My Weekly Journal 第1編集室人権指数

       wpeC.jpg (50407 バイト)             人 権 指 数         


      
                               
     h5.914.14.jpg (1030 バイト)    

  トップページHot SpotMenu最新のアップロード/                     弁護士:  秋月 茜  (あかね) 

     INDEX                                                                       wpeA.jpg (42909 バイト)  

自己紹介     自己紹介 2004.11.12
No.1 〔1〕 新しい身分差別の到来 ??? 2004.11.12
No.2     <1>“テロ社会”への警告  2004.11.12
No.3 〔2〕 人権指数とは、 2004.11.12
No.4     <2>“世襲”について 2004.11.12
No.5 〔3〕 生まれた時に与えられる、人権の公平性 2004.11.12
No.6    <3>“資産”による人権格差 2004.11.12
No.7 〔4〕 日本で、“富の寡占”が進んでいる 2004.11.23
No.8      <4>“努力”が報われる社会 2004.11.23
No.9    <5>“富”の再配分の公平性    2004.11.23
No.10 〔5〕人権の侵害      
No.11    <6>“免罪符”の社会  

  

    自己紹介     <弁護士:  秋月 茜  (あかね)

 

「はじめまして、秋月 茜 (あかね) と申します。今期、弁護士として、当ホームページに採

用されました。よろしくお願いします。

  上司の “My weekly Journal”編集長の津田さんに、初めての仕事をいただ

きました。それは、“日本における人権問題の実態”について考察し、まとめておけと

いうものでした。

  人権といっても、色々な側面があります。選挙における1票の格差から、男女による

性差別、就労等における年齢差別、マスコミ等による深刻な人権侵害、警察・刑務所・

精神病院等の公的機関による構造的な人権侵害...等々、様々な風景が見えてき

ます。

  ええ...回である今回は、国民全体の“人権指数”というものを考えてみること

にしました。この国の国民として、当然あるべき“理想的な人権を100”としてみた

場合、現在の各個人の人権の実勢を、数値で考察してみたものです...

  格差は数倍になっているのではないでしょうか。また、そのために、多くの人たち

が、そのあおりを喰っています。そして、社会システムも文化も、まさに無気力なって

いるのです。この“国の基盤”である“基本的人権”は、まさに深刻な事態に陥りつつ

あるようです...

  ええ...初めての仕事で、非常に緊張しているのですが、精一杯頑張ります。どう

ぞ、ご期待ください...」

 

 

 〔1〕 新しい身分差別の到来 ???    

   h5.914.14.jpg (1030 バイト)wpe7.jpg (7162 バイト)  index.1019.1.jpg (2310 バイト)                                                                 

 

  “第2編集室・国際部”大川慶三郎は、時計を見ながら、タバコをもみ潰した。編

集長の津田は、ゆっくりと湯飲み茶碗を脇へ押しやった。

「さて、始めるかね、」津田が言った。「それでは、秋月さん、お願いします」

「はい!」秋月茜は、やや緊張して、小さくうなづいた。赤いメモ帳を開いて横に置き、

ノートパソコンにそっと手をかけた。

「ええ...

  この国は、明治維新で“士・農・工・商”という身分制度が撤廃されました。そし

て、皆が“平民”になりました。ですが、その際、“新平民”などという新たな言葉が作ら

れたのです...そして、このことが、その後も長い差別が続く芽を作ってしまったの

です。つくづく人というのは、差別することが好きなのでしょうか...何故、仲良く出来

ないのでしょうか...

  ええ...この差別が、つい最近まで国会などでさかんに取り上げられてきた、“部

落解放”問題です。皆“平民”でよいものを、“新平民”などという差別用語を残した

ために、大変な歴史的苦労と、労力を費やしました。また、関係者には、大変なご迷

惑をかけてしまいました。このことは、私たちの世代においても、深く反省したいと思

います...」

「うむ、」津田は、うなづいた。

「ええ...

  それから、日本における“最後の差別問題”の残滓(ざんし/残りかす)として、“官・民の

格差”がありました。“官民格差”とは、公務員と民間人の様々な格差です。というの

も、公務員というのは、昔は武士階級の独占的な仕事でした。今では、事務方の役

人と、軍事組織とは分かれていますが、昔は“文武両道”が尊ばれるなどして、一緒

のものだったのです。それが、いわゆる“武士道精神”を育んできた、支配階級なので

す。

  その気分が、明治以降も、ずっと伝統的に残って来たわけです。しかし、それも最

近では、“国民の側の意識”としては、すでに“官民格差”は解消されました。このこと

は、当ホームページでも、“日本に残った最後の身分格差、“官”と“民”の差別解

消を”として取り上げているので、私も読んおります...

  ただ、いわゆる“官僚の側”には、依然としてその気分が残っているようです。しか

も、この社会混乱と不景気の中で、その“ワル”ぶり目立って来ているようです...

  編集長...厚生労働省や社会保険庁は、あれだけの年金や失業保健料の使込

みをやり、誰も責任を取らないと言うのは、いったいどうなのでしょうか?」

「うーむ...確かに...

  ここに来て、国がぐらつき、官僚の悪さが目立っています...“世襲政治”と、“天

下り官僚”が、この国を喰いものにし、国の屋台骨をメチャメチャにしたわけですが、

それが咎められることがない...いや、むしろ、その張本人の彼等だけが、この混乱

の中で、税金から高給が支払われているのです...」

「はい、」

「これは、国民としては、たまらないですねえ...

