飼育今昔


飼育なんて事を始めたのは


人間が生き物を飼うなんて事をやりだして、何万年か経つのだろうが、 初めて飼育したのは犬だとの説が一般的なようである。 今では人間にとって一番の友となっている犬 (ネコもいるが) だが飼 われる様になった過程には諸説あるようで、最初は飼うというよりも、 お互いの利害関係の一致から自然に始まった関係だともいわれる。 その後は牛や馬や羊などを家畜として飼育する事が始まり、品種改良も 行われ人間の都合の良い種が作り出されて来た。
太古の人類と犬との関係は現在よりも、もっと厳しいものであったと 想像できるのだが、生き残りをかけた狩猟において犬は、優れた 臭覚と運動能力で獲物を発見する事は勿論、夜間に敵 の襲来もいち早く察知し人間に知らせたに違いない。かけがえ のない存在でいつも行動をともにしていた事だろう。
狩猟と採集が主な生活手段で獲物を追っての移動の時代から、農耕(漁業によっても人は定住したと言われる) の発達により定住へと人間の生活が変わっていくにつれ、犬との関係も変化していったと思われ、その関係 は地域 (農耕民族と狩猟を主にする民族など) によっても違いが生じたようだ。
なにせ、人間にとっての犬は現在においても盲導犬、介護犬、など 飼育されるだけの存在ではなくそこには強い繋がりが存在する。永い間に人間の都合の良い性質や体形を持つように改良されてきた動物の代表が犬だと言えよう。
その他、現代まで人間のペット(愛玩動物)として飼育された動物は色々とある らしい。金魚や鯉などは今も飼育は盛んだし、江戸時代(ヨーロッパでも) にはハツカネズミを飼うののがはやったと云う。日本では戦前頃まで飼育する 人が結構いて盛んだったそうだ。現在、日本でネズミと言えば実験用に飼育されているとの 印象の方が強いが、ヨーロッパの一部ではネズミの類の飼育が盛んでコンテストなどもあるらしい。
おっとここは虫の話し・・!


哺乳類どうしである犬と人間の関係を簡単に書いたが、 昆虫の体は裏返しとも思える外骨格に開放血管系、口で呼吸しないで気門で呼吸 する。大体どんな先祖(直接の先祖?)から進化したものかも良く分からないそうだし、 哺乳類とはかなり異質な生き物である。 まず昆虫は犬や他の家畜の様に人の生活にとってあまり役立つ存在(勿論ミツバチその他 で利用されている種も有りですが)とは到底 思えない(かった)。そもそも人間と昆虫とは昔から敵対関係に有る場合が殆どと言って も良い位である。農耕作業において害虫の発生は最大の問題で、近世になり昆虫に対し ての研究は大概ここから始まっている。ただ昆虫(害虫とされる)の大発生は農耕を始め た事が原因となっている場合が殆どだが、それ以外でも飛蝗の大発 生や、おびたたしい蠅の発生などの例を見ても条件さえ揃えば昆虫には凄まじい繁殖力があ る。
敵対していると言えば、家の中に巣くう巨大な黒光り したゴキブリも現代虫嫌い人間にとって手強い敵となっている。こいつは特に女 子にとってであるのだが、出没に際して男子の中にもギャーと叫んだりして飛ん だりはねたりする輩がいる。結構クワガタ虫を飼育している人間の中にもいたりす るからおかしい。虫好きだとしても人の感覚とはおもしろいもので、クワ ガタやカブト以外の幼虫 (芋虫) は気色が悪く手では持てないなんて言われる事があるが、 少し分かる様な気もする。
ゴキブリの事を書いていて思い出したが、脱線ついでに昔の話をし を少し、家の田舎の婆さんはゴキブリを素手で潰してから摘んで捨てると言う凄 い技!を持っていて、家族 (特に私を含めた当時の子供) から絶大なる尊敬を得ていた。 夏休みなど田舎に帰っている時にその技を婆ちゃんが見せると「婆ちゃん凄か−!」 子供達は口々に叫んだものである。(笑い)昔の人はそんなも の怖がるほどヤワじゃなかった。
虫の飼育は昔から


昆虫は人の生活には役にたたないと書いたのだが、実はそうばかりでは ない。結構昔から人は虫を色々な目的で飼育しており、ヨーロッパ、南米、 中国から日本と世界各地でコオロギ等の鳴く虫を飼う習慣があった。更に古 いギリシャ時代にも鳴く虫を飼育していた記録があると云う。
東洋においても虫を飼う習慣は、かなり古くからあり、中国の古い 文献には宮廷で鳴く虫の音を聞く為にカゴに入れて飼っていたと有るし、賭博 としてコオロギを戦わせる事もしていた。そのコオロギを飼うための虫カゴだ けを見ても圧倒的で、千差万別、非常に変化に富んでおり人工飼育に適したカ タチのもの(壺の様なもの)も見られる。古い中国にはおそらく今よりもすばら しい虫を飼う文化があった。勿論、日本でも鳴く虫を飼う習慣は古くからあっ たわけたが、おそらく大陸から渡ってきたものだと思われる。小泉八雲は日本 人の虫とのかかわりを非常に美的で芸術的かつ上品なものであると書いている が、虫の音を心地よく感じるのは日本人ばかりではなく、良く言われるような 日本人特有な感覚の文化ではない。
虫を食う文化!


