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  未来工学            GRAND DESIGN                 IN 軽井沢基地 

          未 来 推 計基 本 理 念  

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 トップページHot SpotMenu最新のアップロード                 担当 : 堀内 秀雄 / 白石 夏美 

   INDEX                                   おいしい顔 梅のちから

プロローグ   2005.10. 2
No.1 〔1〕 未来社会建設の基本戦略 2005.10. 2
No.2      @ 人類文明の地下都市空間へのシフト 2005.10. 2
No.3      A 反・グローバル化と、多様性の拡大 2005.10. 2
No.4 〔2〕 文明のターニング・ポイント折返し点  
No.5      B 文明の発祥と、折返し点  
No.6 〔3〕  文明の第3の波/情報革命  
No.7 〔4〕  地球政府による総合管理  

                                                                                                                            

プロローグ       wpe74.jpg (13742 バイト)    

                           <堀内秀雄>             <軽井沢基地>

 

「ええ...お久しぶりです。“環境・資源・未来工学”担当の堀内秀雄です...

  今回、“未来工学”の新プロジェクトが、幾つか立ち上がりました。21世紀に入り、

いよいよ、未来推計が重要なテーマになってきました。ここは、私の担当ということに

なっていますが、私の手には余るものです。高杉・塾長、秋月茜・理論研究員をはじ

め、皆さんの力強い協力が必要になります」

 

「ええ、ここは高杉・塾長の言葉を借りて...ともかく、ボツボツ歩き始めてみる

とにします...そうした中で、しだいにスケッチの線も太く、具体的になって行くと思い

ます。高杉・塾長、そして秋月茜さん、よろしくお願いします。

  そして、ずっと私の仕事を支援してくださっている白石夏美さん、今回もよろしくお願

いします」

「うーむ...」高杉が、腕組みし、椅子の背にもたれた。「ともかく、ボツボツ歩き始め

てみることにしよう...こういう仕事は、そうでなくては、前へ進まない」

「そうですね、」茜が、新しいノートパソコンのモニターを調整しながら言った。

「よろしく、お願いします」堀内は、秋月茜に小さく頭を下げた。「“グランド・デザイン”

の簡単なスケッチは、“2005・総選挙/グランドサイン”で、秋月さんがすでに簡単

なスケッチを行っています。

  今回は、それをさらに本格化させようというものです。スケッチの線を太くし、確かな

ものにして行こうと言うものです」

  高杉が、黙ってうなづいた。

「さて...これから、基本戦略を組み上げて行くわけですが...その前に、骨格とな

“資材”“パーツ”の説明を、しっかりとしておかなければなりません。これらが、ま

さに、未来を方向づける重要な要素であり、理念になります」

「また、“30年後の未来推計”ということでいいのでしょうか、」茜が聞いた。

「そうですね...

  こういう推計では、時間を早めてしまう傾向がありますが、地球環境が壊れていっ

てしまうのも、待ったなしの状況です。それを承知で、30年ということで、いいのではな

いでしょうか」

「はい」茜は、ノートパソコンの前で、両手を組んだ。

 

  〔1〕 未来社会建設の基本戦略 wpe89.jpg (15483 バイト)

             wpeB.jpg (27677 バイト) 

@ 人類文明の地下都市空間へのシフト  wpe8B.jpg (16795 バイト)   index.1102.1.jpg (3137 バイト)

     大量消費文明からの脱却

             <強力な人口の抑制

                    <地球生態系の復元

 

「まず...基本となるのは、“人類文明の地下都市空間へのシフト”です」堀内が言っ

た。「人類が、土の中に“巣”を作るということです...

  何故、人類文明が、“地下都市空間へシフト”するのか...このことの妥当性につ

いて、しっかりと考察しなければなりません。“人類文明の地下都市へシフト”は、

2000年の夏から、塾長と、私と、白石夏美さんとで考察を重ねて来ました。ここは、夏

美さんの方から、簡単に説明してもらいましょうか、」

「はい!」夏美が、堀内の方に、にっこりとうなづいた。「まず...“コンパクトな地下都

市空間を創る”...土の中に“人間の巣を作る”ということですが、これは生態系の中

では、奇異なことではありません。他の生物種も、皆やっていることです。

  むしろ、人類だけが傲慢にも、地上を独占しているのです。都市道路を中心とした

文明の版図を、無制限に押し広げてきたのです。そして、ふと気付いた時、地球表面

の生態系は、なかば沈没しかけていたと言うわけです。

  いずれにしても、これは人類文明としても、全生態系としても、非常事態に突入して

いるということです。

 

  “地球が壊れてしまう”...という概念が出てきたのは、おそらく第2次世界大戦

以降のことだと思います。それまでは、世界中に戦争を拡大し、敵をやっつけるために

は、原子爆弾さえも使い、無差別に殺戮して来た訳ですね。

  そして、やがて核爆弾戦略ミサイルによる“冷戦構造”が、世界を二分して来まし

た。それが、つい最近までの、20世紀後半の時代です。“冷戦構造”は、ようやく終焉

しましたが、まだ大量の核兵器は残っています。しかし、ともかく1つの時代が終わり、

ようやく地球全体へ目配りがされるようになりました...

                       index.1102.1.jpg (3137 バイト)<白石 夏美>

  そうした中で、“人口爆発と食糧問題”“深刻な環境破壊”“化石燃料による弊害”

