My Work Stationgroup C最新・素粒子論の風景ニュートリノ望遠鏡の始動

 〔ニュートリノ・物理学〕

             ニュートリノ・望遠鏡 始動          
 
    
               マクロ世界とミクロ世界を突き抜ける・・・・・ニュートリノ振動の姿!

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トップページHot SpotMenu最新のアップロード             担当 : 高杉 光一 

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プロローグ      ...“豪雨災害/土砂災害・・・そして巨大地震のリスク!”...

                        ... 《危機管理センター》  からの ≪警告≫ ...
2010. 7.30
No.1 〔1〕 そもそも、 ニュートリノ とは何か? 2010. 7.30
No.2 〔2〕  ニュートリノ・望遠鏡 とは!    2010. 8.26
No.       <稼働中/建設中の・・・  ニュートリノ・望遠鏡!   2010. 8.26
No. 〔3〕  ニュートリノ で・・・ 宇宙を見る! 2010. 9. 4
No. 〔4〕 非・社交的粒子・・・ ニュートリノ の姿! 2010. 9.11
No.       ステライル・ニュートリノ ・・・ 暗黒物質 の候補か?> 2010. 9.11
No.       ニュートリノ は・・・ベータ崩壊で生成!> 2010. 9.11
No. 〔5〕 風味・・・フレーバーの科学/ニュートリノ・振動!   推 敲 完 了 2010.10.10 
No. 〔6〕 フレーバー振動混合比率から分かることは? 2010.10.23
No.10      多くのニュートリノは・・・ パイ粒子崩壊! 2010.10.23
        ボスが倒れたために、ご迷惑をおかけしましたが、 推 敲 完 了 です。                         2010.10.28

    

    参考文献   日経サイエンス /2010 - 08   

                      動き出す・・・ニュートリノ・望遠鏡

                                G.B.ジェルミニ / A.クセンコ (ともに・・・カリフォルニア大学ロサンゼルス校)   

                                    T.J.ワイラー (バンダービルト大学)                                       

                      ハイパー/カミオカンデ構想

                                中島林彦 (編集部)

                                    協力: 東京大学宇宙線研究所

                           日経サイエンス /2010 - 06   

                      総力戦で初期宇宙に迫る

                                    中島林彦 (編集部)

                                    協力: 東京大学宇宙線研究所  東京大学数物連携宇宙研究機構

 
  プロローグ   
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    豪雨災害 / 土砂災害 ・・・・・ そして巨大地震のリスク

     
《危機管理センター》  からの ・・・  ≪ 警 告  

 

  支折が、トントンとメモ用紙を揃え、ノートパソコンの横に置いた。そして、インターネット正面

カメラのカウント・ダウン数字を眺めた。チラリと江里香の方を眺める。小さくうなづき、微笑した。

それから、小さく息を吐く...ランプが...赤...黄...青、と変わって行く...


                

「ええ...」支折が、カメラ目線で言った。「星野支折です...

  御無沙汰しておりました。“2010/参議院選挙”以来になります。あの、“豪雨災害/土

砂災害”の中の、参議院選挙の後、今度は、“連日の猛暑”が続いていますね。

  “35℃を超す猛暑が連日続く”というのも、“今までにはなかった異常事態”、ではないで

しょうか...やはり、“大きな気候変動”が、確実にやって来ているようですわ。それにつけて

も... “現状の・・・日本の政治・行政の対応では・・・非常に不安” ...です」

 

「私たちは...

  “気候変動対処の・・・万全な対策”...“国家のインフラ整備/食糧自給の農業基盤整

備”を、急がなければなりません。

  政治家マスコミも...“政治の健全性”“景気対策”を、大声で叫んでいますが、それ以前

に、緊急的/大課題として、“日本の・・・社会インフラが・・・総崩れの危機!”、にあるという

ことです」

 

「それから...

   《危機管理センター》 響子さんから依頼されていることですが...“太平洋ベルト地帯

・・・日本の心臓部・動脈部での・・・巨大地震が・・・日本壊滅の大きなリスク!”...として、

急浮上して来ています... 

  世界最大メガロポリスへの...〔人間の巣型/災害対策拠点〕の展開と...人口の分散

が、急務となっています。これは、以前から存在する問題ですが、“地球温暖化/気候変動/自

然災害の激化”で、 “日本壊滅の・・・リスク要因になってきた!” 、と響子さんは、“強く警告”

しています。

  したがって...太平洋ベルト地帯の巨大地震により・・・ 国家が壊滅的な大被害を受

 ける!”...ということは、“想定内”のことであり... “放置は・・・許されない状況” ...だ

ということです...

  これは... 《危機管理センター》 からの... ≪ 警 告 !≫ ...ということで、よろし

く、お願いします...」


                 

「私たちは...

  こうした、“時代的/危機対策”として...〔人間の巣/未来型都市/千年都市=自給自

足社会〕を、全国展開し...〔国家/国民〕として...“万能型・防護力”を獲得しておくことを、

くり返し提唱しています。差し迫った危機に、“可能な限りの・・・万全の対策を講じておく”、と

いうことを...さらに重ねて、提唱しておきます...」

 

〔人間の巣〕展開は...

  実は、非常に安価な、リスク要因のない...土木建築農業基盤整備生活基盤整備...だ

ということです。この、〔基盤的・未来都市〕に、“未来型システム/クリーンエネルギー、循環

型システム・・・新民主主義”を、組み込んで行くのは...長い時間をかけ、ゆっくりと進めて行

けばよいのです」

 

「ともかく...〔日本国家/日本国土〕の中で...

  “居場所がない人・・・食べていけない人・・・仕事がない人・・・希望の持てない人”...が大量

に出現して来ています。これは、異常な事態ですわ...

  また...“事態を・・・真剣に報道し・・・真剣に対処てしない・・・マスコミ/公共放送は・・・

国民への裏切り重ねている”...ということになります。

  一方...“日本の政治は・・・自分たちの世界に引きこもり状態” です。“国民とも益々乖

離して行く様子”、です...」

 

「重ねて言いますが...

  現在の、“平成の/国家大混乱”特徴的なことは、“マスコミ/公共放送が・・・国民から

乖離し・・・積極的に、国民を裏切り続けている”...ということです。

  その証拠に、マスコミは...かつてはあった“国民的な議論の場”を...ことごとく封殺して

いるということです。公共放送でさえも、“真面目な議論の場”が、ほとんどありません...

   さあ、そうは言っても...“私たちの国家/・・・私たちのマスコミ/・・・私たちの公共放

送”...なのですわ。結局、私たちが責任を持ち、わたしたちが責任を取らなければなりません。

これは、“年金の不祥事と同じ構造”、なのです。私たちが、何とかしなければなりません...

 

  さあ...それゆえに、いよいよ...“私たち/国民自身が・・・真の直接行動に立ち上が

る時!”...が来ているようです。この事をしっかりと肝に銘じ...考えて行きましょう...」


                 

「ええ...」支折が、別のメモ用紙を取り上げた。「...私は...

  シンクタンク=赤い彗星で...〔人間の巣の考察〕の仕事が、継続中です。その上

で、企画・担当響子さんに...今回、〔ニュートリノ・物理学〕 を担当するように、依頼され

ました。そういう次第で、今回は、こちらを担当することになります。

  といっても...同じ シンクタンク=赤い彗星・ビルの中ですわ。さほど、生活に変化

があるわけでもありません。でも、内容の全く異なる仕事で、よい気分転換になります。響子さ

の心遣いに、感謝です...」

 

「その響子さんは...

  例年のことですが...夏は、《軽井沢・基地》に移動しています。そういうわけで... 《危機

管理センター/・・・本部》 ...は、私があずかっています。

  うーん...そうは言っても、メイン・スクリーンのプロジェクターは、電源は落とされ、センター

の中はヒンヤリとし、静かです...コーヒーの香りも、猫の動く気配もありません...薄暗いセ

ンターの中で、発光ダイオードの明かりが...星座のように点滅しています...」

 

                   

「さあ...

  今回の仕事は...〔ニュートリノ・物理学〕/《ニュートリノ・望遠鏡の始動》 ...ということ

ですね。

  ニュートリノは...素粒子1つとして、ずっと、その基本的側面が追求されてきた様子です。

それが、いよいよ、“天体観測の実用的ツール/ニュートリノ・望遠鏡”として、始動するというこ

とのようです。

  うーん...文芸/担当の私には、分からないことばかりです。ただ、素粒子物理学と、天文

学の領域だということは、分かります。もっとも、天文学的/成果の方は、ニュートリノ・望遠鏡

本格稼働して、得られるものかも知れませんね。

  ともかく、《当ホームページ》としても...この新分野に...果敢に切り込んでいく方針です。

どうぞ、ご期待下さい!」


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「ええ...」支折が、高杉淡島に視線を向けた。「ここは...

  素粒子物理学の、非常に難解な領域になると思いますが、ともかく、歩き始めるということで

すね。“犬も歩けば棒に当たる!”...と言いますし、“藪から棒!”...という、コトワザもあり

ますわ。そんな風に歩き回りながら、量子世界の風景を、習得して行きたいと思います」

  高杉が、顔を崩した。

「うーん...」支折が、口をすぼめ、頭をかしげた。「うまいコトワザではなかったかしら...

  ええ...ともかく、そんなわけで...高杉・塾長と、淡島祐次・准教授には、分かりやすい説

明を、お願いしてあります。どうぞ、御期待下さい。

  ええと...まず、高杉・塾長から...一言、お願いします」

「お久しぶりです!」高杉が、インターネット正面カメラに頭を下げた。「よろしくお願いします...

  ええ...素粒子物理学は...素人には近づきがたい...難解な領域です。しかし、同時に、

日本からノーベル賞・受賞者幾人も排出している、最先端科学領域です。私たちが、“参考

文献”論文を読んだぐらいでは、とても語りつくせる世界ではないわけです。

  そして、当然のことですが...門外漢の素人に...理解できる範囲も限られています。しか

し、そうした身の程を顧(かえり)みず、今までも、私たちはあらゆる分野に切り込んできました。し

たがって、今回も、そうした気楽なスタンスで、踏み込んで行くつもりです。

  また...未熟ゆえの、誤解勘違い表記ミスもあるかと思いますが、判明した時点で、キッ

チリと分かるように訂正をし、《間違いの訂正/記録》のページの方にも、修正記録を残して行

きます。こちらの方も、よろしくお願いします」

「はい...」支折が、うなづいた。「こうした...

  “参考文献”の、論文考察のページを、重ねて行くということですね。そして、データ量をふやし、

最先端科学の領域の、総合的な理解を深めて行く...ということですね?」

「まあ、そういうことですね...」高杉が、うなづいた。

「ええ...」支折が、肩を回した。「淡島・准教授...一言、お願いします」

「はい、そうですねえ...

  《量子情報科学のスタート》でも...すでに相当、量子力学の世界というものの、考察を重

ねて来ています。今回は、〔ニュートリノ・物理学〕 ということですが、重複してくる内容も多くな

るかと思います。その、重複するということが、学問体系では重要になッて来ます...

  ええ、ともかく...精一杯やりますので...よろしくお願いします」

「はい...」支折が、横を見た。「ええと、最後に...

  シンクタンク=赤い彗星の、二宮江里香さん...一言、お願いします」 

「はい...」江里香が、スクリーン・ボードの横で、胸にコブシを当てた。「私に、理解できるかど

うか分かりませんが、ともかく最先端科学ということで、ワクワクしています。どうぞ、よろしくお

願いします」

「まあ...」高杉が、にこやかに言った。「できるだけ、誰にも理解できるように、話しましょう...

  だから、分からない所は、遠慮なく質問してください...支折さんも、お願いします」

「はい、」支折が、うなづいた。

「はい、」江里香も、うなづいた。

 

  〔1〕 そもそも、 ニュートリノ  とは何か? wpeA.jpg (42909 バイト)  

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「まず、淡島さん...」支折が言った。「最初から...子供のような質問ですが...

  そもそも...ニュートリノというのは、どのような素粒子なのでしょうか。しばしば、ニュース

どで耳にするのですが、難しい科学の話なので、ひどく縁遠いように感じてしまいました。でも、

まさか...それを、私自身が説明の側に回るとは、考えてもいませんでした...」

「はい、そうですね...」淡島が、硬い表情で、ネクタイを指で押した。「ええと...

  まず...ごく基本的なことを、覚えて欲しいと思います。ニュートリノというのは...素粒子

しては... レプトン に属する、と覚えてください...」

「はい...」支折が、真剣な顔で、まばたきした。「ニュートリノは、レプトンに属するということで

すね...それで、レプトンというのは?」

レプトンというのは、ですねえ...

  ギリシア語の、“微細な”という意味に由来した言葉で...“強い相互作用をしない・・・ スピ

ン1/2の ・・・素粒子の総称”...になります。あ、スピンというのは、いずれ後で説明します」

「はい...」支折が、膝に両手を置いた。

「これらの...

  素粒子/レプトンは...具体的には... 電子 ... ミュー粒子 ... タウ粒子 ...そし

て、この“3種類の素粒子”に対応する...“3種類のニュートリノ”があるのです。

  すなわち... 電子・ニュートリノ ... ミュー・ニュートリノ ... タウ・ニュートリノ ...で

す。これらが、レプトン/・・・軽粒子ということになります...ここまでは、いいですか...?」

「ええと...」支折が、そっと髪に手をやった。「すると...レプトンというのは...“合計6種類”

なのでしょうか?」

「その通りです、」淡島が、強くうなづいた。「いいですか...

  電子ミュー粒子タウ粒子...これらは、順に質量が大きくなります。そして、それと、“対に

なる・・・ニュートリノ”があるわけですね。これらはカップルということになりますが...レプトン

これらの、“合計6種類”になります...」

「はい...

  電子と、電子・ニュートリノ...ミュー粒子と、ミュー・ニュートリノ...タウ粒子と、タウ・ニュー

トリノが...それぞれカップルということですね...それで、“合計6種類”...と?」

「そうです...

  これで...ニュートリノというものの位置づけと...ニュートリノ3種類あることが、分かった

と思います...ごく簡単な説明になりますが、」

「はい...」支折が、うなづいた。「つまり....

  ニュートリノ3種類ということですね。電子・ニュートリノと、ミュー・ニュートリノと、タウ・ニュー

トリノですよね...他には、存在しないのでしょうか?」

「ひとまずは...」淡島が、片手を握った。「そのように、理解してください...」

「うーん...はい、」

「さて、話は少し飛躍しますが...

  クォークというのも...“合計6種類”あるのです。クォークという素粒子も、聞いたことがあり

ますね?」

「はい...

  クォークという素粒子も、現代社会ではしばしば耳にする言葉ですわ。でも、正確な知識という

ものはありません。ただ、漠然と知っているだけですわ...」

「まあ、一般的にはそうですねえ...文化的に、知っている...ということでしょう」

「はい、」

クォークというのは、具体的には...

   アップ・クォーク ... ダウン・クォーク ... ストレンジ・クォーク ... チャー

ム・クォーク ... ボトム・クォーク ... トップ・クォーク ...の、“合計6種類”

なります。

  これらのクォークは... 1994年に、最後に残ったトップ・クォーク発見され、全て観測

れています。

  ちなみに...トップ・クォーク質量は、170GeV(ギガ・電子ボルト)前後と推定され...他のクォ

ークよりもはるかに巨大です...(Au)の原子と、ほぼ同じ質量だといいますねえ...これは、

余計な話ですが、まあ、小耳にはさんでおいてください...いずれ、役立つものです...」

「はい...トップ・クォーク質量は、特別に大きいということですね?」

「そうです...さて、このクォークとは、何かということですが...」

「はい...」

陽子 中性子 が...原子核を構成していることは...知っていますか?」

「はい...その程度は...」

「それじゃ、いいですか...

  この陽子は、実は...“2個のアップ・クォークと・・・1個のダウン・クォーク”...で構成されて

いるのです。一方、中性子は...“1個のアップ・クォークと・・・2個のダウン・クォーク”...で構

成されています。つまり、それぞれ3個のクォークで構成され、組み合わせは逆になります...」

「うーん...はい、」支折が、うなづいた。「陽子中性子は...クォーク集まって...できて

いるわけですかあ...」

「そうです...

  少し、細かな説明をしますと...陽子 “+1の電荷” を持っていますね。そして、中性子

 “±0の電荷” を持っていますので、電荷はありません。中性です。だから中性子と言います。

  さて、一方...アップ・クォークは、 +2/3の電荷”を持っています。そして、ダウン・クォー

は、“−1/3の電荷”を持っているこを、知っておいてください...」

「はい...プラスマイナスで、3分の1の単位の電荷をもっているわけですね...?」

「そうです...そこで、いいですか...

  陽子の...“2個のアップ・クォークと・・・1個のダウン・クォーク”...の電荷を合計すると、

 “+1の電荷” になるのです。これは、暗算してみると分かります...

   +2/3の電荷”×2個と、“−1/3の電荷”×1個で...“+4/3の電荷”“−1/3の

電荷”で...つまり陽子は、 “+3/3=+1の電荷” になるのです...

