『とんがり帽子のメモル』レビューとおまけ

最終更新日: 2000/09/10 (2001/04/10-11 感想とレビューの追加)


テーマソングも好きです。

 BS2の再放送で、やっと見ることができました。雪室氏のシリーズ構成・脚本に加えて、演出・美術・音楽のすばらしさでも評価の高い、名作です。

 宇宙船の故障で地球に不時着、アルプス山中でひっそりと暮らすリルル星人の子供「メモル」たちと、病気の療養で別荘に暮らす地球の女の子「マリエル」の、心の交流の物語です。 リルル星人は身長が10cmくらい。森の小人や妖精のイメージでしょうか。

 私が良かったと思うのは、メモルがサンロアーヌに行くまでの前半です。中盤以降、個人的にはちょっと疑問なところが出てくるのです。グレースの、救いようのない悪人ぶり、メモル=マイコン人形説、グレースの記憶喪失のあたり。 でもそのような設定が終盤の内容の豊かさにもつながっているので、後で見直すと決して悪いとはいえないと思うのですが。微妙なところだと思います。

 私は本放送の時、いい作品だから見なさいと悪い友人に言われ、ちょっとだけ見た記憶があります。その時の感想は「子供っぽい」。ついでに「キノコ大嫌い!」。 そのころはまだ若かったのですね。(笑)

 雪室氏の脚本の回では、世間では第10話、第25話、第40話の評判が高いようですが、個人的には下に感想を書いたエピソードが「雪室節」が出ていて好きです。



第1話「星からきたおしゃまなチビ」(1984/03/03放映)〜第3話「赤いリボンの小さなヘビ」(1984/03/17放映)

ストーリー: メモルとマリエルが顔を合わせるのは、第4話になってから。なんと4話もかけて、二人の出会いを丁寧に描いています。 最初にメモルが知ったマリエルは、そのピアノの音でした。そして、次に会ったとき、マリエルは病気で死んでしまっていました。 二人は「なぜ」出会うことになったのか、そして「なぜ」お互いを必要としたのか、がこの3話に濃縮されています。

感想: 「♪生きたかったら死になさい♪死ねば幸せやってくる」第1話冒頭の「ゴロニャン体操」は、リルル星人の大敵「ゴロニャン」(猫に類似した生物らしい)が現れた時に、死んだ真似をする練習の歌である。 いかにも田舎っぽいメロディーである。そして、その直後、メモルはマリエルのピアノを聞く。初めてのピアノの音はこの世のものではないくらい美しく聞こえたであろう。 そして、その少女は恐ろしいゴロニャン(猫)を飼い慣らしている。こういった小さなエピソードを通して、メモルはマリエルに引きつけらていく。 そして、メモルにはもうひとつ、マリエルに興味を募らせる理由がある。メモルはリルル星の両親から離れ、リルル村には同性の同年代の友達もいなかった(?)のである。
いっぽうのマリエルも、母親と死別、父は仕事で全く会うことができなく、厳格な家庭教師に監視されて、「死んでしまってもよかった」というひとりぼっちの療養生活を送っていたのである。 「死ねば幸せやってくる」というゴロニャン体操は、おそらくマリエルの登場を暗示していたのではなかろうか? そんなマリエルだからこそ、死の床で命を助けてくれたメモルがとても恋しく、また変な生物と思うこともなく話すことができたのであろう。
このように、お互いに求めあう必然性の中で、二人の出会いがある様子がていねいに描かれているのが、雪室氏らしいところである。 そもそも、人間から発見されることを極度に恐れるリルル星人が人間と出会うためには、やはり一度死んでもらわなければならなかったのではないだろうか。
ともかく、この傑作シリーズの冒頭を飾るのにふさわしいエピソードであったと思います。

★これは名作★


第34話「恋をしちゃったメモル」(1984/11/11放映)

ストーリー: サンロアーヌの街へ行ったメモルは、公園で目の見えないミッシェルと出会います。 目が見えないということで安心して話ができるメモルは、毎日のようにミッシェルと会いに行き、しだいに恋をしてしまうのです。 目の手術を受けたミッシェルと、メモルは再会します。さて、どうなるのでしょう?