“地球温暖化”“異常気象”等が、人類文明史的な大課題として浮上してきました。

  まさに、全ての問題の元凶は、“人間が増えすぎたこと...”に尽きると思います。

大量生産・大量消費型文明の中で、“人間が異常に増殖したこと...”、そして文明

そのものが、“大自然のシステムを破壊するものだった”ということです...」

「そうですね...」茜が、ノートパソコンに片手を置いて言った。「生態系の沈没と共

に、文明が“破局”を迎えるか...あるいは文明が“ターニング・ポイント(折返し点)を受

け入れ、“大転換”するかの選択になりました...待ったなしの状況です」

「はい...」夏美が、ゆっくりと茜にうなづいた。「さて...では、何故、“地下市”

のかという事ですね...それを説明します。

  まず、“地下都市”は、“1年間を通して気温の変動が少ない”という特徴がありま

す。夏は涼しく、冬が暖かいわけですね...このことだけで、人類文明の消費する莫

大な冷房暖房のエネルギーを節減できます。

  そして、“高機能・地下都市空間”では、当然、“脱・車社会”です。高機能空間の中

では、もっと効率的な都市輸送システムが完備します。したがって、都市空間内での動

力は、クリーン・エネルギーで十分まかなえると思います。

  それから、これは非常に重要なポイントですが、地下都市に隣接して“陽光の豊富

な地上施設”が展開するということです。そして、地上施設と農耕地以外の大地は、

自然へと返還して行くということです。むろん最初は、ただ還元するのではなく、人類文

明の補助が必要です。

  これが本格化すれば、地球の生態系は確実に復元できます。新たな地下都市の

文明形態としては、主として“緩やかな農業文明”を想定しています...その中で、文

化をどのようにダイナミックに波動させていくか...これは、社会工学のテーマになり

ます...」

人口規模や...」と、茜が言った。「地下都市どうしのリンクは、どうなるのかしら?」

「私たちは、そこまでは考えませんでした...ただ、テーマとしては、幾つかまとめて

あります...

  それは、地下都市の立地と規模によって決まってきます。小さなコミュニティーを無

数に作るのか...数十万単位のまとまったものにするのか...人間社会は、何人ぐ

らいが理想のコミュニティーなのか...

  さらに、どのぐらいの耐用年数の地下都市が建設可能なのか...いわゆる“人間

の巣”となる、“強固な標準型都市空間”が可能なのか...それはおそらく、膨大な

技術開発試行錯誤の歴史になると思います...

  新素材工法が、文明の進展と共に、逐次開発されて行くと思います。1000年の

耐用年数の地下都市は、それほど遠くない将来に開発可能...というのが私たち

の結論でした...」

「うーん...そうですか...」茜が、口をすぼめた。「その過程で、イノベーション(技術

革新)があるということですね、」

「はい...当然、そうなると思います...

  軽くて、硬い素材...地球上に豊富にある資源...例えば、セラミックやチタンなど

から、最適な複合建材”“最適な建築工法”が開発されるかも知れません...そ

れによって、地下都市の形態も、大きく変わってきます...

  現在の都市空間は...ほとんどが原始集落の延長線上にあります。それなりに、

進化してきてはいますが、まだまだ漫然と広がっているのが実態です。これを、いわ

ゆる“巣”のように、コンパクトで、強固で、立体的で、高機能なものにして行くわけで

す...

  通気性...水はけの良さ安定した地盤などが、当面の立地の条件になります。

将来的には、今までの“家”や“都市”という感覚よりは、だいぶ違ったものになって行

くのではないでしょうか。大艱難の時代が来るわけですから、非常事態への備えも、十

分に整えておく必要があります」

「でも、とりあえずは...現在すでにある技術で、ということですね、」

「そうです。まず、人類文明を地下都市へシフトすることが、非常に大事です。それが、

“緊急課題”です...」

「うーん...はい、」

  A 反・グローバル化多様性の拡大  h4.log1.825.jpg (1314 バイト)  wpeB.jpg (27677 バイト)

 

「ええと...」堀内が言った。「次ぎに、“反・グローバル化”についてですね...

  人類文明はこれまで、“文明の曙”以来、“食糧の増産”に努めてきました。農耕

始まり、原始・共産主義社会がスタートしました。その“ゆとり/富の蓄積”の中から、

“文化”が生まれてきました。“祭り”であり、“神への儀式”であり、それに特化した人

々も出現してきました。

  以来、人類文明は、“増産”“開発”“拡大”“便利さ”“豊かさ”を追い求めてき

ました...そして今も、そのパラダイムの中にあります。したがって、十分に豊な人

もなお、限りない“豊かさ”を追求しています。むろんこれは、“資本主義的価値観”

や、経済万能主義も影響しています...が、この“貪欲さ”は、“醜態を晒してい

る”と言えるのではないでしょうか...

  “便利”“豊か”なことが、“人間の幸福”ではないことを知りつつも、そこから抜け

出せないでいます。その結果が、限りない“増産”“開発”“拡大”、であり、またそ

の企業システムの文化が、地球環境を汚染し続けています...

  これは、重ねて言いますが...資本主義体制下“富の蓄積/欲望の原理”が、

強く影響しているのです。茜さんの言うように、まさに“富は誰のものか!”ということ

です。“文明の新しいステージへシフト”と共に、“ポスト・資本主義”を考察すること

は、私も賛成です。新しいステージには、新しい価値観が必要です」

「ありがとうございます」茜が、口元に微笑をうかべ、頭を下げた。

「一方では、」高杉が、言った。「“輸送”“交通”“通信”も発達して来たわけです。

大量の物資情報が、行き交うようになって来たわけです。ここでも、限りない“便

利さ”“豊かさ”を追い求めてきたわけです。現在も、文明全体がこのベクトルの上に

あり、結果として、息苦しいほどのグローバル化社会になってしまったわけです」

「さらに、一方では、」堀内が言った。「“宗教”が興り...“侵略”“征服”が始まり、

“大戦争”も繰り返し...世界の版図はしだいに狭くなって来たわけです...

