広島-島根

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水曜日
 初日。仕事を終えていったん帰宅。品川駅まで出てきた。23時55分発なのでかなり遅い。が、万一乗り逃がすともう帰宅することもできないので、かなり早く、発車30分前には品川駅に行った。
 全車自由席の時代には3時間も前から大勢並んでいたそうだが、いまは全車指定席なので、確実に座れる。だから、みんなぎりぎりに来るのだろう、と思えばそうでもなく、大勢待っていた。階段に座り込んでいる人が多かった。
 ホームには「全車指定席です。指定券がないと乗車できません」という表示がしてある。
 さて、私が乗る快速ムーンライトながら91号が入ってきた。指定券があるとはいえ、早めに乗りたいのが人情。隣りに知らない人が乗るので、最初に乗った方が心理的に優位に立てる。後ろの人が来る前にリクライニングをしておきたい。隣の人が、後ろの席の人と3人グループの場合に、勝手に席を回転して後ろ向きにされては困る。
 などと、つまらぬ事を色々考えてしまうのだが、今回は隣は掲示板投稿者のttさん。まだいないが、彼は次の横浜から乗り込んでくる予定だ。やはり隣が見知らぬ人よりは安心できる。いよいよ発車。早速検札が来た。

木曜日
 日付が変わり、木曜日。まもなく横浜というところで携帯電話が鳴る。実際はマナーモードにしてあるので鳴らない。ふるえるだけである。(くどい説明)
 誰だ?ttさんだろうか?急に行けなくなったのだろうか?と不安になる。でも、ttさんからは宿代も貰っているし、まあ来ないなら来ないでもいいや、一人旅も良いだろう(冷たい)と思って電話を取ると、なんと相手はxeet氏。今からムーンライトながら91号に乗るという。初耳である。
 彼も同じ時期に広島に行くとは聞いていたが、同じ日に行くとは聞いていなかったのだ。2人旅行のはずが、急に3人の旅行に変わった。私とttさんは1号車。xeet氏は8号車だとのこと。あとで会いに行くと伝え、電話を切る。
 横浜着。ttさんが乗り込んでくる。xeet氏が同じ電車に乗っている事を伝える。もちろんttさんも初耳である。
 電車が発車し、しばらくして約束通りxeet氏の乗る8号車にむかう。自分が乗った列車の他の車両を見に行くという機会はあまりない。トイレを探す時くらいである。紀行作家の宮脇俊三はこれをよくしたという。自分が乗る列車をすみからすみまで見ておかないと気が済まないという。
 さて、次々と車両を移動していくが、面白いことに気が付いた。車両によって雰囲気がまるで違うのである。
 まず、冷房の利きが違う。妙に涼しい車両があったかと思うと、次の車両は暑苦しかったり。
 あとは、喫煙車は禁煙車より騒がしい。ある喫煙車は座席を回転してボックスを作り、酒盛りしながらトランプをしている学生グループが二組もあった。こうなると注意するとかいう問題ではなくなる。うるさいのが当たり前と思えてしまう。このような車両に小さい子供を連れた家族がいた。こんな環境の悪いところで子供に一晩過ごさせるとは。親がタバコを吸いたいのだろうが、子供のために禁煙車を取り、吸いたくなったら喫煙車のデッキに移動して吸えば良いではないか。
 さて、八号車にいって xeet氏に会う。明日の行程をうち合わせ。終点大垣着の10分ほど前に1号車で待ち合わせることにした。デッキにしゃがみ込んでいる乗客も数人。全車指定席に関わらず、指定も取らずに飛び乗る人がいたということだ。
 1号車に戻り、tt氏にxeet氏との会見内容を報告。なかなか寝付けなかったが、熱海辺りで眠ってしまった。

木曜日の朝
 目が覚める。もうすぐ終点の大垣だ。約束通りxeet氏が我が1号車にやって来た。xeet氏とtt氏は何年ぶりかの再会となった。さて、大垣駅での席取りバトルに備えて降車の準備を始めねばならぬ。しまった!大垣駅ホームの階段の位置について、調べてくるのを忘れた。困った。
