企画室 地球監視ネットワーク地球観測衛星「テラ」

    最新鋭・地球観測衛星 “テラ”  

  高度705km/極軌道/ <1999.12.18 /周回軌道に入る>  <設計寿命 6 年>

     index.1102.1.jpg (3137 バイト) wpe7D.jpg (18556 バイト)   wpe89.jpg (15483 バイト) wpeA6.jpg (14454 バイト) house5.114.2.jpg (1340 バイト)  wpe74.jpg (13742 バイト)  house5.114.2.jpg (1340 バイト)

         http://www.ersdac.or.jp  (このホームページで、衛星画像を無料で取得できます)

 

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード      担当 : 堀内 秀雄 / 白石 夏美  

 INDEX house5.114.2.jpg (1340 バイト)< ミミちゃん  チーコちゃん >

プロローグ    2000.6.15
No.1  <1> 地球観測衛星“テラ(Terra)の任務        (2000.6.28)に推敲    2000.6.15
No.2  <2> 5つの気候観測用センサー  2000.7. 4

 

 

参考文献 : 日経サイエンス/7月号/  地球の異変を監視する

                      M.D.キング(NASA=アメリカ航空宇宙局) / D.D.へリング(サイエンス・ライター)

  

 

プロローグ         house5.114.2.jpg (1340 バイト)

 

「白石夏美です。今回は、地球が現在どのような観測・監視体制になっているかを考

察していきます。20世紀最後の年、そしてあと半年たらずで21世紀を迎えようとして

いる現在、地球生態系はどのような状況にあるのでしょうか...しかし、これを全体

的に、リアルタイムで補足するのは容易ではありません。さあ、まだ駆け出しではあ

りますが、21世紀型の観測・監視体制を紹介します」

 

「堀内秀雄です...さて...危機的状況にある地球環境を分析し、長期的戦略に

役立てていくために、NASA(アメリカ航空宇宙局)“地球観測システム計画EOS:Earth 

Observing System)を推進しています。そして、この計画の“旗艦”衛星となるのが、今回

ここに紹介する地球観測衛星“テラ”です。傘下には現在、“テラ”の他に3機が軌道

上にあり、太陽エネルギーや海洋風などの観測にあたっています...」

 

         house5.114.2.jpg (1340 バイト)       house5.114.2.jpg (1340 バイト)wpe7D.jpg (18556 バイト)   house5.114.2.jpg (1340 バイト)   

                                                           

 

「夏美!」ミミちゃんが、マウスを置き、夏美を見上げた。「用意ができました!」

「そ、ありがとう...ねえ、ミミちゃん、チーコちゃんは?」

「うーん...遅くなるって。京子さんが、今、インターネットに入ってるの、」

「そう...」夏美は、ミミちゃんが準備したパソコンのディスプレイをのぞき込んだ。

  この《環境・資源・エネルギーのセクションにも、今回から高速・大容量コンピュー

ターが導入されていた。放送大学と同型のものだ。この大容量コンピューターに、い

“テラ”から画像データが落とされてきていた。もっとも、ディスプレイされているの

は、無限連続的に表示されているイメージ画像だけだった...

  堀内が夏美の後ろに歩み寄り、“テラ”からのダウンロードを眺めた。

「どう...大丈夫?」夏美が、両手を腰に当て、ミミちゃんに聞いた。

「うん!」ミミちゃんの後姿がうなづいた。長い耳が揺れた。「大丈夫よ!この間噴火

した、有珠山周辺の画像を取ってるの!」

「この“テラ”では...」と、堀内が言った。バンド”という波長帯を使い、“ダイレ

クトブロードキャスト”というデータ通信を使う」

「“ダイレクトブロードキャスト”ですか?」

「うむ...まあ、要するに、互換性のある受信機と、膨大なデータを処理できるハード

ウエアーがあれば、誰でも“テラ”のデータを入手できるわけだ」

「うーん、ンドサット衛星でも、画像は入手できたんじゃないかしら?」

「確かにね。ただ、ランドサットの画像は、1枚数百ドル〜数千ドルで販売していた。

しかし、この“地球観測システム計画EOSでは、データを無償で公表しているわけ

だ」

「ふーん...そうかあ...でも、費用はどうするのかしら?」

「うーむ...とりあえずは、NASAの負担だろうねえ...それから、国際協力かな」

  夏美は、黙ってうなづいた。

 

wpe89.jpg (15483 バイト)≪ ミミちゃんガイド≫                

  “テラ”の主力センサーASTER : 資源探査用将来型センサーは、日本の通産省が開

発した機器です。以下のインターネットで、ASTER の画像公開に関する情報を取得で

きます。           http://www.ersdac.or.jp   <日経サイエンスに掲載>

         

