MenuMy Work Stationgroup B宇 宙 物 理 ・ 宇 宙 論宇宙のトポロジー

  宇宙のトポロジー   

              ( トポロジーとは、位相、あるいは位相幾何学と言う意味です。 )  

                wpeA.jpg (42909 バイト)  wpe8.jpg (26336 バイト)      wpeB.jpg (27677 バイト)

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード/         担当: 高杉 光一 

 

                                              No.3.............(1999.7.17.) 

  

  1999年7月号の日経サイエンスに

    “無限の宇宙は錯覚か”

                   J.P.ルミネ / G.D.シュタルクマン / J.R.ウィークス

                   

という論文がありました。そして、その副題に、こう書いてありました。

 

  多くの科学者が宇宙は無限だと予言している。しかし、実は宇宙は有限で、

無限に見えるのは単に有限の宇宙がくり返し見えているだけなのかもしれな

い。

 

(  実は、私は宇宙論からはしばらく離れる予定でいました。ところが、この論文は21世紀の宇宙

論の展望に、非常に重要なものになると感じました。また、天文学や宇宙論にも、多様な分野と多

様な研究機関があるのだという意味からも、ここに取り上げておくべきだと考えました。ただし、ごく

概略だけに留めます。)

 

 

 (1) 3次元トーラスとは?

 

  無限体積の箱(内壁が鏡の箱)、あるいは万華鏡というような、鏡の反射が作り出す無

限の世界というものがあります。そこで、実はこの宇宙で観測にかかる数億とも数

十億とも推計されるような銀河は、そうした虚像が含まれているのではないかという

考えがあります。つまり宇宙は有限であり、それほど多くもない数の銀河が、無限に

映し出されているのではないかという概念です。

 

  むろん、宇宙空間に鏡などはありません。登場するのは、トーラスという概念で

す。このトーラスとは、あの穴の開いたお菓子のドーナツの形のことです。これがつ

まり、ユークリッド的2次元トーラスとして知られるドーナツ空間です。たとえば、この

表面に直線を引いて行けば、ついには逆の方向から元の位置にたどり着きます。

そして、この2次元トーラスの概念を3次元空間にステージアップしたのが、いわゆ

るこの宇宙のモデルである3次元トーラスです。そして、例えばこの3次元トーラスの

中で、減衰しないレーザー光線を発射したらどうなるでしょうか。直感的理解はちょ

っと難しいものがありますが、2次元トーラスと同じように、レーザー光線は3次元空

間の背中の方からもとの位置に戻ってきます。

 

  つまり、この我々の宇宙空間のトポロジーは、この3次元トーラスのようなもので

はないかという概念が再浮上してきているのです。むろん、3次元トーラスは最も単

純な場合であり、実際にはさらに複雑なものが予想されます。近年の宇宙物理学

の教科書では、宇宙空間は“超球面”か、“無限のユークリッド空間”か、“無限の双

曲的空間”の、どれかでなければならないと言っています。私も、このホームページ

の“最新・宇宙論の動向”の中でそう書いてきました。しかし、他のトポロジーの可

能性というものもやはりあるようで、1990年代になってから、この分野はにわかに

活気づいてきたと言われます。 これは、観測技術の進展や、銀河分布の立体地図

の作成等から、宇宙のトポロジーが観測的実証の時代に突入したことが大きな要

因のようです。

 

  宇宙は有限なのか無限なのか、大きさはどのぐらいなのか...こうした疑問も、

近々この宇宙空間のトポロジーの研究から分かってくるかもしれません。

 

 

 (2) 3次元トーラスの検証

 

    この宇宙が、実際に3次元のユークリッド的トーラスだとしたら、それはどのよう

に検証できるのでしょうか。これは、率直かつ具体的に言えば、同一の銀河が立方

格子( 2次元の場合は平面の正方形になりますが、3次元だと立方体になります。)の上にくり返し現れてく

れば、これは明らかに3次元トーラスだと分るといいます。あの万華鏡のように、同

じパターンがくり返し、立体的に現れてくるわけです。

 

  つまり、検証は、このわれわれの宇宙空間に、同じ銀河や同じ銀河団がないか

どうかを見ていけばいいわけです。もしそこにくり返しのパターンを発見できたら、ま

さに文明史に残る大発見となります。むろん、3次元トーラスが証明されれば、この

宇宙は有限ということにもなるのです。無限大の宇宙に、くり返しのパターンは現れ

ないわけですから...

 

  では、具体的にはどのような観測がなされているのかを、簡単世説明します。た

だし、宇宙空間の膨張と銀河自身の進化があり、事態は複雑です。つまり、同一の

銀河でも、時間の推移により、全く同じ姿では存在していないということです。これ

は逆に言えば、立方格子の上に現れた形の違う銀河が、実は同じ銀河の時間差の

姿だということもありうるわけです。そこで、宇宙結晶学というような方法論も模索さ

れているようです。

 

  現在行われている研究を、簡単に提示しておきます。

 

<1>

  地球から10億光年以内にある銀河に対し、くり返し現れる像はないか...

           確認無し.....これはどんとどん範囲を拡大して行きます...

<2>

  クェーサーの分布に、くり返し現れるパターンはないか...

             確認無し....

            クェーサーは非常に明るい天体であり、標識としては最適です。

<3>

  宇宙の背景放射からの幾つかの検証...

 

  <この分野の、21世紀初頭からの新展開に期待しています。>

 

                                                                           house5.114.2.jpg (1340 バイト)