 少なくとも、階段がホームの端、一番前や一番後ろにあるということはないだろう。何故なら、もしそうであるならば、これまで色々ネット上で調べものをしているうちに、その旨どこかで必ず目にしていたはずだからである。「降りる前に一番前の車両に移り、ドアが開くと同時に走れ」という話は聞いたことがない。ちなみに、ムーンライトえちごから乗り継いでいく村上駅はそうである。
 ヤマカンで、3両目まで移動しておく。果たして、階段のすぐ近くであった。日頃の行いが良いのか。。。5:55、ムーンライトながら91号を降り、階段を走り、網干行き(緑とオレンジ)に乗り換え。なんとか3人が同じボックスシートに座ることが出来た。たったの四両編成。ムーンライトながら91号は10両編成だから、この乗客の殆どが乗り換えてくるため、かなりの混雑となった。
 車窓から珍しい列車が見える。写真を撮ろうとカメラを探すが、ない!しまった。多分、ムーンライトながら91号を降りるときに、車内に忘れたのだ。というのも、眠る前に、カメラを前の席の背後にある網状の荷物入れ(これ、一言で何というのでしょうか)に入れた記憶があるが、ここから回収した記憶がないのだ。しくじった。荷物の管理など、旅行の基本。私などまだまだだ。
 この網干行きを6:37、米原で下車。新快速の網干行きに乗り換え。11両編成であるので、今度は楽々座れる。しかし、次の彦根あたりからは早くも立ち客が現れた。(ここらへんの情報は、3月にななごん氏がレポートしてくれたとおりだった)地元の通勤客にしてみれば、青春18きっぷの客など邪魔者でしかないだろう。
 うとうとしているうちに、9:15姫路着。ここで下車。改札は行列ができる。我々同様、ムーンライトながら91号から乗り継いできた人が大量に降りたのだ。駅構内の食堂で3人は朝食となった。食べ終わると私は忘れ物センターに急ぐ。カメラを忘れた旨申し出る。係員が大垣駅に電話を入れるも、全く出ない。私も次の列車の発車が迫っており、いつまでも待っていられない。大垣駅の電話番号を教わり、後で私が自分でかけることにし、忘れ物センターを去る。
 ttさんは姫新線に乗るとのことで、ここでお別れ。夕食時に合流する予定である。私とxeet氏の2人は10:07発の、赤穂線回りの岡山行きに乗り込んだ。緑とオレンジのクロスシート車両。
 赤穂線は、特に目立つものはなく地味な存在ではあるが、なかなか良い雰囲気であり、気に入った。11:50岡山着、下車。当初はここで昼食を食べる予定だった。しかし、朝食が遅くてまだ腹が減っていないのと、次に乗る予定の呉線の座席を確実に確保するために、早めに三原に移動することにした。
 山陽本線11:58発、三原行きに乗る。我々が乗ったのはロングシートの通勤用車両。しかし、対向車両を見ていると、普通列車でもクロスシートも走っている。運次第のようだ。尾道駅周辺では海が近くて眺めがよい。尾道でもいつか一度は降りてみたいものだ。13:27終点三原着。
 次に乗る呉線までは1時間近くあるので、駅ビルで昼食を取った。大垣駅に電話するも、案内テープが流れ、「ただいま接客中です。このままお待ちになるか、後ほどお掛け直し下さい」とのこと。どんどんテレホンカードが減っていく。たまらずすぐ切った。この頃から、カメラは実は車内に置き忘れたのではなく、寝ている間に盗まれたのではないか?と思うようになった。

木曜日、昼
 三原駅での昼食を終え、xeet氏と私は呉線電車に乗り込む。クロスシートの海側を確保できた。海が見えて景色がよいので有名な路線なので、海のある方に座るために、若干早めにホームで並んでいたのである。
 14:15、我々の乗る呉線広行きが発車。発車すると、間もなく海沿いに出る。これはすごい。線路の向こうに道路があり、その向こうはもう海である。ところどころ対向電車との行き違いがあるが、よく見るとオールロングシートの車両もある。ロングシートかクロスシートかは運次第の模様。これだけ景色がよい路線なのだから、観光客誘致のためにもクロスシートだけを走らせれば良いのに。。。というのは地元民を無視した旅行者の勝手な願いか。