  誰も、この未曾有の大混乱の、“責任を取ろうとしない!”モラルハザードを、“正そ

うともしない!”これでは、社会は良くなるわけがありません!こんな、“悪事が、堂

々とまかり通っている”のです...」

「はい、」

「これは、小泉・内閣の、性格的な欠陥”を反映しています。小泉・内閣に、最初から

あった欠陥です。それでも、人気があり、この国を変えてくれると思えばこそ、国民は

それを許して来たのです。

  例えば...自分の息子を芸能人にしてみたり、自分のアルバムを出してみたり

と...まあ、詳しいことは知りませんがね...これは、政治家というよりも、芸能人

がやることでしょう。

  総理大臣という、この国を背負って立つ、重席の公人である以上は、国民のことを

常に考えているべきです。日本のこと、社会が安定して立ち行くことを、常に第一に考

えるべきです。そして、公人の立場から身を退いた時、初めて自分の身の回りのこと

や、回想録を書くのが普通です。

  それを、何も成果が上がらないうちから、そんなことをやっているわけですから、性

格的な欠陥というのです。そんな芸能人のような事をしていて、この国の“モラルハザ

ード”“社会の大混乱”を放置していたことが、大問題なのです。しかし、何故、あえ

て、放置なのでしょうか...ここが、普通の感覚では、分らないわけです...」

「はい。景気対策だけで、何故、それに手をつけようとしないのか...私もずっと不思

議に思っていました...」

「うむ...

  社会全体が、圧倒的に支持し、小泉・首相に期待していたのは、社会の大混乱を

静めてくれることでした。まあ、それには、野党である民主党が、対立軸を与野党間

に取り、“反・小泉”に回ってしまったことが、民意を裏切ったことになり、非常に大き

かったと思っています。

  しかし、小泉・内閣の“性格的な欠陥”というのも、もともと確かにあったのです。公

平に、日本の国全体の器を、大事に扱ってもらいたかったですね」

「はい...本当にそう思います...

  でも...小泉・首相は、もともと3世議員ですよね。産まれた時から、とっぷりと、そ

の自民党的体質の中に居るわけですね...そういう人は、やはり無理なのではない

でしょうか...庶民の本当の気持ちを理解するというのは...」

「うーむ...」

<1> “テロ社会”への警告!     wpeD.jpg (8229 バイト)  

「ええ...

  私たちは、日頃、あまり“人権”について真剣に考えたことはないと思います。それ

はこれまでは、ごく当然に、空気のように存在していたからです。しかし昨今、その様

相が激変してきました。

  政治家の“世襲”は、政党によって放置され、ますます深刻になっています。また、

伝統芸能にのみ、特別に認められていた“芸の世襲”は、全ての芸能人に拡大されて

います。そして、そこにはもはや“政治的資質”“芸の継承”はなく、空洞化し、その

身分だけが継承されています。

  これが、“新たな差別”を作り出している現実があります。これが、この国の政治を

弱体化させ、文化をシラケさせ、国家全体を空洞化させている、要因になっているの

ではないでしょうか...」

「うーむ...」津田は、腕組みをした。「...私も、実は、しばしばそのことを考えてき

ました...この国ではどうやら...時代に逆行するとんでもない“悪事”が、戦略的

に進行しているようです...

  長年の、“差別をなくす努力”の半面、“新たな身分差別を創出する動き”があるよう

です...」

「うーん、はい...

  そのことは、私も、非常に気になっていました。津田さんは、それは、どのようなこと

だとお考えでしょうか?」

「私個人では、その全貌を知るすべはありません...

  しかし、この国の改革を遅らせ、極端な金持ち層と、極端な低賃金労働層に分離し

ようとしている意図が、明らかに感じられます。その証拠に、テレビや新聞などで、この

国をどうしようという“国民的大討論”が、全く無くなってしまいました。時代の背後で、

そのような意図が、着々と進行しているようです...

  まあ...私個人では、全貌は知りようもありませんが、この国の主権者である国

民は、各自、しっかりと監視して行って欲しいと思います」

「うーん、私たちも、何か異常なものを感じますよね!」

「そこには、マスコミを巻き込んだ、戦略的な意図があるのを感じます。日本に、“新た

な支配階層”が形成しつつあるのでしょうか。また、“勝ち組”“負け組”に分れて行

き、そこには“構造的なインチキ”が仕掛けられている気がします。

  やがて、“努力”をしても報われない、“身分差別の社会”がやって来るようです。す

でに、“良いものを良いと評価しない”、一部の人だけが独占的に決める、硬直した

社会になりつつあります。社会の上の方で、また下の方で、“公然と悪事やインチキが

まかり通る世の中が来た...”そんな、非常に強い危惧を感じます。

  つまり、“小泉・政権の罪深さ”は、建国以来かってなかった、“慣習法を放棄”した

ことにあります。人間社会のシステムが壊れていくのを、それを無視し続けることによ

って、“容認”して来たのです...」

「あの、“慣習法の放棄”を、ですか?」

「そうです...

  “勇気”、“勤勉”、“努力”、あるいは“誰に対しても優しい心”...そういうものを大

切にする慣習法は、法律以前の法律です。動物も含め、あらゆる社会の中で、自然

法的に、社会慣習として成立するものです。

  そうしたものまで、小泉・政権の治世では、“悪事を容認”することによって、放棄し

てしまったのです。ここが、非常に大きな問題です。教育改革以前の問題として、子供

たちは、“何のために勉強するの?何のために努力するの?”という事になってしま

うわけです...

  それは、まさに正直な所で、“努力が報われない社会”がやって来るわけですから

ねえ...これは、大人にとっても、社会全体にとっても、まさに大問題です...“慣

法”という“社会の大前提”を、崩してはいけませんねえ...」

「そういう、“新たな身分差別の社会”が、本当に来るのでしょうか?」

「このままでは、そういう社会に突入してします。ま、半分、突入していますがね...

