My Work Station/group C/量子情報科学/見るだけ量子コンピューター |
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トップページ/Hot Spot/Menu/最新のアップロード 担当 : 高杉 光一 |
プロローグ | 2011. 1.14 | |
No.1 | 〔1〕 “観測/見ること”により・・・不要な相関を切る! | 2011. 1.14 |
No.2 | <3次元的に結合した・・・大規模なクラスター状態を作る> | 2011. 1.14 |
<参考文献> 日経サイエンス /2011 - 02 NEWS SCAN/国内フラッシュ/量子情報 見るだけ量子計算機 |
プロローグ 私の、2011年の初仕事になります。それから、私としては初めて、《量子情報科学》を担当し ます。量子コンピューターの威力は、すでに知られているわけですが、これを創り出すとなるとま だ難しく、多くの難関があるようです。 《当ホームページ》は、“日経サイエンス”をウオッチしているわけですが、この科学雑誌でも、 情報はパラパラとあるだけです。でも、実際には、次世代をになう基盤的テクノロジーとして、世 界中でさかんに研究が進められています。旧来のコンピューター開発史を踏襲する、次世代コン ピューター開発の展開、と聞いています。 ええと、今回は...“日経サイエンス/NEWS SCAN/国内フラッシュ” に、量子コンピュー ターに関するホットなニュース記事がありましたので、レポートしておきます。論文ではなく、ニュ ースですので、詳細なものではありません。でも、研究の動向は、うかがい知ることができると思 います」
〔1〕 “観測/見ること”により・・・不要な相関を切る!
のは、難しいようですね?」 「そうですねえ...」高杉が、顎を撫でた。「まだ、数ビットの計算をする実験が、やっとのようで す。そこで、近年... “回路を組んで計算させる代わりに・・・あらかじめ作って置いた・・・量子もつれネットワ ークの素子を・・・見る/観測することにより・・・量子計算を進める方法”...が提唱されて います。これは、“量子コンピューターを・・・より実現しやすい方法”として、期待されています」 「ふーん...」茜が、頭を斜めにした。「どういうものなのでしょうか?」 「はい...」高杉が、モニターに目をやった。「まず、このニュースは... NTT/徳永裕己・研究主任たちと、京都大学/大学院生/藤井啓祐さんが...この、“見る だけ=量子コンピューター”に用いる“量子もつれ・・・ネットワーク”を、効率よく作成する方法を 考案し、Physical Review Letters 誌/12月14日号に、発表したということのようです...」 「はい、」茜が、手を握った。「それが、ホットなニュース記事、ということですね?」 「そうです...」高杉が、うなづいた。「“見るだけ=量子コンピューター”を実現するための、難 関となる、“量子もつれ・・・ネットワーク”を、効率よく作成する方法を考案したということです」 「はい、」 「量子コンピューターというのは... 特定の素子を、“量子もつれ”という相関状態にすることで...膨大な数の計算を同時に実行 し、高速に計算するものです。しかし、狙った素子を、正確に“量子もつれ”にするのは、技術的に 非常に難しいのです。 また、“量子もつれ”を操作するのは、高い確率でエラーが起こります。これが、つまり、量子コ ンピューターを創り出す上で、大きな障害になっていると言います」 「はい...それで、まだ、数ビットの計算をするのが、やっとだということですね、」 「そうですね... 一方、“見るだけ=量子コンピューター”の方は...素子を組み上げて行く従来の方法とは、 逆の方法を取ります。 それには、まず、“量子素子の全体を・・・クラスター状態と呼ばれる・・・特殊な量子もつれ 状態”、にします。そして、“特定の素子を・・・計算プログラムに従って・・・観測/見て行く”、 という手法を取るのです」 「はい...」茜が、まばたきした。 「【量子力学の原理】によれば... “量子もつれ状態は・・・観測することで・・・壊れる”わけです。したがって、“観測によって ・・・不要な相関を破壊/排除する”、という方法を取るのです。