 途中安浦という駅を通る。ここに先を越されたので神奈川県のは京急安浦というのだろうか。神奈川県在住のxeet氏にそう尋ねるも知らないとのこと。尤もである。15:39終点の広。島袋ではない(失礼)。
 15:45快速広島行き。ここから先はオールロングシート車両。ああ、つまらない。うとうとと寝てしまった。今、この文章を書くために地図を見たが、海沿いを走っているから景色は良さそうだ。勿体ないことをした。他の電車を見ても、広以西はオールロングシートが多いように感じた。通勤路線なのだろう。16:21広島着。これで、本日の予定の行程は終了である。
 さて、これからどうするか。私は広島電鉄の一日乗車券を買って乗り潰そうかと思っていたが、xeet氏の薦めに従い一緒に宮島に行ってみることにした。そのまま山陽本線で宮島口まで。クロスシート車であったし途中で海も見えた。山陽本線は意外な伏兵であった。景色の良さは全く期待していなかったのだが、ところどころ車窓が楽しい。あなどれない。
 宮島口駅で下車し、宮島口桟橋へ。宮島航路と呼ばれるJRの船に乗る。普通列車と同じ扱いとのことで、青春18きっぷで乗船可能。もちろん普通乗車券(170円)で乗船することもできる。宮島に着くと、厳島神社まで歩く。奈良みたいに鹿が我が物顔でのさばっていた。こんなに鹿を見たのは中学の修学旅行で奈良に行って以来。厳島神社を散策し、同じ宮島航路で宮島口まで戻る。
 これから広島駅まで戻りたいのだが、山陽本線で戻っては芸がない。広島電鉄で戻ることにした。普通の路面電車、都電と似たような車両に乗り込む。間もなく発車するというころ、新型車両が入線してきた。あちらの方が面白そうだ。従来型車両を降り、新型車両に乗り移る。こちらは超低床車。車内はセミクロスシートだが、椅子の背もたれの形状が独特で、寄り掛かると背中が痛い。よくこんな椅子で苦情が出ないものだ。バスタオルを背中部分に敷き、なんとか凌ぐ。広電西広島という駅まで専用線。けっこうスピードを出す。時速60キロは出ていそう。
 広電西広島から先は路面区間。この頃になると暗くなって外が見えなくなってしまった。終点「広島駅」へ。ひとつ謎が。この駅は「広島駅」と案内されているが、「広島駅駅」になるのだろうか。
 広島では,今朝朝食後に別れたtt氏と合流。彼は我々と違うルートで色々なJR線に乗ってきたはずである。我々3人は本日の成果を報告しあいながら夕食のお好み焼きを食べたのであった。
 私とtt氏は同じ宿。広島グランドインテリジェントホテルという長い名前だが、グレードは高かった。明日は6時に起きなくてはならない。早めに寝る。

金曜日、朝
 6時に目覚まし時計がなり、無事に起床。いよいよメインイベント、可部線に乗る日がやってきた。
 同行するtt氏の提案で、一緒に錦川鉄道に行くことになっていた。あいにくの雨。台風も近づいているという。心配だ。。。
 0702広島発の山陽本線で岩国まで。クロスシートで快適。通勤時のはずだが、座ることが出来た。岩国では3分の接続で、0755発の錦川行きに乗り換えた。一両のディーゼル車。高校生の乗客が多い。途中の川西まではJR岩徳線。川西より先は錦川鉄道となる。そういえば、川西で乗務員が交代しなかったような気がする。なぜだろう。
 御庄という駅が、新幹線の新岩国との乗換駅。ここで新幹線に乗り換えている人はあまりいないように思われる。
 錦川沿いに北上していく。景色は非常にいい。0858錦町着。折り返し列車の発車まで21分ある。周囲を散策。きららトレインという遊覧列車が走るらしいのだが、「台風のため運休」とのこと。rさんのために、お土産として入場券を購入。本日一緒に可部線に乗る予定だったが急用で来られなくなったのだ。硬券で、「錦」という文字が金色で印刷されている。