しかし、そうした試みは、実際には、成功はしないと思います...」

「何故でしょうか?」

「そうなった場合、日本は確実に、“テロ社会に突入”するからです。国際テロ組織の

動向を見ても分るように、テロは国際的な流れになっています。まあ、このままで行け

ば、日本はそうした“対立抗争の社会”に突入していきます。血みどろの、“テロ社会

に突入”して行きます。

  しかも、テロは、これから“大量破壊兵器”を使ってくると考えられます。大量破壊

兵器は、まさに少人数で、大被害を与えるのにぴったりなのです」

「大量破壊兵器というのは、核兵器でしょうか?」

「うーむ...これは、軍事関係を担当の、大川が詳しいでしょう...」津田は、タバコ

を吹かしている大川の方を見た。

「まあ...“核兵器”もそうだ...それに、サリン、VX、などの“化学兵器”...炭疽

(たんそきん)など諸々の“生物兵器”。それから、今後は、“遺伝子兵器”なんかも想

定されている...」

「遺伝子ですか??」

「そう...遺伝子です。例えば、ヒトゲノムの中の、民族特有のSNP(スニップ/単一塩基変

異多型/個人差)のような特異部を見つけて、その遺伝子を持つものに対し、遺伝子攻撃

を仕掛けることも可能です...あるいは、作物を遺伝子攻撃するなどということも、可

能ですね。こうしたものは、防ぐのは不可能に近いですねえ...

  穏やかなものから、過激なものまで...場合によっては、遺伝子攻撃を仕掛けら

れていることすら分らない...」

「まあ、そんなことが...」

「いいですか...生態系というのは、もともとミクロのレベルでは、膨大な“遺伝子の

抗争の世界”なのです。それから、あらゆる“化学戦の世界”なのです。もちろん、敵ば

かりではないですがね。ともかく、濃密な世界です...人類が遺伝子兵器を手に入

れるということは、それがマクロ世界に拡大して来るだけのことです...

  まあ、そうしたところから、生き残る方策も見つけられるというものです...」

「うーん...日本は、本当に“テロ社会”になっていくのかしら?」

「このまま行けば、そうなる。最悪は、ロシアのチェチェン共和国のような、血みどろの

抗争になるねえ...」大川は、タバコの煙を吐いた。「日本の社会も、“新たな身分差

別”に対し、おとなしい国民ばかりではないということです。羊のようにおとなしい国

民もいれば、中には狼もトラもライオンもいるということです...このまま“貧富の差

が固定”される様なら、まさに国民は黙ってはいないでしょう...」

「はい...“人権格差”も、ますます開いてますよね...」

「何故なのかねえ...これまで通り、日本全体が1つにまとまり、心豊な平和な社会

を、何故、維持して行けないのか...」

「はい、」

「何の対策もとらず、これを黙認している小泉・内閣は...歴史的大罪を犯していま

す。何故、同じ日本人の中に、対立を作り出すのか...かっては、みんなで一緒に歌

をうたって、楽しかった...そういう時代も、確かにあったのです」

「うーん...テロは、それだけの価値のあるものなのでしょうか?」

「無いね...」津田が言った。「しかし、誰かが“新たな身分差別”作り出した場

合...“極端な富裕層”“極端な低賃金労働層”に日本の社会を分断場合...日

本も確実に“テロ頻発社会”になるだろうということです...

  今は、自殺が急増していますが、それは自らの内側に向かったテロです。しかし、

それが外側に向かった時、恐いものがあります。“引ったくり”や、重機による“CD(キ

ャッシュ・ディスペンサー)あらし”から、次へエスカレートした時です。その暴発が起こ

る前に、是非、日本の社会を、元の穏やかな海に戻すべきです。まだ、間に合いま

す!」

「恐いですね...」

「ある意味では、日本の社会は、暴発の“臨界点”に近づきつつあります...このま

では、非常に危険ですね...

  政権交代とか、NHKを解体再編成するとか、国会へデモ行進をかけるような大衆

行動が起こるとか、ともかく希望の持てる、劇的変化が必要です...このままでは、

いずれ何らかの暴発は、確実にやって来ます」

                          wpeD.jpg (8229 バイト)    

「この日本の公然とした“ワル”を...」大川は、眼鏡を拭きながら言った。「世界は呆

れながらも、ジッと注視しています。バカさ加減には呆れても、実際に日本が、“戦前と

同じ道”を歩み始めたら、大変だからねえ...その前科がある国ですから...そして

まさに、日本はその方向へ歩み出しているのです...

  ブッシュ大統領のアメリカが、国際世論から見て悪くなっている以上に...日本は

速に悪くなっているねえ...ま、アメリカも日本も、それぞれ軌道修正しないと、大

変なことになる。まさに、日本の国民は、この事態を甘く見ない方がいいと思います。

すでに、非常事態に突入しています。

  2期目のブッシュ政権は軌道修正が必要ですし、小泉・政権は、やはり退陣するべ

きでしょう...

  次は、気の抜けた妥協の政権ではなく、しっかりとこの国を建て直してくれる人を

選ばなくてはなりません。それこそ、国が崩壊してしまいますからねえ。本当に良い

人が選ばれたら、また必ず大多数の国民が、圧倒的に支持します...

「うむ...」津田は、深くうなづいた。

「あの、“人権指数”の話に戻ってもいいでしょうか?」

「ああ、うむ...」

〔2〕 人 権 指 数 と は、  

          wpeA.jpg (42909 バイト)  

<2> “世襲”について

 

「ええ、では、具体的な、“人権指数”の話に話に入りたいと思います...」中西茜

が、ノートパソコンに目を落した。「まず、政治家や芸能人の、“世襲”が進んでいま

す。そしてその分だけ、国民にとっては、社会構造的に“人権が侵害”されています。

  一方の人権指数が増えれば、他方で自動的に人権が減少するわけですね。これ

が、人権の基本です。それにしても、いったい、どうしてこんな事態になったのでしょう

か?何がこんな事態にさせているのでしょうか?

  ええ...社会の最も表舞台になる、民主主義政治芸能・芸術の現場で、“世襲”

が顕著になり、社会の硬直化が深刻になっています。職業選択の自由や、自己実現

の場が明確に失われているのです。社会のトップレベルの仕事の寡占化(かせんか/独

占してしまう事)は、国民に対する心理的圧力が非常に強いと思われます。

  つまり、事実上、ごく普通の人は、政治家になる道は閉ざされます。芸能・芸術のス

ターになる道も、閉ざされています。むろん、参入の道は無いわけではありませんが、

その地位にない人々にとっては、非常に狭き門になっています。ということは、良いも

のが良いと、“正しく評価”されないということです。これは、“正義”が執行されないと

いうことであり、“努力”が評価されないということです。

  では何が評価されるか?“新しい身分制度”によって評価されるのです。“評価”自

体は、本来国民が“基本的人権”によって自由に選ぶ権利を有するものです。その

基本的な権利が、事実上奪われています...

