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〔過渡期の未来都市〕                        
文明の第3ステージ/意識・情報革命・・・

 
                            人間の巣 初期開発段階 

   
         
 小規模開発 ・・・・・マンション ニュータウン規模・・・・・ 世界展開へ 

   
  
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 トップページHot SpotMenu最新のアップロード                                      担当 : 津田 真 

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プロローグ   ≪ ・・・日本においても、気候変動の兆候・・・ ≫ 

                      支折の覚醒/悟り・・・学びの深さ

2006.12. 1
No.1 〔1〕 “人間の巣”<初期開発>の形態  2006.12. 1
No.2   【@商業ベース: 未来都市・開発型・・・都市近郊 2006.12. 1
No.3    38度線有する“韓国”でも、“人間の巣”の展開を 2006.12. 1
No.4   【A行政ベース: 自治体・主導型・・・地方分散】  2006.12. 1
No.5   【B有志集団ベース: 有志集団・自主建設型/・・・過疎地 2006.12. 1
No.6    <竜巻・・・巨大台風> 2006.12. 1

  

 

  プロローグ   

          ≪ ・・・日本においても、気候変動の兆候・・・    ≫

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    《航空宇宙基地=赤い稲妻》/事務棟・・・<支折の学びの深さ・・・@>

  星野支折は、窓辺で時間をつぶしていた...

  窓の外はどんよりとした暗い曇がたれこめ、寒々とした晩秋の草原が広がってい

る...春が巡り...暑い夏の草原が輝き...今、再び草原の全ての命が、大地に

沈んで行く...それをくり返す、生態系の壮大なドラマ..

  《...その“今の深淵を経歴し...》支折は、心の中でつぶやいた。《...“今

を目撃”している“私”が...“ここ”にいる...》

  支折は、紅茶のカップを口に当て、細く紅茶を飲んだ...豊かに香る深い味わい

の中で、支折は思いがけなく、“深淵な心”の底から湧いてくる、落ち着いた気持ち

感じていた...そうやって彼女は、何気なく、“今の深淵”を見つめていた...

  部屋は最近、“人間の巣”は 専守防衛 ・Uで使っている...しかし、いつしかス

スキの穂は白く開いていた。すっかり、晩秋の様相になっている。草原の中に枯れ草

の褐色が目立つ...かって窓下に、滝のように密生していた萩も、今は枝が沈み、

冬を待つ装いだった...

  《...あと、1ヶ月もすれば...この草原の上に、初雪が降り積もるわ...こうし

た、春夏秋冬の風景を見つつ...人は年齢を重ねていくのかしら...何故、こんな

世界があるのかしら...

  こうした“時の流れ”を...愛すべきものだと...今、私にも、それが分る...何

故なのかしら...確かに、今、私にはそれが分る...でも、私は“何処から”やって

きたのかしら...ここで、“何を”し...“何処へ”行くのかしら...》

  《...そう...高杉・塾長は、“このこと”を知ることが...学びの深さなのだ

と言っていた...私にも、ようやく、“それ”が、理解できたのかしら...>

  支折は、カップにそっと左指を添え、密かにほくそえんだ...ジャケットのライトグ

リーンの袖口が、“永遠の今”を、支折の瞳の中に映していた...彼女は、初めて

体感した、“超然とした優しい気持ち”で、白いススキの穂に、寒風が吹き渡ってい

くのを眺めていた...“永遠の今/時の流れ”に、優しい温もりあった...

 

  高杉・塾長が、部屋に入ってきた。白石夏美が、ノートパソコンを下げ、その後から

入ってきた。部屋がにぎやかになった。高杉がポン助の頭をおさえ、片倉正蔵と談笑

し、秋月茜と何か鋭い質問をかわしている。

  津田・編集長が、埋め込み式のパソコン・モニターから顔を上げ、2人に何か言った。

津田・編集長と秋月茜は、ずっと、今回の人間の巣”<第1号>の考察を進めて

来ている。その事で、重要なポイントを話し合っている様子だった。

  支折は...紅茶を飲み干し、心を残しながら窓辺を動いた...空になった紅茶の

カップを両手で持ち、みんなの方へ歩いて行った...

 

  インターネット正面カメラ、第2カメラ、第3カメラがスタンバイした。正面カメラの赤

ランプが点滅を開始した。広角カメラの画像が、インフォメーション・スクリーンに表示

されている...支折は、それらをぐるりと見回し、正面の第1カメラに視線を戻した。

最後に、壁面スクリーンのヘッドラインを、もう一度、確認した...

  ポン助が、作業テーブル横に、スクリーン・ボードを引っ張ってきている。支折と秋

月茜は、そのボードの手前で、埋め込み式パソコン・モニターをはさみ、対座してい

た。支折の横には、高杉・塾長が座っていた。そして、パソコン・モニターをはさみ、津

田・編集長と対座している。白石夏美と、オブザーバーで参加している片倉正蔵は、

その向こう側にいた...

  インターネット正面カメラのランプが、赤、黄、青と変わった...

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「ええ...お久しぶりです。星野支折です。

  今回も...“人間の巣”は 専守防衛 ・Uに引き続き、《航空宇宙基地・赤い稲

妻》/事務棟からお送りします...

  12月に入りましたから、季節は立冬ですね。今年は暖冬と言うことですが、積雪

は少ないのでしょうか。それから、“新型インフルエンザ”も気になります...」

  支折は、パソコンモニターとは別に用意してある、ノートパソコンに目を落とした。

「ええと...それにしても...

  日本国内ばかりでなく、世界中騒然としてきた観があります...世界の“政治

状況”“経済状況”“文化・文明の状況”が...“巨大な閉塞感”に陥っているの

ではないでしょうか...“戦後民主主義社会”スタンダードが、“巨大な閉塞感”

の中で、出口を探して、もがいているようです...

  中国インド経済成長は、すさまじいものがあります...でも、それも、“地球

温暖化”の壁に突き当たり、やがて確実に頓挫します。もはや、経済では、“人類文

明の閉塞状況”脱却できないことは、いよいよ確実と来ました...

  私たちは、こうした“巨大な閉塞状況”を打破するのは、“文明の折り返し/文明

ターニングポイント”以外には、ありえないと考えています...具体的には、“反・

クローバル化”潮流を作り出すことが急務となります...そして、その緊急の具

体策としてあるのが、“人間の巣”急速展開だと考えています...