 0919発の折り返し列車で岩国まで帰る。山陽本線で広島まで戻る。車内で熟睡。広島で駅弁を購入。私は販売員の薦めで、広島八珍おまかせ寿司というのを買う。雑誌で全国2位になったという。楽しみである。
 1127広島発の可部線に乗車。実は、可部線は広島の隣の横川からである。つい「よこかわ」と読みたくなるが、平板化アクセントで「よこがわ」と読む。アナウンスでそう言われると、「横側」を連想してしまう。
 オールロングシートの通勤電車。が、対向電車を見ると、クロスシートの車両も運行されている。1200ちょうど、可部着。
 この可部までは複線電化路線で、本数も多い。(と思っていたら、単線なのだそうです。掲示板でxeet氏に指摘を受けました。ご教示ありがとうございました)今秋で廃止されるのは可部から先、三段峡までの区間である。

 可部では一時間も待ち時間がある。これから、確実に座席を確保するため、早めに可部に来たのである。
 駅前を探索。駅ビルなどはないが、商店や飲食店も多く、賑やかな待ちである。パン屋でおやつのパンを仕入れ、可部駅に戻る。まだ列車はしばらく来ない。tt氏は「駅弁は列車内で食べるもの」と言うが、私は腹が減り、我慢しきれず駅のホームで「広島八珍お任せ寿司」を食べる。まずい。駅弁を食べておいしいと思ったことはない。しかも高い。しかし、旅行に行くと、何故か駅弁を食べたくなるのは不思議。
 1231、ようやく、我々が乗る可部行きのディーゼル車がやってきた。三段峡から戻ってきた列車であり、折り返し三段峡行きになる。廃止直前のため、マニアが大勢いるのではないかと予想したが、杞憂であり、楽々と進行左側のクロスシートを確保できた。あらかじめ地図を見て、景色が良さそうな方の目星をつけていたのである。
 ここで、意外な人物が降りてきた。なんと、昨晩別れたxeet氏である。彼は、我々が錦川線にいっている間に、朝の便で三段峡まで行っていたのである。彼はこれから四国に渡るというが、「折角だから我々ともう1回三段峡まで行こうじゃないか」と誘う。しかし、2人の誘いに関わらず、彼は苦笑するだけで、広島行きの電車に乗って去っていってしまった。ひどい人だ(どっちがだ)。
 xeet氏が去ったので、私とtt氏は車内で発車を待つ。ふと気付いた。2両編成だが、我々の乗る後ろ側の車両はガラガラ。一方、前方の車両(運転士のいる車両)は客が多い。「もしや、前の車両だけが三段峡行きで、後部車両は途中で切り離されるのではないか?」と不安になり、駅員に尋ねる。結果は、2両とも三段峡まで行くとのこと。ワンマンカーで、無人駅では運転士のそばの扉しか開かないため、地元の人達は降りやすいように前の車両にいたのである。ついつい旅行者の視点でものを考えてしまう。鉄道は地元の人のものである事を忘れがちだ。
 ちなみに、行き先表示板はこうなっていた。
可部-三段峡
  加計-
 カメラがないため、写真を撮れない。ちゃんと伝わるか不安だ。「可部から三段峡に行き、そのあと加計まで折り返す」というサイドボードなのである。三段峡駅での取り替えの手間を省いたのだろうか。
 1305可部発。太田川に沿って北上していく。地図を見ながら車窓を見る。途中朽ちかけた橋がある。木製で、ぽろぽろ。よく落ちないものだ、と思ったが、通行止めになっている。しかし、この橋には地図には載っている。
 途中、妙に高いところを走る区間がある。駅は丘の上にあり、下車してホームに出ると、長い階段を降りて、ようやく外に出られるのである。末端区間は開通は比較的最近のことらしい。詳しくは忘れたが。。。

三段峡に着く。1438。折り返し列車の発車までは幸い27分もある。辺りを散策するにはちょうど良い。あいにくの雨ではあるが、外に出てみる。蒸気機関車が保存されていた。いま思い出した。ttさん、写真撮ってくれましたよね。あとで、メールでください。私はカメラがないため、ttさんに撮っていただいたのだった。