  例えば、芸能や芸術関係では...公正なオーディションが行われ、努力や才能が

報われような、オープンな社会システムにはなっていないということです。それらしい

ものはあっても、実際には参入はきわめて難しいわけです。これは、他の多くの分野

についても、言えることです...」秋月茜は、メモ帳に手を置き、津田の方を見た。

「うむ...」津田は、うなづいた。脚にまつわりつくミケを、膝の上に乗せて、撫でた。

                             wpeA.jpg (42909 バイト)    index.1019.1.jpg (2310 バイト)

「...私たちは、“公正で、開かれた、自己実現の機会”を失ってしまうこと...それ

と、私たちの議員や、芸能・芸術の作品を、“自分で選べない”という二重の意味

で、“基本的権”を侵害されています。

  そもそも、国民主権の日本の社会で、“新たな特権階級”を作るという社会情勢に

は、ないと思うのですが...津田さんのご意見は...どうでしょうか?」

「うーむ、それは私も感じています...

  国民としては、黙ってはいないだろうねえ...もし、こうした事態が続くようなら、確

実に“テロが頻発する社会”になります。何故、そこまでして、“特権階級”などというも

のを、を作りたいのでしょうかねえ...非常に危険なことです」

「はい...

  ともかく、そのことで、“国民の持つ平均的な人権”は、2割は削れれていると考えま

す。その他に、政治家の様々な利権や不正、官僚や公務員の天下り、談合等で、さら

に平均1割は消滅していると考えます...」

「うむ、」

「このあたりの数値の取り方は、大雑把で主観的なわけですが、私は数学的な解を

求めているわけではないので、正確な所は許して欲しいと思います。それに、社会的

なコンセンサスを得られるような...もっと開かれた、本格的な研究があってもいの

ではないかと思います...」

「そうだね、」

「ええ、そういうわけで...平均的な日本国民は、7割の人権...“人権指数70”で、

この日本の社会を生きていくことになります。むろん、“世襲”できるような人は、“人権

指数200〜700”に達する人もいるわけです。これは、もちろん、不当なものです。

  世襲3世議員で、“人生色々”発言のあったあの方(小泉首相)などは、若い頃にゴロゴ

ロとしていても、周りの会社がちゃんと面倒を見てくれるわけです。前・自民党幹事長

の安部さんも、3世議員なのでしょうか。麻生・総務大臣は、吉田茂・総理大臣の孫だ

とか...いずれも、日本において、“人権指数”がトップクラスの人たちですね...」

「ふーむ、なるほどねえ...」大川が、ほくそえんだ。

「はい...

  いずれの“世襲議員”も、私たちとはこの国における“人権指数”が、雲泥の差にな

っています。本来、あってはならないことです。“人権”は、憲法で保障された“基本的

人権”によって発生するものであって、“人権指数100”が理想なのです」

「ふーむ、」大川が、うなづいた。

「もちろん、私的な資産を受け継ぐのは、法律によって保証されているわけですが、

“議席の世襲”というのは、問題です...民主主義の名のもとに、一見合法的に、事

実上の“世襲”が行われているのが問題なのです...これを許してしまえば、全てが

“世襲”になってしまうほどの勢いです...だから、当然、これはおかしいのです」

「うむ...」津田が言った。「政治家の“世襲”が、そもそもこの国の“混乱の元凶”

なっているような気がするねえ...この国に、“新しい支配階層”が形成されつつあ

るというのも、1つはここに行き着くような気がする...」

「はい、」

「それから...この国の右傾化に、急速に舵を切ろうとしている勢力が、存在すると

いうことです。ともかく、そういう問題では、政治は国民と十分に対話して欲しいです

ね。

  まあ...いわゆる“普通の国”になるのはいいのですが、急速な右傾化は、戦前

の道を歩むのを感じさせます。これは、避けるべきだと思います。まず、現状では、“国

内を固めること”が、何よりも大事です。それには、21世紀型の“新・民主主義社会”

を創出し、その上で、“独自の国際平和戦略”を打ち出して行くということです...」

「はい...

  今、編集長たちが、“21世紀・日本の社会の器”として、“ロードマプ”を進めて

いますね。私も、お手伝いできれば、と思っています」

「もちろん、大歓迎です。1人でも多くの知恵を結集したいですからねえ...

  そもそも、世襲も“天下り”も、構造的なものです...だから、“悪”なのです。

“既得権集団”を丸ごと背負い込み、それをそっくり代々受け継いでいくわけです。だ

から小泉さんの“人生色々”発言のようなことになるわけです。

  クリーン・イメージの小泉さんにして、そうした構造的なものをそっくり背負い込ん

で、“世襲・人生”をやってきているわけです。それが、染み付いているのです。そうし

た政治家は、“既得権グループ”のことを第1に考えるわけですね。それが、絶対な

のです...」

「はい...その“利権構造”の分も、私たちの“人権”が、削られているわけです、」

 

  〔3〕 生まれた時に与えられる、人権の公平性

<3> “資産”による人権の格差         

 

「ええ、次に...