  

  さて...今回は、いよいよ、“人間の巣”<初期開発段階>の考察に入ります。

“人間の巣”<第1号>としていたものを、“人間の巣”<初期開発段階>と改め

たことを、報告しておきます...

  私たちは...“人間の巣”の考察を、現実の社会に先駆けて、どんどん進めていく

方針です...この“人間の巣”の考察が、〔人類の未来社会〕“選択肢の1つ”

なり、またその“叩き台の1つ”となってくれれば、幸いと考えています...」

 

「さて...津田・編集長...」支折が、ノートパソコンから顔を上げた。

「はい...」津田が、支折に顔を向けた。

「ええ...

  秋月茜・理論研究員とお2人で、ここ何ヶ月間か、考察を重ねてこられたわけです

が...“人間の巣”<第1号>は、どのようにして建設されていくのでしょうか?“人

間の巣”急速展開可能なのでしょうか?」

「ま、そうですねえ...」津田が、天井を見た。「“一定の方向づけ”は出来ました...

これは、私たち2人が専任で当ってきたわけですが、各方面からの応援も得て来たわ

けです...今後は、 think tank赤い彗星も参加して下さるという事で、大

いに楽しみにしています...」

「ええと...

  今回は、 think tank赤い彗星片倉正蔵さんには、オブザーバーとし

て参加していただいていますね...片倉さん、よろしくお願いします」

「あ、よろしくお願いします」片倉正蔵が、あらためて、支折の方に頭を下げた。「ここ

に参加することを、非常に楽しみにしていました」

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白石夏美さんは、」支折が、作業テーブルの真中を仕切る、6基の埋め込みモニタ

ー越しに言った。「“気候変動”や、“海洋の酸性化”などを担当して来られたわけです

が...その方面での、コメントをお願いします」

「はい、」夏美が立ち上って、作業テーブルに両手を突いた。「ええと、支折さん...

最初にちょっと説明しておきたいのですが、」

「はい、どうぞ、夏美さん」

“地球温暖化”の影響は...山岳氷河を後退させ...南極と北極の氷を融解させ

て...いよいよ、目に見えて、海水面を上昇させて来ています。

  また、巨大ハリケーンや、海流の乱れ記録的な熱波大干ばつ大洪水を、すで

世界各地で多発させています。

  日本でも、梅雨の大豪雨や、全国で多発する竜巻被害など、これまでにない気象

災害が続発しています。長期・短期の気候変動予兆が、すでに日本でも顕著にな

ってきています。

  状況は、非常に切迫してきています!このことを、是非、事前に言っておきたいと

思いました」

「はい!

  “人間の巣”への移行は、“待ったなしの状況”になって来ているということです

ね?」

「そうです!」夏美が、真剣な顔でうなづいた。「何か、他にも、“抜群に良い対策”

があるのでしょうか?」

「そうですね...」支折が、上体を揺らした。「私たちは、“人間の巣”が、総合対策

して、“最も進んだもの”と確信しています...他に、“抜群に良い対策”があるので

したら、是非私たちも、それも検討したいと思います」

「はい...」夏美が、立ったままでうなづいた。「現在、大気中のCO(二酸化炭素)濃度

は、400ppmに近づきつつあります!これは、過去65年の間で、最も高い状態

す!」

「うーん...そうですか...

  18世紀産業革命前と、よく比較されますが...その頃は、CO濃度はどのぐら

いだったのでしょうか?」

「ええと...“大気中のCO濃度”は...

  “産業革命”以前は...280ppm(/大気の0.028%)

  “現在     は......380ppm(/大気の0.038%)

  ...と言われています。今後、“抜本的な対策”を講じなければ、21世紀の半ば

でには、00ppmをアッサリと越えると、推定されています...」

「すると、どうなるのでしょうか?」

産業革命前“2倍”を越えれば、気候予測不能“レッドゾーン”に突入します。

したがって、現在のペースでCOの排出を続ければ、“残された時間”は、もうあまり

ないということです。

  すでに、その気候変動兆候が出ているということです。そして、“海洋の酸性化”

が進み、“海洋の相転移”が始まります...“生態系の大量絶滅”が起こるかも知れ

ません。6500万年前に、恐竜が絶滅した時のように、地球上の風景が一変します」

「はい...地球生態系では、すでに“5回”起こっていると言われていますね、」

先カンブリア紀の、全球凍結の時には、さらに大きな生物の絶滅が起こっていると

考えられますから、それよりも多いと思います」

「うーん...地球が、雪ダルマのように、全部凍りついてしまった時ですね。いつ頃

だったのでしょうか?」

8億年〜6億年前にかけてです。その頃、地球が“全球凍結”したと推定されてい

ます...何故か、地球は、寒冷化温暖化を繰り返しているのです。この大自然の

サイクルは、地球生命圏が生きている証拠の、脈動のようなものかも知れません。

  その“全球凍結”の後に、“カンブリア紀の生物大爆発”が起こっています。“全球

凍結”の時の、“種の大量絶滅”があり、その巨大な空きニッチ“生物の大爆発”

起こっているわけです」

「はい、ありがとうございます、夏美さん。

  さて...“脱・車社会”“脱・冷暖房”“人間の巣”が、徐々に世界中に浸透

ていけば、“抜本的な温暖化対策”になると思います...今回は、その“人間の巣”

急速展開について、具体的な<初期開発段階>の考察に入ります。

  いよいよ、“人間の巣”も、現実味を帯びて来ました。“人類文明の第3ステージ”

の、“壮大なミッション”が、いよいよ動き出します」

「はい、期待しています!」 夏美は、みんなに一礼し、着席した。    

  〔1〕 “人間の巣”<初期開発>胎動 

   【@商業ベース: 未来都市・開発型・・・都市近郊

      【A行政ベース: 自治体・主導型/・・・地方分散】 

         【B有志集団ベース: 有志集団・自主建設型/・・・過疎地

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「さっそくですが、津田・編集長...」支折が、真っ直ぐに津田を見た。「“人間の巣”

は、3つの、初期開発形態があると言うことですが...そのガイドラインを示していた

だけないでしょうか、」

「はい...」津田が、身構えた。「まず...

  “人間の巣”は、日本列島においては...<人口30万人>で、<200都市の展

開>...<6000万人を収容>と想定してきました。しかし、これはあくまでも、1枚

の想像図/スケッチにすぎません...

