Menu資源.未来工学未来工学人間の巣・第3段階の考察/②人間の巣の原型の建設

 
 
 〔人間の巣〕 プロトタイプ 建設 ②/

   ミッションの始動/  入植/住環境の整備   


           < TPP、原発、核ミサイル・・・ 食糧メジャーも、無関係・・・ >



 
                 

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 INDEX                 

No.1 〔1〕 入植/・・・住環境の整備 2013. 3. 9
No.2       <人間の巣型 - 災害対策拠点> 2013. 3. 9
No.3       ブリーフィング ・・・ データ収集/解析規格化/量産体制へ> 2013. 3. 9
No.4      <未来型都市/高機能空間の視察・・・> 2013. 3. 9
           推敲完了                                                                              アップロード後の・・・ 推敲完了! 2013. 3.20

    

〔1〕 入植/・・・ 住環境の整備         


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<人間の巣型 - 災害対策拠点・・・     wpe31.jpg (15537 バイト)  

 

「うわー!」マチコが、ヘリコ君(/小型ヘリコプター)の外に出た。

  彼女は、早春の陽光に目を細め、両手でしっかりと耳を押さえた。柔らかい陽射の中で、風が肌を切る

ように冷たかった。ポン助も、ヘリコ君の外に出て、マチコの横に立った。

「オオーッ...」ポン助も、首のマフラーを押さえた。

 

  〔人間の巣型/災害対策拠点・・・基本型/プロトタイプ〕は...《航空基地/赤い稲妻に隣接し

ていた。大駐車場スペースがその正面になっている。

   〔人間の巣/未来型都市/千年都市・・・プロトタイプ〕とは...直接に関連のある施設ではなかっ

た。しかし、工事の効率上、並行して建設が進められている。

  そして、この建造物にはもう1つ、同時に建設された目的があった。それは、“ミッション/人間の巣”

初期段階において...〔人間の巣・・・プロトタイプ〕の...“実験都市のデータ収集・解析・・・各

種/研究機関の現地中枢”として、恰好の位置にあり、ここが利用されることになったのだ。

 

  この、〔人間の巣型/災害対策拠点・・・プロトタイプ〕 とは...巨大メガロポリスに展開する、“万能

型・防護力”を持つ、“新形式/災害対策の拠点”の...プロトタイプ/原型/基本型である。

  〔人間の巣〕〔災害対策拠点〕も...原型/プロトタイプだが...これはデモンストレーション目的

新技術・新機構検証の目的で作るものである。また量産前の、問題点の洗い出しの任務もあるようで

ある。

  今回の原型/プロトタイプでは...双方とも...“ともかく、建造してみる・・・形してみよう・・・”、と

いうことだった。つまり、デモンストレーション的比重が大きかったと言える。

  しかし、〔人間の巣・・・プロトタイプ〕の方は...関東平野/西部丘陵過疎地において...実際に

機能することが、大いに期待されていた。入植・希望者も非常に多い。これは、そうした意味では、まさに、

デモンストレーション的比重が大きかったが、〔人間の巣〕実践展開第1号となるものだった。

   片や、〔人間の巣型/災害対策拠点・・・プロトタイプ〕の方は...メガロポリス都市に、過渡期的

に展開する、“安全性を・・・付加する施設”だった。これは通常、“緊急物資”を集積しつつ、コンサート

・ホールイベント・ホールとして運用し...屋上は、サッカー・コートテニス・コートになると予想される。

むろん、緊急時には、ここはヘリポートになる。

  〔災害対策拠点・・・プロトタイプ〕は、〔人間の巣/未来型都市・・・プロトタイプ〕と比べれば、ごく

規模なものだった。さしずめ、大型倉庫のようなものだ。もう少し別の言い方をすれば、厚い土を被せた、

“緊急物資・集積所/災害指揮所・・・2次避難施設”といった構造だった。

  特徴は、大駐車場・正面スペースがあり...最大利点《航空基地/赤い稲妻滑走路に、隣接し

ていることだろう。上には、ヘリポートヘリ格納庫が整備されている。

 

                                                   


   マチコとポン助は、まだコンクリートの乾ききらないような、大駐車場・正面スペースを見渡した。入口に

近い1区画に、工事関係とは異なる、小型バスやバンや乗用車が、数十台ほど止まっている。すでに活動

を開始している、各種研究機関サポート関連の車両群だった。

  正面入口/横の搬入口には...トラックが集まっている。フォークリフトで荷物が降ろされ、中に運び込

まれて行く。人々が頻繁に動き回っていた。〔災害対策拠点・・・プロトタイプ〕の屋上には、衛星回線ア

ンテナの鉄塔の1部が見えた。

  マチコが、轟音に気付き、東の方の空を眺めた。ヘリコプターだった。轟音が空を圧し、3機編隊ヘリ

が接近していた。タンデム・ローター大型輸送ヘリ/CH-47だ。迷彩色陸上自衛隊輸送ヘリであ

る。が、高度が高く、ここを目指しているのかどうかは分らなかった。

 

