My Weekly Journal/ 辛口時評辛口時評・2000

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  2000年 〜 2001年  house5.114.2.jpg (1340 バイト)                     

トップページHot SpotMenu最新のアップロード                  執筆/担当:   津田 真

     INDEX                            

プロローグ   プロローグ  2000. 9.27
No.1 あっせん利得罪 2000. 9.27
No.2 技術先進国の日本で、なぜ医療費の不正請求がまかり通っているのか 2000.10.21
No.3 本音で話し合える社会、本音で話し合える文化の実現を 2001. 2.16

  

                            

 プロローグ                  

 

My  Weekly Journal  の津田真です。ええ、このところあまり活躍の場

がないので、時事寸評的な“辛口時評”を始めることにしました。

最初は、時事川柳にしようと思ったのですが、川柳の素養が無いので、

会話形式の寸評にすることにしました。

  協力は女性陣にお願いするつもりです。とりあえず今回は、折原マチ

コに頼みました」

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「そういうことで、」津田は、マチコに軽く頭を下げた。「ひとつ、よろしくお

願いします」

「うーん、面白そうねえ。辛口かあ...」マチコは、腰に手を当て、My

 Weekly Journal  第1編集室の中を見回した。「ふーん...意外

と広いのね...そう言えば、私の My Assistant Desk  もガラガラよね

え...」

「さ、それでは、第1回を始めますかな、」

「あ、はい...」

 

 

                                            (2000.9.27)

                         <辛口時評 No.1

  あっせん利得罪

 

「ええ...いよいよ、2000年秋の臨時国会が始まりました。そこで、日

曜日(9月24日)、与野党代表によるテレビ討論を見ていたのですが、どうも

我々国民から見ていると、議論全体が低調な感じがしました。マチコさ

んは、どう思いましたか?」津田は、両手をドンとテーブルの上に置き、

唇を引き結んだ。

「うーん、国会議員は、何でこんなことを議論しているのかしら...」マチ

コは、テーブルの上にメモ用紙を置きながら言った。「こんなことは、政治

家の政治以前の、モラルの話なのではないでしょうか、」

「そう。まさに、そのとおりだと思います。しかも、国会議員としての歳費

をもらい、公設秘書を付けてもらいながら、こんなことを議論しているわけ

です」

「うーん...“法案は抜け道だらけ”だとか、“ここからこっちは、両手に

手錠がかかる”だとか...それから、いつだったかしら...“政治家

は、刑務所の塀の上を、中に落ちないように歩いているんだ”とか言って

いる長老議員がいました。結局、その人は、塀の中に落ちちゃったよう

ですけど...

  でも、いったい私達が選出している国会議員は、毎日こんな犯罪スレ

スレのレベルで生活しているのかしら?

「まあ、しているんだろうねえ...その証拠に、刑務所の塀の中に落ち

てしまうのを、時々見かけるしね...ま、議員でなけりゃ、とてもそんな

ことはやりそうもないような人が、議員になると平気で悪いことをする」

「まるで、チンピラか、暴力団みたいね!」

「私は以前、ここの第1編集室OPINIONで、国会議員は日本の

各種・様々な集団の中でも、非常に犯罪発生率の高い集団だと書いた

ことがあります」

「はい。知ってます。読みました。うーん...」マチコは、腕組みをし

た。「それにしても、今回の“あっせん収賄罪”ですが、政治活動のモラ

ルが、刑務所の塀の上をフラフラ歩いているような議論は、そもそも間違

っているのではないでしょうか?私たちは、政治家に、もっと高いモラル

を求めてもいいのではないでしょうか?」

「まさに、そのとおり...この前は、“政治家の株取引のことで議論が

白熱していた。“参議院議員の産休”の議論も新聞に載っていた。それ

から、議員辞職した山本譲司や中島洋二郎の問題もあった。そうそう、

こっちは議員辞職をしない、オレンジ疑惑の友部参議院議員の問題もあ

る...いずれにしても、こんな低レベルの内輪の問題で、貴重な国会審

議の時間を潰されては、たまったものではないね」

 