 駅前には食堂や土産物屋がある。廃屋ではなく、営業していた。車で訪れる観光客も多く、鉄道が廃止されてもこれまでどおり生き続けるのだろう。私はコーヒーを飲みたくなり、店に入る。妙にリアルな木彫りの虫(クワガタ、カブトムシなど),気味の悪い仮面、変な人形などが置いてあるが、喫茶店でもあるのである。テイクアウトコーヒー300円を手に、折り返し加計行きのディーゼル車に乗り込んだ。
 1505三段峡発。tt氏とはもうすぐお別れである。彼は途中殿賀で下車してしまうのである。このあとバスで山陰側に抜けるという。1522、殿賀に着き、tt氏は降りていった。ここからは一人旅である。
 1530加計着。可部行きの発車まで20分ほどあるので、駅前を歩く。商店などもあり、可部ほどではないが人口も多そう。宮脇俊三「インド鉄道紀行」を購入。何故か旅先では本が買いたくなる。
 しまった。rさんに、三段峡駅で入場券を買うと約束していたのだ。忘れていた。今から三段峡に引き返したら、この後の行程が狂う。やむなく、この加計駅で入場券を買う。
 1551可部行きのディーゼル車が発車。太田川を見ながらぼーっとしているうちに可部に着く。可部からはまたロングシート。広島に着いたのは1737。  
 本日は、このあと芸備線で宿泊地の三次まで行く予定である。その前にここ広島で夕食を済ませておきたい。ふと、芸備線ホームを見る。びっくり。なんと、行列しているではないか!20メートルほど並んでいる。芸備線ってこんなに混むのか!?意外。座るためには早めに、できれば1つ前の列車が発車する直前くらいから並んでおきたい。これはゆっくりしていられない。
 広島駅の駅ビルでお好み焼きを食べる。「麗ちゃん」という店がおいしいと聞いていたのだが、あいにくの臨時休業。やむなく、別の店で食べる。明日の朝食の菓子パンを仕入れ、芸備線ホームへ。
 私が乗る予定の快速三次行きの1つ前の、普通狩留家行きがいた。これを見送り、一番前に並ぶ。ちなみに、狩留家った何て読むか分かります?「かるが」。なんと旅情をかき立てる地名なのだろう。。。この響きが頭から離れなくなった。
 並んでいると、後から後から人が並ぶ。どんどん列が伸び、また20メートルくらいくねくねとなった。しかし、何故か一列なのだ。2列に並べば行列が短くなり、くねくねしないで済むのに。整理する駅員がいるわけでもなし、行列に慣れていないのか。
 快速三次行きが来る。可部線で乗ったのと同じ、黄色いディーゼル車。楽々座れる。地図で見て、景色が良さそうな右側に座ったのだが、真っ暗になって何も見えなくなった。雨も降っており、車窓を眺めるには状況が悪い。
 ボックスシートは初めは満員だったが、少しずつ途中の駅で降りていく。面白いのは、ガラガラのボックスがあるかと思えば、四人で窮屈に座るボックスがあること。少し周りを見回せば、広々とした席に移れるのに。。。人間は必ずしも合理的な行動をとるわけではないことが分かる(偉そう)。
 1846広島発、2006三次着。雨はますます強くなっている。

8/8(木)夜
 三次駅から、ホテルを目指して歩く。辺りは真っ暗、雨は強い。初めての土地で、暗くなってから宿を探すのは心細い。道は分かりやすいはず。歩いていると、実家から携帯に電話がかかってきた。姪のミレ坊ちゃん(二歳半)が遊びに来ていて、電話口で「早く帰ってきてね」という。かわいいものだ。
 途中、道に迷った。行き止まりなのだ。真っ暗だし、不安感が高まる。ホテルに電話して道を聞いた。行き止まりに見えるが、先に進める地下通路があるのだった。明るい内なら見つけられたかも知れないが、暗くて分からなかった。
 ようやく宿に着き一安心。ラジオで台風状況をチェックする。今頃ttさんは江津で、xeet氏は高松で宿泊しているはずである。疲れているのか、すぐに寝た。

8/9(金)朝