「じゃ、ヘリコくん!」マチコが、轟音でさらに耳を押さえながら、片手を上げた。「後で、お願いね!」

「はい! マチコさん!」ヘリコ君が言い、ローターをブルンとあおった。

「行ってくるよな!」ポン助が、タン、と赤い機体をたたいた。

「はい!オイルを飲みながら、待ってます!」

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  マチコとポン助は...搬入の作業風景を横に見ながら、肩を縮めて正面入口へ歩いた。〔災害対策拠

点・・・プロトタイプ〕正面入口は、〔人間の巣/未来型都市〕とは、構えがまるで違っていた。〔災害

対策拠点〕 は、まるで自衛隊基地のようだった。“目的志向型/基地”と 、“人間/あらゆる人格を・・・抱

擁する存在の器”、との違いが非常に明瞭に分った。

 

  中に入ると、天井が高かった。薄暗く、風がなく、暖かだった。ガランとして広く、コンクリートの臭いがし、

むき出しの厚い隔壁が続く...

  入口ホールの片隅に、大量中古机椅子などが運び込まれている。プロトタイプであり、公共事業

はないため、予算上、新品は購入できなかったのが分かる。それからパレットに積まれた、大量の梱包資

があった。コメなどの食糧なども積み上げてあった。新品の厨房機材もあり、これを見ると、まだ

も整っていないのが分かる。

 

  フォークリフトが行き交う広い廊下に抜けた。すると、両側にズラリと部屋の並んだ区画に出た。スライ

ド式/間口がすべて解放されている。部屋は、各・研究機関出先機関が占拠していた。応急の立て看

に、その名称が書き出されてある。

  中は丸見えだった。すでに、仕事が始まっている所もあれば、機材の搬入でごった返している所もあ

た。〔人間の巣〕箱庭風景や、様々なパーツミニチュアの置かれている部屋もあった。壁面レリーフ

どのスケッチも、何枚も立てかけてある。

  最近、名前の知られてきた...“社会工学/研究機関”“都市プランナー/グループ”をはじめ、

“大学の出先機関・・・得体の知れない研究機関”も...雑多に参入している様子だった。若手が多い

のは、手弁当研究グループが多いからだった。

 

  ここでは...営利目的ヒモ付き人材は、強く敬遠されていた。いずれ、“脱・市場経済化”を目指して

いるからである。また、“自給自足/農業”の関係でも、【原則・・・地産地消】であり...遺伝子操作・作

物類は、明確に排除していく方向だった。生産性を求めるのではなく...“労働集約型・農業”と、“手工

業の・・・多品種/食品加工工場”を目指している。

 

ブリーフィング ・・・ データ収集/解析 規格/量産体制へ・・・>  wpe8B.jpg (16795 バイト)

                   wpe31.jpg (15537 バイト)


  マチコとポン助は、シンクタンク=赤い彗星の部屋に入った。社会派/菊地良治が、張り切っ

て仕事をしているのが見えた。思わず、顔が和んだ。所長/片倉正蔵は、いつものようにパソコンに向き

合っている。最近は、シンクタンク=赤い彗星・ビル/本部よりも、ここの出先事務所にいること

が多いようだった。

  応接セットの脇の円形テーブルでは...ミニ会議をやっていた。見慣れた光景だった。コンペ(課題による、

設計作品の公募)で採用された...都市プランナー/建築デザイナー/若手・建設業者/ベテラン・資材調

達スタッフなどが、緊急・意見交換をしている。最近はどこのスタッフも、顔を突き合わせれば、ミニ会議

なっていることが多い。

   

  ここにでは、独創的・創造性の求められる仕事は、それこそ山ほどあった。才能のある多くの若者たち

が、手弁当情熱的に働いていた。こうした大小の会議の風景は、“ミッション/人間の巣”では各所で

見られている。ちなみに、それらの内容は...

  “自給自足/農業プラン・・・”“食糧/備蓄プラン・・・”“年間/社会行事プラン・・・”“多品目/食

品加工の工場プラン・・・”“食器・家具・小道具/自作システム・プラン・・・”“芸術性の配置/推進計

画・・・” 等々...