  中性子の場合も...“1個のアップ・クォークと・・・2個のダウン・クォーク”...の電荷を合計

すると、 “±0の電荷” になり...電気的には、中性になるわけです...」

「はい...よくできていますね、」

  淡島が、うなづいた。

まあ...」淡島が言った。「ここでは、話がややこしくなりますので...

  陽子中性子が、3個クォークで構成されていることを、知っておいて下さい。ニュートリノ

そうですが、クォークについても、これから時間をかけ、徐々に説明して行くことになります...」

「はい...よろしくお願いします」

               
                             wpeA.jpg (42909 バイト)


「そうそう...」淡島が、モニターを見ながら言った。「もう1つ付け加えておきましょう...

  クォークは、 1994年までに、“6種類/全部”が発見されていますが...レプトンの方は、

1998年に...タウ・ニュートリノ発見され、これも未発見のものは無くなりました。“6種類

/全部”が、発見されています...

  こうした成果は...現代/科学技術文明基盤となる、【素粒子の標準理論】が、“より確

かなものになった”...ということです。

  相対性理論量子論の、“ダブルスタンダードの時代”と言われますが...ここに至っては、

【素粒子の標準理論】を突き崩すのは、極めて難しいと考えられています...」

「はい...」支折が、口に手を当て、高杉の方を見た。

「最初から...」淡島が、頭に手を当てた。「ややこしい話になって、恐縮しています...」

「いえ...」支折が、口元を崩して見せた。「まだ、大丈夫ですわ、」

「そうですか...」淡島が、モニターをのぞいた。「それじゃあ...クォークについて、もう少し説

明しましょう...

  クォークというのは...実は、 ハドロン 構成要素なのです。ハドロンというのは、先ほど

の、レプトンに対する言葉です。ギリシア語の、“強い”という意味に由来しています。

  つまり、ハドロンとは...“強い相互作用をする・・・素粒子の総称”...ということになりま

す。このハドロンは、 バリオン (/ギリシア語で・・・重い) 中間子 に大別されますが...ややこしく

なりますので、説明はここまでにしましょう...」

「うーん...」支折が、腕組みをした。「つまり...

  これまで説明して来た、“6種類のクォーク”は、ハドロン構成要素ということになるわけです

ね...そして、レプトン“6種類”と...」

「そうですね...」淡島が、ネクタイを押した。

「うーん...」支折が、高杉を見て、白い歯を見せた。「さっそく、難しい話になって来たような、」

「はは...」高杉が、手を組んだ。「つまり...レプトンクォークも、“合計6種類”づつ、だという

うことでしょう」

「ともかく...」淡島が、困ったように、頭をそっと指で撫でた。「概略を、簡単に説明させてくださ

い。そうしないと、話が進みません」

「はい...」支折が、イタズラっぽく笑った。「少し、からかっただけですわ...お願いします」

「じゃ...」淡島が、ようやく緊張の取れた微笑を見せた。「いいですか...」

「はい...」支折が、親しみを込め、微笑を送った。

「これらの...

   レプトン/6種類 ・・・ クォーク/6種類 が・・・実は、 物質を作っている基本的単位

・・・いわゆる、 素粒子 ...だと、考えられているわけです...」

「あ...それだけ...なんですか?」

「そうです...」淡島が、うなづいた。「しかし、まだ、続きがあります...

  素粒子には...実は、2種類あるということです。1つは、今言った、 物質を構成している

素粒子 ・・・ フェルミ粒子 です。これには、レプトンと、クォークがあるわけですね。

  そして、もう1つは... 物質間の力を構成している素粒子 ・・・ ボーズ粒子 ...です」

「うーん...」支折が、大きくうなづいた。「はい...

  物質を構成している、 フェルミ粒子 と...その物質間の力を構成している、 ボーズ粒子

が、あるということですね...それでは、ボーズ粒子の方は...どのような素粒子があるので

しょうか?」

その前に...」淡島が、江里香の立っている、スクリーン・ボードの方を眺めた。「ええと、いい

ですか...このボードに表示してあるように...量子力学では...

  というものは・・・ 粒子の交換/粒子の介在を通して ・・・ 伝わる ・・・”...と、考え

ます...これは、湯川秀樹・博士の、中間子論/力は粒子の介在によって起こる現象と定義・・・を...

その出発点としています...」

「はい...」支折が言った。「日本で...初めてノーベル賞を受賞した論文ですね?」

「そうです...

  この中間子論が発表されたのは、第2次世界大戦前1935年です。もちろん、その当時

から、大きな注目を浴びましたが...これが、 1947年実験で検証され... 1949年(/

敗戦後4年目)に、日本で初の、ノーベル賞の受賞となりました。

  その時は、日本中湧き上がったと言いますね。敗戦後の、まさに打ちひしがれていた時代

に、大きな希望の灯になったと言われます...」

「はい...」支折が、自分の片腕をつかんだ。「今よりも、はるかにその衝撃は、大きかったので

しょうね、」

「そうだと、聞いています...さて、いいですか...

  その上での話ですが... 自然界/大宇宙 には・・・ 4種類の力が観測 、されています。

すなわち、“重力”“電磁気力”“弱い力”“強い力”、です...これらの、 力を介在する

粒子 が・・・つまり・・・ ボーズ粒子 なのです。

  すなわち...“重力”は、 重力子 (グラビトン/・・・まだ観測されていない)交換で...“電磁気力”は、

 光子 交換で...“弱い力”は、 ウイークボソン/W粒子、Z粒子 交換で...そして“強

い力”は、 グルーオン 交換で、説明されます。

  つまり、それぞれの...“粒子を介在とした・・・力学”、があるわけです。リンゴが落ちる

“重力”ですし...磁石“電磁気力”ですし...核爆弾“弱い力”です。そして、“強い力

核力”は、人類文明では、まだ利用には至っていません...」

「はい...」支折が、うなづいた。「うーん...そんなことに、なっていたんですかあ...」

「そうですね...

  ええ、これらの... 4つの力の相互作用 を引き起こす・・・ ボーズ粒子 は・・・ ゲージ粒

、とも言われます。そして、 ゲージ粒子 を扱う理論を...【ゲージ理論】...と呼びます」

「つまり...」支折が言った。「ええと...

  重力子と...光子と...ウイークボソンと...グルーオンの...4つボーズ粒子が、ゲー

ジ粒子...ということになるのかしら?」

「そうです...

  そして...重力をのぞく3つの力...< 電磁気力弱い力強い力 >を、統合的に

記述したものが...【素粒子の標準理論】、になるわけですね...

  重力子/グラビトンは...素粒子としては、まだ観測されていません。そして、この重力とい

うのが...いわゆる一般相対性理論(/重力理論)であり...ダブルスタンダードもう一方であ

り...非常に相性が悪いわけですねえ...」

「うーん...はい!」支折が、両手を握りしめた。それから、高杉の方を見た。


              
           


「ええと...」淡島が、モニターをスクロールした。「そうですねえ...

  “強い力”を介在するグルーオンという粒子は...もう少し、説明しておきましょうか...」

「はい、」支折が、体を乗り出した。

グルーオンというのは...

  簡単に言えば...ハドロンの内部...つまりクォークのレベルで...強い相互作用を伝播す

る...“スピン1”ボース粒子です。“質量は0”...“電荷は中性”です。このグルーオンは、

クォークを結びつけるのゴム紐のようなもので...単独では、なかなか、観測が難しいようです」

「はい...」

「それから、グルーオンは...

   色荷/カラーチャージ ・・・と呼ばれる・・・量子数”...を持ちます。そして、その違いに

よって...“合計8種類の・・・グルーオン”...が存在します」

「うーん...グルーオンは、“合計8種類”ですか...クォークは、6種類でしたのに...」

「ま、そういうことです...

  これは、強い力を記述する、【量子色力学(QCD)になるわけですね。これも、後で考察して行

くことになります。何もかも、一言で説明するのは、非常に難しい世界です。互いに関連していて、

その細部に、さらに深い構造が存在しているような領域ですから...」

「はい...」支折が、うなづいた。

「つまり...」高杉が、淡島の方に上体を寄せた。「グルーオンというのは...

  クォークを結びつけている“力”...ということになるわけですね?もちろん、それだけではな

く、もっと複雑なものかも知れませんが...」

「そうです...」淡島が、眼鏡を上へ押し上げた。「それから...

  グルーオングルーは、英語で(のり)のことです。まあ、でくっつけるよりは、よほど“強い

力”なのですが...これは、量子色力学の領域になります...」

「ふーむ...」高杉が言った。「私は...

  量子力学を、基礎から学んだわけではなく...単に、“参考文献”を読むだけですから...

い理解はありません...そういうわけですから、こちらの方も、ひとつ、よろしくお願いします」

「私も...」淡島が、口元に微笑を浮かべた。「先ほども言ったように...この分野が、専門とい

うわけではありません...したがって、間違った時は、後でキチンと訂正を入れます。そういうこ

とで、お願いします」

「そうですね...」高杉が、小さくうなづいた。「まあ...素人の方が、一般向けには理解しやす

いのかも知れませんねえ、」

「はい...」淡島が言った。「ええ...ついでに言っておきますと...

  クォークグルーオンは、 色荷/カラーチャージ ・・・と呼ばれる ・・・量子数”、を持ちま

すが...ニュートリノは、 風味/フレーバー ・・・と呼ばれる・・・ 3種類の型 を持ちます。

これが、つまり...“ニュートリノ振動の型”になります...」

「あ...」支折が、顔を輝かせた。「“ニュートリノ振動”ですか...ニュースなどで、何度か聞き

ました。それは、どういうものなのでしょうか?」

「それは...これから、考察して行くことにしましょう」

「はい!」

  高杉が、ゆっくりとうなずき、ミケの頭を撫でた。ミケが首をひねり、高杉の手の甲を舐めた。

 

  〔2〕  ニュートリノ・望遠鏡  とは!    wpeA.jpg (42909 バイト) 


      
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「ええ...」支折が言った。「いよいよ、ニュートリノ・望遠鏡ということですが...

  そもそも、そのニュートリノは...宇宙何処で発生し...どのような望遠鏡捕捉されるの

でしょうか?」

「そうですね...」高杉が言った。「まず...

  ニュートリノとは何か、そしてニュートリノ・望遠鏡とは何かを、説明して行きましょう。ええと、

まず...ニュートリノと、その発生源から、考察しましょうか...」

「はい、」

2002年度ノーベル物理学賞が...

  日本人/小柴昌俊さんと、アメリカ人/デイビス(Raymond Davis)授与されましたが...この

二人の受賞理由というのが...宇宙空間から飛来した、ニュートリノ検出したというものです。

  まず、デイビスの業績の方が古いですね... 1968年から予備実験を行い、 1970年

本観測をし、太陽からのニュートリノ観測しています。

  具体的には...アメリカ/サウスダコタ州/金鉱山の地下に、巨大な空洞をつくり...“615

トンの四塩化エチレンを満たし・・・平均で1日1個程度発生する・・・アルゴン...を観測

たようですねえ。

  この方法というのは、ポンテコルボたちのアイデアを、もとにしているそうです。つまり、塩素

の同位体が・・・ニュートリノと反応して発生する・・・アルゴンの同位体を回収”...そして、

アルゴンが再び崩壊するのを・・・係数管で係数する”...というもののようです。

  これは、太陽からのニュートリノ検出した、ということですね。地球以外起源をもつニュート

リノを、初めて検出したのだそうです」

「あ、すると...」支折が言った。「地球起源のニュートリノは...すでに観測されていたわけか

しら?」

「うーむ...

  地球内部起源のニュートリノは...平成 17 年/2005年に...“カムランド”(役目を終えた、

カミオカンデの跡地に造られた施設)が、世界で初めて観測に成功していますね。ニュートリノは、“地球深

部の情報を・・・直接伝える”ということで、今後、活発化して行くそうです」

地球深部の情報ですか...」

「そうです...

  同じように太陽深部の情報も、ニュートリノによって観測されて行くということです。ただ、ニュ

ートリノという素粒子が...初めて観測されたのは何時なのでしょうか...」

  高杉は、席を立って向こうへ歩いて行く淡島の後ろ姿を眺めた。

うーむ...調べておきましょう」

「はい...」支折が言った。「それで...小柴昌俊さんの、“カミオカンデ”の方は...?」

「ええと...こっちの方は、その時間が、非常に明確に記録されています...

  “1987年2月23日・・・午前7時35分35秒(世界標準時)から 〜 ”...大マゼラン星雲内で起

きた“超新星SN1987A”からのニュートリノを...“カミオカンデ”検出を開始しました。

  小柴昌俊さんは、これらの宇宙・ニュートリノの検出に対する、パイオニア的貢献が評価され

て、ノーベル賞を受賞したわけです」

「はい...」支折が、うなづいた。

「さて、“カミオカンデ”に関して言えば...

  故・戸塚洋二さんたちも、ノイズ(雑音)の低減心血を注いだことが知られていますねえ。そし

て、目標のノイズ・レベルに到達し、高感度観測開始されたわけですが、まさに、その2ヵ月後

に、 大マゼラン星雲内超新星爆発があったわけです。

  “1987年2月23日・・・午前7時35分35秒から 〜...そのニュートリノの風が、広大な

宇宙空間を渡って...地球/“カミオカンデ”に到達しました。ここから、“超新星SN1987A”

が、のように検出器に入ってきたわけです」

「うーん...“超新星SN1987A”ニュートリノを...“カミオカンデ”捕捉したわけですね」

「そうです...」高杉が、強くうなづいた。「まあ...“奇跡/・・・偶然”でしょう...

  “意味のある偶然の一致/・・・共時性(ユング心理学)...というヤツかも、知れません。この、

“大宇宙の中で・・・こんな偶然の一致は・・・まずない!”...と考えれば、そういうことになるで

しょう。

  物理学者が、どのように考えているかは、それぞれあると思いますが...私は、【人間原理

・ストーリイ】の...“リアリティーの・・・収束!”...のようなものが、あるのではないかと考

えています。

  この、“リアリティーの・・・収束!”の意味は...私は、まだその風景を把握していませんが、

量子力学“コペンハーゲン解釈”の...“重ね合わせ状態は実在せず・・・観測した時に

束の収縮で・・・物理的実体となる”...に由来しています。

  つまり、【人間原理空間・ストーリイ】の、“ストーリイの収束”です。これは、“現在ある・・・

この世の・・・最も難解な領域になります。まあ、これは、物理学を超えた領域のことですので、

直接は関係のない話です...」

「うーん...」支折が、細い腕を組んだ。「【人間原理空間】における...

  “人間原理・・・ストーリイの収束”ですか...“この世の最も難解な領域...ですか。ま

ず、時間が何者なのか定義できない状況では...それが揺れている状況では...全てが宙に

浮いていますよね、」

「うーむ、その通りです...

  今、また、時間の考察が活発化しているようですね...相対性理論で、時間と空間は相対化

し...時間も1つの次元として扱われ...4次元時空という概念が登場しました。しかし、量子

力学であつかう時間というのは...ニュートン力学の時間に近いわけですねえ...」

「はい...それが、一般相対性理論(/重力理論)量子力学の、“相性の悪さ”を生んでいるわけ

ですね?」

「そうです...“仲の悪い…夫婦のようだ”...ということですねえ...」

「ふふ...」支折が、口に手を当てた。

「まあ、話を戻しますが...

  “文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代が本格化して行けば...【人間原理空間・

ストーリイの・・・世界軸】のようなものも...見えてくるのかも知れません。それは、“この世の

・・・より本質的なもの・・・”に、近づくということでしょう...」

「はい...」支折が、うなづいた。

 

「ところで...」支折が言った。「高杉・塾長...

  “超新星SN1987A”があった大マゼラン星雲は、私たちの銀河系/天の川銀河とは別の、

遠い銀河系ということですよね。それは何処にあるのかしら...どの星座にあるのかしら?」

「いや...」高杉が、脚を組み上げた。「これは、すぐ近くにある銀河です...

  大マゼラン星雲は、天の川銀河に、最も近い銀河なのです...我々の天の川銀河系(Milky

Way)は、直径約10万光年渦巻型銀河ですが...大マゼラン星雲は、ここからわずか15万光

の距離に、小判鮫のように寄り添う小さな銀河です。

  大マゼラン星雲小マゼラン星雲とがありすが...あのマゼランが、世界1周の航海途上

発見したことから、この名があるようです。ちなみに、南半球の空に見える、不規則銀河というこ

とになります」

「うーん...すると、お隣さんなんですか?」

「まあ...お隣と言えば...

  230万光年の距離にある、アンドロメダ大星雲でしょう。肉眼で見ることができるのは、我々

の天の川/天の川銀河系をのぞけば...この大マゼラン星雲と、小マゼラン星雲...そして、

アンドロメダ大星雲だけだそうです...私は、直接確かめたことはないわけですが...」

「はい...

  アンドロメダ大星雲というのは、聞いたことがありますよね。脱線ついでに、どういうものか、教

えていただけるでしょうか?」

「私は...」高杉が、笑ってモニターをクリックした。「専門家ではありません。インターネットで見

てみましょう...」

「あ...」支折が、笑みを作った。「お願いします...」 

「ああ...これですね...

  アンドロメダ銀河/M31.../NGC224.../渦巻銀河.../直径22〜26万光年...