  つまり、人類文明全体としては...これまでは一途に、“世界の融合/単一化”

の道を歩んできました...そして今や、その“グローバル化”の柵の中で、“投機マネ

ー”が大暴れしています。これはたまらん、ということです」

「そうですね」茜が言った。

「うむ...」高杉が、うなづいた。

                    wpe73.jpg (32240 バイト)   wpe74.jpg (13742 バイト) 

「前にも言ったことですが...」堀内が言った。「文化とは“パレットの中の絵具”に似

ています...ゴッホが筆をとって描けば、あのヒマワリや糸杉になり...モネが筆を

とれば、今の瞬間を捉えた、あの睡蓮の永遠の光となります...あるいはルノワー

ルが描けば、現実の悲劇を忘れさせる、幸せに溢れた女性の肖像になるのです。

  しかし、“グローバル化”と称して、“パレットの中の絵具を掻き回している”のが、最

近の姿です。美しく発色していた世界中の文化を、かき回しペースト状の灰色にし

世界中で“独自の文化”が消えてしまいました。かわりに、“ドラえもん”のマンガが、

共通の文化に普及してしまったわけです...こんなことでいいのでしょうか...

  文化は多様な価値観の中でこそ、それぞれの絵具が、生き生きと豊に発色し、人

々に感動を与えます。個人的にも、社会的にも、“孤立した深い文化”を持っていてこ

そ、他にある文化も深く理解でき、共感も湧いて来るのです。

  しかし、最近の流れは、そうした“創造的”なものでも、“情熱的”なものでも、“感動を

呼ぶ”ものでもありません。全てを、“グローバル化”の中で磨り潰しているだけです。

しかも、その中にインチキが混ざりこみ、モラルハザードを起こしてきています...モ

ラルハザードは、ある意味では、国際的な現象でもあるのです...」

「そうですね...」高杉が、脚を組んだ。「“グローバル化”の中で、宗教文明そのも

のが磨り潰され...今や、巨大な摩擦が起こり始めていますねえ...インチキも入

り込んでいます。

  もはや、単純に“パックス・アメリカーナ(米国支配による平和)の時代ではないでしょう。

パレスチナ問題でも、アメリカの政策はイスラエルに偏りすぎています。また、大混乱

のイラクの状況でも、アメリカは砂漠に脚を取られています。ともかく、軍を撤退すること

が第一でしょう。ベトナム戦争からの撤収と、同じ状況が再現されています。

  イスラム圏アフリカ大陸は、西欧文明とは“時間の流れ方”が違うのと思うので

す。むろん、“価値観”も違うわけです。それを一緒にしようとしているのが、“グローバ

ル化”の圧力です。その意味では、ここでも“時代のターニング・ポイント”が来ている

のです。

  現在の状況は、生物進化の違うマダガスカル島オーストラリア大陸に、ライオン

や鷹を持ち込んで来たようなものです。命は“蚊”でも“人”でも、どちらの命が優れて

いるというものではありません。文化や文明も同様です...

  全ての命は、“36億年の彼”に属し、“1つのもの”なのです...違うものが存在す

ることに、無上の価値があるのです...現在、人類文明に知られている生物は、お

よそ150万種と言われています。しかし、実際に存在するのは1千万種とも、1億種と

も推定されています。

  生命進化のベクトルは、まさに“多様性”の方向にあるのです。“グローバル化/世

界の融合/単一化”の方向にあるのではありません...

「はい、」茜が、ノートパソコンから顔を上げ、高杉にうなづいた。

“36億年の彼”とのリンクが断たれた時...生物体は単なる有機物に変わるので

す。そして、“命”“36億年の彼へと還元”され...“太極(易学・宋学/宇宙万物の元始、宇

宙の本体、万物生成の根源)へ帰って行きます...」

「...」茜が、確かめるように、小さくうなづいた。

「今は、あらゆる伝統的な価値観までも、“資本”によって一元的に支配されていま

す...その資本もまた、世界的に“寡占”が進んでいるのでしょうか...これは、い

いことではありません。“多様性”が失われ、単調な風景になったとき、それは危険信

なのです...」

「はい、」

「くり返しますが...

  今、世界を支配しているのは資本主義です。極端な“投機マネー”が暴れまわって

います。これは“欲望の原理”なのです。このまま人類文明が、“成長”“増大”を続

ければ、環境破壊に歯止がかからず、巨大な飢餓を呼び込みます。人類文明は、やが

屈辱的な大悲劇を、その歴史に刻むことになります。

  “核戦略の危機”も、屈辱的なものでした。しかし、核戦争による人類絶滅の危機

は、一応回避されました。しかし今、新たに、“グローバル化による危機”が顕在化して

来ています。民族的摩擦文化的摩擦宗教的摩擦...そして、2つの銀河が衝突

するように、今まさに、文明の衝突が起こり始めています...それが、西欧文明

スラム文明の衝突であり、アフリカ大陸の危機的状況なのです...」

“危機管理センター”では、」茜が言った。「“グローバル化”による“感染症の危機”

を強調していますわ...病原性の高い“H5N1型鳥インフルエンザウイルス”が、ヒ

トの“新型インフルエンザウイルス”に変異した場合、人類の大きな脅威になっていま

す。

  この脅威は、感染症に限ったことではありません。人類は、“グローバル化”によっ

て、様々な危機に対して“運命共同体”になってしまっているのです。ともかく、“反・グ

ローバル化”によって、人類社会は様々な意味で、多様性を取り戻すことが急務です」

「まさに、その通りです」堀内が、うなづいた。

  〔2〕 文明のターニング・ポイント  

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「さて ...」高杉が言った。「人類文明は...いや...“文明を持つ知的生命体”は、

何故、生まれてきたのでしょうか...

