『ふしぎ犬トントン』レビュー

最終更新日: 2010/01/02

エアデールテリア

脚本はOPに出ます

　1970年代後半は、雪室さんは結構実写ドラマを書いています。 この『ふしぎ犬(けん)トントン』も1978〜79年の実写ドラマで、全23本中10本を書いています。 第1話こそ書いていませんが、後半はかなり多くを担当しています。

　ドラマの設定としては、宇宙からUFOでやってきた宇宙犬トントンが、地球の子供タローと仲良くなってというものですが、特にトントンに目的(星に帰るとか、地球侵略とか)があるわけではなく、単なる犬＋少年ドラマのテイストになっています。 トントンには、言葉をしゃべれたり、算数が得意だったり、ノックのような「トントン」という音が鳴るとぬいぐるみに変身してしまうという特徴がありますが、これはタローだけの秘密です。 タローは犬の飼えない団地に住んでいるため、トントンは団地内ではぬいぐるみということになっています。 また、サイコキネシスのような超能力も持っていますが、これもあまり前面に出されることはありませんでした。

　このような基本設定だけではストーリーが作りにくいためか、どの脚本家もゲストキャラクターを持ってくるストーリーが多く感じられました。 雪室さんが後半多数書いているのは、ゲストキャラを持ってくるのが得意だったからではないかと想像しています。 また、宇宙人がぬいぐるみに変身して隠れるというアイディアは、後の『とんがり帽子のメモル』に引き継がれているのではないでしょうか。 4話「おーい！母さん星」でトントンが犬の訓練学校に入れられる様子などは、『平成イヌ物語バウ』にも似たシーンが見られます。

第18話「忠犬ハチ公知ってるかい」(1979/03/05放映)

ストーリー: 渋谷のハチ公の話を聞いたトントンは、「死んだ人を10年も待ってるなんて、とても利口な犬のすることとは思えないね」と言いつつハチ公に興味津々であった。 勝手に渋谷に行こうとしたトントンは、途中で車にはねられそうになり、ぬいぐるみになったまま知らない女性に拾われてしまう。 行方不明になったトントンを、タローは探し回る。 ようやくタローのもとに戻ったトントンは、ついに銅像のハチ公と超能力で会話し、ハチ公の真意を知るのであった。

感想: ハチ公がどうして主人を待ち続けていたかなんて、普通の人は死んだことを理解できなかったとか、いつか戻ってくると信じていたくらいにしか思わないけど、ここからストーリーを作りあげてしまう着眼点がすごいと思います。 トントンのぬいぐるみ変身能力や超能力をフルに使って、とても面白い話になっていると思います。

第23話「ひとりと一匹春の海」(1979/04/23放映)

ストーリー: 近所の家に飼われている老犬ナミから、トントンはリードを切ってほしいと頼まれる。 ナミはフィラリアで死期が近いことを悟り、一度自分の名前の元になっている海を見てみたいと思っていたのだ。 しかしナミの飼い主だった女の子・なぎさは結婚して鎌倉に移り住んでしまっており、残っているなぎさの母親は大の犬嫌いであった。 ナミとトントンは意を決して50km離れた鎌倉の海へ向かう…。

感想: 普通であれば海へ向かう苦労をドラマにするのだと思うのですが、トントンの犬と話せる能力を生かして、海へ出発するまでの、そして海を見たときのナミの気持ちをていねいに見せることで、とても感動的な話になっています。 子犬が15年経って老犬になり、飼い主の小さな女の子が結婚して家を出てしまう、そんな時の流れを感じさせる作品でした。
この話は最終話なのですが、特にトントンが宇宙に帰るなどの最終回らしいストーリーは全くなく、なんとなく突然の打ち切りがあったのではないかと推測してしまいます。

★これは名作★

サブタイトルリスト

　データソースはCSホームドラマチャンネルの再放送 (2009年) です。放映日は脚本家長坂秀佳氏ファンのためのホームページより引用させていただきました。こちらにはもっと詳細なデータが掲載されています。

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