ということですねえ...直径にして、我々の天の川銀河2倍を超える大銀河ですね...いや、

これほど大きいとは、私も思ってはいなかったですねえ。2倍ぐらいとは、思っていましたが、」

「そうですね...」

「若い頃から...

  我々の銀河よりも大きいとか、それから2倍もあるとかの知識がありました...そのままだっ

たわけですねえ。

  ええと...アンドロメダ銀河さんかく座銀河天の川銀河...そして大マゼラン銀河小マ

ゼラン銀河で、“局部銀河群”を構成していますね...

  うーむ...近傍銀河系や、銀河団の様相というものも...最近は、相当に詳しく研究され

ているようですねえ。太陽系周辺恒星系も、その惑星の有無まで調べられているようですね。

  もし、惑星系が存在し、水のスペクトル観測されるようだと、地球型生命も、考えられるわけ

です...」

「はい...」支折が、うなづいた。「いずれは...そうした惑星が、天文学的観測されることが

あるのでしょうか?」

「うーむ...

  真剣に考えたことは、あまりないわけですが...私は、知的生命体は、他にも存在している

と...まあ、漠然と考えています...」 

「うーん...そういうものなのでしょうか...」

「まあ...夢として、残しておきましょうか、」

「はい...ええと、話を戻しましょうか?」

 

「そうですね...

  ともかく...カミオカンデ”は、その大マゼラン星雲の中の、超新星爆発ニュートリノを、

ラッキー捕捉したということです。超新星爆発では、放出される全エネルギー99%は、ニュ

ートリノと考えられています」

全エネルギーの...99%ですか?」

現在の理論では、そう考えられているようです...

  ともかく...大気上層で生み出されるニュートリノ観測からは...【素粒子の標準理論】

によると...“ニュートリノの質量はゼロ”とされていました。しかし、この“超新星SN1987A”

観測で...“質量を持つ”という、兆候をつかんだわけです。

  実際に...“ニュートリノには・・・質量がある!”ということは...後継の、“スーパー・カミ

オカンデ”が...確定的なデータを提供する、ということになったわけですが、」

「はい...」支折が、うなづいた。

「ええ...いいですか...

  ともかく...宇宙空間でのニュートリノ発生源は...まず太陽や、超新星爆発確認され

たということです。そして、それを検出したのが...巨大な地下空洞の、“615トンの・・・四塩化

エチレン”や、“カミオカンデ”の、“3000トンの・・・超純水タンク”ということですね」

「すると...」支折が言った。「ニュートリノ・望遠鏡というのは...その...」

「そうです...

  “615トンの・・・四塩化エチレン”や...“3000トンの・・・超純水を蓄タンク”...ということで

すね」

「うーん...それが、つまり...望遠鏡なのでしょうか?」

「そうです...

  それと、検出器合体したものが、ニュートリノ・望遠鏡ということです。ニュートリノは、地球

さえも貫通してしまう、幽霊のような素粒子です。いわゆる従来型の、筒型可視光・望遠鏡

は、だいぶイメージが違ってきます」

「うーん...そうですか...」


 
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「ええ...」高杉が言った。「具体的なニュートリノ・望遠鏡の話の前に、もう少しだけ、説明して

おきましょう」

「はい...」支折が、耳の後ろに髪をなで上げた。

大量のニュートリノが...

  太陽超新星爆発からやって来ることを話しましたが...それを捕捉するメカニズムとは、ど

のようなものか、ということですね」

「はい...」支折が言った。

「さて...いいですか...

  ニュートリノが、原子核衝突すると...電子や、ミュー粒子タウ粒子などの...荷電粒子

放出されます...そして、これらの荷電粒子が出す、可視光電波観測することで...私

たちは、ニュートリノの存在を...“間接的に知る”ことができるわけです...」

「うーん...

  私たちが...“ニュートリノの存在を・・・感知する”...といういうのは、そのように、“間接的

に知る”...ということなのですね?」

「そうです...

  人間の5感/視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚は...ニュートリノを感知するようには出来ていま

せん。これは、電波赤外線紫外線X線もそうですから、初めてというわけではありません。

こうしたものは全て、視覚/可視光の機器類や、人間の聴覚レベル変換されるわけです。

  つまり、“直接見る”ことはできないわけですが...電子や、ミュー粒子や、タウ粒子などの

電粒子が放出され...それらの荷電粒子が出す...可視光電波観測することで、ニュート

リノの存在を知ることができるわけです。まあ、全て肉眼で見えるものに、変換するわけですね」

「うーん...

  電子や、ミュー粒子や、タウ粒子というのは...先ほど話したレプトンですよね。そして、電子

・ニュートリノミュー・ニュートリノタウ・ニュートリノが、これらと対になり...“6種類のレプトン”

が...全部そろうわけですね?」

「そうです...

  しかし、いいですか...ニュートリノ原子核衝突するこのような反応というのは...実際

には、ごく稀にしか起こらないのです。そこで、ある程度の量ニュートリノを検出するには、

量の物質監視する必要があるのです」

「うーん、そうですかあ...

  地球を、風のように突き抜けて行ってしまうわけですね。そのうちの、ごくわずかな、原子核

衝突したニュートリノの影を...“何とか・・・間接的に・・・検出する”...ということですよね?」

「その通りです...

  その、ニュートリノ反応する標的物質には、水/Hが選ばれることが多いようですね。こ

れは、個体の形態をとる氷でもいいわけですが...密度比較的高く...それから、透明

である...という理由から選ばれるようです...

  密度が高いと衝突回数が増え...また、透明だと放出された光が見える...ということから

だそうです。だから、“アイス・キューブ”(/2011年、南極点に完成予定のニュートリノ望遠鏡)のように、

極点膨大な厚い氷も利用できるわけです。

  まあ、こういうことも考えれば...この水の惑星と言われる地球表面領域には、膨大な量の

があるということですね...これも、水が選ばれる理由の1つでしょう」

「はい...」支折が、うなづいた。「だから...

  “カミオカンデ”では...“3000トンの・・・超純水を蓄えたタンク”、だったわけですね?」

「そういうことです」

「塾長...」支折が、両肘をつき、体をのり出した。「“超純水”というのは、どんな水なのでしょう

か?」

“超純水”は...“不純物を極限まで除去した水”...ですね」

きれいな水...ということかしら?」

「そうです...これは、言ってみれば、望遠鏡レンズ反射鏡を磨くようなものです」

「はい、」

「さて、いいですか...

  ニュートリノが...水の原子核衝突すると...電子(荷電粒子)放出されるわけですが...

この時に...高速で移動する電子”から...“光/・・・チェレンコフ光が...“超純水/

3000トンの中に・・・放射状に放出される”...という現象が起こるわけです。

  この“かすかな光”を...タンクの壁セットした、光電子増倍管/直径50センチ/・・・

1000個”によって捕捉するのが...“カミオカンデ”...というわけです。ご存じのように、こ

れは岐阜県/神岡鉱山/地下1000メートルにあった...ニュートリノ・観測施設です...」

「はい...」支折が、江里香がスクリーン・ボード映し出している、神岡鉱山の概略地図を眺め

た。

  江里香が、“カミオカンデ”の作業風景を拡大した。

「つまり...」高杉も、スクリーン・ボードの方を眺めながら言った。「この時...

 不純物などで少しでも汚れていると、非常にまずいわけですね。レンズ反射鏡が汚れ

ているのと同じです...チェレンコフ光の・・・微弱な光”...が、“光電子増倍管”まで届かな

くなってしまうわけです。そのために、不純物を極限まで除去した“超純水”が必要なのです」

「うーん...」支折が、肩を揺らした。「つまり...

  “カミオカンデ”も...ニュートリノ・望遠鏡1つ...ということになるのでしょうか?」

「もちろんです...

  “カミオカンデ”も...ニュートリノ・望遠鏡1つになります。しかし、1996年に、“スーパー

・カミオカンデ”稼動したことにより、その役目はすでに、終了しています。

  現在は、その跡地に、“カムランド”が建設され... 2002年1月23日より、稼動を始めて

いるようです」

“カムランド”...ですか?」

「そうです...

  “カミオカンデ”は、東京大学/宇宙線研究所のものでしたが...“カムランド”は、東北大

ニュートリノ検出器です。これは、“宇宙における・・・物質と反物質の・・・アンバランス

の謎を探る”...というものだそうです。

  ええと...“カムランド”に言及したからには...同じ地下1000mの空洞にある...大阪

大学の、“キャンドル”も紹介しなくてはならないでしょう。こちらの方も、“狙いは同じ”ということ

ですが、“実験方法はまるで違う”ということです」

  高杉が、ゆっくりとスクリーン・ボードの説明を読んだ。支折も、それにならって、地図の詳細を

眺めていた。淡島・准教授は席を立っていて、ポン助の横で冷たい水を飲んでいた。

「ええ...」高杉が言った。「まだ...

  この神岡鉱山の地下には...“宇宙を漂う・・・正体不明の暗黒物質、をとらえるために、

東京大学/宇宙線研究所“エックスマス”や...京都大学グループ“ニューエイジ”など、

様々にあるようです。これらについては、別の機会に説明することにしましょう」

「はい。今回は、ニュートリノ・望遠鏡だけ、ということですね」

「そうです」

稼働中/建設中の・・・  ニュートリノ・望遠鏡!    wpe8B.jpg (16795 バイト) 

       wpe4F.jpg (12230 バイト)           


「ええ...」高杉が言った。「まず...

  現在稼働している...有力ニュートリノ・望遠鏡は...次のようなものです...」

 

******** *********************************************************  

 

@  スーパー・カミオカンデ

 場所 :  岐阜県/飛騨市/神岡町

 観測装置の規模 :  5万 (立方メートル)

 稼働期間:  1996年 〜

 角度分解能 :  26度 

             1度 (/南極点のアイスキューブでとらえるような、高エネルギーのニュー                       

                      トリノ に対しては...角度分解能は1度                   

 ≪概要≫

「同じ神岡鉱山にある、“カミオカンデ”後継機です...

  5万トン/5万㎥“超純水”のを蓄えたタンクと、内部に設置した1万1200

光電子倍増管からなり、“カミオカンデ”よりも性能が大幅に上がっていま

す。

  現在、“スーパー・カミオカンデ”の規模を、さらに20倍に拡張した、“ハイ

パー・カミオカンデ”の建設が、提案されています。後で詳しく考察します...」

 

A  ピエール・オージェ観測所

 場所 :  アルゼンチン/メンドーサの南

 観測装置の規模 :  3万K (キロ立方メートル) (/望遠鏡の範囲

               2万 (立方メートル) /地上検出器

 稼働期間:  2004年 〜

 角度分解能 :  0.5 〜 2度

 エネルギー範囲 :  10の17乗 〜 10の21乗eV (電子ボルト)

 ≪概要≫

宇宙線検出を目的とした観測所ですが、1600個の小型の水タンクで、

エネルギーのニュートリノを観測しています。さらに、紫外線望遠鏡で、大気中

粒子衝突を探しています...」

 

B  アニータ (ANITA)

 場所 :   南極/マクマード基地

 観測装置の規模 :  100万K (キロ立方メートル)

 飛行期間:   2006 〜 2007年 / 2008 〜 2009年

 角度分解能 :  1 〜 2度

 エネルギー範囲 :  10の17乗 〜 10の21乗eV (電子ボルト)

 ≪概要≫

南極大陸上空に...気球1ヶ月間飛ばし...電波を使って氷床に衝突し

た、高エネルギー・ニュートリノを探す...というものです」

 

C  アンタレス (ANTARES)

 場所 :   フランス/マルセイユ付近の地中海

 観測装置の規模 : 5000万 (立方メートル)

 稼働期間:  2008年 〜

 角度分解能 :  0.3度

 エネルギー範囲 :  10の13乗 〜 10の16乗eV (電子ボルト)

 ≪概要≫

光検出器を...数珠つなぎにしたケーブル12本を海底に垂らし...海中の

ニュートリノ衝突を探す。

  2011年から2015年着工を目指して、計画が進められている、1キロ立

メートル級のニュートリノ望遠鏡/KM3Net準備プロジェクトの1つ...

ということです」

 

D  アイス・キューブ (IceCube)

 場所 :  南極点

 観測装置の規模 :  1K (キロ立方メートル)

 完成予定:  2011年 〜

 角度分解能 :  1 〜 2度

 エネルギー範囲 :  10の11乗 〜 10の21乗eV (電子ボルト)

 ≪概要≫

南極点の氷に...温水を使って深さ2500mの穴を開け、氷の中に“検出

(/1部は電波用アンテナ)を数珠つなぎにしたケーブル86本をたらし...その

まま凍らせています。

  かつて運用されていた...実験施設/アマンダ(AMANDA)を、発展させた

ものということです。

  この、建設中の“アイス・キューブ”で...“参考文献”の48ページに...

2008年4月〜2009年5月にかけて観測した、ニュートリノ全天観測図

掲載されています。これはまだ、完全な観測図ではありません...

  “アイス・キューブ”が完成すれば、全天ニュートリノ発生源を特定

きるはずだ...ということです。

  超高エネルギー・ニュートリノを除いては、ニュートリノにとっては地球はほ

ぼ透明で、風のように貫通してします。

  したがって...“アイス・キューブ”は、南極点/・・・南半球の空と、地球

の裏側/北半球の空の、両方を観測できるわけです。これはニュートリノの

特性ですので、他の観測装置でも同じです...」

 

E  ユーソ (EUSO)

 場所 :  国際宇宙ステーション

 観測装置の規模 :  大気100万K (キロ立方メートル/氷・・・1000K㎥ に相当                  

 完成予定:  2015年 〜

 角度分解能 :  1 〜 2度

 エネルギー範囲 :  10の19乗 〜 10の21乗eV (電子ボルト)

 ≪概要≫  

国際宇宙ステーション/日本の実験棟/“きぼう”に...設置予定の...

紫外線・望遠鏡です。地球大気を観測して、荷電粒子飛跡を検出します」

 

  ******** *********************************************************


「ええ...」高杉が言った。「この6つが...

  現在から近い将来の...ニュートリノ・望遠鏡ということになるでしょうか。それと、ここにはあ

りませんが、“スーパー・カミオカンデ”の規模をさらに20倍に拡張した、後継“ハイパー・カ

ミオカンデ”が、提案されています。これは、後で詳しく考察します」

「はい...」支折が、うなづいた。「紫外線・望遠鏡というのも、含まれるわけですね...これは、

どういうものなのでしょうか?」

「うーむ...

  ここの説明からでは、良く分からないですねえ...まあ、言葉のとおり、紫外線・望遠鏡と受け

取って置きましょう。そのうちに、詳しい説明もあるでしょう。ただ、私の知っている知識では...

  紫外線大部分は、地球大気圏で吸収されます。そのために紫外線・望遠鏡は、地上に設置

してもあまり役に立ちません。つまり、大気圏外宇宙空間に置く必要があるのです。そのため

に、国際宇宙ステーションに、設置予定ということなのでしょう。

  現在、他にも、紫外線・天文衛星紫外線・観測衛星と呼ぶものは、すでに運用されています」

「はい...」

  〔3〕  ニュートリノ で・・・ 宇宙を見る!             wpeA.jpg (42909 バイト)

     wpe4F.jpg (12230 バイト)         


「ええ...」高杉が、淡島の方を見て言った。「100年前に...

  宇宙を探索するために、大型・光学望遠鏡が、次々と建造され始めました。そして、100年後

21世紀・初頭の現在...天文学者素粒子物理学者と共に、巨大なニュートリノ・望遠鏡

建造を、次々と進めています。人類はまた、新しいタイプの望遠鏡を手に入れたわけです。

  まあ...他にも、様々な観測装置が目白押しですが...重力波望遠鏡というのも、光学望遠

とも、ニュートリノ・望遠鏡とも違う、ユニークなものです。重力波/重力子(グラビトン)というもの

も、まだ人類によっては観測はされていないわけですが...それも近いのでしょうか...」

「うーむ...」淡島が、口を手で押さえた。「そうですねえ...

  重力波/重力子は...まだ観測はされていないわけです。しかし、日本では、国立天文台/

三鷹キャンパスに設置されている、“重力波望遠鏡/TAMA300”があります。これは、局部

銀河群内における超新星爆発等現象が起これば、重力波を捉えられると期待されています。

  つまり...“カミオカンデ”が捕捉した、大マゼラン星雲内の、“超新星SN1987A”のような

現象ですね。“TAMA300”は、2001年頃建造されていたわけですから、1987年“超新

星SN1987A”には、間に合わなかったわけですねえ...」

「もし...」高杉が言った。「“超新星SN1987A”に、間に合っていれば...ニュートリノと同時

に、重力波/重力子(グラビトン)が、日本最初に捕捉されていたのでしょうか?」

「さあ...」淡島の、あまり笑わない顔が、愛嬌のある笑いを見せた。「そうですねえ...

  奇跡的な出来事が、それほど重なるとは思えません。しかし、“TAMA300”が、もし完成し

ていたらということでしたら、そういうこともあったのかも知れません。しかし、それは無かったわ

けですね」

「うーむ...」高杉が、腕組みをした。「そういうことですねえ...」

「まあ...