 

「それじゃ、ミミちゃん、そろそろ始めるわよ。こっちの方はお願いね」

「はーい!」

 

 

 <1> 地球観測衛星 “テラ(Terra) の任務 wpe74.jpg (13742 バイト) 

 

「さて、いいですか、夏美さん?」堀内は、プレゼンテーション用のスクリーンの横で言

った。

「はい...」夏美は、向かい側のテーブルへ歩き、椅子を引いた。片手で、ノートパソ

コンの位置を直した。

「ええ...現在、地球表面で起きている複合的な環境破壊は...すさまじい速度で

進行しています毎年、日本の国土面積の4割に相当する熱帯雨林(14万2000ku)

が、人間活動によって消失しています。つまり、急速に熱帯雨林が消えていっている

ということです。この状況をこのまま放置していたら、現在の状態の地球は、あと

100年とはもたないでしょう...全生態系のバランスが激変してしまいますか

ら...」

「生態系が、全滅するのでしょうか?」

「いや、実際には、地球そのものは残りますね。また、それなりの生態系も残るでしょ

う。しかし、そこにはもはや人類は居ないかも知れないということです。この濃密な地

球の生態系が維持されなければ、最高モードの人類もまた、消滅していく運命にあ

るということです。ピラミッドの頂点にあるホモ・サピエンスは、あくまでもこの生態系

によって支えられ、相互作用している存在なのです。言い換えれば、この生態系に、

不可分に縫いこまれている、布模様のようなプロセスの風景なのです...」

「うーん...」夏美は、腕組みして首をかしげた。

「いずれにしても...すでに、人類文明のまわりで、急速に“種”が絶滅し始めている

でしょう。自然のサイクルによるものも多少はありますが、そのほとんどは人類との

かかわり合いで絶滅しています。これは何を意味しているでしょうか?」

「うーん...自然の風景が、山や川の風景が、単調化 して行くというのは、危険なこ

となのでしょうか?」

「そうですねえ...」堀内も両腕を組み、うなづいた。「かなり危険なレベルに入って

きていると思いますね...」

「もし、人類が生態系を回復できなかったら、どうなるのでしょうか?」

「うむ、あまり考えたくはないですねえ...しかし、飢餓は必ず来るでしょう。気候の

バランスが崩れれば、長期的な不作や凶作が必ず来ます。あるいは、それが常態化

していくかもしれません。そうした所にインフルエンザが重なり、その相乗効果で、

人口が激減していく過程をとるかも知れません。しかも、こうしたことは、繰り返し起こ

るでしょう。

 ただ、これは生態系全体のバランスの中で、人類のバブルの人口が適正化されて

いくメカニズムなのです。イナゴの大発生や、ネズミの大発生の後でも、こうした飢餓

によって調整メカニズムが働くのです」

「人類の持つ、科学技術力は評価されないのでしょうか?」

「いいですか...人口爆発と環境破壊で、科学技術によるコントロールが効かなくな

る、“臨界点”が出てくるということです。ま、これを、どの辺りでくい止められるかにな

りますが、これが現在の私達の仕事になるわけです」

「...」

「いずれにしても、これも人類文明のカタストロフィー・ポイント(破局点)への、シナリオの

1つということですね」

 

         

「さてと、話を進めましょう...

  地球観測衛星“テラ”は、高度705kmを、極軌道で周回しています。静止軌道(赤

道上空3万6000km)をとる気象衛星などは、地球の赤道の上にあり、地球と同じ周期で

回っています。しかし、極軌道は南極と北極を通過する軌道を回っているわけで

す。地球の公転運動に対して、スパイラル状に回っていくことになりますので、多少

複雑になります。

  さて、この“テラ”は、実際にはバスほどもある型人工衛星で、太陽電池パネルを

張れば、さらに大きなものになります。総重量も、やはり相当なものになるはずです。

最近、使用済みの観測衛星を1個、人為的に地球に落としたニュースがありました。

覚えてますか、夏美さん?」

「はい。そのニュースは見ました。太平洋とかに落としたそうですが、燃え尽きなかっ

たとか、」

「そう。その衛星も、総重量は70トンとか言ってました。むろん、宇宙空間は無重力

ですから、これは地表で換算した重量ですが、」

「70トンかあ...大きいわねえ...」

 

  堀内は、プレゼンテーション用スクリーンの画像を入れ替えた。

「いいかな?」

「はい、」

「ええ...本来、地球の大きな気候変動は、火山噴火造山運動海流の変化

河期の繰り返しなどで起こってきました。もっとも、なぜ氷河期が繰り返しやってくる

のか、どうして暴走冷却モード全球凍結が終わりを告げたのかなど、その根本的

な解明が未成熟な部分も多くあります。また、地球の全生態系を、生命圏と言った

り、地球・ガイアシステムとして、一体のものとしてとらえる考え方もあります...この

ような生命システム理論については、いずれ別の機会に考察することにします...」

 

