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fig 5 と fig 6 はLucanus ibericus ・イベリクスの雌と同定される標本で、触角の先端は6節。Lucanus orientaris ・オリエンタリス雌は図示出来なかったが、これはイベリクスのシノニムとされる場合も有る。また両亜種は前胸の後縁のカタチや前胸腹板で区別出来ると記述される文献 (世界のクワガタギネス・木曜社) も有る。サイズは30mm台が多い。
とにかく触角6節の雌は、良く似ていて難しい。
触角の先端が6節になる主な種と亜種(又は形)は次の地域に分布している。
Lucanus tetraodon ・テトラオドン: 分布 南フランス、イタリア、コルシカ島、サルデーニア島、シチリー島、バルカン半島の一部 ?、北アフリカの一部 ?、など。
Lucanus ibericus ・イベリクス: 分布 ブルガリア、トルコ、中近東、コーカサス地方、など。
Lucanus macrophyllus ・マクロフィルス: 分布 シリア、トルコなど。
Lucanus orientaris ・オリエンタリス: 分布 トルコ、中近東など。
Lucanus laticornis ・ラティコルニス: 分布 シリア、トルコ、イランなど。
Lucanus cervus akbesianus ・アクベシアヌス: 分布 トルコ、シリア、イラン。
Lucanus cervus syriacus ・シリアクス: 分布 シリア、トルコ?
Lucanus cervus poujadei ・ポジャダイ: 分布 クルジスタン地方。
Lucanus cervus turcicus, ・トルキクス: 分布 ブルガリア、ギリシャ、トルコなど。
この他にも触角6節のものが、南フランスから記載されている。Lucanus hexaphyllus pontbranti (学名-へキサフィルス・6葉の) やLucanus cervus capreolus hexaphyllus, Lucanus tetraodon provincialis などであるが雌については何も解からない。 先にも書いたがこの南フランスには原名亜種触角4節のものと5節のペンタフィルスもいるので、触角に関して4節から6節まで全て見られる事になる。更にスペインと北アフリカモロッコあたりにはLucnus barbarrossa・バルバロスが分布している。この種も触角が6節になるが、雌はかなりの珍品。
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Lucanus cervus turcicus ・トルキクスに関して、原名亜種との明確な相違は触覚くらいである。またトルキクスはオリエンタリスの1つのバージョン(?)であるとする文献も有る位で、雄でも小型個体はオリエンタリスやイベリクスとされるものと区別が厄介である。
fig 7 はギリシャ産のトルキクスの雌と同定された標本で触角は6節。
fig 8 はブルガリア産。この個体は採集者が標本を送って来たもので雌はこの1個体のみ、確実にトルキクス雌だと思うのだが眼に縁取りが無い。もし眼に縁取りが無いのがこの種の雌ならば、簡単に見分けられるのだが、この様な個体を見たのは初めてで奇形なのかもしれない。更に見る事が必要。
またギリシャとブルガリアあたりには原名亜種のケレブスも分布しているが、これらの雌とは触角が失われていなければ簡単に区別可能。
このトルキクスの分布に関しては、古い文献に、Greece,ギリシャ、Turkey, トルコ、Asia Minor,小アジア、Constantinople,コンスタンチノープル(特にコンスタンチノープルにおいて多産)、と言う記述が見られる(LE NATURALISTE)。コンスタンチノープル(現・イスタンブール)のラベルが付いている標本は古いものしか見た事がないが、ここに現在も棲息しているのか興味が沸く。
近年採集されるのは殆どブルガリアとギリシャのようで、近年はこの産地のものが本邦に入る事が多いようだ。また調べた古い文献に記述は見当たらなかったがルーマニアにも本種がいるらしく標本も来ている様だ。更にギリシャに隣接するユーゴスラビアあたりまで分布しているかもしれない。
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fig 9 はトルコ産のLucanus cervus akbesianus ・アクベシアヌスの雌、ここのものは今までに見た殆どが黒色で艶が有る。ヨーロッパの東南部からトルコ、シリア等に分布している触角が6節の種、亜種(又は形)は多くが書かれている。その中でアクベシアヌス、シリアクス、ポジャダイ、これらは大型の雄において特徴(形)が顕著になるが、雌での区別はおそらく出来ない。
同じ地域に分布するオリエンタリス、イベリクスなどの雌の場合、このアクベシアヌス雌より丸くずんぐりした体形でフ節は若干短く、更に前胸背板などの相違も含め何とか区別出来そうに思える。
特徴の有るカタチをした触角を持つマクロフィルスやラティコルニスもこの地域で見られる種で、これらは雌でも触覚のカタチで区別出来そうだがまだ多くを見るに至っていない。また生息地が近い(重なる地域も有る?)ユダイクスとの触角の相違で容易に区別出来る。
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fig 10 Lucanus tetraodon ・テトラオドン雌。サイズは大きくても30mmの後半程ものしか見た事が無い。また、この種は普通触角は6節だが5節に見える個体もある。雄は大顎の一番大きい内歯が基部近くに出るので小型個体でも他の種との区別は容易に出来る。雌も
産地ラベルがしっかりしていれば似た種が他にいないので、どうにか同定することは出来ると思う。しかし、イベリクスなどとラベル無しで並べられると難しい。
始めに書いた様に雌は難しく、分布に関してもはっきりしない種も有り、正確に同定されていない標本も見受けられる。そのような標本を参考にした場合混乱してしまうわけで、結局、触角などに明確な相違が有る場合などを除いて曖昧な事しか書けないものも出てしまう。また
更にこの先飼育などで解明される事も有るかも知れずそれにも期待したい。
2003/3/28
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