感想: ミッシェルは目が見えないのですが、初めてメモルに会ったときから、人間でないことがわかっていたはずです。 声の位置がわかる様子や、公園の中をまるで目が見えるように走り回る様子から、ミッシェルは音で周りの状況を知る能力に長けていることがわかります。 そう思って見直すと、これは全く違った作品に見えるのではないかと思います。

★これは名作★


第43話「愛のキューピッド」(1985/01/13放映)

ストーリー: リルル村版『男はつらいよ』ですね。哀愁のリュックマンです。

感想: 遠くからオスカーの望遠レンズで村を眺めて旅に出るリュックマン。こんな気持ちになったこと、あなたもあるはず。
雪室氏作詞の挿入歌「虫の子守歌」(タイトル不詳) は最初聞いたときはギャグかと思いましたが、ここでは涙が出ます。
リュックマン、誰にも出会うことのない旅に出るのですね。・・と思ったら、旅先でいろんな事件が待っています。 そして、このリュックマンの旅が最終話の展開につながっているなんて、全く予想もつきませんでした。

★これは名作★


おまけ: 鈴木悦夫氏

 途中から脚本に参加している鈴木悦夫氏も、雪室氏とは作風が違いますが、質の高い読切り的作品を書いています。 この方は、『みんなの歌』などの作詞を中心に手がけているようで、アニメ脚本はほとんど書いていない模様です。どのような経緯でメモルに参加することになったのか、気になるところです。
身近にある本としては、子供向き伝記『小学館学習まんが人物館・モーツァルト』のシナリオを担当しています。この本はとてもよく、音楽好きの方におすすめです。 他にも『木靴のバイオリン』『ショパンを聞きながら』(ともにKSS出版)といった短編小説集があり、音楽好きの方のようです。


脚本

 YAHOO!オークションで入手した『とんがり帽子のメモル』脚本29冊です。アフレコ台本ではなく、執筆された脚本をそのまま植字・製本したものと思われます。 放送と比べてみると脚本はほぼ忠実にアニメ化されているようですが、一部カットされたり追加されたりしているシーンもあり、制作の様子を知るよい手がかりになります。

 内容の違いも、ひまがあったらまとめてみます。

表紙

スタッフ一覧 (第1話)

仮サブタイトル一覧
制作時
話数
仮サブタイトル放送時
話数
放送サブタイトル脚本
1星からきた小さな子1星からきたおしゃまなチビ雪室俊一
2こんにちはも言わないのに・・・・・・2まだこんにちはも言わないのに・・・・・雪室俊一
3赤いリボンの小さなヘビ3雪室俊一
4かわいそうなマリエル4地球でさいしょのお友だち朝倉千筆
5どうしてお腹がへるのかな?5どうしてお腹がすくのかな?朝倉千筆
6ポシェットの中のポシェット6雪室俊一
7たのしいピクニック7うらないなんて信じない!雪室俊一
8思い出のペンダント8朝倉千筆
9目玉焼のつくりかた9マリエルの目玉焼雪室俊一
10みんなそろって忘れな草10みんなそろって忘れ草雪室俊一
11おしゃべりオルゴール11朝倉千筆
12ぼくんちドロボウ屋さんです12ぬすまれたマリエルのピアノ雪室俊一
13みんなマジメに綱ひき大会13雪室俊一
14屋根をとったら音楽会14鈴木悦夫
15あくびをしたお人形15雪室俊一
16いつか白い馬に乗って−16いつか白い馬に乗って鈴木悦夫
17あたしの帽子が消えちゃった17とんがり帽子が消えちゃった雪室俊一
18あの森の向うには18森のむこうの宇宙人鈴木悦夫
19眠れないのは大人のしるし19眠れないのは大人のしるし?雪室俊一
20パラソルなくして友だちできた20鈴木悦夫
21あたしは男の子!?21地球で二番目のお友だち雪室俊一
22デートなんて大きらい!!22雪室俊一
23さよならマリエル!23鈴木悦夫
24マリエルたずねて冒険旅行24雪室俊一
25マリエルからの風の手紙25二人を結ぶ風の手紙雪室俊一
27顔はマリエル声はあたし27雪室俊一
28面会日のおくりもの28あこがれのベルナール先生高木良子
29幕が開いたら小さなスター30幕があいたら小さなスター雪室俊一
30歌の手紙を風にのせて29歌の手紙をラジオにのせて雪室俊一


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