  マチコが、小首をかしげて言った。

「そう言えば、津田さん、今、来年の参院選の選挙制度改革を議論して

いるわね」

「ああ」津田は、顎に手を当てた。「まあ、これも本来、国民によって選ば

れる側の人間が、議論すべき問題ではないね。選ぶ側が、国民主権の立

場から、より良い代議員を選び出すためのシステムを作り上げていくの

がスジだ。票が取れそうだからこっちにしようだとか、金がかかりすぎる

からイカンとか、まさに本末転倒だね。問題は、いかに国民の負託に答

えられる議員を選び出せるかにある!ともかく、これは国会議員ではな

く、国民が議論すべき問題だ!

「はい!ええ...それで、津田さん...どうしたらいいのかしら?」

「まあ、そうだねえ...選ぶ方が悪いのか、選ばれる側の質が悪いの

...ま、ともかく、

 

政治家のモラルは、

国民として、手錠のかかる最低ラインではなく、

国家、社会、人類の未来を切り開いて行く、

最高ラインに近い領域のものであってほしい...

 

と、思うがね...この言葉を、今回のまとめにしよう」

「はい!」

 

                                           (2000.10.21)

                              辛口時評 No.2  

  index.1102.1.jpg (3137 バイト)      house5.114.2.jpg (1340 バイト)  

   技術先進国の日本で、

        なぜ医療費の不正請求がまかり通っているのか  

            <参考文献: 東京新聞/2000.10.2/こちら特報部・病院の「架空請求」監視>

 

「ええ、今回は医療方面の話になりますので、“生活”担当主任の白石

夏美さんに来ていただきました。ええ...夏美さん、今回は、ひとつよろ

しくお願いします」堀内は、白石夏美に軽く頭を下げた。

「こちらこそ、よろしくお願いします」夏美も、長い髪を揺らし、頭を下げ

た。「でも、私に辛口が出来るかしら?学生時代は、マチコと一緒に言い

たい放題でしたけど、最近は...」

「ああ、それは大丈夫です」津田は、ピンと上を向いた唐辛子の赤い実を

つついた。「辛口の方は、私が責任をもちますから。夏美さんは、日頃思

っていることを言ってくれればけっこうです」

「はい、分りました。それじゃあ、」夏美も、鉢植えの唐辛子を、トントン、

とつついた。

「マチコは、学生時代とあまり変わらんのですか?」

「ええ。私の方はは、自分は変わったな思うんですけど、」

「ハッハッハ、」

「ええ...さてと...上記の東京新聞によれば、医療費の不正請求の

実態は、驚くべきものがあるといいます。厚生省が不正または不当と

し、医療機関に返還を命じたものが、総額58億5000万円(1998年度)

上るといいます。この中には、単純ミスも含まれますが、この数字は氷

山の一角だといいます。

  一方、保健組合の財政は、しばらく前から破綻寸前だと報道されてい

ます。もちろん、財政破綻の原因は、こうした不正支出が主因でないと

は思います。コスト意識のない患者の対応や、老人医療への膨大な持

ち出し等が大きいようです。しかし、こうした構造的な問題の一角に、確

かに病院側の架空請求水増し請求の実態があるようです。おそらく、

何割かの責任はあるということでしょうか...

