スキー場での衝突事故の損害賠償請求事件の裁判例
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2015.7.7mf訂正
弁護士河原崎弘
相談:スキー場での衝突事故
先日、私はスキー場にて衝突事故を起こしてしまいました。約1000万円の損害賠償を請求されています。裁判になりそうなのです。裁判では、どのくらいの責任がありますか。
回答:上方からの滑降者に責任がある
スキー場での衝突事故では、上方から滑降してくるスキーヤーに責任を認めるのが原則です。損害が大きな金額もあります。損害の認定は、交通事故の場合と同じです。
下方にいた者の過失を認めた判例もあります。最近の裁判例は次の通りです。
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東京地方裁判所平成26年10月21日判決
スキー合宿中の被告Y1(当時14歳、スキー上級者)が,スキー滑走中に訴外Aと衝突しAを死亡させた事故の損害賠償請求事件
争点は次の通り
@Y1の不法行為責任の有無
A被告Y2(Y1のコーチ)の不法行為責任の有無
B同Y3(Y2の使用者)及び同Y4(スキー合宿主催者)の使用者責任の有無
C同Y5(スキー場管理運営者)の不法行為責任の有無
D原告らの損害及び額
裁判所は,Y1がスキー上級者であったとしてY1の結果回避可能性を認め,Y1には前方不注視の過失があったとした。次に、Y2につき,一般的な指導・指示以上のことをすべき注意義務があったとはいえないとし,Y2に不法行為が成立しない以上,その余の主張はその前提を欠くとして,Y1に対する請求を一部認容したが,その余の請求を棄却した
- 東京高等裁判所平成18年12月7日判決
三 控訴人の不法行為責任について
前記一(3)イに認定した本件事故の態様(控訴人がスノーボードで滑り下りて来てほぼ平らな緩斜面にさしかかったとき、上方からショートスキーで滑り下りて来た被控訴人が
控訴人の左側方ないし左後方から控訴人に近づいて行って控訴人に衝突した。)によると、本件事故の発生については、むしろ、上方から滑り下りてきた被控訴人に前方を注視して
下方にいる控訴人に衝突しないよう適切な速度と進路で滑降すべき注意義務があったのにこれを怠った過失があったものというべきであり、したがって、本件事故の発生については、
被控訴人に全責任があり、下方にいた控訴人には責任がないというべきである。
- 大阪高等裁判所平成18年4月27日判決
スキー場での滑走中の衝突事故につき、上方からスノーボードで滑走してきた加害者に衝突されて頸髄損傷等の傷害を負い、四肢不全麻痺及び両上下肢機能障害の後遺障害が残存した事件で、
加害者に5936万4264円および年5分の遅延損害金の賠償責任を認めた原判決を認めた。控訴は棄却。
- 名古屋地方裁判所平成13年7月27日判決
スキー場ゲレンデの見通しの悪い段差の下にいたスノーボーダー(被害者)へ、段差部分でジャンプして激突した後続のスノーボーダー(加害者)に過失を認め、500万4205円の損害賠償責任を認めた。
しかし、被害者は、本件段差をスノーボードでジャンプしたにもかかわらず、着地に失敗して転
倒した後、被害者の後を続いてジャンプしてくる者の存在に注意を払わず、体勢を立て直して立ち上がり、着地した場所付近から、漫然と少し移動しつつコーチのアドバイスを聞いていた事実が認められるのであり、原告(被害者)が、本件段差を原告(被害者)に続いてスノーボードでジャンプして来る者を予想して、その者との衝突を回避するため、本件段差
から直ちに遠ざかるなど、安全に配慮していた事実は認められないため、被害者にも35%の過失を認め、損害について35%の過失相殺を認めた。
- 最高裁判所平成7年3月10日判決
スキー場で上方から滑降する者が下方を滑降する者よりも速い速度で滑降し、両者が接触する事故が発生した場合において、事故現場が急斜面ではなく、下方を見通すことができたなど判示の事実関係の下においては、上方から滑降する者に、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を怠った過失がある。
登録 2009.10.22港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161