  <初期開発段階>においては、もっと小規模“人間の巣”が展開するものと考

えます。そして、その“人間の巣”幾つか連携し、社会形態を発展させていく方向

で検討しています...」

「すると...衛星型の、“人間の巣”ということでしょうか?」支折が聞いた。

「イメージとしては、それに近いですが、型にはまったものではありません...

  ともかく、<初期開発段階>としては、居住環境“半・地下都市”へのシフト

最優先で普及・展開します...

  したがって、実態としては、かなりバラつきながら、“半・地下都市”へ移行して行く

ことになります...まあ、それが実態的な推移というものでしょう...」

「現実には、そのように推移するということですね?」

「そうです...

  こうした<初期開発段階>“半・地下都市”は、いずれ本格的な“人間の巣”

展開していけば、倉庫工場余剰スペースとして、管理されていくものと思いま

す。地上の建造物から、“半・地下都市空間”へ移行しなければならない文化財など

は、それこそ山ほどあるわけです」

「はい...余剰スペースというものも、必要ですよね、」

「そうです...

  さて、現在...私たちは、資本主義社会形態の中にあるわけです...こうした

資本主義中で、“人間の巣”を展開して行くということになります...それならば、

資本主義・経済原理ダイナミズムというものを、有意義に使わせてもらいましょう。

  私と茜さんの、夏から秋へかけての考察作業は、実はそのために使われてきまし

た。それを、これから報告しましょう」

「はい、お願いします!」

 

「実は...

  〔人間の巣の世界展開〕自体は、人類文明最大“開発・発展型ミッション”なの

です。パイオニア精神で、ダイナミックな波動を引き起こし、大車輪で進めて行く必要

があります。これには、“資本主義・経済原理”で、蓄積されてきた遺産が、大いに役

立ちそうです...」

「ふーん...」支折が、首を揺らした。

資本主義の...」秋月茜が言った。「最後の...“時代的な使命”ですわ」

「そうですか...」支折が、額の髪を撫で上げた。

「まず、日本においてですが...」津田が言った。「マンション開発ニュータウン開発

のような形態で、商業ベースでの開発が進むことが考えられます...

  つまり、最初の“小規模な人間の巣”の展開は、それで十分可能です。<初期開

段階では、“人間の巣”“既存の住宅開発/マンション開発”が、競う形にな

るかも知れません...既存のスタイルの建造物は、長い歴史の中で、すでに確立さ

れたものです。しばらくの間は、建設が並行して続くと思います...」

「はい」

「しかし、実用的なものは、徐々に“人間の巣”へシフトしていくと考えます。また、そ

うでなければ、人類文明は生き残れません。生態系と調和していかなければ、膨大

な重量人類文明は、自らの重さで、潰れてしまいます。いくら素晴らしいものであっ

てもです」

「はい...」支折が言った。「“資本主義・経済原理”の、蓄積された遺産というのは、

どのようにダイナミックに活用されるのでしょうか?」

「私たちは、経済のことは素人です。したがって、いかにも力不足なのですが、発想

は自由でしょう...まず、ともかく、その概略から説明しましょう。茜さん、お願いしま

す」

「はい!」茜がうなずき、ノートパソコンに両手を添えた。 

  @ 商業ベース: 未来都市・開発型/・・・都市近郊   

          《 既存のマンション、ニュータウンの規模で・・・ 》 

            wpe4F.jpg (12230 バイト)house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「まず...」茜が、対座する高杉と支折と夏美を見た。「“人間の巣”とは...

  <地下1層/公共・商業スペース>と、<地下2層〜3層/居住スペース>、そし

<屋上/野外スペース>が、立体的高機能空間を構成している、“半・地下都

市”です...

  これはアリの巣をモデルにしています。今後は、“人間の巣”として、飛躍的に進

する可能性を持っています。今は、その原型ということでしょう。でも、21世紀初頭

技術水準...緊急対処の目的性から...こんな所で十分と考えています。

  きわめて頑丈かつ単純な構造であり、人口収容密度も非常に高く、生態系との親

和性・協調性も、十分です...

  それゆえに、私たちは、“人間の巣”という呼称を当てました...でも、この呼称

は説明的であり、愛称と呼べるものではありません。いずれ、展開の時点で、別の名

が与えられることを期待しています」

「はい、」支折が、うなづいた。

「さて...

  この“人間の巣”規模ですが、<初期開発段階>では、既存のマンション程度

から、ニュータウンに至るまで、さまざまなスケールが可能です。<初期開発段階>

を終え、<本格展開>では...<人口30万人/200都市の展開=6000万人>

というような想定も可能になります...

  おそらく...文明の、ゆるやかな時間経過の中で、洗練され...“人間の巣”

体が、想像を絶したものに進化していくのかも知れません...それは、はるかな私

たちの子孫の世代へ、続いていくでしょう。私たちは、大転換期のホモサピエンスとし

て、子孫に“文明の第3ステージ/意識・情報革命”基礎を残していく義務がありま

す。

  “文明の第1ステージ/農耕・文明の曙”“文明の第2ステージ/エネルギー・産

業革命”に続く、ホモサピエンス文明第3のステージです...私たちが、もし、この

“文明の折り返し”失敗すれば、ホモサピエンスはおそらく、急速に滅びの道を歩

むものと思われます...」

「これまでの経緯からして、」支折が言った。「ホモサピエンスに代わる、新人類が出

現するのでしょうか?ネアンデルタール人から、クロマニヨン人(ホモサピエンス)に代わっ

たように、」

「さあ、それはどうだろうか...」高杉が言った。「我々が、“地球温暖化/海洋酸性

化”“種の大量絶滅”を引き起こした場合は...恐竜が絶滅した後のように、地上

の生態系が激変しているかも知れません。再び地上を、恐竜が闊歩しているような変

化が、訪れるのかも知れません...」

「それでも、何とか、人類が生き残っている可能性は?」

「まあ、難しいですが...“進化した人間の巣”と、“健全で高度な文明”を維持して

いれば、生き残るかも知れませんねえ...まあ、ともかく、現在、“文明の折り返し”

大舵を切ることができれば、生き残れるわけです。

  しかし、“ミサイル防衛構想”だの、“核武装”などと...“たわけたこと”を言ってい

ると、“文明の舵取り”に失敗する恐れが、非常に濃厚になります。人類は、“非常に

賢くもあり”また、“非に愚かでもあり”ます...」

「はい...」

人類が、21世紀“大艱難の時代”を乗り切れれば...文明は再び、安定期

入って行くと思います...しかし、この試練は、容易なものではないでしょう...