  そう言っているわけですから、もし完成していたら、そうなのでしょう...ちなみに、“TAMA

300”は、現在稼動している中では、一番精密重力波望遠鏡ということです。他の重力波望

遠鏡較正等で、世界的な連携が行われているようです」

「はい...」支折が、コクリとうなづいた。

                                      <詳しくは、こちらへどうぞ・・・重力波望遠鏡>    

「ええと...」淡島が、モニターを眺めた。「そうですねえ...

  アメリカでは...“重力波望遠鏡/L IGO”観測を開始しています。これは、乙女(おとめ)

銀河団において、超新星爆発等現象が起これば、重力波捕捉できると期待されています。

  ヨーロッパ“重力波望遠鏡/VIRGO”も...同様に...7000万光年の距離の、乙女座

銀河団まで、観測できるようです」

「はい...」支折が、大きくうなづいた。「重力波望遠鏡は、すでに稼働しているわけですね?」

「そうです...」淡島が、支折にうなづいた。「検出はまだですが、すでに稼働しています...

  世界ではすでに、幾つかの大型・重力波望遠鏡稼働していますが...日本でも、東京大学

/宇宙線研究所国立天文台と、高エネルギー加速器研究機構との共同)で、“大型・低温重力波望

遠鏡/LCGT”の、建設計画が進んでいます。これも、神岡鉱山に設置される予定ですね...」

「うーむ...」高杉が、うなった。「これも...神岡鉱山トンネルですか...

  神岡鉱山は...ますます、日本素粒子物理学メッカ(イスラム教の第1の聖地・・・ある物事の発祥地、

中心地)のようになって行きますねえ...」

「そのようですね...モグラ族メッカのようです」

「うーむ...機会があれば、行ってみたいとは思いませんか?」

「まあ...」淡島が、首を振った。「一般の野次馬は、入れないでしょう」

「近くまでなら...行けるのでしょうか?」

「さあ...神岡町へ入るのまでは、制限はないでしょう...普通の国内ですから、」

「そうですね...はは...」

「でも...」支折が言った。「トンネルへ入ってみても...素粒子が相手では、結局、何も分から

ないですよね?」

「その通りです...

  門外漢には、猫に小判のようなものです。ただ...と...地下鉱山岩盤空気...そし

て、静寂があるだけでしょう。あとは、学問的探求/真理の探究情熱でしょうか...門外漢が、

野次馬で見物するような場所ではないでしょうね、」

「うーん...

  でも...ノーベル賞級優秀な頭脳と...それを取り巻く...現代科学超精密テクノロジ

が、集中している所ですよね、」

「まあ...」淡島が、うなづいた。「そういうことですね...

  私はもちろん、行ったことはないのですが...年中地下トンネルの中で...工事をやってい

る所かも知れませんねえ...

  工事の振動は、実験には影響の無いようにやっているのでしょうが、それにしても、いつも何

か、奇妙に装置を建造している場所です。

  建設機材の搬入や、安定した電源も必要でしょうし...研究をバックアップする民間企業

出先機関も必要でしょう。研究以外の、そうしたバックアップ体制が、しだいに完備して来ていの

でしょうねえ...」

「うーん...」支折が言った。「そうですよね...メッカなら、1度は行ってみたい、ですよね?」

「はは...だから...行ってみても、何もない所でしょう」

「そうでした、」

   

「さて...」高杉が言った。「話を進めましょう...

  先ほど紹介したような、ニュートリノ・望遠鏡では...すでに、何万個ものニュートリノ捕捉

ていると言います。そして、そこから得られた情報から...“ニュートリノを通じて見える・・・太

陽の姿”を、描き出しているということです」

「あの...」支折が言った。「今まで検出したのは...何万個/単位・・・程度の・・・ニュート

リノ”...なのでしょうか?」

「うーむ...そのようですねえ...

  光学望遠鏡捕捉する光子の総量と比較すれば、非常にわずかな数量でしょう。その他は、

全て、“風のように・・・地球を貫通してしまう”、ということでしょうねえ。

  そして...“ごく稀に引っかかり・・・衝突した電子の方の運動の・・・微弱なチェレンコフ

...を“光電子倍増管”でキャッチして、カウントするわけです。つまり、それは...“非常に

貴重な・・・1個のニュートリノ”...の検出なのでしょう」

「うーん...そうしたニュートリノの合計が、ようやく何万個/単位ということなのですね?」

「そのようですね...

  “参考文献”からは、それ以上のことは分かりません。それから、現時点では、太陽以外の発

生源から飛来する宇宙・ニュートリノと...地球上層大気中で生成された大気ニュートリノを、

見分けることは難しいそうです...」

「あら...そうなんですか?」

「まだ...

  その程度の段階だということでしょう。しかし、来年/2011年には、その区別も可能になるよ

うです」

「ええと...」支折が、ニュートリノ・望遠鏡の一覧を見た。「2011年というと...南極点の、“ア

イス・キューブ(IceCube)”が...完成しますね?」

「そうです...」高杉が、うなづいた。「ええと、いいですか...

  “アイス・キューブ”はまだ未完成ですが、2008年4月から、2009年5月にかけた全天観測

で、2万個近くニュートリノを記録しています。これは、宇宙・ニュートリノ大気ニュートリノ

していませんが、完成すれば...“ニュートリノの・・・発生源を特定できる”、と言います」

「はい...」

「そうなると...

  さらに、新発見が続々と出て来ることになると言います。かつての光学望遠鏡のように、天体

観測重要な手段になって行くというわけです。ニュートリノ・望遠鏡は... 電磁波 では見

えない世界を・・・私たちに見せてくれる”...ことになりそうです」

「ええと...も、電波望遠鏡なども...ですね、」

「そうです...」高杉が、うなづいた。「も、電磁波です...

  電磁波というのは...電波可視光X線ガンマ線など...光速で進む波総称です。

と呼んでいるのは、このうちの赤外線 〜 紫外線の範囲になりますね。波長が...数ナノ・メー

トル〜1000ナノ・メートルほどの範囲になります」

「はい、」支折が、コクリとうなづき、頬に手を当てた。「可視光/目に見える光となると、それより

も、もう少し狭くなるわけですね、」

「そうです...赤外線紫外線をのぞいて...波長が、380ナノ・メートル〜800ナノ・メートル

程度になります」

「はい、」

                     wpeA.jpg (42909 バイト)   


「ええ...」高杉が言った。「ニュートリノは...

  では見えない世界を、私たちに見せてくれます。それは、どういうことか、ということですね。

いいですか...太陽観測しても...見えるのはごく表層です。ガス体最上層部の、わ

ずか数百キロメートルでしょう。

  しかし、太陽はご存じのように、太陽コアの中の、核融合反応で輝いているわけです。そこを、

のぞいてみたいと思っても、その太陽光の本体は、太陽表面に到達するまでには、ずいぶんと

時間がかるのです。

  核融合反応から発せられたは...渦巻く厚いガス層で、吸収と再放出の過程を、数え切れ

ないほどくり返します。そして、表面近くから出た光だけが、邪魔されずに、真空の宇宙空間

出て来ることになるのです。が、それでは、太陽核融合炉を、のぞいたことにはなりません」

「はい...」

「また...

  表面の黒点(周囲より、1000度〜1500度ほど低温)活動や、プロミネンス(紅炎/10万キロメートルの高さに及

ぶ)や、フレアー(太陽大気中に生ずる、短時間の明るい閃光)が...時には太陽風(太陽のコロナから放出される光

速度のプラズマ流)の嵐になって、地球の磁気圏に衝突したり...また、“太陽系の果て”の、“終端

衝撃波(太陽風が星間ガスとぶつかっている境界)にまで到達します。

  この“終端衝撃波”が...“太陽と物質的につながる・・・最終地点”になります。27年前に打

ち上げられた、NASA(アメリカ航空宇宙局)“太陽系探査機・ボイジャー1号”は、現在、この領

域...太陽から140億km(太陽と地球間の90倍以上/2010年5月6日現在・・・約169億km飛行中です。

  ちなみに...日本/宇宙航空開発機構=JAXA“小惑星探査機・はやぶさ”は...60

億キロ/7年の長旅の末...数カ月前/2010年6月13日に...地球に帰還しています。こ

れも、太陽系・航海史に残る、快挙ですね...」

「はい...」支折が、大きくうなづいた。「あれは...本当に、感動しました...」

「まあ...

  あのような壮大なドラマは、作ろうと思って作れるものではありません。最近では、そういう話

が、少なくなってしまいましたねえ...」

「高杉さん...“ボイジャー”は、2号もありましたよね。2号の方は、どうなったのでしょうか?」

「ああ...そうそう...

  2号の方は...最近、送信されてくるデータに、異常が生じていると発表がありましたねえ。

地球から最も遠い所にある人工物は、169億キロメートル“ボイジャー1号”ですが...“ボイ

ジャー2号”も、138億キロメートルの位置にあります。2番目に遠い所にある人工物です...」

異常、というと?」

「うーむ...詳しくは分かりませんが...

  探査機の動作基本的に正常だそうです。ただ、観測データフォーマットするためのシステ

異常があるようですね。

  地球から、電波が届くのに13時間かかると言いますが...異常のあるメモリリセットするか、

障害のあるハードウェア使用を停止にするとかの、対応がとられるようですね...」

「心配ですね...」

 「そうですねえ...

  ええと、ついでに言いますと...そうした“太陽系の果て”まで行くと...太陽光が弱すぎて、

太陽電池は働かないそうです。“ボイジャー”は、搭載した原子力電池によって、細々と観測を続

けているようです。しかし、この原子力電池寿命も、2020年までとのことです...」

「すると...地球/NASAとの通信も...切れてしまうわけですか?」

「そういうことです...

  この頃になると...太陽からの距離200億キロメートルを越え...“ボイジャー1号”は、

陽系外/星間空間を...たった1機で、孤独な旅をして行くことになります...」

「はい...」支折が、大きくうなづいた。「...壮大なロマンですね...」

「そうですね...さて、話を戻しますか、」

「はい、」

                    


「ええ...」高杉が、脚を組み上げ、モニターをのぞいた。「では...

   太陽のほんの表面しか知ることができませんが、ニュートリノ捕捉すれば、太陽中心部

核融合炉を、直接見ることができるわけです...ここは、当然ながら、太陽最も熱い場所であ

り、太陽体積の約1%を占めているそうです。

  この核融合・反応生成されたニュートリノは、太陽から常時放出されています。そして、

ようにグズグズしていることはなく、まるで空っぽの空間を進むように、太陽の外層を突き抜けま

す。“生成された太陽中心部の・・・何らかの情報を帯び”、一気に突き抜けて来るわけです」

「うーん...“何らかの情報”を...本当に持っているのでしょうか?」

「そこで、生成されたわけですから、必ずあるわけです。もし、仮に、何もないというのであれば、

それもまた、情報なのです...」

「あ...はい、」

「それから...

  ニュートリノ・望遠鏡は他に...“超新星爆発”や...“ガンマ線バースト”...それから“超

大質量ブラックホールの周りで渦巻く円盤”などの...奥深くを...私たちに見せてくれるだろ

う、と期待されています...」

「はい、」

 

「ええ...」淡島が、口を開いた。「現在建設中ニュートリノ・望遠鏡が完成すれば...

  我々の天の川銀河に近い50ほどの銀河で...確率的に、1年に1個程度ある超新星爆発

が、観測されるかも知れないと言われています。また、年間数百回ほど起こっている、ガンマ

線バースト幾つかも、観測できる可能性があるようです...楽しみです...」

「うーん...そうですか、」支折が、スクリーン・ボードの横の江里香を見た。

  江里香が、そのガンマ線バーストの画像を、ボードに表示していた。

「それから...」淡島も、ボードを見ながら言った。「これまで、気づかなかった...

  いわゆる、“特殊な天体”も、発見される可能性があるといいます。しかし、他の観測機材もそ

うですが、ニュートリノ・望遠鏡の場合も、使いこなすまでには、“慣れ”というものが必要なようで

すね、」

「うーん...技術開発や、理論的解明の他に...科学でも、“慣れ”が必要ということかしら?」

「そうらしいですね...

  どんな機械道具や...それから、自動車飛行機などでもそうですが...それを使いこな

すにはテクニックが必要だということでしょう。

  ニュートリノ・望遠鏡では、天文学者素粒子物理学者は...“これまでにない・・・新たな

手法”で...研究対象に、迫る必要があるということです」

「はい...そういうものを...これから、本格的に構築して行くということでしょうか?」

「そうらしいですねえ...

  私たちには、第一線の現場のことは良く分からないわけですが...これから、ニュートリノ・望

遠鏡本格的に展開して行くことを考えれば、そういうことかも知れません。

  外科手術などでも、“神の手”などと呼ばれる超ベテラン医師もいれば...新米医師もいる

わけです...肩書は、みんな医師ですがね...」

「うーん...そう言われれば...道具や機械を、使いこなす必要があるわけですね...」

「そういうことです、」淡島が、うなづいた。

  〔4〕 非・社交的粒子・・・ ニュートリノ の姿! 

     wpe4F.jpg (12230 バイト)             


「さて...」高杉が、脚を組み上げた。「素粒子物理学から見ると...ニュートリノは、電子に似

ていると言いますねえ...」

電子...ですか?」支折が、体を乗り出して、聞き返した。

「そうです...

  ただし...電荷を持たない電子です...電荷を持たないにニュートリノには...私たちの

常生活大きな影響力を持つ、“電磁力”というものが働かないのです」

「すると...どうなるのかしら?」

「これは...

  意外と思うかもしれませんが...私たちが椅子に座る時...ストン、と椅子を通りぬけ

てしまわないのは、電気的“斥力(せきりょく)が働くためだと言います。斥力というのは、同種

電気相互間同種磁気相互間に働く、反発力ですね。

  そうした斥力...電磁力が働かなかったら、体はニュートリノのように、ストン、と突き抜けてし

まうという話です」

「うーん...質量が、質量を受け止めているのでは...ないのでしょうか?」

感覚としては、そうですね...

  しかし、いいですか...原子や、分子というものは...私たちが日常的/感覚的に考えてい

るよりも、素粒子的には、はるかにスカスカなものだということでしょう。

  原子は...原子核の周りを電子が回っている、スカスカな状態です。そのスカスカな状態では

なくなったものが、いわゆる中性子星です。中性子物質は、1立方センチメートル/角砂糖1個

以下で、10億トンもあると言います」

「うーん...中性子物質なら...ストン...と、椅子を通りぬけることもないわけですね?」

「そうですねえ...

  ニュートリノのような、非社交的な粒子でも...これだけ密度が高く、質量が押し詰まっていれ

ば、超純水を突き抜けるようなわけにはいかないでしょう。しかし問題は、“電磁力”というものが

働かないということです」

「でも...物質は、そんなにスカスカなのでしょうか?」

「まあ...

  原子太陽系と考えれば...原子核太陽惑星電子ですね。残りは、膨大な太陽系空

になるわけです。このモデルを使えば、ニュートリノ電子衝突しるのは、ごく稀なことが分

かるでしょう。ほとんどは、膨大太陽系空間を抜けて行きます」

「はい...」

「ええと...」高杉が、顎に手を当てた。「そうですねえ...

  これは、太陽風プラズマ風圧も同じことですねえ...プラズマというのは、電離した物質

の、正イオン電子(/負イオン)が混在している状態ですが...これが、もし荷電粒子でなかった

ら、電磁力が働かにかったら...ニュートリノのように貫通し、風圧にはならないでしょう。

  もし、こうした状態だとしたら...“小惑星探査機・はやぶさ”も、地球には帰還できなかった

はずです。いや、第一...荷電粒でなけれは、推進力を生まないで、“はやぶさのイオン・ロ

ケット”も...そもそも、推進力を生まないということになります」

「ふーん...」支折が、腕組みをした。「そういうものなんですか...

  イオン(/正電荷及び負電荷を帯びた粒子)だから...まとわりついた電磁力で...推進力が出るわけ

ですね?」

「まあ、そうだと思います...」高杉が、淡島の方を見た。「私は、工学博士ではないので...」

「ええと...」淡島が言った。「いいですか...

  化学反応では...原子電子交換したり、共有したりしていますね...また、物質光を

吸収したり、光を反射する時は...“荷電粒子は・・・振動する電磁場と・・・相互作用”、をしてい

るわけです。

  ところが...電荷を持たず、電気的に中性ニュートリノは...“個体を完全に素通りし・・・

原子物理学分子物理学は・・・何の役割も果たさず・・・ほとんど見えない粒子...のよ

うな存在になっているわけです」

「うーん...」支折が、腕組みをし、体をよじった。

    

「さて...」高杉が、モニターを眺めて言った。「既知のニュートリノ...

  つまり、電子・ニュートリノミュー・ニュートリノタウ・ニュートリノですが...これらには、自然

で観測されている4つの力のうち...弱い力=弱い相互作用の力・・・のみが働く...と

いうことのようですねえ」

「うーん...」支折が、耳の後ろに手をやった。「すると...

  “電磁力”...“強い力”...“重力”...は、ニュートリノに対しては...全く作用しないという

ことでしょうか...?」

「まあ...