  その他...全般的な意味で、“教育システム”“医療システム”“管理・運営システム” など、仕事

多岐にわたっている。研究成果は...登録・一元管理とされ...外部からの、登録・アクセスも可能だっ

た。

 

  〔人間の巣/未来型都市・・・プロトタイプ〕...は、ある意味では...“ホモサピエンス文明の・・・

社会工学の実験場”、のようだった。これらの社会実験データ公開制で...全国の研究機関に送られ

ることになる。これは、〔人間の巣〕全国展開/世界展開への布石(ふせき: 将来のために配置して置く構え)であ

る。

  一方...“規格化の進む・・・工業製品”は...“量産体制”に入るものものが、再設計されている。そし

て、その試作品が現場に還流して来ている。〔人間の巣〕の、“素材・構造での・・・規格化”“クリーン・エ

ネルギー施設/等での・・・コンパクト化/ユニット化/モジュール化の・・・許容範囲”“装甲/中扉の開

発”...などでも考察・試作が進んでいる。

  良いアイディアもあれば、一定の水準に達していないものもある。また、アイデアが洗練され、統合的に

再構成されているものなどもあった。が、これらは、市場経済無制限に産業化されて行くわけではない。

将来を見越した、“自給自足体制の戦略化/既存体制との接合” とも、関係してくる問題だった。

 

  もう1つ...1の矢、〔人間の巣/プロトタイプ・・・①〕に続いて...2の矢、〔人間の巣/プロトタイ

プ・・・②〕が...隣接地/渓谷の南側地域で、すでに地質調査が始まっていた。〔人間の巣〕は、幾つか

“集合体”を形成し、“複数の集合体”ゆるく連携して、1つの行政単位としての“集合群”をつくる。

  この“連携の人口規模・・・連携形態”が...かねてから、検討1つ焦点になっている。が、それほ

ど難しいことではない。お手本となる検討資料は...歴史の検証や、生態系の中の種の実態を研究すれ

ばよい。ただ、問題は、それが“文明の第3ステージ/意識・情報革命”〔極楽浄土〕へ、パラダイムシ

フトして行く...ということである。

 

  いずれにしても...“反・グローバル化・・・文明の折り返し”の流れは...ゆっくりと、底流で胎動

始めている。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)無関係...“原発・再稼働”無関係...“食糧メジャー

の世界戦略”無関係...“経済/政治/軍事戦略”からも自立して、自給自足。そうやって、“自給自

足・・・スローライフ・・・人間性を回復”、して行くのが、〔人間の巣のパラダイム〕...である。

 

  〔日本国民/世界市民〕が...“巨万の富・・・莫大な資本の蓄積” に背を向け...〔人間の巣〕

獲得し て...〔自給自足社会/スローライフ〕〔極楽浄土・・・パラダイス〕 へ...価値観シフト

て行くということです。

  そうなれば...“巨万の富・・・膨大なバーチャル金融資産”も、と消えます。つまり、これが、“富

の人間的側面”、なのです。〔国民/世界市民〕合意がなければ...それにひれ伏し従う者がいな

ければ...まさに、“猫チャンに・・・小判”です!

  早急に...“グローバル社会”、は終焉に向かいます。輻輳する巨大危機は避けようがなく...相乗

効果人類文明を襲います。その時の“方舟”が...現在、全国展開/世界展開を急いでいる、〔人間

の巣〕です。

 

  今まさに...従来の、“文明の第1ステージ/農耕・文明の曙”...“文明の第2ステージ/エネルギ

ー・産業革命”パラダイムから...“生態系の・・・環境圧力・食物連鎖から来る・・・欲望の原理”

超えようとしています。そして...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”〔スローフード・スローライ

フ・・・極楽浄土〕 に到達しようとしています。

  これは...“まだ観測されていない・・・生命潮流の進化の要求” に応える...“巨大頭脳・・・外適応の

予定調和”を満たす...知的生命体となって行くということです。いよいよ、その、“文明の第3ステージ”

入口が見えてきたわけです。

  しかし...リーダーたちの力量不足で、そこに到達できるか。きわどい状況になってきました。“21世

紀・大艱難”が、いよいよ接近しています。“万能型・防護力”“方舟”〔人間の巣のパラダイム〕

は、間に合うのか。ともかく...今...〔人間の巣・・・プロトタイプ〕が...展開していきます。

 

「お早うございます!」マチコが、片倉正蔵に声をかけた。

「おお...」片倉が顔を崩し、うなづいた。

「皆さん、もう集まっているんですね、」マチコが、テーブルを囲んでいる方を眺めた。そして、携帯電話を

出し、時間を見た。

「はは、まだ早いですよ...」菊地が、笑って声をかけた。「外は、風が冷たいですね、」

「そうだよな、」ポン助が、マフラーを取りながら言った。

「あ、ポンちゃん、コーヒーをお願いね、」

「おう...」

 