としての“解脱(げだつ)が必要です」

「はい...」支折が、深く頭を下げた。「ええ、茜さん...

  “人間の巣”<本格展開>までには...どれぐらいの時間がかかるのでしょう

か?」

「うーん...分りません...」茜が、パソコンの上に、そっと両手を置いた。「でも、

“文明の折り返し”の状況から、それほどの時間はかからないと思います...流れ

出せば、奔流のように、急速展開していくでしょう...

  都市デザイナー、そして社会工学の方で...“人間的な素晴らしいデザイン”を描

くことができれば、“人間の巣”は、人類に快適な生活をもたらすでしょう...それは

何も、〔未来型・都市システム〕を大量に組み込み、快適・楽チンというものを要求して

いるのではありません。逆に、そうした時代は、すでに過ぎ去っています...」

「難しいですね...」

「いえ...ありのままの、文明社会の姿でいいのです...“人間的なデザイン”が必

要です...」

「うーん...」

「支折さんの...芸術的の感性の分野ですわ...ホモサピエンスが形成する“言語

的亜空間”に...“永遠の今”の座標に...1000年続く“極楽浄土”を建設する

のですわ...」

「はい、」

「とりあえず...

  スローライフ・スローフードで、人間サイズ・人間的機能...人間的に快適都市

空間デザインされれば、それでいいのではないでしょうか...周辺の農業スペー

も含めて...あとは、心で育てていくのです」

高度な機械ではなく、」夏美が、茜に言った。「水車風車なども、動力として使えな

いでしょうか?」

「うーん...どうでしょうか...」茜が、楽しそうに、頭を斜めにした。「それが、良いと

思うなら、取り入れればいいのですわ」

「水車を作ってみたいんです!」夏美が言った。「素晴らしい水車を!」

「うーん...」支折が、ニッコリとうなづいた。「それは、面白そうねえ、」

 

「ええ...」茜が言った。「ともかく、今は<初期開発>のことを話しましょう...

  まず、都市近郊における、<商業ベース>マンション開発ニュータウン開発

して、“人間の巣”は、十分に採算性が取れるものだということです...開発当初

しては、資本主義経済のダイナミズムを、十分に活用します...

  “脱・冷暖房”...“コンパクトな都市”...ということでの、膨大なメリットが予想さ

れます。また、“半・永久的な居住空間”ができることになります。<居住スペース>

は、とりあえず2〜3層ぐらいまででしょう...

  これで...上に“大量の土”を被せるわけですが...建設コスト高層マンション

ほどはかからないと思います...“大量の土”を被せるのは、大型ベルトコンベア

行えば、多少時間はかかりますが、技術的に難しい作業ではありません。

  ともかく、“大量の土”を被せることが、“人間の巣”最重要ポイントです。他の動

たちと同じように、“土の中に潜ること”...これが、人類が直面している、全ての

難問を解決するキーワードです...“大量の土”を採取した所は、貯水池にでもした

ら、多目的に使えるでしょう...」

「うーん...」支折が、肘に手をやり、コクリとうなづいた。「そうですね...でも、〔未

来型・都市システム〕を、どの程度組み込むかによっても、コストは大幅に違ってきま

すね。茜さん、多少ともそれは、必要なのではないでしょうか?」

「そうですね...」茜がうなづき、マウスを動かした。「確かにそうです...でも、それ

は、販売促進の、営業努力の問題だと思います...私たちが、考えるべきことでは

ないでしょう...

  あと、大川慶三郎さんが言っていましたが...“耐核シェルター”としてのメリット

ですね。ええと、支折さん...これは、“大量破壊兵器”を、“無力化”するほどの

があるのでしょうか?そこのあたりを、大川さんに聞きそびれてしまいましたが、」

「あ、はい...」支折が、うなづき、ノートパソコンのキーボードを叩いた。「そのあたり

は、“人間の巣”は 専守防衛 ・Uで、大川さんに、しっかりと聞いています」

「じゃ、その説明をお願いします」

「はい」

38度線有する“韓国”でも、“人間の巣”の展開を wpeD.jpg (8229 バイト)

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“人間の巣”は、“核兵器”ばかりでなく、“毒ガス等の化学兵器”“細菌等の生物

兵器”に対しても、“最も有効な対処手段”だと...大川さんは言っていました。“総合

的防護能力”が、非常に優れているのだそうです...

  現在、日米共同開発“ミサイル防衛システム”よりも、“人間の巣”の方が、はる

かに安価で確実な、“総合的防護能力”を、全国民に提供することができるということ

です...しかも、これは、“人間の巣”本来の目的以外のメリットです...」

「その通りです...」津田が、うなづいた。「シェルター/避難所としても、“人間の

巣”は非常に優れているのです...いざとなったら、ともかく巣”に逃げ込めばいい

のです」

「大川さんは、日本よりも、38度線・休戦ラインを有している韓国で、“人間の巣”

の展開は、より有効だと話していましたが、」

「うむ、そうですねえ...