  言葉どうりに解釈すれば、そういうことですが...淡島さん、“重力”はどうなのでしょうか?」

「そうですねえ...」淡島が、うなづいた。「いずれにしても...

  “スーパー・カミオカンデ”で...ニュートリノには、わずかな質量(電子の100万分の1/・・・フレーバ

ーで変化・・・?)判明した程度です。そうした軽量な粒子に対して、微弱“重力”が、どれ程の影

をもつでしょうか...」

「あの、淡島さん...」支折が、首を伸ばした。「“重力”は...微弱な力...なのでしょうか?」

「そうです...」淡島が、眼鏡の真ん中を押した。「しかし...

  それが、まとまると、“銀河や宇宙をも動かす・・・強大な力”になります。“重力”は、いわゆる

重力理論である、一般相対性理論で扱っているわけですが、まだ、“重力波/重力子(グラビトン)

観測されていないわけですね。

  近々、“重力波・望遠鏡”で...【素粒子の標準理論】側面が...観測されると思います。

しかし、量子力学との相性の悪さもあって、一般相対性理論との統合は、難しいようです。前に

も言いましたが、基本となる時間概念が、一般相対性理論量子力学とでは、異なるわけです」

「はい...」支折が、膝に手を置いた。「“超ひも理論”などでも、難しいわけですね、」

「そうですね...しかし、ともかく...まず、重力波/重力子を、観測/検出することでしょう」

「うーん、淡島さん...“重力”特徴というのは...そもそも、何なのでしょうか?」

“重力”特徴ですか...

  うーむ...“微弱なこと”...“離れたものの間に働くこと”...“非常に遠くまで届くこと”...

など、ですかねえ...

  まあ、今回はニュートリノの話ですが...重力子/グラビトンというのも、ニュートリノのような

貫通力を持つと考えられます...宇宙の果てまでも、届くわけですから...

  ちなみに、重力子/グラビトンは、スピン2を持つようですが...非常に、面白い粒子にな

るでしょうねえ。中性子星や、ブラックホールのような強力な重力源も、その内部が観測できるの

かも知れません」

「うーむ...」高杉が、組み上げた脚を下した。「シュバルツシルト半径(重力半径/事象の地平面・・・こ

の内側がブラックホール)内側時空構造解...計算で求めるのではなく...観測で得られるわ

けですか...」

「ま...」淡島が、口に手を当てた。「どのようなことになるか、楽しみです...一筋縄ではいか

ないでしょう」

「うーん...はい、」支折が、うなづいた。

 

「話を戻しましょう...」高杉が、モニターを見ながら言った。

「あ...はい...」支折が、腰から膝の方へ、両手を滑らせた。

「まず...いいですか...

  ニュートリノが・・・唯一作用する・・・弱い力=弱い相互作用の力”というのは...“放射

性ベータ崩壊”や...“重元素の・・・核融合を引き起こす力”、なのです。この力は、その名の示

す通り、“極めて短い距離以外では・・・非常に弱い力”、なのです」

「うーん...」支折が、うなづいた。「はい...」

「つまり...

  “ニュートリノは・・・弱い力と相互作用する”、だけなのです。また、“他の粒子とも・・・ほと

んど相互作用をしない”、というわけですねえ。したがって、これまで人類文明によって、捕捉

/検出したニュートリノ合計も、数万個ぐらいようです」

「今後は...」淡島が言った。「大きな施設が稼働しますから、数量大幅に伸びると思います」

「はい...」「支折が言った。「ともかく、ニュートリノは...ミーハーではない...非・社交的な粒

、というわけですね?」

「そうです...」高杉が言った。「まあ...

  “量子もつれ”のように、純愛カップルを作ったり...節操もなく、どの粒子とでも結合してしま

うような、フラチな粒子ではない、ということです。言ってみれば、“孤高をつらぬく・・・粒子”、とい

うところですかね。ただし、フレーバー(風味)という量子数/奇妙な性質を、持つということです。

  したがって...そんなニュートリノ検出するには...大量の物質を監視し...ニュートリノ

痕跡を残す数少ない機会を...じっくりと待つしかないわけです」

「それで...大量の、超純水が使われるわけですね?」

「そういうことです...

  宇宙・ニュートリノ予測どうり...宇宙線同程度高エネルギーを持つなら...1キロ立

法メートルの物質によって、ある程度の量ニュートリノ捕捉できるだろうと、ということです。

そして現時点で、最大級ニュートリノ・望遠鏡は、その規模に近づいているということです」

「はい...」支折が、うなづいた。「ええと、塾長...

  今、言った...宇宙線というものを、もう少し詳しく説明していただけないでしょうか。いつも、

気になっていたのですが、」

「ああ、はい...」高杉が、マウスに手を置いた。

「ええ...と、」江里香が、スクリーンボードの横で手を上げた。画像が表示してあった。

「ああ...」高杉も、スクリーン・ボードの方を眺めた。「そうですね...

  江里香さんが、ボードに表示してくれたように...“宇宙線/宇宙放射線”というのは、太陽

含めた宇宙空間の多様な天体から...“絶え間なく地球に降り注ぐ・・・放射線の総称”です。

  ええ...銀河の彼方から飛来する“銀河・宇宙線”...太陽から飛来する“太陽・粒子線”...

そして、それらが地球磁場に捕捉されてできるバンアレン帯(2重構造を持つ放射能帯)の、“捕捉・粒子

線”を...“1次宇宙線”と言います。

  簡単に言えば...地球/大気圏に飛びこんで来る...“高エネルギーの放射線”を、“1次宇

宙線”と言います。この、約90%“陽子”です。そして、残りの大部分は、“ヘリウム原子核(/陽

子2個と中性子2個)です...

  この図にもあるように...それが大気中の原子と衝突して...2次的に発生する、“中間子”

“電子”“ガンマ線”などの放射線を...“2次宇宙線”と呼びます」

「はい...」支折が、うなづいた。「宇宙線というのは...要するに、“高エネルギーの放射線”

のですね?」

「そうです...

  1次宇宙線が、2次宇宙線になって行くわけですが...これがいわゆる、“空気シャワー”にな

るわけです。

  高エネルギー・宇宙線が大気に入った際...大気圏原子核相互作用し、2次宇宙線が発

生します。この2次宇宙線エネルギーが高いために...さらに衝突して粒子生成し、連鎖的

空気シャワーとなるわけです」

「はい...」

強力な放射線は、人体に当たると非常に危険です。ところが、厚い大気層が、私たちを守ってく

れているわけですね...私たちは、厚い大気の層感謝しなければなりません...」

「はい...」支折が、手を組んだ。

ステライル・ニュートリノ ・・・ 暗黒物質 の候補か?> wpe8B.jpg (16795 バイト)  


      
  wpe4F.jpg (12230 バイト)    


「さて...」高杉か言った。「余談ですが...

  物理学者は...実は...別のタイプニュートリノ検討しています。“ステライル・ニュート

リノ”というのが、それです。このニュートリノは、弱い力にさえも・・・ほとんど反応しない、よ

うですねえ...

  “ステライル・ニュートリノ”と、“この世界”を結ぶものは、“重力ぐらいのもの”、ということで

す。そういうわけで、“検出は非常に難しい”ということですが、“やりがいのある研究テーマ”

とも言われているようです。“理論的信憑性(しんぴょうせい)は高い”ということでしょうか...?」

「うーん...」支折が、首をひねった。「色んな...そんな粒子が、たくさんありそうですね?」

時間量子化した...“時間子”とかですか...

  はは、最近は、あまり聞かないですねえ。天文学者は、かつて宇宙の暗黒物質/ダーク・マタ

が...ニュートリノでできている可能性がある、と考えていました。ところが、ニュートリノ

が、きわめて軽いことが判明し、これはダメになりました。

  が、しかし...科学者は、ニュートリノ可能性というものを、完全に捨てたわけではなかった

ようです。未発見のニュートリノが存在し、“暗黒物質=ダークマターを説明するのに・・・十分

な質量”、を持っている、“ステライル・ニュートリノ”、の可能性を考えていたのです。

  “弱い力=弱い相互作用の力”にも反応しないために、“ステライル・ニュートリノ”、と呼ば

れているのだそうです。まあ、先ほども言ったように、“観測は、既知のニュートリノ以上に・・・

非常に困難”、と考えられています。

  ただ...既知のニュートリノも...かつては、そう言われていたわけですね。こうした例は、他

にも、色々とあるわけです」

「はい...」支折が、神妙にうなづいた。

 

「そうそう...」高杉が、モニターをスクロールした。「それで、思い出しましたが...

  最初に観測されたニュートリノは...“参考文献”最初の写真にあるように... 1972年

に、“CERN(欧州合同原子核研究機構)の、“ガルガメル泡箱”で撮影されたものでしょうかね...詳

しいことは分かりませんが...まず、この辺りで...間違いはないものと思います。

  ノーベル賞を授与された...アメリカ/ニューヨーク州/ロングアイランド/ブルックヘブン国

立研究所(BNL)/レイモンド・デイビス(小柴昌俊さんと2002年にノーベル物理学賞を受賞)は...

  1968年から予備実験を行い、 1970年から本観測をし、太陽・ニュートリノ観測してい

るわけです...つまり...この時期とも重なるわけですね...この頃に、初めてニュートリノ

捕捉されたのでしょう」

「はい、」支折が、うなづいた。

 

「ええと...」高杉が、顔を上げた。「...さて...

  “ステライル・ニュートリノ”が...天体に、特殊な影響を及ぼしている可能性がある、と考え

研究者もいます。例えば、超新星爆発でも・・・ステライル・ニュートリノが・・・放出されて

いる可能性がある”、と言います。

  このような爆発は、“本質的に非対象”です。ある方向に、多数のニュートリノが放出される

能性があると言います。その場合、その反動で、星のカケラが・・・逆向きに・・・毎秒/数百

キロメートルで・・・飛ばされて行く”、と予想されるのだそうです。

  そして事実...このような“反跳効果”は、実際に観測されていて、長年の謎となっているのだ

そうです」

「うーん...

  つまり、それが...“暗黒物質”のような...質量の大きな...“ステライル・ニュートリノ”

作用しているかも知れない、ということかしら?」

「そうです...

  こうしたことに加えて...“ステライル・ニュートリノは・・・不安定で・・・X線・光子に崩壊

している可能性も...あると言いますねえ」

「あの...“X線・光子”というのは、どういうものでしょうか?」

「うーむ...

  私も...“X線・光子”という言葉には、今回、初めて接しましたが...電磁波であるX線の、

粒子性の側面を強調した言葉でしょう。仮想的“ステライル・ニュートリノ”が、どうして“X線・

光子”崩壊するのかは...“参考文献”には説明がありません...」

「それは...」支折が、細い指を組んだ。「相当に、難いのかしら...?」

  高杉が、淡島の方を見た。淡島が、微笑して首を振った。

“ステライル・ニュートリノ”が...」淡島が言った。「そもそも...どのようなものか、はっきり

しませんからねえ...」

「そうですね...」高杉が、うなづいた。「まあ、話を進めましょう...

  ええと...“チャンドラ・X線観測衛星”(1999年7月23日、NASAによって打ち上げられた/スペースシャトル

・コロンビアから放出)というのがあります。このX線・観測衛星で、電子の1/100の質量を持つ、“ス

テライル・ニュートリノ”存在を示唆する...“非常に弱いX線放射”、を見つけたと言います。

  それから...“X線天文衛星・すざく”(日本で5番目のX線天文衛星。日米・国際協力により、製作が進められ・・・

2005年7月10日に、JAXA・内之浦宇宙空間観測所から打上げられた)も...“ステライル・ニュートリノ”が、

した可能性のある...“弱い信号”を観測しているようです。

  ええ...これらに関しては、“参考文献”にも詳しい説明はありませんが、今後の推移を見守っ

て行きたいと思います」

「はい、」支折が、姿勢を正した。

「さて...

  そうですねえ...“ステライル・ニュートリノ”崩壊が...初期宇宙で・・・水素を電離

せ・・・反物質よりも物質優勢になるように・・・作用”...した可能性がある、とも言います。

しかし、現時点では、いずれも根拠が弱く...結論は出ていないようです...」

「これが、最先端の状況なのでしょうか...?」

「ごく1部ですが、そうかも知れません...

  最先端の状況については...神岡トンネル多くの実験施設などを、別途、考察しましょう」

  支折が、うなづいた。

ニュートリノ は・・・ ベータ崩壊生成!>         

 wpe4F.jpg (12230 バイト)          


「さて...」高杉が、江里香の方を見た。「既知のニュートリノの話に戻りますが...

  ニュートリノ(電子・ニュートリノ、ミュー・ニュートリノ、タウ・ニュートリノ)は...社交的な、ミーハー粒子で

はないものの...宇宙のドラマでは、隠れもない重要な存在なのです...」

「はい...」江里香が言った。

「ええ...まず、ニュートリノは...“ベータ崩壊”では必ず生成されます...

  ベータ崩壊というのは...ベータ線放出する現象で...ベータ線とは、“高速の・・・電子ま

たは・・・陽電子の流れ”です。このベータ線は、透過力電離作用としては、他の放射線アル

ファ線や、ガンマ線との中間に位置します...」

「あ、はい...」支折が、頬に手を当てた。「ええと...

  放射性元素(/ウラン、プルトニウム、トリウムなど)崩壊にともなって、放出される放射線には...

ルファ線ベータ線ガンマ線があるわけですよね。その中で、透過力電離作用としては、

ベータ線中間に位置する...ということですね?」

「そうです...

  まあ、もう少し説明しますと...まず、ガンマ線というのは、“X線よりも波長の短い・・・つまり、

エネルギーの高い電磁波で・・・粒子性で言えば光子・・・光子線・・・”、になります。これは透過力

が強く医療工業、それから物性研究などにも用いられます。

  ちなみに...最も透過力が強いのは、中性子線(中性子の粒子線)です。中性子というのは、ニュ

ートリノのように電荷を持たないので、透過性が強いのでしょう。

  原子炉でも、この中性子線透過力が問題になりますね。中性子線を止めるには、コン

クリートの中に含まれる、水素原子などによって遮断することになります。

  中性子は、電荷はないのですが、スピンは持っていますので、結晶構造解析...特に、磁気

構造の解析に用いられます。それから、“ガンの中性子線治療”というのも、よく知られているで

しょうか。ガン治療には、中性子線陽子線重粒子線が用いられています...」

「はい...」支折が言った。

「ええ...この際ですから、ついでに言っておきますと...

  ガンマ線が消滅する時・・・電子陽電子対生成(ついせいせい)、されます。そして、逆に、

電子陽電子対消滅(ついしょうめつ)する時・・・ガンマ線が発生”、します。ま、余計なことか

も知れませんが、小耳に挟んでおいてください」

「先ほど...」淡島が言った。「“X線・光子”という言葉が出て来ましたが、“ガンマ線・光子”でも

同じ意味ですね...これらは、粒子性という側面では光子...光子線になります」

「はい...」支折が、口に手を当て、うなづいた。

「ええ...」高杉が言った。「それから、アルファ線ですか...

  アルファ線というのは...“放射性元素の・・・アルファ崩壊で放出される・・・アルファ粒子(ヘ

リウム原子核/2個の陽子と2個の中性子)の流れ”ですね...透過力は、ベータ線ガンマ線よりは弱い

わけですが...逆に、電離作用一番強いですねえ。

  ガンマ線光子であり、質量ゼロ1番軽いわけですが...次に軽いのが、ベータ線電子

または陽電子の流れです。そして、1番重いのがアルファ線で、これはヘリウム原子核の流れに

なりますから、まあ、当然ですね...」

「うーん...」支折が、うなづいた。「あ...そうそう、塾長...スピンについても、説明をお願い

します」

「ああ...はいはい、そうでした...

  うーむ...“スピン”というのはですねえ...素粒子基本的な量子数1つです。古典的

は...“粒子の自転による・・・角運動量”...とみなされています。

  それから...“アイソスピン(isospin) という言葉もありますが...これはクォークの持つ、量子

1つですね。陽子中性子は、質量などの性質が似ているわけですが...これは、“同種の

粒子が・・・異なる状態をとっているもの・・・”、という考えから、始まっているようです。

  陽子中性子は...アップ・クォーク(u)ダウン・クォーク(d)が、2個1個の...つまり、3個

の組み合わせ”で、構成されていると言いましたね...ただし、組み合わせは逆だと...」

「あ...はい...」支折が、モニターをスクロールした。

  高杉は、向こうで、ポン助がお茶の用意をしているのを眺めた。

「ええと...ありました...

  陽子は...“2個のアップ・クォークと・・・1個のダウン・クォーク”...そして、中性子は、“1個

のアップ・クォークと・・・2個のダウン・クォーク”...で構成されているのすね?」

「そうです...

  そこで、アイソスピンですが...これは...陽子中性子の、性質をあらわす数字ということ

ですねえ...ともかく、陽子“−1/2”、そして中性子は、“+1/2”の、“アイソスピン”を持つ

ようです...まあ、実は私も...このアイソスピンというのは、十分に理解していません...」

  高杉が、淡島の方に顔を向けた。

「ええと...」淡島が、モニターから顔を上げた。「...そうですね...

