登録 Mar. 29, 2001
民事再生 法人 個人 住宅資金貸付債権に関する特則 小規模個人再生 給与所得者等再生 小規模個人再生
民事再生法(以下、法)の改正により、2001年4月1日から小規模個人再生手続きが始まります。
小規模個人再生手続きは、住宅ローンや、担保権で回収できる見込み額を除いた債務総額が5千万円以下の人です(法221条1項)。
中止命令
裁判所は、強制執行,競売などの手続きを中止させることができます。
手続き開始後一定期間内に債務の一部を弁済することにより、残債務を免除され、破産宣告を免れることができます。
住宅資金貸付債権に関する特則手続
住宅資金特別条項付民事再生手続きでは自宅を確保できます(196条)。ただし、ローンを払い続ける必要があります。
再生債権は、再生手続き開始後は弁済禁止です(85条1項)。しかし、住宅ローン債権は弁済禁止にならないと解釈する裁判所もありました。法改正(197条3項)により、平成15年4月1日から、住宅ローン債権は、再生手続開始後で、かつ、再生計画認可の決定確定前は、裁判所の許可を得て、弁済できるようになりました。ローンの支払いは継続しておくと後で楽です。
最低弁済額この手続きの対象となる人は、従来、任意整理を望んだ人でしょう。また、宅建主任者とか、保険外務員など破産すると、仕事ができない人が利用できます。
- 最低弁済額は100万円、債務額の20%などの制限(法231条2項4号)があります。詳細は下記の通り。
債務の総額 最低弁済額 100万円未満 債務の全額 100万円以上 500万円未満 100万円 500万円以上 1500万円未満 債務の20% 1500万円以上 3000万円未満 300万円 3000万円以上 5000万円未満 債務の10%
- 給与所得者等再生では、さらに弁済総額は下記で計算した金額を越える必要があります(法241条2項)。
{(2年間の収入 - 所得税 - 住民税 - 社会保険料)/ 2 - 最低生活費}× 2
最低生活費の計算方法は政令で決められています。東京23区居住者で、給料580万円、税金などが89万円の49歳の独身のサラリーマンの例では、最低生活費は、221万6000円です。従って、最低弁済総額は538万8000円となります。扶養家族があると、最低生活費は増え、最低弁済総額は減少します。
給与所得者等再生では、債権者の決議に依存しない代りに、弁済総額の要件が厳しいわけです。- さらに、弁済額は、破産で配当する場合より多くなくてはいけません(精算価値保障の原則、230条1項、174条2項4号)
債権者の意思に依存するところもありますが、債務の8割くらいの免除をしてもらえますから、任意整理よりも、よい条件で終わるでしょう。
期限の猶予
再生計画案認可の日から3年以内、特別の事情ある場合は5年以内に分割弁済する必要があります(法229条2項)。
小規模個人再生は、名称は体裁がいいですが、債務の一部を弁済すること、時間がかかること(小規模個人再生に要する時間)など厳しい面があります。
手続費用(東京地方裁判所の場合)
支払い意思のテストとして、最初の6ヶ月間、債務者は、毎月分割金(将来弁済する額と同じ金額)を再生委員に支払います。そこから15万円が再生委員の報酬になり、残額は債務者に返されます。
予納金 1万1928円(官報掲載費用。横浜地方裁判所では2万円) 収入印紙 1万円 切手 80円、15組 20円、20組 再生委員の報酬 15万円
申立を弁護士に依頼すると、上記の外に弁護士費用(30万円〜50万円)が必要です。
再生計画案
小規模個人再生手続きでは、再生計画案に対し、不同意とした債権者が半数に満たず、かつ不同意の議決権額が 1/2 を超えなければ可決とみなします(法230条5項)。
なお、保証協会は、同意しません。債権者の中に保証協会がいるときは、不同意として計算して下さい。
給与所得者等再生では、再生計画案につき債権者の決議を要せず(ただし弁済総額が厳しい)、裁判所が債権者の意見を聴取して(法240条)認可、不認可を決めます。
効果
再生計画案が認可されれば、債務者の債務は、計画案の通りに変更されます。計画案中に、免除の条項があれば、債務者の責任は減少します。
しかし、この効力は保証人には及びません(民事再生法177条2項)。保証人は、依然として責任を負います。破産手続きで免責の効力が保証人に及ばないのと同様です(破産法253条2項)。