『赤毛のアン』(書籍版) レビュー

最終更新日: 2004/08/01 初期版の追加


アニメの脚本も書いてほしかった

1976年7月30日 朝日ソノラマ発行、1978年末頃改訂版発行、世界名作ものがたり 24、原作: モンゴメリー、絵: 木村光雄

ストーリー: 幼いころ両親を亡くし、孤児院に育ったアンは、かわいくなく、気が強くて、ちょっと変わった女の子でした。 男の子を希望するマシューの家に間違ってもらわれたアンですが、すぐにマシューと妹マリラに気に入られます。
いっぷう変わったアンが成長していく様子を、マシュー兄妹、学校のクラスメート、村の人々との関わりを通して書いた名作です。

感想: 雪室さんはコラムで、世界名作のリライトは生活苦の足しにやっていたかのような書き方をしていますが、読んでみると決して子供向けのリライトだからと手を抜いた仕事をしているわけではないことがわかります。 この『赤毛のアン』も他のリライト作品同様、確かに文章は小学生にもわかるように書き直されてはいますが、内容は本当に心を打つもので、大人が読んでも鑑賞に耐えるものになっています。 原作がすばらしいのは言うまでもありませんが、雪室さんのリライトも負けず劣らずすばらしいのではないでしょうか。
勘違いしないでほしいのは、この本が出たのは76年で、アニメの世界名作劇場で『赤毛のアン』の放映された79年よりもずっと前であることです。 アニメも名作であるとされていますが、このアニメが実現されるためには間違いなくこの朝日ソノラマ版の『赤毛のアン』の存在があったのでしょう。 手元にある改訂版は79年1月に2版となっているので、おそらく78年12月のアニメ放送直前に改訂版となったものと思われますが、これは挿絵と表紙のみをアニメに合わせて差し替えたものです。
そして、この主人公アンの性格は、間違いなく雪室さんのお気に入りだと思います。 『あずきちゃん』でのジダマにつながる、ひとつの源流をここに見たような気がしました。



初期版の表紙

1976年7月30日 朝日ソノラマ発行、世界名作ものがたり 24、原作: モンゴメリー、絵: 今村りえ子

ストーリー: ストーリーは、改訂版と初期版で全く変わっていませんでした。

感想: 今見るとアニメ版のキャラクターの方がイメージに合っている感じがしますが、少女マンガ風のオリジナル版の絵も味わい深いものがあります。 また、一見キャラクターが全然違うようにも見えますが、アニメのキャラクターデザインは部分的にこのオリジナル版から受け継いだ点もあるように思います。
発行部数的にも、こちらは入手難ではないかと思います。



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