  これも、インターネット情報なのですが...アイソスピンとは...“陽子と中性子”“アップ・

クオークとダウン・クオーク”など...電荷の異なる・・・似通った粒子を・・・統一的に扱うた

めに導入された・・・物理量”...ということですねえ。

  この辺りになると...2次元ベクトル空間座標や、アイソスピン空間概念が入り込んで...

普通の空間と区別して...内部空間と呼ばれるものになります。数式を使わない、言葉だけの

説明は、難しくなりますね...」

「うーん...はい...」支折が、コクリとうなづいた。「ともかく...

  スピンというのは...素粒子基本的量子数1つということですね...そして、古典的

は、“粒子の自転による・・・角運動量”とみなす...ということですね。アイソスピンの方は、とり

あえず、言葉だけを聞いておくことにしましょうか、」

「そうですね...」高杉が、うなづいた。「とりあえず、それでいいと思います」

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「ええ...さて...」高杉が言った。「もとの話は、どこだったかな?」

ベータ崩壊です、」淡島が言った。

「ああ...はい...

  ええ...ニュートリノ唯一作用する...“弱い力=弱い相互作用の力”というのは...“放

射性ベータ崩壊”や...“重元素の・・・核融合を引き起こす力”、ということですね。そして“ベー

タ崩壊”では...“必ず・・・ニュートリノが生成される”ということでした」

「はい...」

「さて...

  くり返しますが...この“ベータ崩壊”というのは...“原子核の・・・放射線崩壊”1種です。

ベータ線(/電子または陽電子)を放射して...“他の原子核に変わる現象”です。

  もう少し、詳しく言いますと...“放射性元素(/ウラン、プルトニウム、トリウムなど)の原子核”が...

@電子と・・・反・ニュートリノの対(つい)を...または、A“陽電子と・・・ニュートリノの対”

して...別の原子核に・・・転換...することです。

  この現象は...“どちらも・・・質量数に変化はない”のですが...“@の場合は・・・原子

番号が1つ増加します。そして、“Aの場合は・・・原子番号が1つ減少します...つまり、

原子番号(原子核の陽子の数)が変わるという事は・・・他の元素になる”...ということです」

「うーん...」支折が、腕組みをして、うなづいた。「つまり...

  これは...ウランが...原子炉の中で...プルトニウムになったりすることかしら?」

「まあ、そうですね...

  このベータ崩壊は...“惑星内部”や、“爆発した星のカケラ”温度を上昇させる他に...

太陽のような“恒星内部”で、核融合が起こる際にも、きわめて重要なステップになります」

  支折が、上体をのり出した。

「塾長...

  そのベータ崩壊から...どのようにして、太陽・ニュートリノが出ているのでしょうか。そのメカ

ニズムを、教えてきただけるでしょうか?」

「そうですねえ...

  これも、厳密理論的背景を言えば、なかなか難しいことになります。しかし、ともかく、【標準

太陽モデル(SSM)によると...

  太陽は...“水素原子核(/陽子)4個”から...“ヘリウム原子核(/陽子2個と中性子2個)1個”と、

“電子・ニュートリノ2個”、及び“エネルギー”、を生成する...“核融合反応”によって、輝い

ている...と考えられる、ということですね」

「はい、」

「つまり...

  この時に生じる...“電子・ニュートリノ2個”が...いわゆる、“太陽・ニュートリノ”と呼ばれ

ているわけです。このプロセスは、一連の核反応組合わせによって進行します。 太陽・ニュー

トリノ複数の反応過程で生じるわけですが、まあ...説明は、この程度にしておきましょうか」

「はい...」支折が、うなづいた。「ええと...

  だから...太陽から常時、太陽・ニュートリノが放出されているわけですね。核融合反応で、

電子・ニュートリノ2個、生成されているわけですね...」

「そういうことです...」高杉が、手を立てた。「いいですか...

  その他に...“超新星爆発”には2つのタイプ/型がありますが...大質量星が燃えつき

て・・・星の一生を終え・・・爆宿するタイプでは...ニュートリノはさらに、決定的重要な役

を担っています」

「はい、」支折が、上体を揺らした。

「このタイプ恒星が...

  その星の一生を閉じる時...核融合の内圧で支えていた、大な質量を支えられなった時...

恒星は一気に、“重力崩壊”を起こします。そして、コア原子核の密度に達すると...10〜15

の間に、10の58乗個ものニュートリノが放出されるのです。

  これほどの膨大な量の放出となれば...非社交的ニュートリノでも、主役の座に押し出され

て来るわけです...」

  支折が、うなづいた。

「そもそも...恒星には...

  質量“チャンドラセカール限界”というのがあります。これは、太陽の質量基準にしている

わけですが...それによって、白色矮星(はくしょくわいせい/質量が太陽の8倍以下の星の最終段階。表面温度が

高く、白く輝いている。太陽の直系の1/1000ほど)限界質量(/白色矮星の理論的上限値は太陽質量の1.26倍)や、

中性子性(パルサー/大質量星の最終段階・・・中性子からなる高密度の恒星/1立方センチメートルで10億トンにもなる)

質量範囲(/理論的質量は太陽の1.5倍から2.5倍の範囲)が決まって来ます。

  もっと大きな恒星になると...ブラックホールになるわけですが...中性子星ブラックホー

中間に位置する、“クォーク星”というのも観測されています。これは、中性子がさらにクォー

段階まで重力崩壊を起こしているものです。

  ええ...ネット情報ですが...クォーク星は、“チャンドラ・X線観測衛星”“ハッブル・宇

宙望遠鏡”で観測されています。ええと...表面温度は70万℃...直径はわずか11.2キロ

メートル...“みなみのかんむり座(/かんむり座=北のかんむり座・・・もあります)で発見されています。

  それから、...日本明月記(鎌倉時代初期の歌人/藤原定家の日記)の記録による、超新星/・・・

カシオペア座/中性子星3C58も...表面温度が100万度よりも低温で...少なくとも、一部

は、クォーク星化している、と言われます。

  まあ...こうしたクォーク密度でも、自分の重力を支えきれなくなり・・・さらに重力崩壊して行く

わけですね。重力理論である一般相対性理論によると、その先は、いわゆる、ブラックホール

なるわけです...天の川銀河中心部には、巨大なブラックホールがあると言います...」

「はい...それは、聞いたことがあります」

 

「さて...」高杉が言った。「話を戻しますが...

  こうした中での、星の最後となる“超新星爆発”ですが...放出される全エネルギー99%

は、ニュートリノということで、説明が可能だと言います。

  つまり...ニュートリノ・望遠鏡を用いれば...従来の望遠鏡が見逃していた“超新星・爆発”

の...99%のエネルギーと...その重要な初期段階が...観測可能になるということです」

「はい...

  それを、最初にやったのが...小柴昌俊さんたちの“カミオカンデ”であり...大マゼラン星

雲内の、超新星爆発/“超新星SN1987A”...だったということですね?」

「そうです... “1987年2月23日・・・午前7時35分35秒から 〜...

  そのニュートリノの嵐は...広大な天の川銀河の空間に入り込み...太陽系のあるオリオン

に達し...まさに、“太陽系探査機・ボイジャー1号/2号”とは逆向きに...そして、太陽

とも逆向きに...太陽系空間を渡り...地球/“カミオカンデ”に到達したわけです。

  むろん、そのほとんどは、あらゆるものを貫通し、太陽系空間を抜けて行ったわけですねえ、」

「うーん...

  そこで、何故か...小柴さんたちが...笑って待っていた、というわけですね。その何個かを、

捕捉したわけですね?」

「はっはっは...

  笑って待っていたかどうかは知りませんが、そういうことですねえ...何個捕捉したかは、知り

ません。そのうちに、見ておきましょう」

「ともかく...」淡島が、チラリと白い歯を見せた。「“超新星・1987A”観測で...星の崩壊

に関する...基礎理論が裏付けられたわけです」

「はい...」支折が、淡島の方にうなづいた。

発生源が...」淡島が言った。「何処であろうと...

  どのような種類天体であろうと...その場所発生したニュートリノは...あらゆるものを

貫通し、地球までやって来るわけです。もちろん、それは、地球も貫通してしまうわけですが、」

「はい、」

ニュートリノは...

  ガスチリの中を、風のように貫通するだけでなく...それ自体が、どんなに大きなエネルギ

を持っていても...“宇宙の端から端まで・・・横断できる”...と考えられています」

では...」高杉が言った。「こうは、いかないですね...?」

「こうは、いきませんねえ...」淡島が、首を振った。「そうですねえ...

  で、最大のエネルギーを持つものはガンマ線です。波長が短いほど、エネルギーが大

きくなるわけで...“波長とエネルギーは・・・逆比例の関係”、にあることが知られています。

  この高エネルギーガンマ線ですが...実は、“ビッグバンの残照/宙マイクロ背景放射”

や、“恒星の光”...それに“過去数十億年の電波”...などの混ざり合った、いわゆる“もや”

のような中で...たちまち、減衰してしまうのです。

  100TeV(テラ電子ボルト/テラは1兆倍を表す)ガンマ線・光子進める距離は...たったの数千万

光年だと言います」

1億光年にも、達しないわけですか?」

「そうです...

   地球大気圏に降り注いで来る、高エネルギー宇宙線も、こんなものです。つまり、逆に言うと、

“高エネルギー宇宙線は・・・遠くから来たものではない...ということになります...」

「うーん...」支折が、うなづいた。「では...何処から来るのでしょうか?」

「まあ...」淡島が、眼鏡を押した。「それは、宇宙物理学者に任せるとして...

  ニュートリノは...自然界の、超高エネルギー現象を研究するのに、“数少ない道具・・・手

段の1つ”となる...ということは、間違いないでしょう」

「うーん...

  例えば...太陽を...電波で...赤外線で...可視光で...紫外線で...X線で...ガン

マ線で...それから、ニュートリノで...見ることが可能になるということですね...?」

「そうです...」淡島が、うなづいた。「さて...

  それでは次に...いよいよ、“ニュートリノ・振動”というものを見て行きましょうか...」

「そうですね、」高杉が、作業テーブルに、両手をついた。

「はい!」支折が、ニッコリと口元を結んだ。

  江里香も、嬉しそうに、ポン助と一緒にお茶菓子を運んで来た。

 

  〔5〕 風味=フレーバーの科学/ニュートリノ・振動!

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        緊急事態発生です  index.1101.jpg (2487 バイト)  

 

「ええ、小説工房・担当の中西卓です...

  緊急事態が発生しました。ボス(岡田)が、この記録的な猛暑の夏と激務がたたり、月曜日

から金曜日まで、倒れてしまいました。土曜日は朝からサウナに行ったようです。そろそろ

回復するとのことです。夏の反動が来るのは分かっていたそうですが、大きいのが来たよ

うです

  そのため、アップロード後の推敲には、少々、時間がかかるそうです。ボスが言っていま

した。ポンポン仕事はこなせるんだが、そんなに多くの仕事をやるべきではないなあ...

ということです。まあ、それも、試していたようですね...

  頭脳の方は、いくらでも早く回転するそうですが、肉体の方に限界があるわけですねえ。

あ...今回の、このアップロードは、それ以前にほぼ完成していたものです...」

 

      ええ、ともかく・・・現在推敲中ということになります・・・

 

******************************************************

 

 

「ええ...」高杉が、片手で茶碗を握りしめながら言った。「ニュートリノは...

  ミーハーではない、非社交的粒子であることに加え...忍者のように“変身する”という、奇妙

な特殊能力を持っています。

  前にも言いましたが...物質を構成するクォークは、グルーオンとくっついています。これは、

実は、分離することが非常に難しいわけですが...これらは、色荷/カラーチャージ・・・と呼

ばれる量子数、を持ちます。その違いによって、“合計8種類のグルーオン”が存在します。

  そしてニュートリノは...風味/フレーバー・・・と呼ばれる量子数・・・3種類の型を、持

ちます...」

「はい...」支折が、コトリ、と茶碗を置いてうなづいた。

「まあ...これは、基本的なことですので、くり返し説明しておきましょう」

「あ、お願いします...」支折が言った。

「いいですか...

  レプトン/6種類・・・クォーク/6種類が...物質の基本単位・・・いわゆる素粒子

だと考えられているわけですね...

  ただし...素粒子は、大きく分けて2種類あるということです。1方は、今言った、物質を構

成している素粒子・・・ フェルミ粒子  ”です。これには、“レプトン/6種類”“クォーク/6種

類”があるわけです。

  そして、もう1方は、間の・・・力を構成している素粒子・・・ ボーズ粒子   ...という

ですね」

「はい、」支折が、うなづいた。

「ええ...

  ボーズ粒子を、もう少し説明るすと...量子力学では、というものは・・・粒子の交換/

粒子の介在で・・・伝わる”...と考えます。これは、湯川秀樹・博士中間子論を、出発点

としています。

  そして、自然界/大宇宙には・・・4種類の力が...観測されているわけですね。すなわ

ち、【重力】【電磁気力】【弱い力】【強い力】、の4種類です。これらの、 介在する

子が・・・ ボーズ粒子  ...ということですですね。

  すなわち...“重力”は、 重力子 (グラビトン)交換で...“電磁気力”は、 光子 交換で...

“弱い力”は、 ウイークボソン/W粒子、Z粒子 交換で...そして“強い力”は、 グルーオ

交換で...説明されます。これが、【素粒子の標準理論】になるわけですね」

  支折が小さくうなづき、茶碗を脇の方へ押した。その茶碗を、ポン助が盆に載せた。

 

「さて...」高杉も、茶碗をポン助に渡した。「レプトンというのは...何度も言いますが...

  “合計6種類”あるのでしたね...電子ミュー粒子タウ粒子と...順に質量が大きくなりま

す。ちなみに、タウ粒子に至っては...“陽子よりも大きな・・・静止質量”、を持っています。それ

に比べて、ニュートリノは...“測定限界以下の・・・小さな質量”しかもたない、ということです」

「はい...」支折が言った、「そして...

  それに、対応するニュートリノが...電子・ニュートリノミュー・ニュートリノμ、それ

から、タウ・ニュートリノτ、ということですね、」

「そうです...

  “合計6種類”ですね...さて、いいですか...電子ミュー粒子タウ粒子は、それぞれ“固

有の質量”を持つわけです。ところが、対応する、今言った...3種類のニュートリノは・・・

有質量を持たない...ということですねえ...」

「はい...」支折が、少し考えてから、うなづいた。「ええと...

  “測定限界以下の・・・小さな質量”...ということですね。同じレプトンなのに...どういうこと

なのでしょうか?」

「さて...」高杉が、ほくそ笑んだ。「それは...非常に難しい質問ですが...

  固有質量を・・・持たない”ということでは...そこに、“ニュートリノ・振動”が現れるからで

しょう。つまり、“フレーバーが・・・振動”するからです。

  風味/フレーバーには・・・3つの型がある”というのは...つまり、電子・ニュートリノ

ミュー・ニュートリノμタウ・ニュートリノτ、のことです。これが“振動”し、“変化”する、と

いうことです...」

「はい...」支折が、ボンヤリと高杉を眺めた。

「そして...」高杉が言った。「いいですか...

  このうちの...“1つのフレーバーの・・・ニュートリノの質量”、を測定すると...3つの質量

の・・・いずれかが・・・一定の確率で・・・ランダムに得られる”...ということですねえ、」

「ええと...」支折が、肘を抱いた。「ややこしい話ですわ...

  “3つのフレーバー”があり...それぞれに、“3つの質量値”がある...ということですね。そし

て、それは...別々のもの...なのかしら...?」

「うーむ...」高杉が、うなづいた。それから、江里香が用意している、スクリーンボードの方を眺

めた。「まあ、聞いてください...」

「はい...」支折も、ボードを眺めた。

  淡島も、そっちの方を見た。

「この...ボードにもあるように...

  ニュートリノには...“他の粒子とは・・・際立って異なる・・・大きな特徴...があります。

それは、空間を移動中に・・・変身する...ということです。

  したがって天文学者は、この効果考慮し...当該のニュートリノが・・・元々どのような姿

だったのか”...そして...何が・・・当該のニュートリノを・・・発生させたのか”...を考え

なければならないわけです」

「ずいぶんと...」支折が、肩をかしげた。「複雑になりますね...」

「まあ...」高杉が、手を握った。「それが...

  “真実の結晶風景”であるなら、仕方の無いことです...しかし、逆に...それを利用すること

もできるわけですね...」

「はい...」支折が、うなづいた。

「ともかく...

  ボードのタイトル1つにもあるように...“ニュートリノの・・・矛盾した正体を...説明し

て行きましょう...」

「はい、」

「まず...

  ニュートリノは...“変身するという・・・驚異的な能力”...を備えているということですねえ。

それは...“ニュートリノの・・・二面性”...を示すものです...」

  支折が、まばたきして、うなづいた。

「くり返しますが...

  ニュートリノが取り得る、フレーバー状態と・・・質量状態には・・・それぞれ3種類づつ

あります。ただし...これは、電子ミュー粒子タウ粒子質量に、対応したものではありませ

ん。これらの質量には関係なく...“測定限界以下の・・・質量”のようです」

「うーん...」支折が、神妙にうなづいた。

「ええ...いいですか...