  大川は、軍事専門家だけに、さすがに考えていることが、我々とは少し違う...確

かに、少しピントのずれている日本よりも、韓国の方が真剣に考えるでしょうねえ。我

々としては、国境は問いません。

  “人間の巣”世界的に展開し、“地球温暖化”を抑制してくれることが第1です。

いずれ、“反・グローバル化”によって、国境線の意味は薄れ、“生態系になじんだ、

自給自足型社会”になって行くと考えます。そして、そうした “人間の巣”“地球政

府”が管理していきます...」

「はい...大川さんも、そう言っていました。

  平和ボケしている日本よりも、韓国において、現実に“耐核シェルター”としての

需要が、高まるかも知れないということです」

「うーむ...」津田が顎に手を当てた。「まさに、“閉塞的”“韓国の状況”を打開す

るには、確かに、“人間の巣”は、有効な選択肢になるかも知れません...」

「はい...」支折が、うなづいた。「社会全体を、徐々に“半・地下都市”へシフトし、し

かも将来展望のある〔未来都市〕へ投資できるのは、国家的にも大きなメリットのある

ことですわ」

「そうだねえ...」高杉が言った。「うーむ...大川が、そう言っていましたか、」

「はい...北朝鮮核実験をして、一番影響を受けるのは、やはり韓国の国民

と言っていました」

「うむ、」高杉が、小さくうなづいた。

38度線・休戦ラインの近傍では...」支折が言った。「迎撃ミサイルなどでは、役

に立たないということですわ...ミサイルばかりでなく、長距離砲弾ロケット弾も、

大量に降り注いで来るのだそうです。そんな状況下で、実際に役に立つのは、“人間

の巣”だろうと、大川さんは言っていました。

  それは、もちろん、“日本でも同じこと”だそうです...いざ、ミサイルが飛来してき

た時、頼りになるのは、精密微妙迎撃ミサイルよりも、厚さ10メートルの土で覆

われた、“人間の巣”だということです。それでも心配なら、最下層へ非難していれ

ば、絶対に大丈夫だそうです」

「すると...」茜が、両腕を組み、斜めに支折を見た。「“抑止力としての核兵器”

や、イージス艦スタンダード・ミサイル/M・3や...沖縄/嘉手納基地などに配

備されている、新型パトリオット・ミサイル/PAC・3よりも...“人間の巣”の方が、

“はるかに防護能力”が高く、“安価”だということですね?」

「そうです!

  しかも、“総合安全保障”という意味では、比較にならないほどの、磐石な安全性

が確保されるということです...私たちは、日本韓国も...“人間の巣”を展開

し、国民生活安全が確保されることを願っています。

  それから、“感染症”や、“自然災害の克服”...“短期・長期の気候変動”にも、

“人間の巣”は、ガッチリと対処します。また、核爆弾の数百万倍のエネルギー

“小惑星や彗星の衝突”、でも、“巨大地震”“超巨大噴火”でも...“人間の巣”

は、“人類文明として最高度の備え”を、きわめて安価で提供することが出来ますわ」

 

「そうですね...」茜が、うなづき、スクリーン・ボードの方を見上げた。「ええ...ここ

に示すように...私たちは、“人間の巣”の、早急な世界展開/全・地球展開を考

えています...これが、〔現在の閉塞的な人類文明の進路〕を、大きく変えていくこ

とを期待しています...

  また、イラクレバノンなどの紛争地域でも、住民の安全対策として...人道的

“人間の巣”が展開していくことを、期待しています。また、そうした“国際援助のあり

方”を、研究して欲しいと思います。

  さらに、飢餓地域では、まず“人間の巣”を建設し、安定した住居基盤を築き、

給自足農業を展開できる方策を、研究して欲しいと思います...“平和”で、“平等”

で、“自給自足”が出来れば、あとは“文化”の問題です。十分にやっていけるはずで

す。

  “反・グローバル化”では、この“自給自足”“世界標準”になります...貧しい

も、豊かな国も、それなりに、“自給自足”をして行けばいいのです。そして、強い

が、弱い国から搾取することも無くします。“地球政府”が、それを監視して行きま

す」

            

「茜さん...」支折が言った。「“商業ベース”“小規模な人間の巣”では、“自然災

害の克服”“短期・長期の気候変動への対処”などで、完璧を求めるのは、難しいの

ではないでしょうか?」

「はい...そのことは、私たちも考えました...

  マンション・ベース“人間の巣”では、確かに磐石な周辺基盤という点で、限界

があります。でも、“頑丈な構造物/半・地下都市”ということでは、“人間の巣”

は、十分に満たしています...

  “地球温暖化”に対しても、“耐核シェルター”としても、立派に機能します...私た

ちは、<初期開発段階>では、これで十分と考えています。もちろん、そうした中で

も、立地条件等は、可能な限り吟味して行くことが重要です...でも、ともかく今は、

“人間の巣”を1歩でも、2歩でも、展開していくことが最優先と考えました」

「はい、よく分りました!」

「ええと...津田さんの方で...何か言い添えておくことは?」

「言いたいことは山ほどあるわけですが...ともかく、一応、説明を進めましょう」

「はい、」茜が、赤いメモ帳に指をかけ、うなづいた。

A行政ベース:自治体・主導型/・・・地方分散  

 index.1019.1.jpg (2310 バイト)       wpe4F.jpg (12230 バイト)

「ええ...では、次に...」茜が手を上げ、スクリーン・ボードの横にいるポン助を促

した。

  ポン助がうなづいて、画像をスクロールした。

「...<行政ベース>“自治体・主導”の...“人間の巣”の展開を考えてみます。

  これは、商業ベースの様に、巨大都市周辺都市近郊型ではなく、地方分

散型です...対称地域が異なるということです...したがって、“自治体・主導”

“人間の巣”の展開は、“抜本的な過疎対策”という側面を持つことになります...

  元々、“反・グローバル化”は、大都市への1極集中ではなく、地方分散を指向し

ています。これは、まさに、日本国内においても同じ事です。昔の、農村の自給自足

思い浮かべてみれば、理解できると思います。“生態系との調和”とは、かっての素

朴な農村社会に、還ることでもあるのです...」

「うーん...“人間の巣”の展開では、この地方の領域が、大きな比重を占めること

になるわけですね、」

「うーん...そうなるはずです...

  巨大都市では、“自給自足農業”を展開することは不可能です。完全に自給自足

する必要はありませんが、原則は自給自足です。現在、市町村の合併が進み、導州

制への再編成が検討されていますが、その道州領域での自給自足を目指します。

  “人間の巣”が、そうした自給自足を確立して行けば、本格的な“文明の折り返

し”となります...いよいよ、“脱・車社会”となり、“文明の第3ステージ/意識・情報

革命”ステージの幕を開け...かなり大きな“文明の安定期”が来るものと思いま

す...人類文明が、“大艱難の試練”を乗り越え、順調に推移すればですが...」

「その、“文明の安定期”が訪れるのは、いつ頃になるでしょうか?」

「うーん...私たちも、何度もその推定を試みています...

  でも、不確定要素が多く、また変動指数が高く、断定的なことは言えません...