 5時に起きる。昨日買ったパンを食べ、チェックアウト。幸い晴れている。三江線浜原行きに乗る。駅の時刻表にはワンマン運転となっているし、案内テープも「この列車は浜原行きワンマンカーです」と言っているが、車掌が乗っている。列車は一両のディーゼル車で、ボックスが4つだけあり、あとはロングシート。地図で景色が良さそうなのは右側と見当を付けていた。右側のボックスを確保できた。客は、私含め3人。案内テープは「この列車はトイレの設備はありません。運転士にお申し出の上、駅のトイレをご利用下さい」と言っている。これも経費節減のためだろう。0613定刻に発車。
 「秘境駅に行こう!」にも紹介された長谷を通過。運転士が、「長谷、通過!」と号令にように独り言をいうだけ。「長谷には止まりません」という案内はない。しかも、駅時刻表にも、「長谷通過」とは一言も書いていない。どの列車が停車し、どれが通過するのか、全く分からないようになっている。よほど利用者がいない駅なのだろうか。
 途中から時々地元の人が乗ってくる。ワンマンカーのはずなのに乗っている車掌が行き先を尋ね、乗車券を販売する。短距離の客がおおい。石見川本までという客が多かった。
 口羽あたりからは、妙に高いところを通る。景色を遙か下に見下ろす形になる。駅も、高いところにあり、長い階段を降りてようやく外に出られると言った具合。ここの浜原-口羽間はまだ開通して30年くらいしか経っていない。開通は比較的最近なのだ。トンネル掘り放題、高規格でつくられているらしい。昔ながらの古くさい部分と、新しい技術が使われている部分が共存している珍しい路線なのだそうだ。
  0743終点浜原着。また雨が降っている。この列車は折り返し三次行きとなる。私がこれから先に乗る江津行きは、まだ姿を見せない。携帯電話で、ここの掲示板を閲覧。誰か、書込をしているかな・・・?
 そこにはxeet氏の書込があった。「瀬戸大橋線が運休したため高松に行けず、夜行バスで帰ってきた」とのこと。(8/9の7時40分のxeet氏の投稿)そうか、彼は台風に行く手を阻まれたのか。無念であったろう。
 さて、0756、ようやく江津行きがやってきた。ここではある人物が降りてきた。誰でしょう?
 答えはtt氏である。tt氏は、昨晩は江津に泊まり、この三江線で浜原までやって来た。我々2人は、同じ三江線を、反対側から乗ってきたのである。何故、一緒に旅行してきたのにわざわざ途中で別れてまでそんなことをするのか・・・!?と呆れられそうだが、お互い行程の事情でこうなってしまったのである。ケンカ別れしたのではない。
 tt氏とは7分しか一緒にいることができない。私の乗る江津行き(tt氏が乗ってきた車両である)が0803に発車するのである。お互い台風の影響なく旅行を続けられたことを確認し、安心できた。ここ浜原で相手が現れなかったとしたら、旅行を取りやめたことを意味するからだ。
 江の川がだんだん太くなってきた。すぐそばを流れているのも趣があるが、高架の上から見下ろすのも面白い。雨のため水は濁っているが、綺麗な眺めだ。不思議なもので、同じ様な車窓が続くのに、海や川を見ていると飽きないのだ。水には人を引き込む力があるのか。
 終点の1つ前、江津本町も秘境駅に紹介された駅。駅前は江の川がゆったりと流れている。こういうところでしばらく過ごすのもいい。終点の江津には0929着。

江津に着いた。6分の乗り換え時間の間に改札の外に出る。ttさんは昨晩は江津駅前のぼろいホテルに泊まったとのことなので確認。確かにぼろい。
 次は0935江津発の出雲市行き。一両のディーゼル車。ボックスが4つだけあり、他の部分はロングシート。ボックス部分は男子高校生に占領されている。やむなく、ロングシート部分の中では一番眺望が良さそうな所を選んで座る。一番前の、右側の席が特等席だ。全面もよく見え、左側(海側)も見える。
 山陰本線は、その幹線のような名前から(いや、実際にJRの分類では幹線なのだが)、あまり景色が良くなさそうな先入観があった。しかし、これが日本海がよく見え、驚くほど景色がよい。「偉大なるローカル幹線」というニックネームが付いているそうだ。海を見ているといつまでも飽きないのは不思議。