  時間になった...片倉正蔵と、菊地良治、そして折原マチコが参加し、都市プランナーブリーフィング

(簡単な事情説明)が始まった。幾つか重要な変更があった。それが承認され経緯が説明された。主要な

は、〔人間の巣〕/都市空間内の、機能・配置入れ替えと、新機能・ミックス・等に関するもので、基本

構造に関する変更ではなかった。

  〔人間の巣・・・プロトタイプ〕では...様々な試行錯誤が行われることになる。したがって、これは、

となる優先順位の問題だった。ただ、ダメだと判断されたものは、廃案となる場合もある。また、良い

されたものは、定着することも多い。候補プランは、次の機会へ保存されて行くことになる。

「うーん...」マチコが、口にコブシを当てた。「すると...

  居住空間スペース/・・・居住エリアは、今回は、地下2階に限定されないということかしら?地下1階

地下2階で、ミックスになる...というわけかしら?このミックスというのも、色々あるようだけど...?」

「まあ...」都市プランナー代表/柏木が、口の上に大きな手を当てた。「簡単に言えば、そうです...

  その方が、バラエティーに富んだ、住居配置になります。高機能/都市空間に、大きな変化・特

が生まれるわけですから...」

「うん...」マチコが、腕組みをした。「現実の街では...そうなっている、というわけかあ...」

「その通りです...」柏木が、大きくうなづいた。「はは...さすがは、マチコさんですねえ...

  ここが、実は、なかなか気付かれないのです。病院があり、隣にレストランがある。当たり前のことです。

しかし、今まで、それを組み込むことができませんでした。既成概念に縛られていました。ともかく、そうし

たことで、住居特徴が生まれました。ま、ホテドアの並びよりは、生活感のあるものになります」

「はい...」マチコが、うなづいたた。

「ま...」柏木が言った。「そうしたものも、色々と試してみますが...

  アントニ・ガウディ(スペイン出身の建築家。19世から20世紀にかけて、スペイン/バルセロナを中心に活躍。サグラダ・ファミリア/聖

家族教会は、ガウディの亡き後も建設が続けられている)バルセロナ市のように...温かみのある...芸術的・都市

空間という、コンセプト(全体に貫かれた、骨格となる観点)ですね...

  まずは...ガウディほどの個性的なものではなく...しかし...穏やか清潔芸術空間という...

未来志向欲的な、高機能・都市空間を創出します。我々は、何十回と、コンピューター・シミュレーショ

を重ねて来ているわけですが...ま、説明するよりは、直接見ていただきましょう。私が、案内します」

「あ、はい...」マチコが、口をすぼめた。「もう...変換は、だいぶ進んでいるのかしら?」

「基本的に...」柏木が、ボードを眺めた。「この種の変更は、容易に行える構造です...

  ただ、病院設備などの基幹施設は、場所の変更はできません。それから、隔壁・構造体は動かせませ

んが、学校ポーツ・センター、たまり場などの配置は、自由に変更できます。家族単位居住空間

配置、今後、大きな変遷予想されるわけです...

   〔人間の巣〕で、ホモサピエンス文明は大きく変遷して行くでしょう。ま、それは、今後のことでしょうが、」

「そうかあ...」マチコが、髪に手を当てて絞った。「色々あるわけね...」

〔人間の巣〕では...」社会派の、菊地が言った。「家族/血縁の、結束は無くなりはしませんが、変容

予想されます...

   “淘汰圧力”“環境圧力”が消失し...強い結束/束縛、意味を失います。ここで生まれた子供

ちは、〔人間の巣〕に...強いアイデンティティーを持つことが予想されます。

  そうなると、居住スペース配置も、既存の概念ではすまなくなります。柏木さんの言うように、ホモ・サ

ピエンスの、“種としての変容”も予想されます。当然それは、“人類文明そのものの・・・変容”へ向かいま

すね...」

「うーん...」マチコが、コクリとうなづいた。

 

老人ホーム入植・希望も...」 赤い彗星>片倉・所長が口を開いた。「複数あります...

  ここは“存在の器”ですから、積極的・・・受け入れ方向”検討しています。受入れ体制の概略は

きています。まあ、〔人間の巣〕そのものが、子供・老人居場所としては、最適な環境です。特別なもの

ではありませんが、満足してもらえると思います」

「ええ...」菊池が言った。「いいですか...

