『銀座の次郎長』『銀座の次郎長 天下の一大事』レビュー

最終更新日: 2006/02/11

 雪室さんのデビュー前の作品になります。おそらく、師匠にあたる脚本家、松浦健郎さんの家に住み込みで内弟子をしていた頃の作品ではないでしょうか。 この2作品のいずれも、原作は師匠の松浦健郎さんで、脚本は雪室さんを含む3人で書いています。 雪室さんがどの程度書いているのかは全く不明です。

 映画は「暴れん坊シリーズ」の、「東京の暴れん坊」「でかんしょ風来坊」「夢がいっぱい暴れん坊」に続く作品ということになっているようで、売り出し中の若手人気俳優を使ったアクション映画と思われます。 石原裕次郎の映画のようなものなのでしょう。 とにかく自分の世代ではこの手の娯楽映画を見ることが全くなくなっていたので、どういう作りが標準的なものなのかは見当がつきません。 作品名で検索すると、年配のファンの方々の感想が結構出てきますが、それなりに評判はよさそうです。

 ビデオ化もDVD化もされていない作品だったのですが、CSのチャンネルNECOで放送があり、見ることができました。 おそらく、雪室さんの名前が初めて画面に登場した作品ですので、ルーツを探る上では重要な作品なのではないでしょうか。

 なお、映画では原作付きの脚本を「脚色」と言うこともあるようですが、一応、映画テロップに合わせて表記は「脚本」に統一しました。


レビュー

『銀座の次郎長』(1963年日活作品、90分、監督: 井田探)

脚本は師匠を含む3人
ネズミの葬式(字幕翻訳付)
主人公の銀座の次郎長

ストーリー: オリンピック景気に沸く日本。銀座「S&Bカレーハウス ジロー」の若旦那で、銀座の次郎長と呼ばれる次郎(小林旭)は商店街の中心的存在である。 人手不足に悩む商店街は、山形・真室川へ真面目な働き手を求めて旅立つ。一方で、オリンピック観光客をカモにしようとするヤクザは、銀座に乗り出そうとする。 次郎長は愛する銀座商店街を守るために、ヤクザと対決する。

感想: 小林旭主役のカッコイイ映画かと思いきや、思いっきりコメディです。 ネズミが葬式を始めたり、かなりふざけています。 このコメディ感や複雑な構成は後の雪室さんの作風にかなり近いものを感じますが、雪室さんがたくさん書いているのか、師匠がそもそもこういう作風であったのかはわかりません。
小林旭ファンにはあまりいい作品ではないかもしれませんが、当時の映画館はかなり笑いの渦に巻き込まれたのではないかと想像します。


『銀座の次郎長 天下の一大事』(1963年日活作品、90分、監督: 井田探)

脚本に銀座三十五が加わる
富士山麓銀座移転予定地

ストーリー: 首都移転で銀座も富士山麓に移転する? 謎の怪情報が銀座商店街を不安に陥れる。しかし、これは土地取引であぶく銭を稼ごうという、ヤクザの流した噂だったのだ。 突然、カレーハウス ジローに、自分は腹違いの息子であるという青年が現れ、思い当たる節が無いわけではない次郎長の父は、夫婦仲が気まずくなり家出する。そして、まんまと富士山麓の土地を買わされてしまう。
危険を承知の上で次郎長は富士山麓に向かい、ヤクザとの命を懸けた決戦に挑む。

感想: 同じ年に公開されていますが、こちらが2作目のようです。1作目よりも最後のアクションなどは金をかけて作っていますし、小林旭もカッコイイ映像が多いですが、コメディ感はやや薄くなっています。1作目の脚本が弾けていただけに、比べるといまいちかなぁという感じが。



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