 途中で高校生達が下車したので、すばやくボックスシート部分の海側窓側を確保。こういう席の移動には躊躇しないようになった。同じ日本海でも、3月に乗った羽越本線の時とは印象が違う。季節が違うせいかもしれないが。
 1102終点の出雲市着。久々に町らしい町に着いた。やはり自分は東京の人間だと実感。こうして人が大勢いて、土産物屋、喫茶店、100円ショップがあるような所の方が安心してしまう。
 ここでは1時間40分ほど時間が空く。ムーンライトながら91号を降りてから、ロクに時間が取れなかった。やっと時間が空いたので、大垣駅に電話。今度はすぐにつながった。「はい、大垣駅改札です。」カメラを忘れた旨説明。あるとのこと。
 ふー(ため息)よかった。買うと何万円もしてしまうからな・・・。住所を伝え、着払いで送ってもらうことになった。(これを書いている現時点で、カメラは返ってきて手元にあります。皆様、ご心配をお掛けしました。)
 せっかく出雲市に来たのだから、出雲大社に行けるか?と思い、一畑電鉄の電鉄出雲市駅で時刻表を確認。すると、1時間待ちなので断念。駅から外に出て散策してみたいが、あいにくの大雨。まずは、昼食だ。駅構内の出雲蕎麦の店で、ちらし寿司と蕎麦のセットを食べる。ラーメンにはこだわっているつもりの私だが、正直なところ、蕎麦の味の違いはよく分からない。立ち食い蕎麦も、名門と言われる蕎麦も大差ないように感じる。この店で夕食用に駅弁を買う。夕食を確実に確保できるかこの時点では分からなかったので。
 コンビニで菓子パンを購入。夜行バスの中で急に腹が減ったときのために、カバンに忍ばせて置かねばならない。職場へのお土産も買う。ありきたりだが、「出雲に行きました」というお菓子。列車の発車時間が近づいてきた。テイクアウトのコーヒーを仕入れ、ホームに戻る。
 1227出雲市発、米子行き。2両のディーゼル車。先ほどまでの、軽快そうな車両(レールバスタイプと呼ぶそうだ)とは違い、古い重厚な車両。赤というか、朱色。わずか20分弱の乗車。1245宍道で降りてしまうのだった。
 次は木次線に乗るのだが、発車まで約1時間ある。駅の外に出る前に、念のためどのホームから発車なのか確認しておこう。。。なんと、まだ1時間前だというのに、私の乗る木次線列車がもう止まっているではないか。ドアも開いており、気の早い乗客が3人も乗っている。私が乗り込むと、出入り口にセンサーがあるらしく、ピュルルルという音が鳴る。3人の先客はみな昼寝をしていて、私が出入りするたびに目を開けるので申し訳ない気がする。
 一両編成のオールロングシート車。あらかじめロングシート車と知っていたので落胆はない。先ほどの山陰本線のときと同じく、一番前の右側の景色が見えやすい所に荷物を置いて確保し、駅の外に出てみた。相変わらずの雨。地図で見ると、宍道湖が近いが、ここからだと見えない。松江まで行けば見えるのだろうが。
 列車に戻り、読書をして時間をつぶす。下りの山陰本線快速が接続しており、大勢乗り換えてきた。座席はほぼ全て埋まったから、総勢30人ほどであろうか。意外に多くの客を乗せて、1344、出雲横田行き列車が発車した。

8/9(土)13時40分頃 宍道駅 
 木次線が発車する直前、山陰本線の下り快速アクアライナー益田行きが滑り込んでいた。ガラガラだった木次線車内も、このアクアライナーからの乗り換え客で席がそこそこ埋まるくらいに混んだ。
 ここでトラブル発生。なんと、女子高生がふたり、私の目の前に立ったのである。
 私は山陰本線の時と同じように、一番前の右側に乗っていた。オールロングシートだが、ここに座って顔を右に向けていれば、景色がよく見える。幸い全面も側面も窓が大きくて景色を見るには適した車両だ。しかし、女子高生達は、景色を遮る位置に立ってしまったのである。しかも、ひとりはトロンボーンを床に立てかけてしまった。ますます見えない。これだから、昔からトロンボーン奏者は嫌いなんだ(嘘です)。