   “生存競争空間の・・・環境圧力、淘汰圧力”消失する、〔人間の巣の・・・スローライフ〕で...い

わゆる弱者には、最適環境です。人類医療を発達させ、病気になった者傷を負った者遺伝子等で生

来の傷をもつ者を、温かく包んできました。それが、“文明発祥以来の・・・文明の方向性”です。

   〔人間の巣=コンパクトな文明空間〕が...“万能型・防護力”“食料を安定化し・・・文明の力/

方向性が・・・特異な自給自足社会”を作り上げようとしています。これでようやく...生態系と協調した、

〔極楽浄土〕可能になるわけです。いわゆる“欲望”ではなく、“希望/夢”の実現です...

  〔文明発祥以来の理想郷・・・人類/数千年来の夢・・・英知の結晶化〕 が今...我々の手で、組み

立てられようとしているわけです。まず、〔インフラを創出し・・・魂を入れ・・・文化と芸術性を加え・・・

極楽浄土/パラダイス〕大輪の花を咲かせて行きます」

「はい...」マチコが、コクリとうなづいた。「それで...老人ホームの方は、もう入居になっていのでしょう

か?」

「いや...」片倉が、手を上げた。「ハハ...

  さすがに、まだ早いと思います。それでも、農業参加したいという要望は、後を絶ちませんなあ...」

「うーん...」マチコが、腕組みをした。「ここで、農業をしたいわけかあ...

  私のもとには...ここで鍛冶工房を開きたいという人がいるわ...それから知人に、最高の椅子職人

がいるんだけど、ここに入れるかと聞いてきています。メリットはあるかということですが...私は、面白い

と思うわよね...文化を育んで行くという意味で...服飾に関しても、自給自足の方向ですから...」

「うーむ...」片倉が、うなづいた。「ともかく...

  これから、〔人間の巣/未来型都市という・・・新しい基盤的文化圏〕が、大展開して行きますねえ。

まあ...そうした職人の前に...〔人間の巣〕“基礎的パーツ”の、“規格化/量産化”研究開発

あるわけです。これは、順調に動き出しているようです」

「はい...」マチコが、うなづいた。

<未来型都市/高機能空間の視察・・・>           

      wpe31.jpg (15537 バイト)     


 
ブリーフィングが終わると、マチコとポン助は、またヘリコ君に乗り込んだ。上空はさらに風が強かった。

ヘリコ君の軽い機体が、大きくあおられた。しかし、空が明るく輝き、山々も大地も早春の装いだった。整

地で残された桜の大木が、満開に咲き誇っている。ヘリコ君はそこを低空で通過し、草原を弧を描いて飛

行した。

 

  大量の土を被せて造成された、〔人間の巣/未来型都市/千年都市〕高台も、造園が進んでいる。

“自給自足農地”の方も、順調に基盤整備が進んでいた。

   〔人間の巣/未来型都市〕に被いかけた大量の土の方は、谷川周辺からベルト・コンベアで移送して

いた。そこには、大きな窪地ができたわけだが、そこは谷川と一体となり、広い水辺になっている。未整備

だが、いずれ豊かな、水辺の風景が創出されていく予定だった。

 

   〔人間の巣・・・自給自足農地〕以外の大地は、治山治水を行わず、大自然に還元されて行くことにな

る。基本的に、海浜も、河川も、山々も、大自然に還元されて行く。そして、そこでは、動物節度を保

ちつつ、大自然の恵みを享受することになる。山菜を採り、野イチゴを摘み、秋にはキノコ狩りもする。

 

  それから...これは、“自給自足農業”の分野になるが、遺伝子操作・作物大問題があった。現在

主力の種苗である、“F1・ハイブリッド種/一代雑種”や、“雄性不稔植物”(植物ミトコンドリア・ゲノム人為改変技

術を使い・・・突然変異による、ミトコンドリア異常によって作り出す)や、さらに、遺伝子組み換え産業/穀物メジャーによる

“タネの支配”問題もあった。

  しかし、これらは全て...“労働集約型農業・・・スローフード/スローライフ”、の視野から...

自然と協調する形で、クリアして行くことになる。つまり...“生態系に寄り添い・・・効率性は求めずに

・・・バイオリズムを共鳴させて行く”...ということになる。


      


  ヘリコ君は、新しい土で固められた、〔人間の巣〕高台に着陸した。まだ、野外公共施設はほとんど

ない。雑草もなく、がむき出しの〔未来型都市/千年都市〕だった。やがて、放っておいても緑で覆わ

れるわけで、ここは豊か貴重な、野外公共スペースになる。

  遠くの方で、大型ブルドーザ数台、灰色の煙を吐いている。近くの菜園では、寒風の中で野菜の苗

植付が始まっていた。すでに、“自給自足社会”が動き始めているのだ。皆が自分の仕事を見つけ、生き

生きと働いていた。老人ホームの人たちも、こうした仕事に参加したがっているのだ。新しい風の、活力あ

る社会の創出が、いよいよ動き出しているのだ。

 

