『まぶしい季節』レビュー

最終更新日: 2004/07/04


表紙。今では入手困難です。

1989年9月偕成者発行、絵: こぐれ けんじろう、毎日児童小説コンクール優秀作、洋駿太郎名で毎日中学生新聞に連載したものを改作。

ストーリー: 落ちこぼれ中学生、高村牧人 (通称ボクジン) が趣味の無線で稼いだ金で女子大生の家庭教師を雇い、高校受験で起死回生を目指す…。 というのはあまりにも表面的なストーリーですが、このような話の中で主人公は、無線で他の人と話をしたり、学校をサボってアルバイトをしたり、女子大生と喫茶店に行ったり、酒を飲んで酔いつぶれたり、いろいろな体験を積み重ねていきます。
また、進学をしない落ちこぼれ友達、兵太や、頭が良く口が悪い同級生の女の子、村崎はるか (通称ベラ) との関係もからみあいながら、先の見えない「まぶしい」時期を過ごしていく少年の気持ちを書いています。

感想: 話の展開こそアニメで見る雪室節そのままですが、メインテーマは、受験という初めての将来の選択に立ち会った少年の感じる「未知の将来へのまぶしさ」を正面から扱った、アニメにはない内容だと思います。
15歳のボクジンたちからダブルスコアをはるかに越えてしまったボクではありますが、輝きは失われてしまってもやはり先の見えない人生にいろいろな選択を余儀なくされるとき、当時からあまり進歩していない自分を突きつけられる思いです。 もしかすると、先のまぶしいうちに人生の重要な選択をしておくべきだったのかもしれません。(意味不明多謝 ^^;)
さて、ストーリーで紹介したように、雪室さんは中学生の主人公にずいぶんいろいろな冒険をさせています。 今の中学生はどうかわかりませんが、一昔前の中学生なら、そういった背伸びをわくわくして読んだのではないでしょうか。
また、この作品の内容は、雪室さんが自分の思いをかなり投影したものではないかとも思います。 主人公は無線を趣味にしていて、文章の中にはコールサインも具体的に出てきますが、これはご自身や知り合いのコールサインではないでしょうか。 また、定時制高校に通いながら働いた経験も、このストーリーのバックグラウンドとして大きいいのではないかとも感じます。
ファンの方にはぜひ読んでほしいですが、今となっては極めて入手困難です。古本屋、ヤフオクなどでも全くといっていいほど目にすることがありません(涙)。 そんなわけで、最初の1ページだけここに紹介しておきたいと思います。



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