『さすらいの太陽』レビュー

最終更新日: 2006/12/10

EDは「心の唄」

 赤貧のおでん屋の娘として育った峰のぞみが歌手として成長し、デビューしていく話です。 しかし、峰のぞみは赤ちゃんの頃病院で、財閥の娘、香田美紀とすりかえられてしまっており、出生の秘密は犯人の看護婦、野原道子だけが知っています。 のぞみと美紀はライバルとして、共に歌手を目指していきます。

 雪室さんは1話を書いていますが、おそらく途中で降りてしまったのでしょう。1話と4話の2本(両方とも星山さんとの共著)しか書いていません。 設定制作の星山さんがDVDブックレットのインタビューでこのあたりの事情を書いています。

第1話のシナリオは最初、藤川さんが書いたんです。でもフジテレビがそれを却下してしまい、代わりに雪室さんを立ててきた。

でも藤川さんとしては納得がいかないわけ。結局、フジテレビに頼まれて僕が間に入り、折衷案という形で雪室さんの脚本を手直ししたんです。

 なるほど、これでは降りてしまいそうです。 この話は定時制高校から始まり、歌の内弟子、修行、デビューと進んでいきますが、歌と脚本と世界は違えども、雪室さんの実体験とかなり重なるところがあったと思います。 ぜひもっと書いてほしかった作品ですね。 ストーリーは結構面白く、のぞみが流しで当時のいろいろな流行歌を歌ったり、歌もなかなかいいです。この歌のために、声は歌手の藤山ジュンコさんが演じています。 脚本家がそっくり入れ替わってしまったシリーズ後半は、正直見るのが少々辛くなりました。



レビュー

4話「私には歌がある」

飯場にて

ストーリー: ヤクザ者に襲われ重傷の父は、手術の結果なんとか一命をとりとめる。 病院でのやりとりから、のぞみには生き別れになったまま行方不明の兄がいることがわかる。
そんな日、父のいない屋台に大口の客が入る。近所の工場建設現場の飯場で、工事が完了して出稼ぎ労働者たちの宴会が開かれていたのだ。 おでんも酒もなくなった後、のぞみはみんなの前で「ふるさと」を歌い、歌を歌う喜びを見出していくのであった。

感想: 飯場のシーンがいいですね。のぞみはこれからいろいろなステージで歌を歌っていくのですが、この頃が一番幸せそうに歌っていたような気がします。作品の原点となったシーンの一つでしょう。
そして、自分たちが造った工場への誇り、ふるさとの家族、散らばってまた別の現場で働く仲間たち、といった建設現場の描写が、のぞみの決意を後押ししているのですね。 シリーズではこの後、何度となくのぞみが「元気をもらう」わけですが、その中でも一番感動的な場面だったと思います。


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