  人生の選択肢に大きな影響を与えるのは、親の経済力や資産ではないでしょう

か。全てが自由の社会といっても、実質はその経済力社会的地位に大きく左右さ

れます。かっての、“士・農・工・商”という身分格差も、経済の発達によって“豪商”の

ようなものが出現し、“富”が社会を支配してきました。

  ましていまや、日本は経済万能主義になっています。日本人の心は、武士道の精

神ではなく、商道の精神になっています。そして、最近ようやく、“物”から“心”の時代

へ移行しつつあるようです。 ですが、経済至上主義は相変わらずで、“基本的人権”

経済によって大きくゆがめられて来ています。

  この“富”...資産や経済力については、社会体制の問題と、個人の資質や能力

の問題両親の在る無しなど、様々なバリエーションが考えられ、常に変動的です。こ

の変動が、社会にダイナミズムを与えるわけで、有用でもあります。

  しかし、それをどの程度に押えるかは、理想的な社会モデルにとっても、重要な課

題になります。それにしても、生まれながらに人権で差別がないように、“基本的人

権”を憲法によって保障し、それをしっかりと実践て行かなければなりません...」

「親の資産が子供に受け継がれていく、“資本主義体制”がとられている以上は、完

全な公平性というのは難しいねえ...しかし、資産は受け継がれるにしても、“社会

を透明・公正”にし、“人権は別システムとして保証”するのは、可能なのではないか

な、」

「はい、そう思います!

  編集長たちが日頃から言われている、“情報公開”“国民参加型”の、“新・民主

主義社会”に賛成です。そうした透明な社会なら、憲法で保障された基本的人権は、

生まれながらに保証して行けると思います」

「うむ...」

「編集長の言うように、“人権は別システムで保証”されるという考えは、いいと思い

ます。それに、賛成です。資産があるというのは、単に楽に暮らして行けるというだけ

で、それが“権力”“人権指数”と結びつくというのは、おかしなことだと思います。

  その資産が、真に社会のために役立てられれば、それなりに社会によって評価さ

れるとは思いますが、」

「うむ、」

                                                     wpe75.jpg (13885 バイト)  

 

   〔4〕 日本で、“富の寡占”が進んでいる! wpeC.jpg (50407 バイト)

           

             

<4> “努力”が報われる社会       

 

「国際部の大川さんは、何か意見はおありでしょうか?」秋月茜が聞いた。

「まあ...

  ともかく...親は子のために“資産”を残してやりたい...そのために、一生懸命

に頑張る...あるいは、いい仕事をし、社会のために貢献し、“資産”を残した。それ

に報いることも、“社会をダイナミックに波動”させていくためには、必要なことだと思

うがね...

  この“人間的感情”を、無視してはいけない。単なる“結果平等”は、“悪平等”にな

る。努力をしてもしなくても、結果が同じだというのではねえ...そういう社会システ

ムは、必ず腐ってくるものだ...そこが、物理法則などとは違う、社会科学の人間

的な側面というものだ...“結果平等”というだけでは、イカン...」

「うーん...はい!

  その通りだと思います...ですから、当然、“資産”を継承することは認めていま

す。ですが、それが蓄積され、極端に肥大化した時、社会的問題が起こります...

“富が極端に偏在”し、“巨大化”し、その“富”が社会を動かし始めます。いわゆる、

“社会が経済に支配された状態”です。

  その結果、どうなるか...社会は歪(いびつ)になり、本来個人に保証されている“基

本的人権”までもが、“富”に支配されて行きます...共同体としての社会そのもの

が、“富に振り回され”ていますそもそも、何のために社会はあるのでしょうか...」

「ふむ...」大川はうなづいた。

「いったい、“人のために、社会があるのか?企業のために、社会があるのか?”、と

言うことです。企業には、もちろん人権も、選挙権もありません。

  そもそも、“企業”“富”も、“社会システム”“その果実”であって、それに社会

が振り回されているというのは、おかしなことです。そこに住む人間のためにこそ、社

会があるのです...そして、“富”は、“結果平等”ではなく、そこに住む人に、“正しく

公平に再配分”されるべきものなのです...

  現在の日本は、急激な“富の寡占化の流れ”にあり、“社会の民主化とは逆行”

ています。“新たな身分差別”を創出し、さらにその上に、巨大な財閥を作つもりな

でしょうか...」

「うーむ...アメリカのようにか...」大川は、つぶやいた。「ロックフェラー財団のよう

にねえ...アメリカ人は、そういう巨大資本を、どう思っているのかねえ...」

「はい...でも、それほど大きな話でなくてもいいのです...日本国内のシステムの

中で、“富の偏在”が進行していることが、当面の大問題なのです...

  公共料金は一向に下がらずに、賃金だけが半減しています。そして、さらに大増税

の時代がやってくるのです。これは、日本国内で、相当の“富の大移動”が起こりま

す。これは、まさに小泉・内閣の、確信犯的な、反民主的な政策です...」

「小泉・内閣は、ドサクサの中で...“戦後の日本人が大事に育ててきたもの”

んな壊していくねえ...」

「はい...ともかく...

  一生懸命に働いても、食べていけないほど貧しい人と...全く働かなくても食べて

行けるほど、“富の偏在”している事が、そもそも基本的におかしいと思います。した

がって、これは、“社会形成の原点”に立ち返り、修正すべきです...

  “富の偏在”は、どのあたりが妥当なのでしょうか...月々の、賃金の格差は、何

倍ぐらいまでが、社会として許容できる範囲なのでしょうか。何らかの形で、この国の

主権者総意を量るべきです」

「ふむ...そうだねえ...まあ、ここは人権問題の話だが...巨大資本どうしの戦

いというものもあるわけだ。

  うーむ...国際部・担当としては、そっちの方が非常に気になるねえ。日本の金融

体制の行方が...どうですか、編集長?」

「ま...それともまた、話は異なりますが、“我々の国際的スタンス”を言っておきま

しょう...

  我々としては...

  経済、物流、文化、あらゆる面で、基本的にグローバル化には反対です。したがっ

て、資本のグローバル化も、当然反対です。しかし、この時代を乗り切って行くために

は、“地球連邦政府”あるいは“地球政府”というものは、是非必要という立場です。

これが、私たちの、“地球文明戦略”、“人類文明戦略”です...」

「ふむ...この間、“地球文明の大戦略”について検討したヤツですね...そうです

ねえ、“地球文明の大戦略”は、そのうちに、第2編集室・国際部の方でまとめようと

思っています...」

「ええと...話を戻していいでしょうか?」秋月茜が聞いた。

「ああ、」大川が言った。「だいぶ脱線したねえ...」

 

            index.1019.1.jpg (2310 バイト) house5.114.2.jpg (1340 バイト)   house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ええ...」秋月茜が、コブシをあごに当て、ノートパソコンを見つめた。「“社会をダイ

ナミックに波動”させていくためには、資産の継承も認めろということですが...え

え、当然、認めます...