ただ、それを除いた、定常的な推移ですと、21世紀の末から22世紀にかけて、

してくると思います。“人間の巣”が、あらゆる“自然災害を克服”し、“短期・長期

の気候変動に対処”できるということも、“文明の安定期”に、非常に大きく貢献する

と思います。

  でも、“第3ステージ/意識・情報革命”の本質が、どのようなものかは、現時点で

想像を絶していると言っておきましょう...まさに、本格的な第3ステージというも

のは、まだ片りんも、私たちの前には見えていないのかも知れません...」

「はい...“意識・情報革命”の本質部分は、まだはるかな、天上界にあるということ

ですね」

「そうです...コンピューターの発明も、DNAの解読も、それが科学技術文明の中で

大車輪で回り始めると、それ以前の文明とは、様相が一変してしまいました...そう

した、“変動指数の高い要素”が、今後、続々と登場するだろうという事ですわ。

  例えばそれは、量子力学の方から来るかも知れないし...あるいはまた、エイズ

ウイルスエボラウイルスをはるかに越えるような、驚異的なウイルスかも知れませ

ん...それこそ、何が出てくるか分りません...」

マンハッタン計画(第2次大戦中、アメリカで秘密裏に進められた、原子爆弾製造計画)原子爆弾も、

20世紀の文明一変させましたよね...今でもまだ、尾を引いているし...」

「そうですね...

  そして、“人間の巣”も、“文明のステージ”を一変させるものですわ...こっちの

方は、人類文明生態系と調和させ、安定させます...“原子爆弾とは逆の効果”

でしょう」

「はい...」

「さて、話を進めましょう...

  いずれにしても、現在の日本は、少子高齢化が進行し、人口が激減し始めていま

す。このまま社会が壊れていくのを、座視していることは許されません。ともかく、

本社会全体が、大きく流動化し始めているのです。

  その流れていく方向が、まさに“人間の巣”である事が、望ましいのです。国家が

右傾化し、自衛隊を海外へ派遣し...そんなことが、何時まで続くのでしょうか。今

後、10年でしょうか、20年でしょうか...そして、その後は、どうなるのでしょうか。

  現在の日本の政治家は、20年後30年後の日本の姿を、どのように描こうとして

いるのでしょうか...安倍・政権“ミサイル防衛構想”などでは、そのあたりの将来

像が見えてこないのではないでしょうか...」

「はい!」支折が、うなづいた。

 

「ええ、“人間の巣”<初期開発段階>では...

  現在進行しているらしい、道州制への再編成計画は、特に問題が衝突することは

ないと思いますわ。ともかく、“人間の巣”急速展開して行けばいいのです。その過

程で、社会形態の再編成も進んでいくでしょう...」

「それで、茜さん...“自治体・主導”“人間の巣”の展開は、どのようになるので

しょうか?」

「そうですね...

  まず、ともかく...急速な少子高齢化社会が進行しています...地方の過疎化・

地方都市の空洞化が、重要な要素になります。少子高齢化は、地方社会を機能不全

に陥れています。この構造的な崩壊を、ガッチリと支えていくことが求められますわ」

「うーん...

  過疎化は...BSE(牛海綿状脳症)のように、脳が空洞化していくようですよね、」

「そうですね...」茜が、支折の例えに、微笑した。「ともかく、そんな感じですわ...

過疎地域が広がり、若い人がいなくなり、地方の中小都市も商店街はシャツター通り

となりつつあります。

  こうした地方現状を...〔コンパクトな高機能都市/人間の巣〕再編成し、

給自足型都市を形成していくことが...実は、日本国内における、“反・グローバル

化”なのです...この時点で、不要となった土地は、まさに大自然へ還元して行くこ

とになります」

原始の姿に、還すわけですね、」

「そうです...ええと...

  地方における“人間の巣”は...基本的に産業交通の便は、あまり問題としま

せんわ...なぜならそこが、“自給自足の場”だからです。奇異に聞こえるかも知れ

ませんが、孤立した“人間の巣”は、むしろ望む所です...

  生態系においてももそうです...マダガスカル島ガラパゴス諸島タスマニア

、あるいは沖縄の西表島などには、独特の孤立した生態系が成立しています...

また、鎖国時代の日本では、独特の日本文化が育ちました...そうした多様性

そが、生態系が向かっている方向であり、全体として安定しているのです...

  何故、生命体生態系は、多様性の方向へベクトルが働くのか...その力の源

は何処にあるのか...それは、難しい問題です。でも、多様性を育むということ

は、生命の巨大な潮流から見れば、間違ったものではありません...ただ、その

の源泉は何処にあり、何処へ流れていくのかは、分りませんけど、」

力の源泉は...」高杉が、体を引いて、脚を組んだ。「熱力学の第2法則/エントロ

ピー増大に拮抗している...宇宙の進化・構造化/生命潮流そのものだと思いま

す。“何故...何処へ向かうのか...”は、分らないですがね...

  まあ、おそらくそれは、“言語的亜空間”の、座標の彼方へ、消えているのでしょう」

「うーん...」支折が、難しい顔でうなづいた。

生命潮流とは、」茜が、高杉に言った。「エントロピー増大拮抗する、構造化のエ

ネルギーなのでしょうか?」

「宇宙論のモデルに...この宇宙の最後は、“ブラックホールによる死”か、エントロ

ピー増大による熱平衡的な死”、というのがあります...私は、生命現象は、この

“宇宙の構造的な力”に由来していると思っています...まあ、私の意見ですがね」

 

「はい...」茜がうなづいた。「ええと...、話を戻します...

  そこで...私たちは、むしろ...“人間の巣”故意に孤立した方が、多様性

高まると考えています...

  もちろん...“情報革命”の時代ですから...“情報での孤立”は、別次元の選択

ということになるのでしょうか、」 

  index.1019.1.jpg (2310 バイト)   house5.114.2.jpg (1340 バイト)  

「ずっと昔...」津田が、チラリと茜の方を見て言った。「それから...明治大正

昭和初期の頃は...集落というものは、そんな風に自給自足で成立していたも

のです。

  開発村開墾村などの集落は、そこに住み着き畑や水田を耕し、そこで生きて

いければ、それでよかったのです。つまり、野生の動物のように、“人間も裸で生きて

いる存在”だったのです...