 私はそれでも何とかして車両前方の景色を見ようと首を前に出したり色々工夫するが、女子高生はお喋りに夢中でどいてくれる様子もない。しかし、この状況でどいてくれたとしたら、それはそれで恥ずかしいが。
 混んでいて席がないのなら立つのも仕方ないが、空席があるのに、何故そこに立つのだ!と思っても仕方ない。その場所は誰にも邪魔されない2人の場所なのだろう。毎日そこに立っておしゃべりする、それが2人の日課なのだ。。。と自分を納得させようとする。しかし、心配することもなく、宍道から二つ目か三つ目の駅で降りていった。良かった。。。
 周囲を見てみると、宍道ではそれなりに席も埋まっていたが、短距離客ばかりでどんどん空いていく。発車の1時間も前から車内で昼寝をしていた人々も、すぐに降りてしまい、木次を過ぎると客は5人しかいなかった。
 出雲八代で、トロッコ列車とすれ違う。これがttさんの乗っている列車だ。朝の浜原の時のように、降りて会いたかったが、停車時間が短くて窓越しに手を振ることしかできない。トロッコ列車は空いているようだった。
 ちなみに、本日2回もttさんとすれ違ったのだが、ttさんはU字型に、私は逆U字型に進んだので、Uの縦棒の部分で2回会ったのだ。といっても意味不明だろう。ttさんは江津-三次-備後落合-宍道と進んだ。私は三次-江津-宍道-備後落合と辿ったのだ。
 次の亀嵩では、ソバ弁当を買う予定だ。昨日電話で注文して置いたのだ。500円を準備して待つ。ホームでは記念撮影をしているカップルがいた。車で来たのだろうが、列車を背景にして写真を撮っていた。撮影が終わるのを待ち、店員の女性からソバを受け取る。
 この列車は出雲横田止まり。ここで先ほど買ったソバを食べる。対向列車が来た。よく見ると、対向列車の方はセミクロスシートだ。ボックスは4つしかないが、どうせならこっちに乗りたかった。私はどうやらクロスシート運がないようだ。
 発車まで1時間もあるので、回りを散策。コンビニもあり、この辺りでは大きい町のようだ。雲州算盤の産地だそうで、算盤のオブジェがある。
 さて、発車時間だ。先ほど乗ってきた列車がそのまま備後落合行きになる。運転士がオレンジカードのセールスに来たが、丁重に断った。
 有名な出雲坂根に着く。発車まで4分もある。対向列車との入れ違いがあるわけでもないのに、何故4分も停まるのか?と思ったが、スイッチバックのため、運転士が列車の後部に移動するのであった。その間に有名な延命水というわき水を飲みに行く。地元の人がポリタンクで汲んでいたが、割り込ませてくれた。手ですくって飲む。消毒は?検査基準は?といった言葉が頭をよぎるのは職業病か。
 再び車内に。私は三段式スイッチバックというくらいだから、3回スイッチバックするのかと思っていたが、2回しかしなかった。線路はZ型なのだった。
 さて、景色に集中。山を越え、山陽側に抜けなければならない。ディーゼル車は唸りを上げ、中国山地を登る。客は私を含めて2人。2人とも地元の人ではなく、乗りに来た人(見れば分かる)。台風の翌日が来ていても、客が少なくても、列車はちゃんと定時に走っている。
 三井野原を過ぎるとようやく下り坂に入る。なぜかほっと一息。備後落合に着いたのは1717。
 ここは秘境駅にも登録された駅。かつての鉄道黄金時代には、芸備線と木次線の両方に急行が走り、急行どおしの乗り換え客で賑わったらしい。ちゃんと駅員もおり、売店もあったという。
 しかし、今はただの無人駅。駅ノートがあり、旅人が足跡を残している。1753、最後の行程、芸備線三次行きに乗る。客は最初は5人くらいしかいなかったが三次に近づくに連れて混んできた。途中の七塚では、若い高校生くらいの連中が何十人も乗ってきた。地図によると近くに公園があるので、そこで遊んでいたのだろう。1907三次着。ようやく今回の旅程も終わった。
 夕食を食べ、東京駅行きの夜行バスに乗ったのだった。

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