  というよりも...全てを貪欲に呑み込む“経済の原理”で、国家形成の基本であ

る、この国の“主権者の人権”をも呑み込んでしまうことが、大問題なのです...」

「ふむ...」大川がうなづいた。「経済とは、ダイナミックなものだ...」

「ですから...透明な“新・民主主義社会”で、“人権は別システムで保証して行く ”

というのがいいと思います。

  ええと、ちなみに...“親の社会的地位・資産”と、いわゆる“経済の原理”によっ

て、平均的な国民は、人権を2割削減されていると考えました。これで、“世襲”等の

構造的な3割の削減を加え、5割が削減されています。つまり、“人権指数50”になっ

たわけです。この程度の自由度の中で、実際私たちは、人生を営んでいることになり

ます」

「ははあ...“人権指数50”ですか...ふーむ...」

「あ、これは、もちろん、平均的なスタート台ということです...経済的にも恵まれた、

中産階級の人ですね。そして、この国では、中産階級の意識を持つ人も、最近は非

常に少なくなってきています...さらに、これから検討していきますが、ごく普通の人

では、人権指数はさらに低くなるわけです...」

「ふーむ...」大川は、タバコの箱を掴んだ。

「これまでも、この国の“実質的な支配階層”に、社会のあらゆる権限が集中していま

した。それが、新たな“目に見える支配階層の形成”で、さらに極端になりつつありま

す。津田さんが言うように、非常に危険な状態になっています...全体のバランス

が、大きく崩れかかっています。

  現代日本人の、“覚醒した感覚”から言えば、この状況は、とうてい許容できるもの

ではありません。フィリピンブラジルのように、“富の寡占”が、日本でも急速に進ん

でいるのです。さしあたり、“アメリカなみ”に近づけようということなのでしょうか...

  ともかく、“極端な富裕層”と、“極端な低賃金労働層”への、2極化が進んでいま

す。いわゆる、“勝ち組”“負け組”と言うことです。

  小泉・首相は、“世襲・議員”として、日本をそういう社会にするのでしょうか。この

国の指導者として、この実態を、見て見ぬフリをしているという事は、まさに“承認し

た”と同じことなのです...非常に、罪深いと思います!」

「秋月さんは、小泉・首相には厳しいですねえ、」

「はい!」秋月茜は、強くうなづいた。「小泉・首相は、日本のシステムを壊してしまい

ました!それが、罪深いと思います!それには、野党のだらし無さも、非常に大きな

要因になっていると思います!“政治が国の未来を語らなくなった事”が、この国の

最大の不幸です」

「いや、むしろ、“富の寡占化”“新しい支配階級の創設”で、“民主化”とは逆の流

れが出てきている」

「うーむ...そういうフシがありますねえ...」津田が口を開いた。「何故なのか...

私などは、“みんなが平均的”で...“心豊に生きて行ければ”...それが、何より

の満足なのですがねえ...」

「欲望の強す過ぎる人はいるものです...」大川が言った。「もっと欲しい、もっと欲し

いという人が、いるのです...そして、時代錯誤の人もいるものです...小泉・首相

も、その1人かも知れません。しかし、何故今、“新しい支配階級”なのですかねえ。時

代錯誤もはなはだしい...」

「はい!」秋月茜が、うなづいた。

 

<5> 富の再配分の公平性     

      “富の寡占化”は、社会の民主化とは、逆行する流れ!

     index.1019.1.jpg (2310 バイト)       

「さて...改めて、“富の再配分”の話に移ろうか...」津田が言った。「“社会システ

ムの果実”である“国の富”を、どのように“正しく公平に再配分”するかは、緊急の課

題となっています。

  大部分の国民は、社会の隅々にまで及ぶモラルハザードと、長期的な構造不況

で苦しんでいます。そして、時間と共に、生活は益々苦しくなり、まさに我慢も限界に

来ています...」

「はい!」秋月茜が、顔を上げて言った。

「さて...日本の“富と経済力”は莫大なものであり、無駄使いを無くし、“富”を公平

に再配分すれは、皆が十分に豊に暮らしていけるのです。ともかく、“富”がこの国の

“主権者”である国民に、“正しく公平に再配分”されているのかどうか...国民によ

“デザインの再構築”が必要なのではないでしょうか...

  現在の自分のスタンスで、小さなレベルで損得を考えるのではなく、“100年先の

未来を展望した社会システム創り”が必要な時です。そして、それこそが、私たちが、

子孫に残してやれる、“最大の遺産”になるのです。」

「ふーむ...」大川か、タバコに火をつけた。

“極端な富裕層”“極端な低賃金労働層”に分かれて行くなどは、秋月さんの言う

ように、まさに言語道断です。この国の“富の再配分”というものを、この国の“主権

者”である国民として、改めて考え直してみる、いい機会だと思います」

「はい...」秋月茜が、ノートパソコンに目を投げて言った。「では、このテーマは、津

田さんの方から、お願いします」

「うむ...

  “社会の富”...というのは、みんなで作り上げた“果実”なのです。企業だけが作

り上げたものではありません。“消費”があって、“生産”があるのです。つまり、これは

“社会システムが生み出した果実”のです。

  また、いわゆる“人間社会”では、たとえ無力で、ボンヤリと見ているだけであって

も、人間である以上は“立派な参与者”なのです。祭りの賑わいは、何もしなくても、そ

こにブラついているだけで、“立派な祭りの参加者”であるのと同じです。

  人生というのは、そうした祭りの中を、ただ何となくブラついているのに似ていま

す...何となく生まれてきて、祭りの中をブラつき、そして何処かへ去っていく...

