『フランダースの犬』レビュー

最終更新日: 2001/12/31

 説明するまでもない、世界名作劇場シリーズの2作目で、貧しいが絵の才能のある少年ネロと愛犬パトラッシュの悲しい物語です。 ネロとパトラッシュが大聖堂で昇天する、有名な最終回はシリーズ構成の中西氏が書いていますが、いじめ役だったハンスさんやコゼツ旦那が急に改心してしまったり、脚本的には疑問の残る出来です。 個人的にはむしろ、おじいさんが死んでしまう第44話(佐藤道雄脚本)の方が泣ける話だと思います。

 雪室氏は後半から脚本に参加し、全部で9本の作品を書いています。 どの回も、ネロやおじいさん、アロアの、お互いを思いやる心がていねいに書かれていて、すばらしいのですが、話のつなぎ的な場所に相当するため、めだたない存在になってしまっています。


第25話「アロアがいない」(1975/06/22放映)

渡辺岳夫のOP曲は名曲です。

ストーリー: オランダから、勉強のために一人イギリスに行くことになったアロア。 ネロや家族から離れて外国に行くのは、とてもいやだった。 ネロももちろんアロアと離れたくない。しかし、いちばん悲しんでいるのはアロアの両親であることを知り、アロアはイギリス行きを決意する。内容的には続く第26話とセットになっています。

感想: 離れ離れになりたくないアロアとネロ、しかし勉強のためという理由を知っているからこそ、素直にイヤということができない。 その一方で、留学を進めているアロアの両親も、幼い娘から離れることに不安と悲しみを抱いている。 こんな、だれもが背反した二つの気持ちを持っている様子が、みごとに描写されている。ストーリー的には、ほとんど進行しないのであるが、気持ちの動きの変化で一話をまとめあげているのは、さすがと言ってよいであろう。



第40話「おじいさんの口笛」(1975/10/05放映)

ストーリー: 牛乳運びが終わった後も、おじいさんはひそかに市場でアルバイトをしていたのだ。それを知ったネロは、自分だけ仕事をせずに絵を書いていたことを恥じ、絵をやめようと思う。 しかし、おじいさんは仕事が楽しいからやっているのだと言い、ネロには絵を続けるように言う。ジョルジュとポールも、楽しそうに口笛を吹いているおじいさんを見かけて、その様子をネロに話す。
おじいさんは仕事自体も楽しんでいたのだが、もうひとつ仕事をする目的があったのだ。市場の仕事を終えて、目的を果たしたおじいさんは、口笛を吹きながら帰ってきた。しかし、過重な労働は、おじいさんの体に重い負担となっていたのだった。

感想: 何が楽しくて、何がつらいことなのか、それは人によって違うということが、第39話から続くひとつながりのテーマになっている。 そのうえで、おじいさんの健康の悪化、絵画コンクールの画材の心配、ネロのコンクールに対する揺れ動く意識の変化といった、結末に続く大きな展開が準備されている。 いくつもの主題を「おじいさんの口笛」に結びつけた構成は、求心力がありすばらしいです。

★これは名作★


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