  〔人間の巣/未来型都市〕高台の一角に...細い円筒形12層ビルがある。まるで、ランドマー

ク・タワーのように、空に高く伸びている。ビル太陽発電パネルに包まれていた。白い窓が横に連なり、

各階層でマダラ模様になっている。ここでは、唯一の地上・多目的ビルだった。ビル最上階展望台で、

その下は大食堂のはずだった。あとは、イベントホールなどが予定されている。

 

  ヘリコ君は、その円筒ビルへ向かい、フワリと浮き上がった。が、高度は上げず、ビルの方へゆっくりと

滑空した。マチコとポン助は、ヘリコ君を降り、ビルに入った。そのビルの階段から、地下に降りた。

  円筒ビルは、地下施設とは完全分離されていた。単純に、脆弱性排除したということだった。そういう

わけで、エレベーター・シャフトも別になる。不便ではあったが、ここでは多少の不便は歓迎ということだっ

た。農業も、機械は多用せず、労働集約型になる。食品工場も、道具人手が主力になる。

  こうした特質は、“目的追求型組織”ではないからである。〔存在の器〕では、必ずしも、“便利・楽チン・

早い”は、追及していないということである。むろん、それは悪いことではないが、“絶対的・価値観”ではな

いということである。

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  マチコとポン助は、コンクリート化粧塗りをしている階段を降りた。広く、ゆるいカーブを描く階段だっ

た。その階段を、地下1階に下りると雰囲気が一変した。

  まず壁面が、すっかり化粧塗りされていた。そして、かなりの人が動いていた。搬入工事関係の人々

に混じって、見学者の一団もいた。が、何よりも、働いている街の住民が存在した。

  天上が高く、壁面が明るく化粧塗りされている。天上につづく壁面とは別に、不規則な同心円が連なる

ような、低い壁面が巡りっている。その壁面が、死角のない溜り場を作っていた。その中に、波に浮かぶ

ような売店があり、食堂テーブルが散らばり、ドリンク自動販売機も並んでいた。が、急場にしのぎの観

は否めなかった。 

  自動販売機ドリンク値段からも、旧来システムで動いているのは明白だった。本来では、ここに

量消費型/自動販売機が置かれることは絶対にない。あるとすれば、紙コップ式/リサイクル型自動

販売機である。しかし、こっちの方は、まだ配備が進んでいないようだった。厳冬期突貫工事で、工事現

場では、ともかく温かい飲み物を提供する必要があったのだ。そしてそれは、今もまだそうだった。

 

  しかし...いずれ...〔人間の巣/未来型都市〕の内部では、経済システム値段システムも、再編

されることになる。こうした問題は、既存システムフォーマットされ、新しいOS(オペレーション・システム/基

本ソフト)インストールされると考えると、分かりやすい。

  こうした全てが...“原型/プロトタイプ”実験され...改良・洗練されて行くことになる。また、既存

システムとの接点も、ここで調整されて行く... 

  例えば...経済システムとは別に、行政システムとの接点もある...この“プロトタイプ”では、特別な

行政的支援を受けてはいない。したがって、年金受給者入植に際しては、今までどおりに年金を受け続

ける。しかし、年金支払い義務の人々入植するわけであり、“入・出”調整することになる。

  また...外部・医療機関等に入る時は、年金支払い復活し、外部資産で行うことになる。その他、

外部との関係では、福祉関係多くの人々を、〔人間の巣/自給自足社会〕に受け入れて行くことにな

る。ここは、“共生社会/スローライフ”であり、コストはほとんどかからないからである。

  こうした...経済システムとの接点...行政システムとの接点...行政サービス・商業サービスとの

接点...また、各種・既存システムとの接点も...有志の若者手弁当調整モデルを考察していた。

フリーター大学などの支援も多く、全国の過疎地へ広がって行く流れが、着々と構築されていた。

 

「オウ...」ポン助がマチコをつつき、自販機から出した缶コーヒーを手渡した。

「あ...うん...」マチコが、うなづく。

  マチコが横を向いて、ピシッ、と缶コーヒーの口を切った。それを口に当てながら、周囲を見回した。物

資が、大型エレベーターで大量に上がって来ている。地下3階/=地上1階から、パレットで上がって来て

いる。

   〔人間の巣〕は、通常の構造物よも、隔壁が厚く、天井が高い。また、最終的には、数種類防災隔壁

を装備し、どのような災害にもビクともしない構造になる。バイオハザードに関しても、隔離/与圧/隔壁

の組合せで、内部感染に対しても、早急な対応が可能になっている。

 