  生態系が育んできた“知的生命体”には、生命進化というベクトル上で、それなりに

重要な意味があるはずです。単に、“欲望の原理”で、地球を支配するためではない

はずです。

  また、それならば、すでに目標は達成しています。全ての種の上に君臨し、全地球

を、すでに支配しています。ただし...真の意味で、この“地球生命圏”を支配してい

るわけではありません。

  “巨大生命圏”真の支配者は、人類文明ではありません。明らかに、別に存在し

ているのです...36億年前...シアノバクテリア光合成を獲得し、二酸化炭素

(Coからを合成できるようになったのも、単なる“無限の偶然から来た産物”だっ

たのでしょうか。

  葉緑体(クロロプラスト)が、シアノバクテリアの細胞質内に寄生し、それが細胞器官

なり、後に全・光合成植物に波及したのは、偶然に起こったことなのでしょうか?何

故なら、この光合成植物の出現が、この“巨大生命圏の姿”を創出して来たからで

す。そして今でも、この巨大生命圏を支えているのは、植物の光合成システムだからで

す。

  タンパク質糖鎖ゲノムの複雑系膨大な種類と数量の命の神秘...これらを

支配してきた、何者かがいるのです。少なくてもそれは、わずか数千年の歴史の、人

類文明でないことは明白です。

  人類のような知的生命体が存在する以上、それと同種の、それよりもはるかに上

の存在がいても、何ら不思議はありません。単純に言ってしまえば、それは“神”

す。あるいは、神を信じないというのであれば、底知れない“大自然の摂理”...“この

世を統(す)べる根源的意識”です。

  “主体”と表裏一体の“意識”は、この世の全てを認識する鏡です。したがって、この

世の最も基本的な構成要素です。物理空間とはあえて言いませんが、この宇宙開闢

の条件に、“主体”というものがあったのではないでしょうか。“認識”する“主体”がな

ければ、“この世”は存在しないと同じです...そもそも“この世”とは、そういう“認識

の上に成立している世界”なのです...

  その、何者かが...人類文明の暴走に対し、どうやら“生命圏のホメオスタシス(恒

常性)を起動させているようです。これは、まさに、“神の為せる業”のごとく、ごく自然に

発動したと考えていいでしょう。“人類激減のシナリオ”が、壮大な大自然の叡智の

中で発動しています。これは、あえて、疑う余地のないものです...

  人類文明は、その“大自然の摂理・叡智”の中から、わずかばかりの法則性を見つ

け出し、それを組み立て、わずかばかりの文明を築き上げているに過ぎません。その

大自然の叡智と比べれば、人類文明の持つ知識などは、大海の中の一滴の水に過

ぎないのでしょう...」

「はい、」夏美が、小さくうなづいた。

                                  

      

「このまま進めば、“飢餓”“感染症”、あるいはその他の危機により、“人類激減の

シナリオ”が実現します。“ホメオスタシス(恒常性)とは、人が病気やケガから回復する

“復元力・回復力”と考えられるものです。“生態系”や“生命圏”も、自らの存在を維持

するために、増えすぎた人類を激減させる必要があるのです。

  その手段が...新型インフルエンザのように、人類を直接襲うもの...気候変動

地軸の移動(北極点と南極点の移動)のように間接的なもの...あるいは遺伝子等に介

する深慮遠謀なものにせよ...いずれも人類の叡智の超えた所で、さまざまなこ

とが発動してくるでしょう。むしろ、人類には理解できないことの方が多いと思います。

これは、勝てる戦いではありません。

  いずれにしても、ここまで肥大化し、グローバル化してしまった人類社会は、“非常

に脆弱(ぜいじゃく)になっている事実を、しっかりと認識しておくべきです。人類社会

は、かってはそれぞれしっかりと大地に根を張り、多様性に富み、力強く生きていま

した。

  ところが今は、“新型インフルエンザ”1つ、“新型肺炎(SARS)1つ、“西ナイル・ウ

イルス”1つにさえも、戦々恐々としいるのが実態です。かっては、このなものは地域

的な風土病であり、人類社会そのものはびくともしなかったはずです。

  ところが、科学技術衛生環境医療技術の面では飛躍的に進歩しましたが、“グ

ローバル化”によって、人類社会が構造的に弱体化してしまったのです。加えて、

福を実感できない社会になってしまったのです...」

「そうですね、」堀内が言った。「まさに、文明発祥以来の“大方針”が、今強力にその

方向転換が求められているのでしょう...“文明の曙”を見、“富が蓄積”され、“欲望

の原理による地球支配”が、ついに、生態系全体を沈没させつつあります...