  先ほど...1つのフレーバーの・・・ニュートリノの質量を、測定すると...3つの質量

の・・・いずれかが・・・一定の確率で・・・ランダムに得られる”...と言いました」

「はい、」

「で、逆に...

  特定質量のニュートリノの・・・フレーバーを、観測すると...3つの型のフレーバー

・・・いずれかが・・・見出される”...ということですねえ。また、フレーバーの3つの型と・・・

3種類の質量は・・・1対1で対応していない...わけです...」

フレーバーと...3種類の質量は...対応していないわけですか...?」

「そのようですねえ...」高杉が、淡島の方を見た。

「いいですか...」淡島が、高杉にうなづき、支折の方を向いた。「ニュートリノは...

  “固有の質量”と...“固有のフレーバー”を持つことが出来ます。ただし...固有のもの

を・・・両方同時に・・・持つことはできない”...ということです。これは、“速度と位置の関係”

に似ています。

  ニュートリノ“質量の固有状態”は......と表します。これは、いわゆる、

電子・ニュートリノミュー・ニュートリノμ タウ・ニュートリノτ、の質量とは...“異

なるものだ”ということです...」

「はい...つまり、“フレーバーと質量とは・・・対応していない”...ということですね?」

「そうです...」高杉が、うなづいた。「まあ、そうですねえ...

  ここは、難しいところです...私も、“参考文献”論文を1本読んだだけでは、正直、なかなか

理解できない部分もあります...」

「あら...塾長でも、ですか...?」

「もちろんです...」高杉が、10本の指を組んだ。「まあ...

 その時は...気付いた時点で...《間違いの訂正/記録》等で...修正します...」

「はい、そうですね...」

「ともかく...」高杉が言った。「いいですか...

  普通の物体では...性質は、すでに定まっているわけです...バスケットボールは600g

サッカーボールは425g野球のボールは145gというように...ボールの種類質量が、1対1

で対応しているわけです。

  しかし、もし...“ボールが・・・ニュートリノのようなもの”だとすると...“ボールの種類と

質量は必ずしも一致せず・・・しかも、空中を飛んでいる間に・・・その種類と質量が、変わっ

てしまう”...というような現象が、起こるということです...」

「うーん...」支折が、上体を揺らした。「つまり...

  バスケットボールからサッカーボールに...それから、野球のボールに変わってしまう、と言う

ことでしょうか...?」

「うーむ...」高杉が、首をかしげた。「さて、どうでしょうかねえ...

  “はっきりと移り変わる・・・のとは少し違う”...かも知れませんねえ。むしろ、バスケットボー

ル部と、サッカー部と、野球部の、3つに所属している学生パーソナリティー(人格、個性)ような感

じでしょうか。

  つまり、3つの顔を持っていて...ユニホームも使い分けるわけですが...どのユニホーム

着ているかは、確率計算でしか求めることが出来ないような状態でしょうか。つまり、簡単にいう

と...“ニュートリノは・・・そんなパーソナリティーを持った粒子”...だということです」

「うーん...」支折が、頭をかしげた。

 

「さて...」高杉が、淡島の方を見て言った。「同じように... 

  検出器に反応した...“質量固有状態=ニュートリノが...3つのうち、いずれの“フレ

ーバーの固有状態”になるかの確率は...計算可能なわけですね?」

「そうです...」淡島が、うなづいた。「ええ、そうですねえ...

  フレーバーは・・・ニュートリノがどのように・・・他の物質と弱い力を及ぼし合うか...を

決定します。そして、いいですか...質量は・・・ニュートリノがどのように・・・空間を移動

て行くか”...決定するわけです...」

「ふーむ...」高杉が、うなづいた。「なるほど...

  そういう意味があるわけですか...そこで...“ニュートリノ振動”ですね、」

「そうですが...」淡島が言った。「その前に...

  いいですか...例えば...“ベータ崩壊”では...電子・ニュートリノのみが生成されるわけ

ですね...“ニュートリノが・・・空間を移動する時・・・フレーバーは重要ではない、のです。

“ニュートリノが・・・空間を移動する時・・・振る舞いを決めるのは・・・質量状態なのです、」

「はい...」高杉が、うなづいた。

電子・ニュートリノというのは...

  実は、“質量固有状態=(が...“ある比率で・・・混ざり合った状態”なので

す...そして、“その比率は・・・混合角と呼ばれる量で、決まっています」

「はい...“混合角”という言葉は、しばしば目にしますねえ...」

「そうですね...」淡島が、うなづいた。「まあ...

  関係書物を読めばということでしょう。しかし、ともかく物理学者は...3種類の・・・粒子の

飛跡”...を追わなければならないわけです」

「うーん...」支折がうなって、肩を揺らした。

「はは...」淡島が、顔を和ませた。「いいですか、支折さん...

  最終的に、ニュートリノは...検出器/ニュートリノ望遠鏡の...超純水南極点の氷などと

反応するわけですが...“ここで再び・・・フレーバー・・・が重要になって来る”...のです。

  もしニュートリノの...“混合角”が変わっていなければ...“検出された・・・フレーバー”は、

“生成時の・・・フレーバー”ということになります。つまり、それが太陽核融合反応で生じた場

合は、電子・ニュートリノだということですね...?」

「はい...」支折が、うなづいた。

「が、しかし...“必ずしも、そうはならない!”のです...」

「はい...?」

ニュートリノが...

  “質量固有状態を保って進む時...ニュートリノには、混合角を変える・・・新たな効果

生じ・・・フレーバーが変化するのです。そして、このプロセスこそが...“ニュートリノが・・・

変身する原因...となるわけです」

「それが...」支折が、体を前に乗り出した。「“ニュートリノ振動”ですね...?」

「そうです...

  【量子力学の原理】に従うと...“それぞれの質量状態は・・・特定の波長を持つ波・・・に

相当”...します。というのは、互いに重なり合い干渉します...ニュートリノは、3種類の

純音で構成される・・・音波のようなもの”...といいます...」

「ええと...」支折が、唇をつまんだ。「例えば...

   ド・ミ・ソ...や...ド・ファ・ラ...のような...和音のようなもの...ということかしら?」

「そういうことですねえ...」淡島が、白い歯を見せた。「まあ...

  楽器を調律した経験のある人は、すぐ分かると思いますが...音の高さ/波長が、微妙に異

なる音を重ね合わせると...音の強さ/振幅が、周期的に変化するわけです。つまり、“うなり”

が生じるわけです。

  ニュートリノの場合...質量の違いが・・・波長の違いのように働き”...それで、移動

距離に応じて・・・フレーバーの振動が起こる...というわけです、」

「うーん...」支折が、大きなため息を吐いた。

 

「ええ...」淡島が、顎に手を当てた。「例えば...

  太陽は、核融合反応によって...電子・ニュートリノを生み出すのでしたね。この電子・ニュー

トリノ1団は、地球に到達する前に...“3種類のフレーバーが・・・混在した集団...に

するわけです...」

「まあ...」高杉が、テーブルの上で手を開いた。「...ちなみに...

  レイモンド・デイビスが行った、先駆的な実験では...電子・ニュートリノしか...検出できな

かったようですね。そして、小柴昌俊さんが主導した実験では...電子・ニュートリノと、変身した

先のニュートリノとを...“区別して・・・測定することが・・・できなかった”...ようです」

「うーん...」支折が、頭をひねった。「つまり...

  “区別して・・・測定”できなければ...区別できませんよね...レイモンド・デイビス実験

も、そうだったということかしら...?」

「まあ...」高杉が言った。「 1970年代ですからねえ、その通りでしょう...

  “太陽・ニュートリノの・・・変身最初の証拠、というのは...詳しいことは分かりません

が...ええと...

  2001年“スーパー・カミオカンデ”実験と...カナダ/“サドベリー・ニュートリノ観

測所(SNO)の実験装置”実験の...結果を比較して...“スーパー・カミオカンデ”実験

データに、“電子・ニュートリノが・・・変身したフーバーが・・・混ざっている、ことが判明したよ

うです...」

「ふーん...2つの実験の...結果比較するんですか、」

「そのようですねえ...

  ええと...この、サドベリー・ニュートリノ観測所では、“重水(重水素原子または、重酸素原子を含む水)

を使っているようですねえ...

  ともかく、その後...サドベリー・ニュートリノ観測所では... 2002年に...“変身前後

の・・・ニュートリノ”、を観測しています」

「はい...」支折が、うなづいた。

 

「ええと...」高杉が、マウスを使ってモニターをスクロールし、クリックした。「ええ...

  ニュートリノ変身確認されている...もう1つの例としては...ですねえ...

    1998年に...ニュートリノ振動の最初の証拠・・・となった大気・ニュートリノがあり

ます。宇宙線が、大気中原子原子核に衝突すると、パイ粒子と呼ばれる不安定な粒子が生

まれます。そして、その後...電子・ニュートリノと、ミュー・ニュートリノ崩壊するのです。

  “1次宇宙線”が、“2次宇宙線”になり、“空気シャワー”となって、地球に降り注いで来るわけで

すが...ニュートリノが生成されると、そうしたものには一切邪魔されずに...大気圏も、個体/

地球も、一気に貫通し、宇宙の彼方に流れて行ってしまうわけです」

「それで...」支折が言った。「話を戻しますが...

  パイ粒子が...電子・ニュートリノミュー・ニュートリノ崩壊するので...分かったというこ

とかしら...?」

「ええと...」高杉が、モニターに目を当てながら言った。「歴史的経緯は...

  ここからは...よく分かりませんが...パイ粒子崩壊してできた、電子・ニュートリノと、ミュ

ー・ニュートリノは...質量状態を保ったまま、大気圏と、固体/地球貫通するわけです...

  そして...生成から検出までに・・・進む距離が長いほど・・・より多くのミュー・ニュート

リノが・・・タウ・ニュートリノに・・・変身する”...ということですね。

  その結果...観測装置で調べると...下方、つまり、地球の反対側で生成され、地球を貫通

して来るミュー・ニュートリノは...上方、つまり、真上の大気で生成され、直接検出器

飛び込んで来るミュー・ニュートリノの、半分だということです」

「ええと...」支折が頭に手をやり、ギュ、と押さえた。「つまり...こういうことかしら...

  大気中で生成されたミュー・ニュートリノは...そのまま地球表層の検出器に入れば...

離は短いわけですね。ところが...地球の反対側の大気で生成され、地球を貫通して検出器

飛び込んで来るミュー・ニュートリノは...距離が長いというわけかしら...?」

「その通りです...

  いいですか...そして、今言ったように...生成から検出までに・・・進む距離が長いほ

・・・より多くのミュー・ニュートリノが・・・タウ・ニュートリノに・・・変身する”...ということ

です」

「はい...」支折が、うなづいた。「それで...

  地球を貫通してやってくる方のミュー・ニュートリノは、数が半分になり...あとは、タウ・ニュー

トリノ変身してしまう...ということですね...?」

「そうです...まあ、そう考えられるということですねえ...」

「はい、それが...ニュートリノ振動の・・・最初の証拠となった”...ということですね?」

「そのようです...」高杉が、うなづいた。

 

  〔6〕 フレーバー振動混合比率から分かることは?

             wpe4F.jpg (12230 バイト)            

 

「いいですか...」淡島が言った。「くり返しますが...

  ニュートリノ“風味/フレーバー”というのは...電子・ニュートリノミュー・ニュートリノ

ウ・ニュートリノの...“3つの型”のことです。

  これらは、電子ミュー粒子タウ粒子対応しているわけですが...ニュートリノ質量は、

測定限界以下です。質量が、対応しているわけではありません」

「はい...」支折が言った。「この6つの素粒子を、“レプトン”というのですね?」

「そうです...」淡島が、うなづいた。「さて...例えば...

  電子・ニュートリノというのは...実は、“質量固有状態 = (が...“ある比

率で・・・混ざり合った状態”...なのです。そして、“その比率は・・・混合角と呼ばれる量で

決まっている”...ということです...」

「はい...」支折が言った。「“質量固有状態 というのは...

  太陽から来た電子・ニュートリノか...他の発生源から来た電子・ニュートリノか...というよ

うなことですね?」

「そうですね...

  天文学者にとっては...この、ニュートリノフレーバーという3つの型は...における

のようなものだと言います。分かりますか...?」

「うーん...」支折が、顎に手を当てた。「偏光...ですか...」

「ええと...」高杉が、手を開いた。「偏光については、前にも説明したことがあります...

  学問的に説明すると、専門的難解なものになってしまいます。が、ともかく、偏光とは...辞

書を引くと、こう解説してあります...

  偏光とは...“光波の振動方向の分布が一様でなく・・・常に一定の平面に限られている光”

ということです。また、“振動方向が・・・一直線上に限られている・・・直線偏光”...“円や楕円を

描く・・・円偏光、楕円偏光”...がある、ということですねえ。

  はは...素人には、何のことか分かりません」

自然光は...」淡島が言った。「反射すると、偏光になりますね。つまり、偏光の反対は、自然

ということです」

「辞書にも...」高杉が言った。「そう書いてあります...

  ええ、いいですか...その上で、あらためて偏光という言葉の意味ですが...これは、“偏光

顕微鏡”“偏光プリズム”、あるいは“偏光フィルター”など...具体的な機材や、道具作用

振り返った方が、分かりやすいと思います。説明すると、非常に難しいことになってしまいます」

「はは...」淡島が、うなづいた。「その通りですね...

  ええ、話を戻しますが...天文学者にとっては...“ニュートリノの・・・フレーバー/3つの

型”というのは、“光の・・・偏光のようなもの”...と言います。つまり、どちらも、“重要な情報

を・・・保持している”...ということです」

「はい、」

天体は...

  特定の・・・偏光状態の光を・・・放出”...するように...特定の・・・フレーバーのニュ

ートリノも・・・放出”...しているのです」

「それが...」支折が言った。「天文学にとっては、重要なわけですね?」

きわめて重要です!

  その、フレーバー測定することによって、ニュートリノの...発生源内部で起こっている、

メカニズムプロセスを・・・人類が知ることが出来る”...わけです。

  ただし...空間を移動中・・・ニュートリノがどのように変身して来たかを考慮し・・・元の

姿を推計しなければならない”...というわけです」

「うーん...」支折が、うなった。「大変そうですね...」

「まあ...」淡島が、眼鏡に手を当てた。「大変なのは、承知の上です...

  いいですか...“ニュートリノのエネルギー飛行距離を・・・正確に測定できれば・・・ニュ

ートリノ振動のサイクルの・・・どの時点で捕捉したか・・・”...が分かるわけです。そして、

3種類のフレーバーの・・・相対的な比率計算することができる”...わけです...」

「そうすると...」支折が、肩をかしげた。「発生源内部が...見えてくるのでしょうか?」

「そうです...

  ま、残念ながら...現在の技術水準では...まだ、そこまでの精度では測定できないようで

す。 “1987年2月23日/大マゼラン星雲内で起きた“超新星SN1987A”からのニュートリ

を、“カミオカンデ”検出しましたが...およそ、16万光年飛行し、到達しています...」

「はい...

  16万光年ですか...天の川銀河の直径は、約10万光年ですよね。それよりも、大きい距離

なのですね、」

「そうなりますねえ...

  大マゼラン雲伴銀河です。したがって、より質量の大きい、天の川銀河の周囲を公転してい

ます。その外から、天の川銀河・空間に入り、オリオン碗に達し、太陽系を通過したわけでしょう。

約5万パーセク(1パーセクは年周視差1秒/30兆8600億キロメートル/3.259光年)/16万光年の距離になり

ます。

  その間の...ニュートリノ振動による・・・変身回数は非常に多く・・・フレーバーが混ざり

合った状態...になっているわけです。“この状態を・・・追跡し続けるのは・・・困難”で...

私たちには、ボヤけてしか見えないことになります...」

「はい...」

「しかし、そこで...ひと工夫します...

  その代わりに...“フレーバー・伝播行列(でんぱんぎょうれつ)と呼ばれるもので表される、“統計

平均”を用いるのです。

  詳しいことは、“参考文献”には載っていませんが...この“行列式”を用いれば...観測さ

れたフレーバーの比率から・・・元のフレーバーの比率を・・・推定できる”...のだそうです」

「うーん...ものすごい執念ですね...?」

「はは...執念ですか...

  ま、そうかも知れません。しかし、真理の探究心と言って欲しいですね。純粋な、“学問的・・・

真理の探究心”でしょう。

  天文学の場合は、あらゆる学問の中で、“最も・・・純粋な学問”だと言われています。ほとんど、

経済性や、欲望の原理とは結びつかないからです...」

「星を...」支折が言った。「見ているのですものね...ものすごい、ロマンチストということかし

ら?」

「そうですね...大いなるロマンチストでしょう」

 

“フレーバー・伝播行列”ようなものは...」高杉が、楽しそうに手を組んだ。「天文学者は、そ

ういう工夫得意なのでしょう...