「ヤッ!マチコさーん!」若者の一団が、声をかけて行く。

「あ、オハヨッ!」マチコも、コーヒー缶を持った手を上げた。

「お早うございまーす!」

「オハヨーッ!」マチコが、缶コーヒーを口へ持っていく。

「マチコさんたちも...」近くで、売店の女が言った。「ここに、住むのですか?」

「ええ...」マチコが、グッ、と缶コーヒーを飲み干した。「そのつもり...」

「ホホッ...」女が、こぼれるような笑みを、手で押さえた。「それは...よろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしく...」マチコが、空の缶をバケツに放り込んだ。

「ヤアーッ!」背後で太い声がし、竹内建造が姿を見せた。

「あ...お早うございます!」マチコが、両手で髪を絞った。

  竹内と一緒に、都市プランナーの柏木がいた。ヘリで来た自分たちよりも、早く来ていたのが、不思議

だった。が、マチコはそれは聞かなかった。柏木も軽く一礼し、周囲の様子を見回している。

「ポン助君も、」竹内が、ポン助の頭に手を置いた。「一緒かね?」

「おう、」ポン助が、上を見上げた。

ブリーフィングで...」柏木が言った。「説明しましたが...

  まず...地下1階変更になった居住エリアに案内しましょう...」

「はい...」マチコが、唇を結んだ。「変更になった、居住エリアよね?」

「そうです...デザインしたのは宮田です。先ほどいた建築デザイナーです」

「ああ、はい...」マチコが、うなづいた。

  柏木が歩き始めた。竹内とマチコも、それについて歩き出した。ポン助はよそ見していたが、あわてて

付いてきた。

 

  “円筒タワー・ビル/階段下・・・円形広場/溜り場”から...曲線が流れるように...低い壁の通路

続いている。ここは...〔人間の巣・・・プロトタイプ〕西端に位置していた。

  円形広場外側には、大扉がある。東西南北にあるこの大扉は、スライドして開放されている。これで、

フロア全体が吹き抜けるわけだった。これが、“半/地下都市”と呼ばれるゆえんである。本当の地

ではないから、水はけもよく、湿気もなく、が吹き抜けるわけである。

 ...そして猛暑以外の夏は...ここは解放されているはずだった。逆に言えば、冬の厳寒期

なければ、閉められることはない。あと...台風竜巻暴風雨などの気候変動では、防護扉軽快に開

される。もっとも...豪雪地帯/山岳地帯/北海道などでは、事情は異なって来るわけである。

 

  “大扉と呼ばれる全体”は...“万能型・防護力”を形成する重厚システムになっている。エアロック(外

側ドアと内側ドアの間に設けた小部屋)が形成されて、“3重扉”になる。厳冬期には、外気完全に遮断される。こ

れは、〔人間の巣の・・・基本機能〕の1つである。センサー機能を装備し、軽快に使用されるのは、外側

防護扉である。

  その内側の中扉は、肉厚の装甲扉だ。実際には、開発段階であり...現在はスペースだけが確保さ

れている。こうした未来型システムで、複雑なものは、全て後回しにされていた。今は、エアロックがあっ

て、内扉があれば、断熱効果は十分だった。

  しかし、中扉試作品は既にあり、現場で組み込まれ、開発が続けられている。承認されれば、規格化

量産化主力品の1つとなる。が、当面、しばらくは開発が続くようだった。

  非常事態...例えば、“小惑星の衝突衝撃”に備えるような場合は...“さらに厚く・・・土を被せる”

という説明がされている。つまり装甲は、幾らでも厚くすることが可能なのである。万一、大型旅客機が墜

落しても、ミサイル攻撃があっても、“万能型・防護力”が機能することになる。

  これほどの高い防護力は...本来の目的ではないが...“原発施設”をはるかに凌(しの)いでいるわ

けである。その上、感染症パンデミック(世界的大流行)のような場合は、“自給自足体制”で、“長期間の・・・

高度な孤立”も、可能である。

 

  一行は...ブラリと、広い通路を歩いた。所々、真ん中に植え込みがあった。電動カートが荷物を運搬

し、試作品清掃ロボットもいた。自転車も持ち込まれている。

  歩いて行くと...明るさは外部とシンクロしているはずだが、暗い感じがした。これは、その通りだと、

柏木が言った。設備完成度が上がれば、解消されるという。まだ、反射ミラー集光システム未完成

で、バックアップするクリーン・エネルギー・システムも、接続になっていないという。

エネルギー・システムは...」ポン助が、 マチコに言った。「この次に、見に行くよな...」

「うん...」 マチコが、うなづいた。

「まあ...」柏木が、ヘルメットを取った。「クリーン・エネルギー・システムは、急がせています...