  この“欲望の暴走”は、“文明の叡智”ではありません。少なくとも、“文明を育んだ

種族”である知的生命体の取るべき道ではありません。生命進化の大動脈からも、明

らかに外れたものです。

  人類文明は、“反・グローバル化”“多様性の拡大”“地下都市へのシフト”

へと、その文明スタイルを方向転換する必要があります。まさに、“文明のターニン

ポイント”が来ているのです」

「このターンを乗り切れば、」高杉が言った。「人類文明は再び、大きな安定期に入るも

のと思います...文明に多様性が生まれ、一部は太陽系空間へ拡大して行くでしょ

う。そして、一部は大自然へ回帰し、あるいは一部は、“自らの内なる世界”へ旅立っ

て行くのかも知れません...

  その多様性に富んだ世界を、“地球政府”が管理していくことになるでしょう。太陽

系空間へ出て行く技術系社会は、地球近傍天体の監視や、宇宙コロニーの開発

も、着手していくものと思われます...」

“自らの内なる世界”とは、どのようなものと考えておられますか?」

“物の世界”の対極に、“心の世界”があります。まだ、本格的な研究はほとんど進ん

でいません。しかし、物理空間と同等の、あるいはそれをはるかに超える広大な世界

があると考えています。しかし、どのようなものかといわれると、具体的には何とも言

えません。

  ただ...“精神世界の広大な大地”があり...物理世界と相互作用する“人間原

空間”があり...“意味あるストーリイ性の発現”があり...彼方には、遺伝子情

報系や、生命進化のベクトルが見える...そういう世界です...

  つまり、そうしたナマの生命情報空間かも知れません。人類は、電子情報系や、

子情報系を介し、そうした“上位にある情報世界”とコンタクトを取れるかもしれませ

ん。人類文明の“第3ステージ/情報革命”とは、まさにそうしたものです...」

「そこには、塾長が主張しておられる、“36億年の彼”の姿もも見えてくると、」

「そうですね...

  茜さんは、宗教が新たな段階に入ると言っているようですが...もちろん宗教とい

うものも、当然大きく変質してくるでしょう...」

  茜が、高杉の方に、コクリとうなづいた。

                     wpeB.jpg (27677 バイト)    

“欲望”は...」と、高杉は、窓の外の白樺林を眺めた。「生命体として、“生きる/存

在し続ける”という、“ナマの動因”です...この動因そのものは、素晴らしいシステ

ムです。生命体の、最も基本的な部分から発動しているものでしょう。生命体は、生き

続けなければ、意味がないわけですから...

  しかし、文明は“ゆとり/富の蓄積”を創出し、“弱肉強食”の世界から離脱しまし

た...“努力”“勤勉”“勇気”、そして“優しさ”を評価し、豊な文化を築き上げて

来たのです。“慣習法”を磨き、さらに“法治主義”を徹底し、歴史を重ねて来たのです。

しかし、この基本が、どうも世界的に、おかしくなってきたようです...

  人はパンのみに生きるにあらず...といいます...まさに、その通りだと思

うのですが、」 

「そうですね、」堀内は微笑した。「うーむ...

  くり返しますが、人類文明はまさに、その存在意味においても、“ターニング・ポイン

ト”を迫られているのでしょう...“文明種族の叡智”による、本格的な新しい価値観

が求められています...

  それは、どのようなものか...すでに歴史の中に、参考となるものが示されている

と思うのですが、」

“過去の豊富な歴史から学ぶこと!”、」高杉は、強くうなづいた。「困った時は、この

手法が非常に大事です。重要な手がかりが、必ずあるものです。その意味でも、歴史

は人類のかけがえのない財産といえるでしょう。現代風の言葉でいえば、問題解決の

ためのデータが、大量に蓄積されているということです」

「そうですね、」堀内が言った。「学問に生きるのもいいのですが、宗教に生きるのも、

その1つです...儒教老荘思想に生きるのも、1つの道でしょう。

  また、かってインドで見られたような、人生の最後の段階で出家し、哲学に耽るという

人生の仕上げも、1つの“生き方/死に方”になります」

「はい...

  現代文明は、“経済”“学問”が主流になっていますが、かってはそうした“壮大な

人生哲学の道”というものもあったわけです...我々は、過去の歴史を学び、新しい

文明の存在意味というものを、ここで改めて確立しなければなりません。茜さんの言

“ポスト・資本主義”とも、軌を一にするものです」

「有難うございます」茜が、高杉に頭を下げた。「新しい価値システムの背景として、そ

うした新たな、人生の深い価値観が必要になってきます。

  私は、そうした意味から、宗教というものが、新たな段階を迎えると見ていました」

「我々は、そうしたものを、」高杉は、腕組みをした。「慎重に、準備を進めて行くべきだ

ろうねえ」

「はい、」

 

“持続可能な経済成長”などと言う、ゆとりのスペースは、」堀内が、言った。「もはや

地球上にはないということです...

  還元主義的・機械論的な文明の重圧...さらに、人口爆発、飢餓、異常気象、気候

等で、地球表面の風景が崩壊し続けています。まさに、緊急に、“文明のターニン

グ・ポイン”が突きつけられています。

  高杉・塾長は、以前からこのことを指摘していましたが、“人類文明のターニング・

ポイント”とは、どのようなことか改めて、説明していただけますか、」

「はい...」

 

B  文明の発祥と、折返し点  wpe8B.jpg (16795 バイト)

                wpeB.jpg (27677 バイト) 

わずか数千年前...地質年代的に見れば、ほんの1万年にも満たないごく最近の

とですが...地球生態系の中に、“文明”が出現してきました...