                                                    (2000.7.4)  

 <2> 5つの気候観測用センサーの能力  index.1102.1.jpg (3137 バイト) house5.114.2.jpg (1340 バイト)

(1) ASTER  (資源探査用将来型センサー)         (アスター)

(2) CERES   (雲・放射エネルギー測定システム)      (セレス)

(3) MOPITT  (対流圏汚染計測装置)             (モピット)

(4) MISR   (多視角イメージング分光放射計)   (ミスラ

(5) MODIS   (中解像度イメージング分光放射計)       (モディス)

                           ( カタカナの呼び名は、私が勝手に付けたものです... )

 

「ええ...では、テラの本体と、上記の5つの高性能センサーについて、私の方から

簡単に説明します。その前に、まず全体構成である“地球観測衛星・テラ”について

大雑把なデータを示しておきます...」

 

テラ (Terra)  “地球観測システム計画”(EOS:Earth Observing System)の 旗艦  

    <設計寿命 6 年>               

高さ :  3.5m

全長 :  6.8m

総重量 : 5190kg

平均出力 : 2530W

搭載機器のデータ通信速度(平均) : 毎秒1万8545KB (キロバイト)

 

「テラを構成するのは、高感度アンテナXバンド送信アンテナ通信機器誘導・運

航・制御機器データ記録機器太陽電池パネル...ですね...」夏美は、スクリー

ンに表示されたテラを、伸縮式の電磁ペンで指しながら言った。「ええ...あとは、5

つの気候観測用センサーが占めているわけです。全体は、バスほどの大きさとお考

えください...」

 

 

(1) ASTER (資源探査用将来型センサー)  (アスター)           

<観測対象> 雲、氷河、地表温度、土地利用、自然災害、氷山、降雪、 植生

<特徴> テラの搭載センサーのうち、分解能が最も高く、望遠鏡を回転して、特定の観

       測対象に向けられる。

<測定機器>  3つの独立した望遠鏡が、可視近赤外光短波長赤外熱赤外光

          とらえる。

<機器開発者>  通産省 /(日本)            

<空間分解能> 15m 〜 90m

 

「この、日本の通産省が開発したASTERは、地表面の温度をきわめて高い精度

で測定します。また、放射や反射エネルギー、温度の測定などは、地球の熱収支

計算する上で重要です。さらに、氷河の後退や、砂漠の拡大森林の破壊...それ

から洪水山火事なども継続して監視できます。

  ASTERは、地球の詳しいデジタル地形図を作成できます。1972年以降、ラン

ドサット衛星が集めている地球の画像データを、さらに時系列で補充していくことにな

ります。こうした観測データの蓄積は地球を監視していく上で、非常に重要な仕事に

なります。しかし、こうした軌道上からの監視は、ようやく本格的な体制がスタートし

たばかりといったところでしょうか...」

 

 

(2) CERES  (雲・放射エネルギー測定システム)    (セレス)          

<観測対象> 熱放射、雲、

<特徴> 大気からの放射エネルギー束を記録できる、初の衛星搭載型センサー

<測定機器> 2つの広帯域走査型放射計

<機器提供者>  NASAラングレー研究所

<空間分解能> 20km

 

「これまでの研究では、大気圏に入ってくる太陽光の8%が、行方不明になっている

といわれています。これはエアロゾル(煙やチリ等の微小な粒子)や雲が、大気低層でエネル

ギーを反射したり吸収したりしている分と見られています。既存のセンサーでは、こう

したエネルギーを追跡できませんでした。しかし、CERESは大気の高層や低層

で、約2倍の精度で熱放射を測定します。

  CERESは、この種のものとしては、初の衛星搭載型センサーになります。な

お、同型の初代センサーはすでに別の衛星に搭載されてあり、1998年の2月に、

史上最大規模のエルニーニョをとらえています。

  エルニーニョは、赤道直下の太平洋であるエクアドルからペルー沖で、毎年のよう

に起きています。いわゆる、海流の変化で水温が上昇する現象です。ところが、これ

が1998年のように異常に発達すると、地球規模の気候異変につながります。また、

日本の気象にも、直接非常に大きな影響を与えました。1998年の史上最大規模の

エルニーニョは、2年前ですので、まだ記憶に新しいのではないでしょうか...」

 

                (エルニーニョについては、いずれ詳しく考察する機会があると思います)

 

(3) MOPITT (対流圏汚染計測装置)     (モピット)          