れが人生なのでしょう。そのことに、意味があるのか無いのか、それも、その人生の

中で考えればいいことです。

  つまり...“リアリティー(真実)として...“この世には、過不足はなく、無駄なもの

は一切存在しない”ということです。逆に、存在しているものは、みな真実の結晶で

あり、みな平等な参与者”なのです。それは、“存在している事そのものに、無上の

価値がある”のです...」

  秋月は、真っ直ぐに津田を見、静かにうなづいた。

「そうしたわけであり...“日本の社会システムが生み出した富”は、この国の主権

者である国民1人1人が、その働きに応じて、正しく公平に配分を受ける権利があり

ます。

   くり返しますが、この“富の再配分”というものに対し、国民はもっと“公平性”を求

めてる権利があります。この国の“主権者”は、国民です。国民は、この国の“全てを

決める権利”をもっています」

「はい!」

「社会の“慣習法”に従い...それに基づく“適正な法律”を作り...“勤勉”“努力”

“成果”等が報われる、“正しい公平な再配分のシステム”が必要です。そうした正し

いマツリゴトが行われている社会で暮らすのが、いわゆる“万人の幸せ”というもので

はないでしょうか...

  そうした社会システムを持つ事が、“将来への安心”と、“社会への信頼”につなが

るのではないでしょうか。そうした社会を残してやる事が、“子孫への最大の遺産”

はないでしょうか」

「私も賛成です!」秋月茜は、強くうなづいた。「国民全体で、“国の富”をもっと公平

に分けるべきです。一部の人が、不当に分け前を取り過ぎています。今までは、あま

り問題にされてこなかったのですが、この“正しい公平な富の再配分”ということを、

国民はもっと真剣に話し合うべきです。

  アメリカという国は...政治も、富の再配分も、あまり参考にしない方がいいと思

います。必ずしも、理想に近いものではありませんし、東洋思想の日本には、なじま

ないものがあります。その1つが、“極端な富の寡占”です...これは、真似をしない

方がいいと思います」

「うむ、」

           wpeA.jpg (42909 バイト)  

「ええと...」秋月茜が言った。「私が...“富の再配分”に関して言いたかったの

は...よろしいかしら?」

「うむ、」津田が言った。

「津田さんと、同じ意味なのですが...もう少し具体的なことです...

  例えば、“ゴルフ選手”“野球選手”が、いかに特殊な才能の、選ばれた選手と

はいえ、20歳前後でいきなり数千万円や、億単位の“富の再配分”を受けるのは、ど

う考えてもおかしいと思います」

「うむ、確かに...」津田がうなづいた。

「普通の労働者が、汗水を流し、苦労を重ね、ようやくその対価を手に入れているの

とは...あまりにもかけ離れ過ぎています。“基本的人権”からくる“富の配分”の

格差が、あまりにも大きく開き過ぎています...

  あえて、言いますが...たかが野球やゴルフのプレイに、それほど価値がある

のでしょうか。一方、命がけのレスキュー隊のような人達は、それと比較して、正当な

評価がなされているのでしょうか。

  編集長たちは今、“国民参加型・評価システム”を考察しておられますが、まさ

に、あらゆる評価というものを、国民の立場から、再構成することが急務だと思いま

す」

「うむ...国の、文化全体が空洞化しているというのは、そういうことなのだろうね

え、」

「仮に、アメリカで“ギャラ”がそういう相場になっているにしても...日本の社会で

は、“新・民主主義”の中で、“富の再配分”をより公平公正に見直すべきです...努

力し、成功した人が、“何倍ぐらい報酬をもらうのが妥当”なのか...一般社会と比

較して、どの分野の人がどれほどの報酬が妥当なのか、社会全体で再構築すべき

です」

「うーむ...そうなのだ...それは、私もずっと考えてきた、」

「はい...

  今のままでは、“選手の側の夢”はかなえられても、逆に観客の“国民の側の夢”

は、離れて行きます。国民にとって、プロ・スポーツ芸能が、しだいにシラケた存在

にになって来ています...事情は、外国でも同じだと思いますが、まずは日本の文

化として、“正しい姿”に直していくべきです...」

「うむ...国民が、未曾有の社会混乱と、不景気にあえいでいる中で...一方で

は、“生活実感とはかけ離れたギャラ”が支払われているわけです。“社会の果実”で

ある“富”が、こんな再配分の仕方をされているわけです...こういう現実に対しに対

し、国民はもっと怒るべきだと思います」

「うーむ...」大川が、腕組みをした。「まさに、そうだと思う...たかが野球のプレイ

に、そんな価値があるとは思えないねえ...」

  秋月茜が、ノートパソコンに目を落した。

「ええ...これでは、“公平で公正な社会”とは言いがたいものがあります...

  例えば、野球選手に、そんなに“高い年俸”を払えるのなら、“入場料を安くするべ

き”なのです。これは、ゴルフや芸能関係などでも同じだと思います。庶民感覚から言

って、敷居が高過ぎます...国民は、こんなスポーツや芸能に、ついていけません」

「うーむ...」津田が言った。「基本的に、“文化の原理”か、“経済の原理”かというこ

とになるわけだねえ...やはり、“経済の原理”では、“心が失われ”、国民はついて

いけないということでしょう...

  やはり、国家の内側は、文化の原理で運営していかないとねえ...“経済という

のは、文化に奉仕するもの”なのですから...」

「そうだと思います...

  基本的に、これを直さないから、スポーツも芸能も、何故か白けてしまい、ごく一部

の人のものになってしまっています。そして、日本文化全体が衰退し、国民から乖離

したものになってしまいました...」

「すでに、システムが出来上がっていて、壊すのは容易ではないが...」大川が言っ

た。「壊して行かなけれならんだろうねえ...このまま、日本の国民を分断し、不満が

さらに高まれば、日本は確実に“テロ社会”へ突入するでしょう...」

「うむ、」

「小泉・首相は、テロ組織は“アルカイダ”だけだと思っているようですねえ...しか

し、自らの“失政”で、足元の日本の社会にも、“テロ”が起こる可能性が非常に高い

という現実を、是非知って欲しいと思います...

