 「それから... 2014年10月6日...ドイツ/フランクフルト大学病院に搬送されたウガンダ人のエボラ出血熱患者
の治療に、10月4日、“アビガン200mg錠”が投与されたと発表しています。そして... を受けていた看護助手の体内からエボラ・ウイルスが消えたと発表した。この看護助手にも、“ファビピ ラビル”が投与されたと発表されています。 スペインの症例は、“アビガン錠”という商品名を使っていないようですが、事情は分かりません。まあ、 対症療法で、様々なことをしていますし、まだ状況は渾沌としていますねえ。致死率は100%ではないわ けで、人体本来の治癒力/復元力もあるということです」 「そうですね...」アンが言った。「でも、グローバル世界にとって、驚異的なウイルスです... ワクチンができるまでは、ともかく、こうした薬剤と対処療法で頑張るということになります。今回の“世 界的な・・・エボラ出血熱/騒動”は、まだ感染拡大中ですが、私たちに色々なことを教えてくれたと思 います」 「はい...」響子が、唇に手を当て、深くうなづいた。「本当にそう思いますわ... これが、“グローバル経済システムの限界・・・/文明のターニングポイント・・・折り返し点”...と、 なるかも知れません。“持続可能な成長は・・・幻想” で...“文明の折り返しに・・・大きく舵が切られ る”...そのきっかけと、なるかも知れません」 夏川が唇を結び、黙ってうなづいた。
<日本の状況は・・・>E
〔8〕 推移・・・
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