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   宇宙論における人間原理
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 トップページHot SpotMenu最新のアップロード           塾長 / 統括責任者 :  高杉 光一 

 

 

 

 地球に生命が発生したのは、地球上では水が液状で存在し、温度範

囲も適当であったためだと説明されている。しかし、これは逆で、生命

発生の条件を説明するのは、生命の存在そのものであると言う考えが

ある。人間原理と呼ばれるこの考え方は、宇宙の存在をも説明する。

 

<サイエンス・1982年2月号 “宇宙はなぜ存在するか/G・ゲール”>

                                       の巻頭文より

 以後、上記サイエンスの論文を参照しつつ、私自身の風景をくみ上げて

いきます。

 

(7月12日/上記部分を追加)

 

 人間原理  anthropic principle

    (この英語は、ギリシア語で人間を意味する、anthropos..........からきています)

 

 この宇宙には、“物質”と“生命”と“意識”という三つの形態が存在します。

このような姿をもつ宇宙を、我々はどのように解き明かしていったら良いの

でしょうか。ここでは、宇宙物理学の窓から、“人間原理”の立場に立ち、こ

の存在世界の風景を眺めていきます。

 

 ( ただし、僕はこのような分野の専門家ではありません。また、現在の世

界観よりも、もっと別の世界観はないものかと言う、好奇心のバイアスがか

かっています。この事は、ご承知置きください。)

 (さらに、もう一言。この Homepage は、私自身も学習しつつ、試行錯誤を

繰り返しながら、匍匐前進しています。推敲や前後の関係、あるいは論理

において、見苦しい所も出てくると思いますが、どうかご容赦ください。)

 

 宇宙開闢の風景

 

  (1)脱出速度と後退速度 

 

 宇宙開闢(かいびやく)のビッグ・バンの概念については、すでに定着した感さ

えあります。この概念は、全宇宙に瀰漫(びまん)するマイクロ波の背景輻射と

も一致し、ますます強化されつつあるようです。

 さて、このビッグ・バン・モデルにおいて、“脱出速度”と“後退速度”の関係

が、現在の宇宙と多少でも違っていたら、どうなっていたでしょうか?その場

合、今日在るような極めて等方的かつ安定した、超銀河団型の宇宙は、成

立していなかったでしょう。“脱出速度”とは、簡単に言ってしまえば、ビッ

グ・バンの爆発力です。“後退速度”とは、宇宙の全質量が、収縮しようとす

る引力、あるいは重力です。したがって、宇宙の全質量が大きいほど、収

縮する力も大きくなるわけです。

 

(観測されているところでは、この二つの速度は、きわめて均衡しているよう

です。その精妙な均衡の上に、現在の大宇宙の姿が在るのです。この様な

均衡が、果たして偶然に起こりうるものなのでしょうか?これを、私たちは、

どう解釈したらよいのでしょうか?)

 

 もう少し詳しく見ていきましょう。この“後退速度”、つまり収縮する力の方

が、はるかに大きかった場合、宇宙はもっとずっと早くに収縮に移っていた

はずです。そうなると、今在るような穏やかな宇宙は、成立していなかった

でしょう。また、生命を育むに十分な時間もなかったはずです。

 一方、ビッグ・バンの爆発力とは、本来どのようなものなのでしょうか?素

粒子論等で、限りなくゼロの瞬間に接近していますが、いまだマイナスの領

域には入っていません。つまり、宇宙が開闢する以前の状態、及びその諸

条件が準備されている作業場は、全くの未知数なのです。

 

(それにしても、一体そこで、誰が作業をしていたのでしょうか?)

 

 いずれにせよ、この爆発力の方がはるかに大きかった場合、どうなってい

たか?おそらく、この宇宙は超新星のように、一気に吹き飛んでいた風景

が想像できます。そして、宇宙は永遠に膨張し、再び収縮することはなかっ

たでしょう。 このような宇宙がいくつあろうとも、我々には何の関係もありま

せん。このような宇宙は、生命が生まれるには程遠い状態だからです。宇

宙が複雑に構造化するには、あまりにも時間がなさ過ぎるのです。

 

 では、今ここにある宇宙とは、どのようなものか?繰り返しますが、“脱

出速度”と“後退速度”が、非常に均衡した状態にあります。これは観測とも

一致しています。このことは、言い換えれば、ビッグ・バンの力と宇宙の全

質量の引力が、精妙に均衡し、実にうまく統制がとれていると言うことです。

何故なのでしょうか?そこに、何らかの意図があったのでしょうか?もしそう

だとしたら、その様なマクロ・レベルで、何が意図されていたのでしょうか?