  まさに...国家が衰退し始めているという、この国の縮図の様な風景

です、」

「ふーん...すごい規模ですねえ!」

「技術先進国の日本で、この程度のことが、何故しっかりと管理できない

のでしょうかね。これは、まさに、犯罪なのだから...」

「でも、これは政治的に甘い配慮がなされているということでしょうか?」

「おそらく、そういう面はあると思います。消費税が導入された時も、キチ

ッとした伝票どうしを突き合わせる方式ではなく、帳簿方式でわざと灰色

部分の曖昧さを残しました。結局、それは、多少ごまかしてもいいという

ことで、業界に配慮したわけです。そして、未だにこのインチキは是正さ

れていない。消費税が3%から5%になった現在でもその“業界の既得

権”は残っています。医療費の不正請求の土壌も、まさにこの類ではな

いかと思いますね」

「でも、それは、悪いことというか、犯罪なのでしょう!」

「確かに、悪いことだし、犯罪でもある。しかし、“そこをうまくやって、儲

けろ”という意図がある。また、多少は、目をつむるということでもあるの

でしょうか、」

「それが、政治的に?」

「そういうことだと思います...ただし、私にはそれが政治的配慮かどう

かを証明する資料がない。しかし、支払いはクレジットカードか医療用の

プリペイドカードで、キチッと保健組合と“オンライン化”すると言えば、た

ぶん業界は反対するだろうねえ。つまり、旨味がなくなってしまう。

  ただ、このインターネットの時代に、いつまでもオンライン化しないとい

うわけにも行かんでしょうが...」

「ふーん...医療費の不正請求の実態というのは、官僚や特殊法人の

乱脈ぶりと似ていないかしら?」

「うん...構造的で大規模だということでは、よく似ていると思う。衆議院

の予算委員会ですら、“無駄な公共事業は確かにある”と、閣僚が答弁

していた。首相もはっきりと、“無駄づかいはある”と認めているしね。し

かし、これは、とんでもない話だと思う。税金は国民の貴重な財産であ

り、無駄と分ったものに対しては、しっかりと責任追及し、厳罰に処すべ

きだと思う。医療費の不正請求の実態も、まさにこれと同じかもしれない

ね。

  まあ、こんなことをやっているわけだから、国家財政も、保健財政も、

まさに破綻寸前の状況というわけだ...」

「どうしたらいいのかしら?」

「まず、私が言いたいのは...まさに、国家の基幹システムで、この様

なインチキが大っぴらにまかり通っているという、“この国の姿”を問題に

したいね。私たちは“この国の姿”をキチッと鏡に映し出し、21世紀の日

本はいったいどうしたらいいのか、しっかりと考えていくべきだと思う。こ

の国の社会システムの緩みの方には、まさに戦慄さえおぼえるね

「はい。でも、私の知っているだけでも、立派なお医者さんはたくさんいま

す。それに、病院経営というのも、けっこう倒産もあると聞きます。経営

は、それほど簡単ではないようですが、」

「官僚機構でもそうだが、立派な人間も、確かに大勢いる。しかし、組織

として後ろ指をさされるというのは、やはり異常と言わなければならんだ

ろう。国民の健康をあずかる医療システムでも、それは同じだと思う。い

ずれにしても、保健財政も国家財政も、破綻寸前の状況なわけだしね」

医療レベルの問題はどうかしら。過剰な医療で、保健財政を圧迫して

いるということは?」

「うむ!それはあると思う。しかし、その問題の議論は難しいですね。そ

れに、この第1編集室のOPINION(No.9)でも書きましたが、それを言う

なら私は、保健医療行政の大転換が必要だと思う。

  つまり、“健康志向型の予防医療”へのシフトの問題です。病気になる

のを待つという現在の仕組みから、健康の指導と維持を主体とした、積

極的な保健医療行政へ大転換すべきだということです」

「はい...ええ、ともかく、架空請求や水増し請求は、犯罪行為というこ

とですね。それから、医師の所得水準は、国民の平均から見れば、ずば

抜けて高いとも聞きます。このことについては、」

「厚生省が返還を命じた58億円が、氷山の一角だとすれば、莫大な金

額が我々の保健組合から不当に支出されていることになる。こうなってく

ると、現在の保健支払いシステムそのものが重大な欠陥をはらんでいる

と言わざるを得ないですねえ...

