遅延損害金が和解条項に書かれていない場合

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2023.1.37更新mf

相談

あるサラ金会社に対して、過払い金請求の訴えを提起し、裁判所で和解しました。裁判は弁護士を頼まず、自分でしました。和解内容は、「合計45万円を毎月5万円づつ分割払いしてもらう」との内容です。
しかし、サラ金会社は、初めは支払ってくれましたが、後はのらりくらりと減額要求してくる始末で、全額支払う意思がありません。私は、遅延損害金を請求したいです。
和解条項には、当然支払いがあることを前提としていたため、不払いのときのことを記載せず、遅滞損害金(利率)についても記載していませんでした。

清算条項の対象か

この場合、遅滞損害金は和解調書には書かれていないため、さらに、「和解調書に『原告及び被告は、原告および被告間には、この和解条項に定めるものの外に何らの債務債権がないことを相互に確認する』、と記載されているため、〇〇請求事件の判決に係る全ての権利を放棄したと考えられる。遅延利息について訴えを提起しても、認められない可能性がある」と言う人がいました。
この可能性は、いかがですか。

遅延損害金の利率

さらに、遅延損害金は、 強制執行をしたいと考えていますが、残金に対する請求金額が分かりません。

よろしくお願い申し上げます。

回答

清算条項の対象か

確かに、遅延損害金についても、清算条項により清算済みという解釈できる可能性はあります。しかし、この遅延損害金は、和解条項の定めに基づき発生したものであり、清算条項は、和解条項に違反した場合の遅延損害金までは放棄するものではないとの解釈の方が自然です。遅延損害金は清算条項の対象ではありません。
しかし、和解調書に遅延損害金が記載してないので、遅延損害金について、 和解調書による強制執行はできません。
遅延損害金について強制執行するには、再度、裁判、判決が必要です。遅延損害金についても書いておけばよかったですね。

遅延損害金の利率

慰謝料は、精神的損害に対する損害賠償です。慰謝料支払が不履行(不払い)になった場合のことを記載します。これを過怠約款といいます。
和解調書に記載された和解条項中に、遅滞損害金については記載してなくとも、権利としては遅延損害金を請求できます。<
民法は改正され、2020.4.1.から、法定利率は、3%です(民法404条)。 商法の514条は廃止されました。
ただし、上記の通り、再度、裁判、判決が必要です。

法律

(法定利率) 民法第404条
  1. 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
  2. 法定利率は、年3パーセントとする。
(金銭債務の特則)民法第419条
  1. 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
  2. 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
  3. 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
登録 2006.4.21