それから、飼育とはまた話しはそれるのだが、虫を食する習慣も世界各地に 多くある。中国や東南アジア方面ではタガメ・ゲンゴロウ・蟻・蝉・その他の幼虫 等々が食べられているし、ご存じのように日本においても色々な虫が食べられてい る。ヨーロッパでも一部の地方に虫を食べる習慣が有るらしいが、良く知られて いるのは蟻入りチョコレート、くらいだろうか!
一昔前の日本では秋になると刈り入れの終わった田んぼに集まるイナゴを採っては佃煮にしたり、 夏は蝉をおかずにする地方もあった。勿論現在でも食べられているが、中でも長野のザザムシは 有名、缶詰なども作られている。 それに蜂の子(幼虫)はあちこちの地方で珍味とされ、危険をおかしてまでもスズメ蜂の巣 から幼虫を採り今でも盛んに食べられている。
人工爆発(確実に増殖して地に満ちる>除く日本か!) して食料が不足した場合は繁殖力の旺盛な昆虫を飼育して食料とする事も大いに 考えられるだろう。ガハハ・・ それに、最近知ったのだが昆虫の体から色々な物質を取り出して利用する研究も進んで いるそうだ。改めて、昆虫とはずいぶんと人のやくにたっているではないか!
  
夜店に売ってたクワガタ虫



小泉八雲が絶賛したすばらしい文化であるが、私の子供時代には夏になると 夜店に必ずと言って良いほどキリギリスや、蛍などを虫カゴに入れて売っ ていた。最近は祭りや夜店にはとんと縁がなくなってしまい、現在の状況は 良く知らないのだが、多分以前よりは少なくなっているのではないかと思う。 昔の夜店にはカブトやクワガタを売っている事もあったのだが、そう頻繁に は出なかった。偶に売りに出ている時には 欲しくて仕方なくそばを離れなかった覚えがある。大抵は買ってはもらえ ず親に頭をはたかれてその場を去らなければならなかったが・・(涙)それ にしても、昔の親はみんな良く子供をはたいて (どついて) いたものだ、少し 悪だと学校では先生にはたかれ、それを親に報告なんぞしようものなら、大抵は うむを言わさず 「おまえが悪い!」 とまたはたかれた。それにしてはみんな素直に育った (汗) また脱線したがもどして、
蛍は蚊帳の中に放して部屋を暗くしてながめた事が幾度かあった。殆どは2〜3日で 死んでしまったが、全く動かなくなってもしばらくはお尻が光っていたのを覚えて いる。鳴く虫の方はやはり鈴虫が涼しげで良い。キリギリスも有ったがこちらは あまり好きになれなかった。最近はやはり、この手の鳴く虫も夜店ではなくぺットシ ョップなどで販売される事が多くなってきたようだ。
それから、ヨーロッパやアメリカで の虫の流通はと言うと、昆虫標本や生き虫 (サソリ、タランチェラなど危ないもの ?好きも多い) の販売を目的にしたフェアなどが開かれており、昆虫標 本を扱う業者も勿論存在する。日本においても標本を販売す る業者は以前よりあるが、生きた昆虫 (主に甲虫) を専門に扱う商売が台頭し始 めたのはほんの最近の事で 、(昔も業者は有ったのだが) この主に甲虫の人 気に支えられた現象が、この先どうなって行くのか興味がある。
飼育・飼育・飼育


虫の飼育がこんなに盛んになった時代と言うのも今までには無かった事 は確かである。しかし、魚ゃ爬虫類くらいまではかろうじて餌を ねだる位の事はするけど、しょせん虫ではそんな 事はまずないわけで、下手をすると指を挟まれ怪我をする。(汗)
かく言う私も飼育をしているが、なにせ今は活き虫屋さんががんばって虫 (甲虫) を入れるので 色々な生きた珍品も見られる様に成って来た。生きた状態と標本になった状態では、体色などに 変化の有るものも結構あり、生きた状態で観られるのは良い!
そう言えば少し前までクワガタを飼育を するに際し、隠れキリシタンならぬ、隠れクワガタン?が存在していた。誰にも 言わずにこそっと飼育していた中年を私は知っている。(笑い) あまりうさん臭い顔も されないで、(仲間内だけか?)蛹化無事完了してま−す!とか、おぉー70mmオーバーじゃー!とか、良い 時代になったものだ。(笑い) 1999/02,




mokuji