  ホモ・サピエンスが、“言語”を使い、“火”を使い、“道具”を用い“文明を展開”する

ようになったのです...重ねて言いますが、これはほんの数千年前の出来事なので

す。春になって種が芽を出すように、ホモ・サピエンスの間に“文明”が続々と出現し

てきたのです。そして今、まさに我々はその頂点で、文明を営んでいるのです...

  文明の発祥は、何かの必然なのでしょうか?意図されたものなのでしょうか?とも

かく、一斉に文明がスタートしました...バラバラな言語無数の文字が、それぞれ

に考案され、まさにそれぞれに“文明の曙の道”を歩み始めたのです...

 

  さて、その文明種族である我々は、生まれた時、すでに“言語的亜空世界”の中に

居ました。そこで、未分化の“主体”は、発達心理学的段階を経て、その言語的に構

成された世界に、言葉の習得と共に、しだいに溶け込んでいきます...

  同時に、その言語的亜空間に建設された文明を継承”適応できるように“教

育”され、“相互主体性世界”を補強するようになるわけです。ともかく、そうやって“主

体”は、“文明”を備え、この世の冒険に旅立って行くわけです。文明のフィルターを通

してリアリティーを理解し、“主体”はたった1人この世界の旅し、たった1人でその旅

を終えるわけです。

 

  ところが今、我々の存立する“文明の器”が、大転換を迫られているのです。わずか

数千年余りで、文明が暴走してしまったからです。この巨大生命圏をも破壊するほど

“核エネルギー”で武装し、イデオロギー対立を深めて行ったのです。

  そして、ようやくそれが回避されると、今度は人口爆発のツケ環境破壊のツケ

が、どっと回ってきました。まさに、貪欲に拡大してきた“文明の暴走”です。回避する

道は、文明全体の大転換しかありません。

  文明全体を、コンパクトな地下都市へシフトし、地上を大自然の原野に返すことで

す。それと同時に、強力に人口抑制をして行くことです。少子化を心配するなどは、論

外であり、これは現在の延長線上に将来を描く、官僚的発想です。

 

  いずれ、今世紀中に、人類文明にとって“大艱難の時代”がやって来るでしょう。

それが、どのようなものか、どれくらい持続するのか、予測がつきません。ただ、確実

にやって来る危機があります。それは、世界人口の爆発的増加と、“巨大飢餓”によ

“人口の激減”です...

  最近顕著になってきた異常気象は、その予兆なのかも知れません。私の心配が、

ただの杞憂で終わってくれることを願っています...しかし、この現在のままの流れ

では、地球生態系が沈没してしまうのは、“火を見るよりも明らか”なことです...」

「そうですね、」夏美が言った。

                wpe89.jpg (15483 バイト) index.1102.1.jpg (3137 バイト) 

「ええ...

  ホモ・サピエンスは、旧石器時代末のクロマニョン人(ヨーロッパから、北アフリカに分布)が確

認できます。非常に長身だったようですね...洞窟の壁に、クロマニョン人の描いた

と推定される、動物の彩色画が有名です...

  しかし、いわゆる“四大文明”が起こったのは、ご存知のように、数千年前のことで

す。エジプトのナイル川流域、イラクのチグリス・ユーフラテス川流域、インドのインダス

川流域、そして中国の黄河流域の4つであり...いずれも農耕に適した肥沃な地域

です。

 

  それから、今から2500年ほど前...インドの釈迦族から釈尊(紀元前500年頃)があ

らわれ、仏教が生まれます。そのすぐ後に、アレキサンダー大王(紀元前356〜323年)の東

方遠征があります。

  パキスタン北西部のペシャワール地方は、古くはガンダーラと呼ばれていました。

ガンダーラ美術仏像彫刻は、アレキサンダー大王が運んできたギリシア美術の影響

を強く受けています。仏像は、インドのマトゥラーとパキスタンのガンダーラで、ほぼ同

時期に創られ始めますが、以後日本にも伝わって来るわけです...

 

  さて...パレスチナの地でイエス・キリストが誕生したのが、“紀元0年”...これ

が、現在使われている西暦になり、以後今年で2005年を数えます...キリスト教

生まれたのと前後して、ユダヤ教イスラム教も生まれています...

  これらの大宗教が、ほぼ同じ頃に出現し、人類文明における“精神面での骨格”

形成することになります。あの土埃(つちぼこり)の大地での、苦行と、試練の中から生ま

れた2000年前の宗教は、未だにこれらを越えるものは出現していないわけです。

 

  分水嶺の雨水が、深い渓谷を形成し、“精神面での文明の原型”は、もはや容易な

ことでは変わることはありません。これと似たことが、現在、“文明の第3波/情報革

命”でも始まっているのです。人類は、“文明の第3ステージ”において、新たな文明形

を獲得しつつあり、その原型が、まさに今創られているのです...

  つぎに、私の持っているデータから、その“文明の第3ステージ”の概略を推理して

みましょう...」

「お願いします...」堀内が、体を揺らして、頭を下げた。

  〔3〕 文明の第3の波情報革命 wpe7.jpg (7162 バイト)

       index.1102.1.jpg (3137 バイト)    wpe74.jpg (13742 バイト)   wpeB.jpg (27677 バイト) 

 

「人類文明を、形態面から見れば...

  “文明の曙”以降を、第1ステージと分類できます。そして、“産業革命(18世紀〜19世

紀)以降が、第2ステージです。産業革命によって、物が大量生産され、機械動力

が出現し、人類文明は飛躍的に拡大しました。それと並行して、人口も、爆発的に増加

して行ったのです...これが、後に大問題になるわけです...

