触角 ミヤマクワガタのアンテナ

- A.CHIBA -

昆虫において大事な感覚器官である触角ですが、標本を展足するとなかなかカタチが定まらず、いじりすぎて 取れたりし、修理に苦労する触角 (アンテナ) です。(笑)
クワガタ虫科の中で、ミヤマクワガタ属の仲間に観られるような触角・アンテナ (主に先端の幅の広い節の部分、以下"先端なん節"とします) のカタチに判りやすい違いがこれほど多く ある属は他にないようです。ただ触角は属や種を分けるひとつのポイントにもされている訳で もっともな事なのですが・・・フタマタクワガタの先端6節の触角、それにキクロマトス属なども 触角に特徴がありますね!

世界に広く分布しているミヤマクワガタの仲間も、殆どは触角の先端 が4節なのですが、 タイランドには6節と7節の種が分布し、 更にヨ−ロッパミヤマ ・Lucanus cervus の仲間 (近縁種・種) には触角の先端が4節と5節、 それに6節もいます。 それも体のカタチは殆ど同じに見えて触角だけに相異があるものもいて、 これが好き者にはおもしろく非常に興味の湧く事なのであります。(fu)
そこで今回は、触角のカタチから観ていくミヤマクワガタ、主にヨーロッパミヤマとその近縁種です。





(1)(2)はヨーロッパに広く分布する原名亜種の ルカヌス ケレブス ・Lucanus cervus の触角。(1)はフランス産、(2)はイタリア産で 先端から5節目も幾らか突起していますが、同じ産地で(1)(2)の カタチ(微妙ですが)が混じっている産地もある様です。特にイタリアの産地とは限りません。

(3)は中近東のトルコ、シリアあたりに産する巨大種 ルカヌス ケレブス ユダイクス・Lucanus crevus judaicus の触覚 で原名亜種と同じ4節です。





ルカヌス ケレブス ペンタパイルス・Lucanus crevus pentaphyllus は触角先端が5節とされています。 この亜種(型・forma)は、触角のカタチ(5節という事)だけで分けられているのか、他にも特徴があるのか 良く判りません(知りません)。ヨーロッパの各地で見られるらしいのですが、4節と5節が混じって採れる 場所もあるようで、左右で節の数が違う(4節と5節)個体も稀に有るそうです。 写真(4)(5)はペンタパイルス・pentaphyllus と同定してある標本の触角ですがいくらかカタチは違って見えます。

(6)ルカヌス ケレブス ファビアニィ・Lucanus cervus fabiani と同定されている5節の亜種、原名亜種 よりも小型で体型も他とは違う特徴があります。この亜種は Lucanus pentaphyllus fabiani とされている場合もあるようです。 また、この種に見える図がDIDIERにありますが、Lucanus cervus var. pentaphyllus REICHE 1853 としてあります。




(7)は、南フランス産のルカヌス ケレブス カプリオルス・ Lucanus cervus capreolus と同定してある もので触角先端は6節です。同じ6節でも(7)(8)は微妙にカタチが違っています。

(8)は、ルカヌス ケレブス トルキクス・Lucanus cervus turcicus の触角、(9)ルカヌス ケレブス アクベシアヌス ・Lucanus cervus akbesianus の触角。どちらも先端は6節でカタチも良く似て区別をするのは困難(出来ない)です。




(10)はルカヌス テトラオドン・Lucanus tetraodon の触角で普通は6節のようですが、中に5節に見えるものもあります。この種は幾つか型 (産地の違いでらしい詳しく判らない) があるようです。

(11)はルカヌス イベリクス・Lucanus ibericus でやはり6節、中東一帯に分布しやはり幾つかの型が書かれており、触角も多少違って見えるものがあります。

(12)は特徴あるカタチの触角で、ルカヌス ラティコルニス・Lucanus laticornis です。ラベルを見るとやはり、シリア、トルコ、イランあたりの中東に 分布のようです。

と言うわけで、触角のカタチがこんなに変化しているとは、ミヤマは面白いと思いませんか? 変化がこんなにある属 (大型で) は Lucanus だけ、それも、ヨーロッパから中東に分布するヨーロッパミヤマの仲間に多いわけですが、 日本産ももう少し何か変わったのが居たらもっと面白かったのだが、、、と訳のわからん事を言いつつ終わり。

2001/9 (fwhz5092@mb.infoweb.ne.jp)


クワ馬鹿 mokuji