  “文明の折り返し”原型も、そこにあります。ただ、文明を維持しつつ、あまりに

も人口が増え過ぎたので、土の中に“人間の巣”を作り、生態系への影響を、最小

にして行こうというわけです...」

  支折が、うなづいた。

「さて...」津田がマウスを動かし、埋め込み式のモニターをのぞいた。「世界の主流

は...いまだに経済・至上主義です。科学者も、“経済成長の可能な、新エネルギ

ーの形態は...”などと、発言しています。しかし、“経済成長”は、文明維持絶対

条件ではありません。

  経済文明も、人間社会幸福になるための“手段”であって、それが“目的”

ではありません。場合によっては、その文明も捨て、莫大な犠牲を払い、“わずかな人

類が生き残るという選択”も、あるかもしれないのです。地球生態系がすでに、そこま

での変化の兆しのあることを、知っておくべきです」

「はい!」夏美が、作業テーブルに両手を突いた。「このままで行くと、22世紀に入る

頃には、“海洋の相転移”が予測されます。“海洋の酸性化”で、生態系が激変する

恐れがあります。

  今、“珊瑚が危ない”と言われているのは、珊瑚が形成する炭酸カルシウムアラ

ゴナイト(あられ石)が、海洋の微妙な酸性化で、すでに影響が現れているということで

す。まだ、アラゴナイトが溶け始めてはいませんが、」

「はい!」支折がうなづいた。

炭酸カルシウムには、2つの結晶形態があります。1つが、アラゴナイト(あられ石)で、も

う1つが、カルサイト/方解石です。カルサイトの方は、安定した結晶ですから、まだ

心配はありませんが、珊瑚アラゴナイトの方は、先に溶け始めると考えられていま

す」

「うーん...だから、珊瑚の方をウオッチ(監視)しているわけですね、」

「そうです!」

                           house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ええ、私たちの、初期の提案では...」茜が、スクリーン・ボードの方を見た。「“コン

パクトな中核都市”の建設を進め...その次に、“人間の巣”移行するというもの

でした...でも、考察を重ねて行くうちに、中間段階“コンパクトな中核都市”は、

不要ということが分ってきました...

  現在、私たちの基本方針は...自然発生的に、“コンパクトな中核都市”ができ

るのは否定しませんが...即、“人間の巣”への移行...を考えています。その代

わりに、小規模な人間の巣”を、開発・推進するという方向です...」

「うーん...」支折がうなづいた。「それなら、いくらでも建設できますよね、」

「はい...

  私たちが、“人間の巣”へのダイレクトな移行に、計画変更をしたのは...“人間

の巣”が、“予想以上に簡単な構造物”に還元できることが分って来たからです。特

に、<初期開発段階のスタイル>では、マンション・ベースのものであっても、<普

及を最優先>させるべきだと考えたからです...これは、<時代の緊急要請>

と思っています」

“考える”よりも、まず“走れ”という事ですね。その“走りの過程”から、“試行錯誤”

が生まれて来るということですね?」

「そうです。“小規模の人間の巣”なら、“即・移行可能”と分ったからです。また、“小

規模の人間の巣”なら、発展途上国も含め、あらゆる国において、民間ベースで、

速展開できることが分って来たからです。

  まず、38度線のある韓国、それから、巨大ハリケーンが襲ったアメリカ/ニューオ

ーリンズで、“人間の巣”が展開することを、期待しています。安定した北欧諸国も、

お勧めです。寒い地方では、頑丈な安定した居住空間は不可欠のものですから、」

「はい!」支折がうなづいた。

「ええ...くり返しますが...

  既存の、高層マンション住宅団地を、“半・地下空間”“人間の巣”へ移行する

だけで十分です...それだけで、“人間の巣”要件は満たしています。“脱・冷暖

房”であり、“地球温暖化対策”としての貢献度は抜群です...」

      wpeB.jpg (27677 バイト)  wpe7B.jpg (6411 バイト)    wpe4F.jpg (12230 バイト)   wpe7C.jpg (48861 バイト) 

「うーん...」支折が、脚を組み変えた。「まず...“人間の巣”を建設し、社会全体

が、“半・地下都市”へシフトしていくということですね...それが、閉塞的な世界状

況/閉塞的な社会状況を打破...して行くと、いうことですね?」

「その通りです...」茜がコクリとうなづいた。「何度も言いますが...

  まず...3〜4階の頑丈な建造物を作り上げる。そして、10メートルほどの土を被

せる。あとは、屋上を野外スペースとして整地する。これで完成です。規模は、数十メ

ートルから、数キロメートルまで様々...風通しと、水はけの良い、恒久的な建造

...今までの建造物よりは、よほどシンプルで、頑丈です...

  これが、生態系と協和する、“人間の巣”です...基本的には、これだけです

わ。これだけで、“地球温暖化”にも、“海洋の酸性化”にも、“大量破壊兵器”にも、

全て対処できます...

  肝心なことは...“厚く土をかぶせること”...これで、人類の難問が解決しま

す。戦争テロによる“大量破壊兵器”も、“あらゆる自然災害”も、“短期・長期の気

候変動”も克服できます...

  ホモサピエンスの文明は、“人間の巣”で、長く生き延びることが可能ですわ」

「そうですね...」

“地方自治体”は、新しい開発計画で、“人間の巣”の推進していけばいいわけで

す。自給自足農業を確立し、過疎地大自然へ還元して行く...そこは、野生動物

/野生植物たちの領分です...」

「はい」

  B有志集団ベース: 有志集団・自主建設型・・・過疎地

    index.1102.1.jpg (3137 バイト)     wpe4F.jpg (12230 バイト)wpe1E.jpg (43347 バイト)  

     《      “ 極 楽 浄 土 ”の 建 設      》 

「ええと...」茜が、素早い手つきで、ノートパソコンのキーボードを叩いた。「3番目

は...<有志集団ベース>での、“人間の巣”の開発ですね...実は、このケー

スが、最も大規模“人間の巣”の建設が可能です。また、それだけ、“人間の巣”

として、理想的な構造物となります。

  北海道などの...広大で豊かな大地に...数万人規模の有志が結集し、自らが

“人間の巣”建設に当り、そこの住民となります。そして、自給自足を展開し、“ゆる

い自己完結型社会”を形成します...自給自足ですから、当然、人口は一定数を維

していきます...