  地球表層から...太陽系 〜 天の川銀河 〜 深宇宙を見つめて...“この宇宙の全て”を知

ろう、という野心に燃えているわけですからねえ。

  それには、物理学化学生物学数学神話など...あらゆる知識総動員し...その上

で...大いなる想像力を働かせ・・・その時代の・・・大宇宙を構造化してきた”...わけで

す。

  考えてみれば...“その時代の・・・人類の英知の結集”であり...“その時代・・・その時代の

・・・壮大なロマン”...だったわけです」

「はい!」支折が、明るく答えた。

「ただし...」高杉が、手を立てた。「いいですか...

  “文明の第1ステージ/農耕・文明の曙”時代は...まあ、代表例として...“中世ヨーロッ

パの・・・天動説”を上げておきましょう。“地動説の先駆者・・・ケプラー、ガリレオ”など、当時の

キリスト教的・異端者が登場して来るのは、ルネッサンス(文芸復興)先駆(せんく)の頃になります」

「はい、」

「そして、次の...

  “文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”の時代の、天文学/宇宙論は...非常にエネ

ルギッシュメカニカルです。ビッグ・バンや...局部銀河群超銀河集団...そして、これらが

集まったグレート・ウォールの発見などがあります。

  また、その逆に...何もない、数億光年にわたる泡のような...ボイドと呼ばれる宇宙構造

の発見もありました。そして、ニュートリ・天文学も、この時代区分に含まれるのかも知れません。

基本的には...“宇宙の・・・メカニカルな構造解”...を求めているからです」

  支折が、うなづいた。

「今のところ...

  ニュートリ・天文学に...“内省的要素”は見えていません。しかし、“文明の第3ステージ/意

識・情報革命”時代天文学/宇宙論は...これとは、ずいぶんと風景が違うもの...にな

るのかも知れません」

「はい...」

「肝心なことは...

  人間の・・・主体の・・・発現というものが...“非常に・・・大きな意味を持って来る”

予測されることです...先駆的量子力学では、主体性/参与者というものが...大きな比

を占めるようになりました。

  “量子もつれ”などで、“非・局所性”が拡大しています。そのエキゾチック(異国的)な世界が...

“心の領域”親和性拡大して行くのかも知れません。過不足の無いリアリティー世界におい

て、“共時性/意味のある偶然の一致”が現れるのは、それを証明しているように思います。

  “文明の第3ステージ/意識・情報革命”時代では...その絶対主体性/“非・局所性”が、

大きな意味を持って来ることが...予想されます...」

「うーん...」支折が、上体を大きくかしげた。「絶対主体性ですか...」

「そうです...

  【人間原理空間・ストーリイの・・・原型/世界軸】...の様なものが...見えて来るかも知

れません...つまり、そういう時代の...天文学/宇宙論ということになります...

  “宇宙のメカニカルな・・・構造解”の追求と同時に...人間性発現の・・・内省的要素の探

求”は...デカルトの言う、“物の領域と・・・心の領域の・・・統合”へ向かい...“私たちの

在の姿/骨格を・・・大変動させる”...ことになるかも知れません」

「あの...」支折が言った。「これまでの、天文学的な成果は...踏襲(とうしゅう)されないのでしょ

うか?」

「もちろん...」高杉が言った。「踏襲されます..

  文明とは、そうした歴史の積み重ねの流れです。例えば、ニュートン力学古典になったとし

ても、近似値的には正しく...貴重な歴史として残るわけです」

「はい...」 

多くのニュートリノ・・・ パイ粒子崩壊!

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「さて...」高杉が言った。「ニュートリノを構成する、フレーバーの比率の話に戻りましょう」

「はい...」支折が、自分のノートパソコンの、モニターをのぞいた。

「ええ...」高杉が言った。「例えば...

  “宇宙空間に存在する・・・多くのニュートリノ”...というのは...光子陽子の・・・

高エネルギーの衝突によって・・・生成された...と考えられています。

  “このような過程”は...@ “宇宙サイズの・・・粒子加速器”(/例えば...超新星爆発後に、宇宙空

間を広がって行く衝撃波や...あらゆるサイズの、ブラックホールから出ているジェットなど、)...そして、A “宇宙線が

・・・宇宙背景放射と衝突する・・・深宇宙において”...目撃されるようです」

「はい...」支折が、うなづいた。「ええと...

  “超新星の・・・衝撃波”や...“ブラックホールから出ている・・・ジェット”...それから、“宇宙

線が・・・宇宙背景放射のマイクロ波と衝突している・・・深宇宙”...で見られるわけですね?」

「そういうことです...

  ちなみに、深宇宙というのは...数十億光年から100億光年というような、“深い/遠い・・・

宇宙”ということです。100億光年遠い宇宙からやって来た光は...100億年過去から、現在

に届いた光ということでも、あるわけですね」

「はい、」

「さてと...」高杉が、モニターに肩を寄せた。「いいですか...

  光子陽子の・・・超高エネルギー衝突によって...まず...“荷電・パイ粒子”が生ま

れます...そして、不安定な...パイ粒子は・・・ミュー粒子ミュー・ニュートリノに崩壊”

します。

  そして、さらに...ミュー粒子の方は...電子電子・ニュートリノミュー・ニュートリノ

に・・・崩壊”...して行きます」

「うーん...」支折が、モニターを眺め直した。「つまり...

 光子陽子の・・・超高エネルギー衝突”によって...“荷電・パイ粒子”が生まれるわけです

ね。この不安定なパイ粒子は...すぐに、ミュー粒子と・・・ミュー・ニュートリノに崩壊”して行く

わけですか...そして...ミュー粒子の方は・・・さらに、電子と、電子・ニュートリノミュー・

ニュートリノに・・・崩壊して行く”...ということかしら...?」

「その通りです...」高杉が、脚を組み上げた。「ここでは...

  “電子・ニュートリノが・・・1個生成”される一方で...“ミュー・ニュートリノは・・・2個生

成”され...“タウ・ニュートリノは・・・生成されない”...わけです。これが...“パイ粒子崩

で生成される・・・ニュートリノのフレーバー比率”...になります。

  つまり...この過程で生成される、ニュートリノ“フレーバーの比率=( μ τ  )”

は、(1: 2 : 0 )...ということになります。これは...電子・ニュートリノが1個ミュー・ニュ

ートリノが2個タウ・ニュートリノがゼロという意味です...いいですね...?」

「はい...」支折が、髪を揺らし、頭をかしげた。

「ちなみに、この場合...

  “観測時のフレーバー比 ( 比 率 )は...“伝播行列”を用いると...( 1 : 1 : 1 )になるそう

です。この辺りは、おそらく、高度な数学と、コンピューターを用いるのでしょう。

  いずれにしても...“フレーバー比の・・・観測データ”が、( 1 : 1 : 1 )以外なら...それらの

ニュートリノ発生源は...“パイ粒子崩壊・・・によるものではない!”...ということになる

わけです。

  言い換えると...光子陽子の・・・超高エネルギー衝突によって...“荷電・パイ粒子

が生成される経路・・・でできたニュートリノではない!”...ということになります。それは、

他の発生源から来たものだ、ということです」

「うーん...そうかあ...」支折が、頬に手を当てた。

「ただし...」高杉が言った。「いいですか...

  “パイ粒子”が...他の粒子と衝突したり・・・磁場によって曲げられた際に・・・放射線

放出したりして・・・エネルギーを失う場合...もあるのです。こうした場合、“パイ粒子崩壊”

によってできるミュー・粒子は...もはや、“高エネルギー・ニュートリノ源”ではなくなっています」

「はい、」

「ええ...」高杉が、モニターに目をやった。「“パイ粒子”が...

  “高エネルギー・ニュートリノ源”ではなくなった場合...“初期フレーバー比 = ( 0: 1 : 0 )”

になるようです。そして“地球到達時のフレーバー比”は...“伝播行列”を用いると、( 1 : 1 :

1 )ではなく...( 4 : 7 : 7 )となるようですねえ。

  ええ、このことについては...“参考文献”からは...これ以上の細かいことは分かりません」

「うーん...」支折が、コクリとうなづいた。

「ともかく...」高杉が、テーブルに肘を置いた。「ここから分かることは...

  “低エネルギーのフレーバー比”( 1 : 1 : 1 )...“高エネルギーのフレーバー比”( 4 :

7 : 7 )という観測結果が得られれば...逆に、“パイ粒子崩壊”が起こった場所の、粒子密度

と、磁場強度推測できる、ということです...転んでも、ただでは起きない、ということでしょう」

「...」支折が、小さくため息をついた。

   

「ええ...」淡島が、支折を眺め、白い歯を見せた。「いいですか...

  “パイ粒子”は、エネルギーが高いほど...より多くの物質と反応したり...それから、銀河

磁場曲げられる時にも...エネルギーを失う確率高くなるのです。これは、いいですね?」

「はい...」支折が、つぶやくようにうなづいた。

ニュートリノは...」淡島が、続けた。「いわゆる...

  “ベータ線(通常は・・・負電荷の電子の流れ)源”からも飛来して来ます。もう少し、具体的に言いますと、

宇宙の粒子加速器では・・・高速の原子核が、パイ粒子を交換するか・・・あるいは単に分

、しています。その際...“高速の・・・中性子線を放出”...します...」

「...」

“その中性子が・・・放射性ベータ崩壊を起こし・・・電子電子・ニュートリノを放出”...す

るわけです」

「うーん...」支折が言った。「ええと...つまり...

  “ベータ崩壊”というのは...放射性元素原子核が...“電子と・・・反・ニュートリノの対”

または、“陽電子と・・・ニュートリノの対”を放出し...“別の原子核に・・・転換する現象”...で

すよね?」

「そうです...」淡島が、うなづいた。「その、“ベータ崩壊”では...“電子と・・・反・ニュートリノ

の対”が放出されるわけですが...反・ニュートリノについては、また別の機会に話ましょう」

「はい、」

「ともかく、いいですか...

  “中性子が・・・放射性ベータ崩壊を起こすと・・・電子と電子・ニュートリノが放出される”

という所に話を戻します。

  この場合...“フレーバー比”は、(1 : 0:  0 )です。電子・ニュートリノが、“1個生成”される

わけですから、こうなりますね...そして、“地球到達時のフレーバー比”は、“伝播行列”で計算

すると...(5 : 2: 2 )です...」

「うーん...どうしてでしょうか...?」

「いや...」淡島が、笑って首を振った。「何度も言いますが...詳しいことは、“参考文献”には

掲載されていません。ともかく、計算では、そうなるそうです...」

「ふーむ...」高杉が、椅子の背に上体をあずけ、ゆっくりと腕組みをした。

   

「さて...」淡島が、高杉に言った。「高杉さん、どう思いますか...?

  “最初のフレーバー比”が...どのような値であっても...地球に飛来するミュー・ニュートリ

と、タウ・ニュートリノは...対称性により・・・同数・・・”...になります」

「はい...」

「そもそも...

  タウ・ニュートリノ生成する天体物理学現象は...いまだ知られていません。しかし、それに

も関わらず...タウ・ニュートリノが・・・必ず・・・ミュー・ニュートリノと・・・同数観測されると

いう事実は・・・特筆すべき謎・・・”...でしょう...?」

対称性の・・・背後に潜む謎は...」高杉が、体を前に乗り出した。「まだ、解明されていな

いわけですね...?」

「そうです...」淡島が、うなづいた。

「うーむ...

  私には...データが少なくて、よく理解できませんが...大変な謎のようですねえ...」

「はい、」

                           
  

「さて...」淡島が、ネクタイに手をやり、支折に言った。「いいですか...

  “フレーバー比”から...“ニュートリノを生成している天体が・・・どのように活動している

を・・・識別することが可能...になります。

  これまで、他の“情報・エネルギー”からは得ることができなかった、独特の...“ニュートリ

ノ・情報”...が得られるということです」

「うーん...“ニュートリノ・情報”...ですか、」

「そうです...

  いいですか...ニュートリノは...ガンマ線と、宇宙線とともに...“宇宙最高ベルのダイ

ナモ(発電機)の、“動的メカニズムや、エネルギー量を・・・詳細に説明する”...と考えられ

ています。

  これによって、“宇宙の粒子加速器”(/超新星爆発後に、宇宙空間を広がって行く衝撃波や...あらゆるサイズ

の、ブラックホールから出ているジェットなど、)が...電磁力だけで動いている(/ニュートリノは生成されない)のか、

重粒子が関わっているのか(/ニュートリノが生成される)が、分かると言われています」

「あと...」高杉が言った。「“宇宙線の生成の謎”...がありますね、」

「ああ、はい...」淡島が、うなづいた。「そうですね...

  天文学者が抱く、“宇宙の謎・トップ10”1つに...最高エネルギー・レベルの宇宙線

・・・どのようなメカニズムで生成されるのか?”...というがあります。その、“解(かい/答

え)へのアプローチに...ニュートリノが、一役買ってくれるかも知れません」

「そのようですねえ...」高杉が言った。「ともかく....

  一部の宇宙線は・・・非常にエネルギーが高く・・・既存の物理学とは相容れないようにさ

え思える”...と言いますね。

   しかし...こうした宇宙線を吐きだす天体の内部も・・・ニュートリノなら、調べることが

可能”...ということです」

さらなる謎が...」淡島が言った。「深まるのが科学ですが...

  近い将来...こうしたことが解明される日が来るのかも知れません。それを、期待して、待ち

ましょう」

「はい!」支折が、強くうなづいた。

            wpeA.jpg (42909 バイト)                    

ニュートリノは...」高杉が言った。「その他自然現象についても、明らかにするだろうと言わ

れていますねえ...

  例えば...“暗黒物質・粒子の・・・崩壊”...によって、ニュートリノが...“フレーバー比

= ( 1 : 1 : 2 ) ”生成され...観測時には、およそ...“フレーバー比 = ( 7 : 8 : 8 ) ”

なると予想されています」         ・・・・・(/ これ以上の詳細は、“参考文献”にはデータがのっていません 

「あの...“暗黒物質”は...まだ発見されていないのではないかしら?」

「そうですが、予想はできるわけです...

  素粒子物理学粒子は、そうやって予測を立て、加速器実証実験の中で、観測して来てい

るわけです」

「ああ...はい...」支折が、うなづいた。「そういうことなのですね、」

「さて...

  それから、“量子重力理論”によると...時空の構造は・・・ミクロ・スケールで・・・波打っ

ている...と言われますねえ...

  超高エネルギーのニュートリノは・・・波長がきわめて短い...ために、そのような、

小なゆらぎを・・・検出できるかも知れない”...のだそうです。まあ、この辺りになると、第一

フロンティア(最先端)の状況になりますね...」

「はい、」支折が、うなづいた。

「それから...

  時空ゆらぎが・・・フレーバーを変化させ”...“観測時のフレーバー比 = ( 1 : 1 : 1 ) ”

を、作り出しているという、可能性もあるそうです。

  まあ、これも、これ以上のデータがありません。また、“参考文献/論文”1本読んだだけ

私などには...理解できない...難解な領域になります。

  しかし、とりあえず、論文を追って説明をすれば...将来、“( 1 : 1 : 1 ) 以外の観測結果”

が、得られるようなことがあれば...“ある種の理論”を葬り去ったり...量子重力効果が、重要

になるエネルギー・レベルを...決定できるかもしれない...といいます」

「うーん...」支折が、口をすぼめて、微笑した。「これは、聞き流しておいて、いいわけですね?」

  江里香が、支折を見て顔を崩した。

「そうですね...」高杉も、笑った。「私にも、分かりません...まあ、ニュートリノの概念を把握し

てくれれば、それで十分でしょう...」

「はい、」支折も、笑った。

 

「ええ...」高杉が、モニターに顔を寄せた。「他の...特殊なプロセスとして...

  重いニュートリノが・・・軽いニュートリノ崩壊して・・・フレーバー比が、変わるコトがあ

...と言います。

  いいですか...太陽・ニュートリノの研究から...よりも、軽いことが知られてい

ます...しかし、どちらが軽いのかは、実は...“分かっていない”...のだそう

です。

  もし...“フレーバー比 = ( 4 : 1 : 1 )”観測されれば...ニュートリノ実際崩壊して

いること...そして、最も軽いこと...が判明することになると言います。

  が、もし...“フレーバー比 = ( 0 : 1 : 1 )”なら...が...“最も軽い”...ことにな

るのだそうです」

「うーん...」支折が、口元の微笑を手で押さえた。「...はい...聞き流しておきます...」

  高杉が、黙って、うなづいた。

 

「ええ...」淡島が言った。「可視光宇宙を見ることから始まった天文学は...赤外線マイ

クロ波電波X線ガンマ線と...少しずつ、その範囲/その窓を、広げて来ました。

  そして...“次に、天文学の歴史を受け継ぐのが・・・ニュートリノ だ”...と言われていま

す。“今後10年間は・・・ニュートリノ天文学の黄金期になるだろう”...と予想されています。

私たちは、今、その基礎部分を学んでいることになります」

「はい!」支折が、コクリとうなづいた。

 

         wpe4F.jpg (12230 バイト)            

「ええ...二宮江里香です...

  ご静聴、ありがとうございます。このページは、一応、ここで終了とします。次は、

引き続いて...《ハイパー・カミオカンデ構想》のページへ移行します。これは現

在の“スーパー・カミオカンデ”の、後継になります。こちらの方も、どうぞ、ご期待

下さい!」

 


 

 

 

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