  さて、真空管による“計算機の原型”が作られたのは、半世紀も前になるのでしょ

うか...そして、真空管トランジスターに変わり、ICに変わり、LSIに変わり、ついに

パーソナル・コンピューター/パソコンが登場し、普及します。

  これが、“情報革命/第3の波/文明の第3ステージ(21世紀〜)への入り口を切り

開いたのです。初期の真空管型・計算機からは、およそ想像も出来ない変容です」

「まさに、そうですね」堀内が言った。

「さて...

  この文明史的な大イベント、“第3ステージ/情報革命”の入り口と、“文明のターニ

グ・ポイント”が重なってやってきたわけです。そして、これに人口爆発飢餓という

“大艱難”が、同時に襲って来るわけです。この危機は、“第2ステージ/産業革命

もたらしたものでもあるわけです...

  いずれにしても、ホモ・サピエンの人口爆発は、生態系にとって大きな“危機”です。

何度も言うように、危機は人口問題食糧問題に限ったものではありません。しか

し、人口問題は、確実にやってくる危機なのです。

  超肥満体になった人類社会は、いずれ悲劇的な結果がおとずれます。生態系の許

容限度を越えて、文明が拡大してしまったのです。すでに限界が来ているのです。後

は、“急激な人口減少”しか、残された道はありません。これを、文明の叡智で如何に

軟着陸させるか...これが、現在の我々に与えられた、最重要テーマということにな

ります...」

「塾長...“第3ステージ/情報革命は今後、どのように進化していくと思われます

か、」

「そうですねえ...

  “第2ステージ/産業革命”は、大量生産と、機械化、そして原子力・核融合に代表

される“エネルギー革命”でした。そして、その暴走で、人類文明はつまづいた訳です。

核兵器による人類絶滅の危機...それに続いて、爆発的な人口増が顕在化して

きたわけです...

  しかし、“情報革命”は、物質/もの/エネルギーの革命ではありません。デカルト

はこの世界を、“心/思惟するもの”と、“物/延長されたもの”に二分しました。“産

業革命”とはその意味では、物質レベルの革命でした。しかし、情報革命は明らかに

情報/精神/意識レベルの革命なのです...

  “物の領域”“心の領域”の統合が、大きな文明的な課題に浮上してきています。

“第3ステージ/情報革命”とは、まさにその意味での大変革なのです。当面は情報革

命はインフラの面に注目が集まっていますが...やがてソフト...そして“情報や意

識の本質”へと焦点がシフトして行くと思われます...」

「それは、どのようなものと考えますか?」堀内が、たたみかけて聞いた。

「21世紀の“情報革命”は、ご存知のようにDNAの塩基配列の解読...それも、“ヒ

ゲノムの解読”で幕を開けました。20世紀が、アインシュタインの提唱した特殊相

対性理論(1905年)で幕を開けたのと、非常によく似ています。

  しかし、ヒトゲノムの解読そのものは、実質何の意味ももちません。意味があるの

は、3万ほどの遺伝子が、どのような意味と対応し、“遺伝子発現の壮大なオーケスト

ラ”が、どのように“命の発生”を呼びおこすのか...それが肝心なのです。

  あるいは、どの遺伝子が、どの病気と複合的に関連しているのか...あるいは、

それがテーラーメイド医療に発展し、その情報が治療に生かされて初めて、実のある

ものになるのです。

  まあ、医療とはそういうものですが...純粋な学問としても、“遺伝子の意味”と、

発現の“後成学的風景”が解析されてはじめて、それが言語空間で意味のあるもの

になるのです。

  人類文明は、言語的亜空間の構造化を進め...文明はその中に建設されていま

す。リアリティーは、地球表層の有限の空間領域ですが、言語的亜空間は、数式イメ

ージによってさらに無限に拡大していきます。

  人間はその中に生まれ、教育を受けるわけですが...この言語的亜空間の場で

認知されてはじめて、ゲノム解読は新たな座標系を切り開き、意味のあるものになる

のです...ゲノムの解読は、リアリティーの言語的解析になるわけですが、それが人

間的に翻訳されたものが、我々にとって、真に意味のあるものになるわけです...」

「うーむ...そうですね、」

「“情報革命”も、ヒトゲノムの意味の解析と同様に、まだ始まったばかりの段階です。

ポスト・ヒトゲノムでは、らさらに難解な、タンパク質糖鎖の解析が進んで行きます。

医療面でも、サイトカインの研究など、免疫機構の全景が見え始めています。情報系

の複雑さは遺伝子関係だけではないわけです」

「免疫系の暴走の、“全身性エリテマトーデス”なども、徐々に解明が進んでいる様で

すね」

「ええ、そうですね...完璧でデリケートな防御機構だけに、微妙に狂うと、暴走する

わけでしょう。女性の発症率が高いのも、女性の方が免疫系のガードが固いからで

す。したがって、その分、暴走が起こりやすいようですね」

「うーむ...」

“ヒトゲノムから見た人間学”が、これから壮大な情報解析の風景を見せるように、

“文明の第3ステージ”も、今まさに幕が上がったばかりです。その全貌は、計り知れ

ません。いずれにしろ、幾つもの飛躍があり、想像を越えた領域に踏み込んで行きま

す」

「例えば?」

「...情報といえば、私たちの“認識”と不可分のものです...