  北海道の厳しい冬には、頑丈“人間の巣”は、理想的な居住空間となります。こ

れが、いわゆる私たちの想定する、“極楽浄土の建設”に、最も近いものになります」

「うーん...“極楽浄土”ですかあ...」支折が、椅子の背に体を伸ばした。

「人類はすでに...」高杉が言った。「“極楽浄土”を建設する実力は、十分に持って

います。私たちは、“人間の巣”創出するに当って、“そのこと”を十分に自覚して

おくべきでしょう。いわゆる“パラダイス(天国)の建設は、十分可能だということです」

「はい...」茜が、高杉に頭を下げた。「私たちは...生態系の中で生きています。そ

生態系多様性を...私たちは教訓として学び、“人間の巣”を展開しようと考え

ています...それが、生態系と協調していく、理想のスタイルだと思うからです...

  そこで、“極楽浄土”を建設するなら、具体的に、<どのぐらいの規模>で、<どの

ような社会形態>が可能か、という研究が必要になります...それは、社会工学/

人口動態/心理学/宗教...等様々な学問分野が参加することになり、なかなか

1つにまとまることはない様に、思われます。全てを満たすのは、困難ですから...

 そこで、 1つの可能性として...“人間の巣”の単位で...それぞれの“多様性”

の中で...その可能性を実践して行くことですわ。宗教も含めますが、偏執狂的

ものではなく、“第3ステージ/意識・情報革命”の中で、自由闊達に試行錯誤して

行くことを提案します」

「あまり、難しく考えることはないでしょう」津田が言った。「要は、好きにやればいいの

です...ただし、私たちは、それが“地球政府”の管理下に置かれることを、課して

行きたいと思います」

「うーん...それぞれの単位で...ダイナミック“極楽浄土”の建設をするというこ

とですね...

  ともかく...現在のように、“くだらない裸の王様”が、“世界的スター”のように振

舞っているのは、どう見てもヘンですよね、」

「その通りですわ...」茜が、うなづいた。「“ヒーロー”“スター”が...コマーシャ

ル・ベース(商売上の採算)で創出されるというのは、本質的に不遜です...“市民・国民

に対する冒涜(ぼうとく)です...

  いわゆる、芸能と、自然発生的な“ヒーロー”“スター”とは別のものと思います。

確かに、それが重なることはありますが、現在の日本のように、マスコミがそれをコン

トロールしているのは、“2重3重の国民に対する冒涜”です。国民にとって、マスコミ

“非常に不快”に感じられ始めているのは、恐らく、このためでしょう」

「うーん...マスコミは、立場を利用して、“出過ぎた感じ”ですね」

既得権という面でもそうです...

  “人間の巣”では...1つの都市単位で、自分たち自身の“スター”を創出しま

す...むろん、“人間の巣”を越える、“実力派のスター”も必要でしょう。でも、基盤

は、“人間の巣”だということです。“人間の巣”基本単位として、強いアイデンティ

ティーを持つ社会だと言うことです」

「はい...」

      index.1102.1.jpg (3137 バイト)  wpe7C.jpg (48861 バイト)

<竜巻・・・巨大台風>                                                

「北海道といえば...」茜が、キイボードを叩いた。「北部の佐呂間町で...今年、

による大災害が発生しました」

「ええ...」支折がうなづいた。

「あのような、“突発的な竜巻災害”を防護することができるのは、頑丈“人間の

巣”しかないと考えます...

  アメリカ/中西部のあたりだったでしょうか...あの巨大竜巻地帯もそうですわ。

“人間の巣”しか、竜巻に対する防護方法はないと思います。

  それから、先ほども言いましたが...アメリカ南部/ニューオーリンズを襲った、

大ハリケーン/カトリーナもそうです。あれを防御できるのは、“人間の巣”しかない

と思います。」

「うーん...」支折が言った。「あの、巨大ハリケーン防護出来る建造物は、“人間

の巣”しかないでしょうね...今後、カトリーナ級巨大ハリケーンは増えるのかし

ら?」

「はい!」夏美が言った。「気候変動は、すでに始まっています!日本でも、巨大台風

への備えは急務ですわ!

  梅雨の集中豪雨でも、毎年のように、予想を越える被害が出ています。“既存の治

山治水対策”限界を、はるかに超えています。こうした“地球温暖化/気候変動”

備えて、“人間の巣”の展開を急ぐべきです。

  その意味で、“小規模の人間の巣”急速展開するという戦略転換は、大賛成

す。あのニューオーリンズでも、“人間の巣”が展開して行けば、再びカトリーナ級

巨大ハリケーンが襲っても、絶対に大丈夫です...」

「うーん、」支折がうなづいた。「そうですよね!」

“人間の巣”は...」茜が言った。「立地を吟味し、しっかりとした基盤の上に建設

すれば、たとえマンション・ベースのものであっても、あらゆる自然災害は、克服可能

です。そして、紛争の予測される地域では、ミサイル砲弾の雨も、防御可能です」

「でも...」支折が言った。「今後、“大規模な人間の巣”を建設するには、データ

蓄積する必要がありますよね...居住スペースをどのように取るか、危機管理シス

テムをどのように組み込むか、とか」

「もちろんです...

  でも、そうした〔未来都市システム/未来社会システム〕は、時間をかけ、後から付

加していけばいいのです。現在は、“人間の巣”要件を満たしているのであれば、

まず、“箱物の建設”を急ぐべきです。それが、“地球温暖化”対策になるからです」

「はい!」夏美が、真剣な顔でうなづいた。「そうだと思います!」

「私たちは...」茜が、夏美に微笑みながら言った。「<屋上/野外スペース>

地下1層/公共スペース><地下2層/居住スペース>としていますが...実際

には、地下1層に居住スペースを持ってきた方がいいのかも知れません...

  真中に居住スペースがあった方が、より便利なのかも知れません...こうしたこと

は、実際に運用してみないと、なかなかわからないことですわ...

  でも、“地球温暖化”危機は差し迫った問題です。ともかく“人間の巣”という“箱

物の建設”を急ぐべきです。あとのことは、時間をかけて改造してもいいのです。最初

は、都市デザイナーに任せ、ともかく建設を進めることですわ」

「はい!」夏美が、深くうなづいた。

「これで一応、3つの開発プランの概略を説明しました」茜が、津田に言った。

「うむ...」津田が、うなづき、スクリーン・ボードを眺めた。

                                 house5.114.2.jpg (1340 バイト)  house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ええ、支折です。

  今回はこれまでとし、次の“推進と展開”のページへ移行します。どうぞご期待くだ

さい!」