この物質宇宙に、生命や意識が存在すると言うことは、すでにこのあたり

で、決定的な理由が含まれていたのでしょうか?

 

 ところで、この精妙なバランスも、やはりどちらかに微妙に傾いていること

は、大いに考えられます。つまり、もし、収縮する“後退速度”のほうが微妙

に強ければ、この宇宙はいずれは収縮を始め、内部の構造を崩壊し、元の

火の玉に戻ります。この場合、この宇宙の構造は、ビッグ・バンと収縮を繰

り返す、脈動型となります。一方、“脱出速度”のほうが大きければ、この宇

宙空間の曲率はマイナスと言うことになり、黒体輻射する閉じた空間ではな

いと言うことになります。が、いずれにせよ、この宇宙は、きわめて均衡し

た、まさに微妙なバランスの上にあるようです。

 

 (2)プランクの定数

     (量子論で、基本的な意味を持つ普遍定数)

 

 このビッグ・バン・モデルの宇宙で、生命が発生できる条件は、きわめて

限られているように見えます。いや,限られていると言うのは、当たらないで

しょう。実際には、およそ奇跡的とも言える条件が、幾重にも幾重にも積み

重なっているように見えます。

 例えば、プランクの定数が幾らかでも異なっていた場合、素粒子は、現在

の様な陽子、電子、光子というの姿をとらなかったでしょう。そうなれば、こ

の宇宙の物質は、現在の様な結晶化を見なかったはずです。つまり、“プラ

ンクの定数”というタガが外れたら、この宇宙の姿は、全く違っていたという

ことです。そうなれば、人間はおろか、星さえも存在していなかったでしょう。

 

(7月12日/追加)

 

 恒星系と生命支持星

 

 宇宙構造の規模から言えば、次は超銀河団、銀河団、銀河とくるわけ

ですが、ここではより身近な、恒星系の規模を考えてみたいと思います。

  

 (1)地球の奇跡的な環境

 地球にはまず、大量の水が存在しています。この HO が、固体でも気

体でもなく、わずか100℃の範囲内の液体で安定していることは奇跡的で

す。およそ太陽系の温度は、マイナス二百数十度の超真空から、超高温

超高圧の太陽中心部まで、大きな幅があります。太陽中心部の温度がど

のぐらいあるのか、予測の域を出ませんが、ともかく重力核融合炉の中心

部です。その温度は想像を絶します。ところが、地球という生命が生息して

いる場は、氷から水の沸点までの間のわずか百数十度Cという紙の様な

薄い範囲にあります。しかも、その中でも、数度Cからせいぜい三十数度C

の範囲で、大局的な表面温度はきわめて安定しています。何故、これほど

安定しているのでしょうか?また、何故これほど安定している場に、巨大生

命圏が出現しているのでしょうか?

 人間原理の立場から言えば、ここに知的生命が存在しているから、とい

うことでしょうか・・・・・つまり、宇宙は、知的生命をこの宇宙にかくまうため

に、この膨大な事業を展開してきたということです。このような考え方は、む

ろん科学的手法である演繹法のラチ外です。しかし、ビッグ・バン宇宙の初

期条件が不明の状況のままでは、およそ演繹法は不可能なのです。した

がって、人間原理とは、生物学も進化論も無関係であり、むしろ神の論理

に近いのかもしれません。

 

(何故、ここで、貴重な精華である生物学や進化論を外すかといえば、これ

らではビッグ・バンまで溯ることができないからです。)

 

 しかし、この宇宙で、確かなこととは何でしょうか?我々は、何を確かとい

えるのでしょうか?結局、確認できるのは、今ここに自分が存在しているこ

と・・・・・今の自分があり、今の地球があり、今の太陽があり、今の天の川

銀河があり、今の厳密にこの状況の宇宙が存在するということ・・・・・

 

(この今ある地球という奇跡的な生命圏から、過去を立証していかなければ

なりません。少々不安になってきました。しかし、ともかく、もう少し詳しく見て

いきましょう)

 

 (2)太陽系における地球の位置

 

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