私たち人類の目に映る生態系は、ほぼ地球表層に限定されています。何と言って
も光合成をする緑の植物の領域は、この地球生命圏の特徴そのものです。しかし、
地球を棲み家とする微生物は、大気圏表層の宇宙空間にもいますし、地下5000メ
ートルの高圧高温の岩盤の中にもいるらしいことが分かってきました。いずれも、本
格的な研究は、21世紀に入ってからという事になります。
昔から、地球表層の土壌には、膨大な数量の微生物が生息していることは、よく
知られていました。一方、同じ地球表面でも、砂漠のような所には、ごく限られた種
類の生物しか生息していないことも知られていました。そしてまた、科学者は長い
間、漠然と深地下は“無菌”状態だと考えてきました。これは高圧と高温から来る苛
酷な環境のために、生物の生息には適さないだろうと考えられてきたためです。
ところが、最近の科学技術の展開で、深海や深地下が人類の直接的な観察の領
域に入ってきました。特に深海の熱水鉱床は、注目に値すると言われます。また、さ
らにその熱水鉱床の地下には、膨大な地下生物圏(Deep Biosphere)が存在する
可能性が濃厚となってきました。その地下生物圏の微生物の総量は膨大なもので、
炭素重量に換算して、地球表面の生物圏の200倍(200兆トン)という試算もあるよ
うです。
いずれにしても、この地下生物圏の探索は、21世紀の幕開けと共にスタートを切
る状況です。地球という一つの巨大生命圏を考察していく場合、これほど巨大な地下
生物圏の存在は、重要な要素の一つになってきます。たとえそれが、微生物だけの
世界であったとしても、その絶大な影響は看過できるものではありません。
したがって、21世紀の新展開へ向けて、このホームページでも逐次追跡して行く
ことにします。