<観測対象> 大気汚染

<特徴> 汚染物質を追跡できる、初の衛星搭載型センサー 

<測定機器> ガス相関スペクトロスコピーを組み込んだ走査放射計

<機器提供者>  カナダ宇宙機構

<空間分解能> 22km

 

「さあ、このMOPITTは、大気低層でのメタン一酸化炭素(CO)の分布や濃度

を詳しく調べます。メタンの温室効果については、メタンハイドレートを考察したときに

も少し触れましたが、非常に温室効果の高いガスです。その時の資料では、二酸化

炭素(CO)の10〜20倍の温室効果とありました。そして、今回の資料では、30倍

近いとあります。うーん、まあ、こうした所の数値は、まだしっかりとは確定していない

ということのようです...

  そもそも、この“温室効果の高いガス”とは、具体的には熱線である赤外線を透過

させない能力が高いということを意味しています。したがって、宇宙へ出て行くはずの

熱線が、これらのガスのために大気低層域にこもってしまい、いわゆる温室効果とな

ってしまうのです。ちなみにこのメタン(CH4は大気中の酸素(Oと反応して二酸化

炭素(COになりやすいのですが、どちらも温室効果ガスということです。

  大気低層のメタン濃度は、年間1%の割合で増加しているといわれます。主に、

や家畜の、あるいは深海底のメタンハイドレート層から放出されていると考えら

れていますが、詳しい解明はこれからになります。したがって、こうした宇宙空間から

の強力なセンサーの活躍が期待される次第です...

  ガス相関スペクトロスコピー”は、衛星に搭載されるのMOPITTが初めてで

す。これは二酸化炭素(COや水蒸気など多くの気体の中から、メタン(CH

酸化炭素(CO)だけを区別する能力を持っています。

  一酸化炭素(CO)は、工場自動車の排気森林火災などが主な発生源になりま

す。また、焼畑農業や、南米での開発のための森林の焼き払いなども問題となりま

す。

  さあそこで、何故、この一酸化炭素(CO)が問題になるのでしょうか...それは、

大気が持つ有害物質の自然浄化能力を、この一酸化炭素(CO)が、妨げるように作

用するからです...」

 

 

(4) MISR (多視角イメージング分光放射計) (ミスラ ...自分の呼びやすいように...

<観測対象> エアロゾル、雲、土地利用、自然災害、熱放射、植生、

<特徴> 雲や煙の立体画像を作成   <宇宙空間では新登場のセンサー>

<測定機器> 9つのCCD(電荷結合素子)カメラ

<機器提供者>  ジェット推進研究所

<空間分解能> 275m〜1.1km

                                 エアロゾル :  煙やチリなどの微小な粒子 )

 

「ええ...このセンサーも、宇宙空間では新登場のものです。広角の9つのレンズ

で、異なる地域を同時にとらえます。そして、太陽光で照らされた地球表面を、4色の

(青、緑、赤、近赤外線)ごとに分析します。被写体によって、反射光が変化すれば、雲や

エアロゾル、地表の様子が、どう違うかをとらえられるといいます。

  うーん...そう言われても、具体的にはよく分らないわね。ま、ともかく、9個のC

CDカメラで、エアロゾル、雲、熱放射の相互作用を、立体的にとらえることができま

す。詳しいことは、今後の運用の中で、しだいに明らかになってくると思います...」

 

 

(5) MODIS (中解像度イメージング分光放射計)  (モディス)       

<観測対象> エアロゾル、気温、雲、火災、地表温度、土地利用、自然災害、

          海洋の栄養素、海面温度、熱放射、氷山、降雪、植生、水蒸気、

<特徴> 地球全域を、1日〜2日ごとに観測できる。

<測定機器> 可視光、短波長、近赤外領域などを、測定できる4種類の検出器。

<機器提供者>  NASA ゴダード宇宙センター

<空間分解能> 250m〜1km

 

「このセンサーは、36の波長帯で、地球全体をとらえます。したがって、観測項目も

14種にのぼり、他のセンサーよりも圧倒的に多くなっています。むろん、こうした能力

は、他のセンサーとタイアップして、より総合的な威力を発揮するものと思われます。

  とくに、1日から2日の周期で、地球全域をカバーできるのは、非常に心強いものを

感じます。こうした能力は、データの収集もさることながら、パトロールとしての役割も

大いに期待できるのではないでしょうか...」

 

  

   wpeA6.jpg (14454 バイト) house5.114.2.jpg (1340 バイト) 「さあ、テラの、今後の活躍を見守っていきましょう...」  index.1102.1.jpg (3137 バイト)

 

                                                                          house5.114.2.jpg (1340 バイト)