  こうした上に立って、医師の高い所得水準が維持されているとしたら、

それはやはり社会的な大問題だと思う。また、その一方で、看護婦の労

働環境は良くないとも聞きますし...」

「はい、」

「まあ、私はここで、医師の所得がどうこうと言うつもりはありません。とも

かく、不正や不当な請求はイカンと言いたいわけです。夏美さんの言うよ

うに、問題は単純ではないでしょうが、不正や不当なことがまかり通って

いるようでは、患者としては、医療行為そのものに不安を抱いてしまいま

す」

「はい...」

「こうした日本中に蔓延している、不明朗な社会システム不明朗な行

政システムが、国民全体の活気を奪っているような気がします」津田は、

椅子の上で背を伸ばし、深く腕組みをした。「ともかく、金融や経済の上

層部で、国民の税金がジャブジャブと不当に投入されています。また、

ゼロ金利政策で、金利がずいぶんと金融機関に食われてしまいました。

  しかし、そうした失政や経営失敗の責任の所在が一向にはっきりして

来ない。そして結局、処罰も、ごく表面的に何人かを吊るし上げてお茶を

濁している。しかし、こうした社会的なインチキ不透明さが、まさにこの

国の活気を奪っています。

  ところが、肝心の政治は何をしているのかというと、参議員選挙の比

例代表のことで、国会が完全に空洞化してしまっています。つまり、彼等

には、この国が現在どのような状況にあるか、この国の危機が分ってい

ないのではないでしょうか!分っていたら、こんな“幼稚園の砂遊び”

ようなことを、やっているはずがないのですが!」

「うーん、景気がいっこうに回復して来ないのも、こうした所に原因がある

のでしょうか?」

「私は、そう思っています。私はかねてから、この国の政治は幼稚化しつ

つあると言ってきましたが、とうとうこんな状態になってしまいました...

  まあ、政治の話はこれくらいにしておきますか...」

「はい。ええ、それでは、どうしたらいいのでしょうか?」

「医療現場での不正請求に関しては、とりあえず、カード・システムの導

入を急ぐべきだと思います。カルテの記入できるICカードなら、ずいぶん

と進化したものになります。しかし、不正請求に関してだけなら、クレジッ

トカードか、銀行のキャッシュカードを使えばいいと思います。あるいは鉄

道のようなプリペイドカードで、医療プリペイドカードを作ってもいいんじゃ

ないでしょうか。ともかく...

 

  データをオンライン化し、灰色部分をなくすことが必要だと思います。

様々な圧力があるにしても、国民の殆どがそれを望むなら、それは必ず

実現します。何故ならこの国は、国民主権の民主主義国家なのですか

ら...

  それから、医療問題ばかりでなく、政治・行政・教育等すべての面で、

国民は積極的に、強力な支持や意思を表明して行くべきだと思います。

そうしなければ、まさに、この国は大混乱に陥ってしまいます...

 

  さあ、この言葉を、今回のまとめにしよう」

「はい!ともかく、国民がしっかりしなければならないということです

ね!」

「そうですね。そして、様々な局面で、具体的かつ強力な意思表示を展

開していくべきだということです。それが、メールであってもいいし、ファ

ックスであってもいいし、デモ行進であってもいいと思います」

「はい。ともかく、“国民全体が動けば、この国は容易に変わりうる”とい

うことでしょうか?」

「そういうことです!」

「ええ、それでは...今回は、ここまでとします」

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                                                        (2001. 2 .16)

                                                  辛口時評/No.3

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  本音で話し合える社会

      本音で話し合える文化の実現を

 

「やあ、支折さん、いらっしゃい。忙しいですか?」

  津田は、ハイパーリンクから入ってくる彼女を見ながら、マウスをカチと

左クリックした。彼女は、ブラックジーンズに、水色のフリースを着ていた。

                             

