『バビル2世』レビュー

最終更新日: 2001/06/17

 子供のころ熱中して見ていたアニメも、大人になって見直すと意外とがっかりすることも多いものです。 しかし、この『バビル2世』は昔の興奮をそのまま思い出させるような内容でした。 まず、すばらしくかっこいい主題歌、バビル2世とヨミの息詰まるような駆け引きと戦闘、悪役ヨミの存在感、無表情に戦う三つのしもべ、ロプロス、ポセイドン、ロデム。 この作品はほとんど登場人物の「心」を描くことは少なく、むしろ無感情に戦闘を淡々と続けている印象すらあります。 かといって雪室氏らしくない作品ということは全くなく、互いの駆け引きや、めいっぱい詰め込んだストーリーでみごとに作品世界を作り上げていると感じます。

 作品は全39話ですが、事実上26話で一度終了し、残りは続編的な扱いになります。やはり26話までが圧倒的な緊張感です。 脚本家は雪室氏の他に、安藤豊弘氏、辻真先氏が書いていて、それぞれ「らしい」作品になっています。どの話もレベルが高く、全話通して楽しむことができると思います。


第16話「幻の100兆円」(1973/04/16放映)

あずき色のロプロス。途中からメタリックゴールドになる。

ストーリー: 謎のヘリコプターから大量の10000円札がばらまかれる事件が起きる。しかしその裏面には「このお金はニセ札です」と印刷されている。 ヨミは全世界から印刷技術者を誘拐して、アラスカの地下秘密基地で精巧なニセ札を作らせていたのだ。 ヨミは、このニセ札を世界中にばらまけば、日本経済は大打撃を受けると日本政府を脅迫する。

感想: ニセ札をメインに据えたストーリーながら、その最中にも互いの基地の探り合いが行われ、バビルの塔が攻撃されそうになったり、予断を許さない緊張感が続く。 バビル2世が秘密工場に潜入してからも、バランの登場、超能力シールド、時限爆破装置など、互いに先の先を読んだ攻撃の応酬がものすごい。 敵がお馬鹿さんでやられるという展開ではなく、お互いに死力を尽くして、それでやっとバビル2世が勝ちを拾う。そんなリアルさが緊張感を醸し出しているのだろう。

★これは名作★



第21話「赤ちゃんは超能力者」(1973/05/21放映)

ストーリー: 超能力を持った赤ちゃんがヨミに誘拐される。赤ちゃんはバビル2世と似た超能力を持っていて、ロプロスやポセイドンを操ってバベルの塔を攻撃させる。 バビル2世は地雷と戦車の攻撃で負傷するが、最後はヨミの移動基地を探り当てる。

感想: この話もバビル2世とヨミの駆け引きが息詰まる調子で描かれているが、そこにもう一人の超能力者が介在することになる。 赤ちゃんである。赤ちゃんは思い通りにならないため、ヨミの指図を受けることもあれば、バビル2世とテレパシーを通わせたりもする。 一方で、赤ちゃんのテレパシーの命令で、しもべ達も平気でバベルの塔を攻撃してくる。しもべ達のこういう無感情なところが素敵だ。
赤ちゃんという不定で無垢な要素を持ち込むことで、非常に面白い話になっている。

★これは名作★


第25話「死のV号作戦」(1973/06/18放映)

ストーリー: 本来なら最終回の1つ前の回です。この話が『バビル2世』シリーズのクライマックスになっていることは疑いないでしょう。
ヨミはロプロスの4倍という巨大飛行兵器「V号」(このシンプルなネーミング!) を完成させる。しかしそれを察知したバビル2世は、先手を打って総攻撃をかける。 V号は予想以上に強力で、ついにヨミはバベルの塔への総攻撃に入る。ついにバベルの塔は滅びるのか?

感想: これは燃えますね〜! 巨大飛行兵器による対決っていうのは宮崎アニメの専売特許のように思われてますが、この作品は『未来少年コナン』(1978年)、『ルパンIII世・死の翼アルバトロス』(1980年) よりずっと前ですよ。
互いの基地が全壊になる総力戦で、最終話の超能力対決へのプロローグになるはずだったのでしょうが、完全にこっちの方がクライマックスになってしまっています。

★これは名作★


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