遠い昔から賑わいの衰えない砂漠の街。
その中を、背の高い帽子を目深にかぶった背の高い旅人がいた。
その長身に見合う丈の長い上着を身に纏い、手には銀の笛を携えている。


旅人の名はリーベル。


特に行く先も目的もないまま、退屈そうに世界を旅している。
まるで世界の存在をくだらないと言うかのように。

「もし、旅のお方」

ふと、露店の下の商人に呼ばれ、リーベルは足を止めた。

「この砂漠の街に水は必需品だと思うがね。どうだい、一つ買っていっても損はないと思うぞ?」

どうやら水を売っている者らしい。
リーベルはちら、と値段を見た。
砂漠の土地で水は貴重だとは思うが、どう考えても法外な値段だ。
それに、近くにある井戸で事足りてしまう。

「残念ですが」

リーベルはそう一言だけ告げると、露店を後にした。

『どうもこの街は落ち着かないな…』
リーベルは思う。
『どこもかしこも、仮面をかぶったように媚びへつらう者ばかりだ』
帽子をかぶりなおし、リーベルは町外れの宿屋を目指した。





(続きます☆