「ええ...」支折は、部屋を見回しながら、津田のいる作業テーブルの方

へ歩いた。「忙しいと言うほどではありませんが...2月1日に、高杉塾

長と“国宝・鑑真和上展”を見に行ってきました。そのアップロードが2月

12日にようやく終わったところです、」

「ああ、知ってます。なかなか良かったようですね」

「ええ。最近の日本は、社会的にも文化的に相当に荒廃してきていま

す。こうした時に、日本文化の原点に立ち返ってみるのは、とてもいいこ

とでした」

「なるほど...」津田は、スラリとした支折を見上げた。「奈良、天平の文

化ですか、」 

「はい。あのあたりに、日本文化の原点があるのではないでしょうか?」

  津田の使っているパソコンと同じ画像が、正面コンソールの大型液晶

スクリーンに映っている。この50インチのディスプレイで、インターネット

に直接画像を送り出している。

  支折は、ルイビトンのバッグをテーブルの隅に置いた。そして、中から

ズッシリとした四角い紙包みを取り出した。

「ふふ...」支折は体を横に振り、イタズラっぽく笑った。「芋羊羹(いもよう

かん)を買ってきました。お茶を入れましょうか?」

「おお、いいねえ...」

「私が、食べたかったんですわ」彼女は、笑って口元に手をやった。

  支折が茶の支度をしている間、津田は“舟和”と書いてある包装紙を

とき、箱に詰まっている芋羊羹を出した。支折は小皿を2つ持ってきて、

楊枝で芋羊羹を1個づつその上に取った。

「おいしいわね、」支折は、芋羊羹を食べ、茶をすすって言った。

「うむ...甘すぎず、しつこすぎず...茶もうまいね、」

「ええ...もう1個づつ、頂きましょうか?」

「うむ...」

  支折は、さっきと同じ様に、もう1個づつ楊枝で小皿に取った。

ところで...回は...ええ、“本音で話し合える社会、本音で話し

合える文化の実現をというテーマで、この国の様々な局面での、も

のごとの決定されていく風景を見ていこうと思います...」

「はい、」

  津田は、支折が新しく取ってくれた芋羊羹を、楊枝で切った。そして、そ

れを真上から突き刺し、口に放り込んだ。

「この国は...今、まさに、何もかもがメチャメチャになっています...」

  津田は、茶をゴクリと飲み、天井を見やった。

「...政治は国民の信頼を失って久しい...それに、日本の伝統文化

も、すっかりどこかへ消えてしまったようだ。いったい、こんなことで、誰

が得をしたのか?何が悪かったのか?どのあたりから、何が狂いだした

のか?

  まさに、今こそ、我々日本の国民は、“本音”でこうしたことを全て話し

合うべき時に来ていると思う。そこで、反省すべきものは反省し、悪いもの

は、二度と同じ過ちを侵さないように、きっちりと“けじめ”をつけていくべ

きだと思う。この作業なくしては、キチッとした21世紀型の新しい日本の

社会はやってこない...」

「はい...」支折は、芋羊羹をモグモグやりながら、強くうなづいた。

「さて、では、始めるとするかね...」津田は、茶を飲み干し、芋羊羹の箱

をわきの方へ押しやった。

                         

 

「ええと...まず、すでにいくつかテーマを絞っておいたので、それにつ

いて考察していこうと思います...」

「はい」

  津田はコンソールの50インチ液晶スクリーンに、パソコンで編集した今

回の“辛口時評”のテーマを映し出した。

“本音で話し合える社会”とは...まず、最も基本的な所は、政治だと

思います...この点について、支折さんが日頃感じていることはありま

すか?」

「はい...うーん...言っていいのかしら?」

「もちろん、いいですとも!ここは“辛口時評”ですから、」津田は、笑っ

てうなづいた。

「はい...うーん、最近思うのですけど、“政治家の言葉”というものが、

軽く、空回りしているような気がします。それから、政治に関するマスコミ

報道も、やはり軽薄で、空回りしているように思います」

軽薄で、空回りか...確かに、厳しい指摘だ。マスコミ報道の方は後で

聞くとして、“政治家の言葉”の空回りの方を、もう少し詳しく聞きたいです

ね」

「はい。まず、あの人たちは、“平気でウソをついている”気がします。そし

て、テレビ討論などを見ていると、“堂々とごまかし、それを押し通してい

る”気がします。“本音で、真剣な議論をしていません。ただ、形式的な

所で議論しています。そんなことをして、いったい何になるのかしら”。そ

れから、うーん...あの人たちは、相手の意見は、最初から聞く気がない

みたいね。こんなことでは、まともな議論を望む方が無理なのじゃないか

しら、」

「まさに、厳しい指摘ですね。核心を突いている!それでは、ええ...