  そして、“認識”とは、このの全てに直接触れるものです。逆に言えば、認識され

ないものは、この世に存在しないと同じ意味なのです。つまり、認識があって、初めて

物質も存在し得るわけです。“認識/意識/情報”とは、“この世の最も基本的な何

か”なのです。

  波動関数から物質が生まれます。何者かが認識し、それが認知されます...つま

り、物理空間の現象さえも、“認識と認知”という“主体性の働き”とは不可分なので

す。だから、量子力学では、“参与者”という主体的概念を導入したわけです。

  例えば、素粒子には“波動性”“粒子性”の二重性があります。では、これが実際

にどのような姿をとるかは、主体性にまかされているということです。主体が“波”と思

って観測すれば“波動性”が観測され、“粒子”と思って観測すれば“粒子性”観測さ

れ...そのいずれも、真実だというわけです...

  つまり、厳格な理論物理学の素粒子の存在が、主体“波”を選ぶか、“粒子”を選

ぶかで、それぞれ違った風景になるということです...“認識”という“主体性”が、理

論物理学の世界にも、いかに深く影響を及ぼしているかが分ると思います...

  “こんな、いいかげんなことでいいのか!”、と思われるかも知れませんが、まさに

最先端の量子力学では、基本的な概念です。そして、それ以前のニュートン力学、そし

相対性理論さえも、“古典的”として区別されるのです。

  私はその分野の専門家ではないので、詳しいことは知りませんが、量子力学はまさ

に最先端を行っています。最近では、“量子もつれ”から来る“量子情報科学”が注目

を集めていますね、」

「なるほど...現在は、相対性理論と、量子力学のダブルスタンダードの時代だと言

われますが、その基本概念が違えば、統合は難しいわけですか...」

「うーむ...まあ、マクロレベルでは主に相対性理論ミクロレベルでは量子力学

有力です。そして、ナノ・テクノロジーのDNAやタンパク質のサイズが、双方の競合領

域といわれます」

「“命のサイズ”ですね...非常に、示唆に富んでいます」

                 wpeB.jpg (27677 バイト) 

「認識には...」と高杉は言った。「“5感”“直感”などの“直接的な認識”と、“情

報”“学習”などの“間接的な認識”があります。リアリティーとのからみで、今後の展

開が面白いものになりそうです」

「ふーむ、そうですか...」

「ついでに、もう1つ、抽象的なことを言っておきましょう...聞き流してもらって、結

構です...」

「はい...」

「主体性を持つ“人間/人格”は、時間軸の上にあります。私が私であり続けるのは、

人間は“プロセス的存在”だからです。人間は、無限に分割できる“1瞬の今”の上に

あるのではありません。ちょうど、布模様のように、“時空間上で幅をもった存在”

なのではないでしょうか...

  湯川秀樹・博士が、素粒子の“点という1次元の概念”に対し、“素領域”という“広

がり”を考えておられたのと似ているかも知れません...」

「...」

「つまり...

  “認識”とは、“時間軸上のプロセス性”で処理されるということです。ところが、面

白いことに、リアリティーには“部分”というものが存在しません。“局所性”は否定さ

れ、“部分という独立系”は認められず、“全体が巨大な1つ”なのです。全体が、響き

合うということです。

  “局所性”は否定は、“ベルの定理”で数学的にも証明されていますし、量子論にも

強い影響を与えています...また、禅などでは、“唯心”という“悟りの境地”は、“全

体が巨大な1つ”なのです。つまり、リアリティーということです...

  すると、どうなるか...どうも、因果律(原因があって結果があるという法則性)が、破れている

ことになるようです...」

「ふーむ、」堀内が、腕組みをした。「どういうことでしょうか?」

「私にも、確かなことは言えません...

  ただ...世の中には、未来を予言したという例がいくらでもあります。それが、単な

る偶然でないことも、分っています。細々とした予知透視などは、それこそ数え切れ

ないほどあります。これが、この世の実態というものです。非常に、混沌としています。

  こうしたものが、“文明の第3ステージ”では、どっと表面に出てくるでしょう...改め

て、“こ世”とは、いったい何なのかと言うことです。“物の領域”“心の領域”の統

合が始まれば、間違いなく、世界のパラダイムが変わって来るということです...」

「ふーむ...」

「リアリティーが、“部分”を含まない“1つの全体”であるなら...この科学的世界の、

基本的なものが崩れて来ます...

  本格的な情報化時代の今、情報の暗号化の技術が、飛躍的に進化しています。し

かし、因果律が破れた世界では、究極の暗号技術というものも、安全ではないという

ことになります。

  暗号が解読不可能であっても、予知透視直感力などで、私たちは直接的に認

識することが可能です。この世界は、“部分の集合体”ではなく、“1つの全体”だという

ことであり、構造的に“絶対の秘密”というのは、成立しないということではないでしょ

うか...

  また、完全犯罪というのも、ありえないということになります。医者や歯医者のインチ

キも、実は筒抜けだというこは、万人が知っています。人間は、“理性”によって知る方

法と、“直観力”によって知る方法の、“2つの方法”を兼ね備えているからです。

  さて...何故こんな話をしたかというと...こうした“リアリティー”と、“認識/情

報”というものが...そして“物の領域”“心の領域”の統合が、“文明の第3ステー

ジ”では非常に重要なテーマになって来るということです。

  文明が、“物質文明”から、大きく飛躍して行くと思われます...

「はい、」茜が、うなづいた。「その意味でも、私は宗教というものが、非常に大きな意味

を持ってくると考えています...」

  〔4〕 地球政府による多様性の管理 

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