つまり、“クラスター状態から ・・・不要な相関を排除することによって・・・必要な相関を形成する”、という方法なのです」 「ああ...」茜が、ゆっくりうなづいた。「はい... つまり...その計算そのものは...見る/観測するだけなので、簡単なわけですね。でも、多 数の素子で、“クラスター状態・・・特殊な量子もつれ状態”を作る方は、難関だったというわけ ですね...それに、NTT・京大チームは、成功したと言うことですね?」 「そうです... “量子もつれ・・・ネットワーク”を、効率よく作成する方法を考案し、“見るだけ=量子コンピュ ーター”の実現に、道を切り開いた、ということでしょう」 「はい」
<3次元的に結合した・・・大規模なクラスター状態を作る>
「お願いします、」茜が言った。 「NTT・京大チームは... “量子もつれ操作の・・・エラー率が高くても・・・効率的にクラスター状態を作れる方法を 開発した”...ということです。これは、くり返しますが、“見るだけ=量子コンピューター”の実 現に、“道筋を示す”、ことになるそうです」 「大きな1歩に、なるのでしょうか?」 「門外漢の私には、何とも言えませんが、1つの難関をクリアしたということでしょう... さて、いいですか...この“クラスター状態”を作る際は...回路と違って特定の素子どうしを、 “量子もつれ”にする必要はないのです。まず、核になる素子をたくさん用意し、たまたま近くに来 た素子に、“量子もつれ”の操作を施し、成功したら次の素子を待つというわけです。 それはちょうど...溶液中で結晶が成長するように...確率的に“量子もつれ”を成長させて、 “素子が放射状にもつれた星”を、同時に大量に作るのだそうです。その後、“その星の・・・枝 どうしを・・・もつれさせる”、といいます。 “うまく行ったら・・・そのまま保持”し、“失敗したら・・・枝ごと切り離す”、といいます。そうやって 最終的には、“3次元的に結合した・・・大規模なクラスター状態”、ができるということです」 「そこから...」茜が、モニターの方に顔を寄せた。「“特定の素子を・・・計算プログラムに従っ て・・・観測/見る”という...計算のプロセスになるわけですね、」? 「そうですね... 素子を、“量子もつれ”にして、組み上げて行くのではなく...木から仏像を彫り出すように... “大規模なクラスター状態から・・・観測によって・・・彫刻して行く”、ということですかね、」 「はい、」 「ええ、いいですか... 計算回路を順に組み上げて行く、“従来の方法”では...“もつれ操作・・・量子もつれ操作”の 成功率が10%の場合...素子3個を“もつれ”させるだけで、成功率は0.1%になってしまうの だそうです。 しかし、この、“分散して作る方法・・・同時に大量に作る方法”なら...成功率が10%でも、 比較的短時間で、“大規模な・・・クラスター状態”を作れるのだそうです」 「はい...」茜が、うなづいた。 「“量子もつれ”の操作は.... 通常の加工とは違うといいます...この加工では、“もつれ操作”に失敗すると、素子にその 記憶が残るのだそうです。当然、それは、計算にも影響するわけですね」 「単純な操作に見えても、奥が深いということでしょうか?」 「そうですね... ともかく、NTT・京大チームは...“もつれ操作”の成功率が10%しかなくても...この方法で 確実に...量子計算ができることを示したようです」 「はい、」茜が、大きくうなづいた。 「ええ...」高杉が、インターネット・正面カメラを見た。「ニュース記事なので... これだけのデータしかありませんが...“量子コンピューター”の開発の一端は、垣間見ること ができたのではないでしょうか。 それから...この方法は、イギリス/オックスフォード大学などの研究チームも...独立に発 見し、同じ学術誌/Physical Review Letters 誌に発表しているそうです。この、“見るだけ= 量子コンピューター”は、世界的にも、研究が加速しているそうです」 「はい!私たちも、引き続き注目して行きたいと思います!」 茜が、両手をそろえ、深く頭を下げた。それから、ミケの頭に手を置いた。
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