弁護士河原崎弘

不可罰的事後行為、共罰的事後行為

質問
窃盗後に盗品を、損壊、費消など処分をした場合は、全て不可罰的事後行為として処罰されませんか。

弁護士の 回答
これらの行為の扱いについては、次の3つの説があります。 下記判例を見ると、事実上の処分は不可罰的事後行為ですが、法律上の処分(ただし、贈与は違う)は、第三者の法益を害するので、さらに、罰せられると考えてよいでしょう。
ただし、現金の使用は、通常、別罪を構成しないでしょう。

(判例上問題になっている例)

不可罰的事後行為に当たる
行為後行行為判例など
不正に出したパチンコ玉の景品引き替え不可罰的事後行為団藤、東京高裁昭和29.5.27判決、
盗品の破壊不可罰的事後行為通説


不可罰的事後行為に当たらないとの判例
行為後行行為判例など
不正に出したパチンコ玉の景品引き替え詐欺大阪高判昭和30.3.28、
東京高判昭和36.2.28)
消費者金融会社の係員を欺いて、同社係員を欺いて同カードを交付させた 点につき詐欺罪である。
その後、同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出した点は、別の行為である。
窃盗最高裁平成14年2月8日決定
盗品の通帳で預金引き出し新たに第三者の法益侵害するので、詐欺判例多い
委託を受けて他人の不動産を占有する者が、ほしいままに抵当権を設定し、その旨の登記を了した後において も、その不動産は他人の物であり、受託者がこれを占有していることに変わりはなく、受託者が、その後、その不動産につき、ほ しいままに売却等による所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは、委託の任務に背いて,その物につき権限がないのに 所有者でなければできないような処分をしたものにほかならない。
したがって、売却等による所有権移転行為について、横領罪の 成立自体は、これを肯定することができる。
業務上横領最高裁平成15年4月23日判決
窃取した持参人払式小切手を呈示して小切手支名下に金員を交付させた行為 詐欺罪最高裁昭和38年5月17日決定
窃盗犯人が賍物を自己の所有物と詐つて第三者を欺罔して金員を騙取したばあいにおいては賍物についての事実上の処分行為をなすに止る場合と異り、第三者に対する関係において新な法益侵害を伴うものであるから窃盗罪の外に詐欺罪の成立を認むべきを相当とする 詐欺罪最高裁昭和29年2月27日決定
窃取又は騙取した郵便貯金通帳を利用して、郵便局係員を欺罔し、真実名義人において貯金の払戻請求するものと誤信せしめて、貯金の払戻名義の下に金員を騙取したときは、通帳の奪取材の外に金員の詐欺罪が成立する。 詐欺罪最高裁昭和25年2月24日判決
登録 2006.6.12
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