さっき言った、マスコミ報道の方は?」

「はい。マスコミは、よく“与党3党の話し合い”という形で、ニュースを取

り上げています。しかし、これは非常に良くない切り口だと、私は思いま

す。重要なのは、国会における委員会などの論戦や決定なのであって、

それ以前の与党の話し合いなどは、何の決定権もないはずです。こんな

ことをニュースで取り上げること事態が、国会の委員会を軽視する報道

だと思います。もっと、民主主義のスジを通すべきです

「なるほど。与党間の話し合いが、ニュースで流されること自体が、“国

会論戦の軽視”になっているということですね。うーむ、確かに最近は、

そういうニュースが多いですねえ...単なる与党の話し合いを、ニュース

にして、これがまるで国会で決定も同然だというニュースのあり方は、是

正すべきですね。“国民の代表である国会の軽視”は、こんな所から発

生していものかも知れません。うーん...かっては、こんなことはなかっ

たのですが、」

「はい。この、国会軽視という点では、マスコミは非常に大きな責任があ

ると思います。まず、マスコミが、国会の論戦を重視し、正しい側に立っ

てしっかりと支持を打ち出し、民主主義の質を深めていくことが重要だと

思います

「なるほど。なかなか、しっかりと意見をまとめてきたようですね」

「はい。私は文芸担当ですので、科学の方はやりません。そのかわり、

社会面の方は、しっかりと頑張ろうと思っています」

「うーむ。そう言われてみれば、私と同じ立場なわけだな、」

「はい。もっとも、私は社会面というよりは、文化面なのですか、」

「そうですね。ええ、それでは、支折さん、次に“本音で話し合える文

化”についてはどうでしょうか。支折さんには、むしろこちらの方を聞きた

かったのです」

「はい...テレビ番組などを見ていても、この国の文化の衰退は惨憺た

るものだと思います。かっては、テレビの漫画や動画でも、楽しみなもの

が多かったのですが、そうした独創的な創作は殆ど姿を消してしまって

います。とても、一口では言えません」

「うーん...NHKなどは、意欲的に取り組んでいるのは感じられるので

すがねえ。しかし、さっき支折さんが言った、“与党3党の話し合い”とい

うような国会軽視のニュースの切り口は、NHKでも顕著ですね」

「はい。そうだと思います...」

「かって我々は、“大自然の風景”や、“人生のドラマ”や、“偉人の生涯”

などに感動したものでした。少なくとも、いわゆる戦後の、我々の知って

いる“日本のよき時代”はそうでした。ところが最近のテレビを見ている

と、感動というのは、メシや食い物の味にあるようです。行列のできる

店、安くて美味い寿司、豪華な温泉宿...

  いったい何で感動というものが、ンブリの中身や、箸の先や、温泉宿

に集中してしまったのでしょうか。あまりにも目先、あまりにも舌先、あま

りにも安っぽいのではないでしょうか。そして、英雄は、野菜を5円や10

円で投売りする八百屋というのでは...」

「うーん...それもいいのですが...ただ、そればっかりというのは、と

思います。それから、芸能人の話も、スキャンダルが先行しているのは

嫌いです。」

「そう言えば、この間、画家の平山郁夫さんと、宇宙飛行士の毛利守さ

んが対談しているのを見ました。ああいうのは、いいですねえ。本物を究

めている人の対談というのは、」

「ええ、そう。私は、サッカーの中田英寿さんと、作家の村上龍さんの対

談が良かったわね。私は、実は中田さんのファンなんです」

「ほう。あの、イタリアのローマで活躍している?」

「ええ。彼はいいわね。本物だし、クールだし、」

「そうですか...さて、話がだいぶそれてきたので、このぐらいにしてお

こうか、」

「はい」