  モラルハザードは改善されず...貧富の差は拡大し...新しい支配階級が出現

...文化も宗教も無く...これから大増税時代がやって来る...しかも、将来へ

の展望が全く無い...

  その時、国民は、“黙って押し潰される”のか、“反発してテロを起こす”のか、それ

とも、“新しい未来への展望を切り開く”のか...いずれにしても、近々、その選択を

しなくてはならないでしょう...

  小泉・内閣のやっている事は、まさに本末転倒・支離滅裂に陥っています...」

「小泉・首相が...」津田が言った。「それを承知してやっているとしたら、許しがたい

ことです。それを信念でやっているとしたら、この政権は、一刻も早く倒さなければな

りません。しかし、その可能性が、濃厚ですね、」

「私は、日本を“テロ社会”にしないためにも、一刻も早く政権交代し、政策の大転換

することが急務と思います。自衛隊のイラク派遣延長の問題もありますし、これは泥

沼化する危険がきわめて濃厚です。日本は、抜き差しなら無い状態になります...」

「その通りです!あいまいなスタンスというのは、非常に危険な感じがします!」

 

「はい...ええ、ともかく、“富の再配分”の問題は、非常に大きな基本的課題です。

改めて考察したいと思うのですが...どうでしょうか、編集長?」

「うむ、」津田は、コクリとうなづいた。「秋月さんに任せます」

「ありがとうございます!

  ええ、“経済力と資産”...これと“人権”との関係を克服するには、“新・民主主義

社会”を実現し、“人権は別システムで保証していく”ということだと思います。それか

ら、“富の再配分”の問題ですが、これも主権者である国民が、基本デザインからキッ

チリと再構成を検討してもいい時期だと考えています。これが、皆さんの言う、“平

成・維新”にあたるのでしょうか...」

「うむ、」津田が、うなづいた。「ともかく、社会を“一新”するのが、“維新”です」

 

  〔5〕人権の侵害          wpeA.jpg (42909 バイト)

<6> 免罪符の社会           

「ええ...“免罪符”という言葉を聞いた事があるでしょうか...」秋月茜が、二人に

聞いた。

「“免罪符”があると、悪い事をしても罪が許されるのでしょう?」マチコが言った。

「そうですわ...中世のヨーロッパのでしたかしら、」弥生が言った。

「はい...歴史の時間に、習ったことがあると思います...

  ええ...もう少し詳しく言うとですね...これは“贖宥状(しょくゆうじょう)という証書の

ことで、“免罪符”というのは、通称です。ローマ・カトリック教会で、“罪の償いを免除

する証書”の事です。キリスト教において、最後の審判の折、“この罪を許す”という

証書のようなものなのでしょうか...宗教上の詳しいことまでは、私には分りませ

ん」

「はい、」弥生が、顔を斜めにして、まばたきした。

「中世のヨーロッパでは、この“免罪符”というものが、教会で販売されていたわけで

す。これを買えば、神の名において、罪を許すということでしょう。教会も、とんでもない

金儲けを考えたものです。

  そして、この蔓延に対して行われたのが、ルターが率いた宗教改革(1517年)

す。また、カルヴァンの更なる改革の継続です。この運動は、たちまち全ヨーロッパに

広がり、今に至るキリスト教の宗派分裂時代の幕を開いたのです」

「お金があって...“免罪符”が買えれば...便利よねえ、」マチコが言った。「悪い

事をしても、神様が罪を許してくれるのなら、」

「真面目な神学論争などもあり、それほど単純ではなかったでしょう。それに、非常に

高価なものだったと思います。ただ、それが蔓延すると、しだいに庶民感覚の便利な

ものになったのかも知れません」

「そうかあ、」

「ええ、余談ながら...フランシスコ・ザビエルが、当時、極東の日本までやってきた

のは、宗教改革で敗れたカトリックが、布教の新天地を求めてのことです。このこと

が、日本の歴史にも、様々なキリスト教の影を落しています...

  よく知られているのは、細川ガラシヤの殉教(1600年)です...彼女は、本能寺

の変で信長をを討った明智光秀の娘です。関が原の戦いで、石田三成の挙兵に際

し、三成の人質となるのを拒んで、死を選んでいます。それから、江戸時代に入って、

島原の乱(1637〜1638年)天草四郎・時貞の殉教があります...原城址に立

てこもったのは、2万数千人といわれ、キリシタンが多く、幕府が手を焼いた百姓一

揆です...ヨーロッパにおける宗教改革が、こんな所まで響いてきているわけです」

「島原の乱にはさあ、剣豪の“宮本武蔵”も参戦しているのよね、」

「はい...

  ええ、何故、“免罪符”の話をしたかというと...今の日本の、未曾有の社会混乱

の局面の1つが、その“免罪符”の時代に、似た状況があるということです。つまり、

悪い事をしても、“金を払えばいいのだろう”という風潮です。

  例えば、マスコミなどでは、平気で、故意に、“人権侵害”をし、その対策として、担

当弁護士を配しておくといった状況です。しかも、賠償金額の相場も、およそ決まって

います。その上で、全て承知の上で、犯罪を犯しているのです。これは、まさに、“免罪

符”の値段を電卓で叩き、犯罪を商売にしている状況です。

「そうですわ、」弥生が、うなづいた。

「“人権侵害”の加害者と法務当局はそれでいいかも知れませんが、被害者の人権

は、そのお金で回復したのでしょうか。ここでもまた、犯罪被害者の立場が、なおざり

にされています。そもそも、“免罪符”などというものは、あってはならないのです

「そうよね...」マチコが言った。「被害者はさあ、たいがいの場合は、お金なんか欲

しいわけじゃないのよね...それをさあ、“人権侵害”の相場が決まっているなんて

さあ、ひどい社会よね、」

「法律的には、どうなんですの?」弥生が聞いた。

「法律が、そうなのです。