  しかし、〔人間の巣〕エネルギー消費量は、多くはありませんね。システムが完成すれば、冷暖房

照明関係エネルギーは、ゼロに近くなります...

  電気が必要になるのは...情報処理機器と...食品加工工場や...工作機械電気炉...それと、

外部委託生産工場などになるでしょうかね、」

「はい...」マチコが、通路の壁を眺めながら、うなづいた。

  通路の壁面は、天井まで届く本物の隔壁と、低い曲線の壁の間にスペースがあった。そこに、水周りの

施設や、まだ何も飾られていない展示スペースや、花壇があった。コンビニ風の店や、食堂テーブルだけ

が入っているスペースもあった。

 

   この...〔人間の巣/未来型都市/千年都市〕は...基本開放系システムである。つまり、細胞

のように、外に対して開放されているシステムである。外部関係性をもち...つまり、エネルギー

を取り入れ...エントロピーを排泄して行く...“新/都市機能”である。

  これは...細胞/生物体/人体、も同様で...この“新陳代謝活動”が...エントロピー増大宇宙

中で、唯一、構造体“維持/永続性”可能システムである。

  エントロピー増大宇宙の中で...【熱力学の第2法則】拮抗し...構造維持・進化ができるのは、

観測されている限りでは、この種の開放系システムのみ、のようである。

 

   そういうわけで...〔人間の巣/未来型都市〕も...生態系の中で独立が可能であっても、1個で存

していくわけではなかった。開放系システムとして生態系と連携し...〔人間の巣〕どうしが連携する。

また、こうした連携が、国家を形成していくには、生産余力が必要になる。つまり、それが最小の税であ

り、相応のサービスを受けるわけである。

  そのため、“特産物の出荷”...“行楽地としてのサービス”...“スポーツ交流・文化交流・行政交流

サービス”...が必要になるわけである。

  しかし、基本は...生物体独立しているように、〔人間の巣〕も、高い独立性を持つということである。

こうした生態系棲み分け深慮遠望は、自然界/生態系を見習い、協調して行くということである。〔人

間の巣〕は、野生の喧噪から離脱しても、まさに生態系の中に存在しているだからである。

 

  ともかく...柏木が言っているのは...そうした、外部委託・生産のためのエネルギーである。鍛冶・

陶器・楽器類の生産でもいいし、特産物加工もいい。“ゆるやかな市場経済・・・ゆるやかな計画経済”

が、理想となる。これが回転して行かなければ、文明の利器購入も難しく、文化的にも孤立してしまう。

“基本/自給自足都市・・・ゆるやかな連携”が、安定豊かな文化を育んで行く、という考えである。

 

                                                  wpe31.jpg (15537 バイト)


  マチコとポン助は、キョロキョロと周囲を見回しながら歩いた。天井を支える重厚な壁面・隔壁...曲線

の軽快な低い壁面...流れるような街のデザイン...風の道は、直線距離にして、東へ約200メートル

を駆け抜ける。しかし、実際には、ゆるやかな曲線が複雑に交差し、風も東西南北に割れて吹き抜ける。

  この東西約200メートル南北約200メートルが...〔人間の巣/未来型都市〕街/公共スペース

になる。しかし、この公共スペースが、地下2階/居住スペースと、1部ミックスにするという。計画変更

承認されていて、それが動き出しているわけである。

 

「うーん...」マチコが、問題の地下1階/居住エリアの、溜り場を眺めまわした。

  死角のない広場...観葉植物による死角...複雑な空間の背後に、住宅のドアがあった。内部は普

通のマンションの部屋のようだ。が...キッチンが簡素で、部屋も簡素であり、寝室が主で、部屋数も少

ないようだった。

  キッチンに関しては、共同食堂や、専門食堂が多く、そこでの外食が多用されるという予想だ。一方、

部屋数が少ないのは、都市空間内での、部屋分散所有にあるようだった。書斎図書館エリアに借り、

創作・工房エリアに、アトリエ収納室を借りることができる。

  また、子供たちも、子供エリア自分用・ブロックが持てるようだった。制限はあるわけだが、1つの社

会実験として、運用データがとられて行くようだった...

 

  社会科学の方面では...“超・安定社会・・・スローライフ”にが定着すると...家族の結束変質

ると、以前から予測されていた。また、子供の管理も、〔人間の巣〕に委ねることが多くなるとも。そうなる

と、子供たちもまた、両親以上〔人間の巣〕に、強いアイデンティティーを持つことが予想されている。

  〔人間の巣〕は...“様々な意味で・・・次世代社会の実験場”...になって行くようだった。そして、

その先に、〔極楽浄土・・・パラダイス〕...が創出されることになるわけである。

 

 


 

 

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